原題:JANICE BEARD 45WPM

ロンドン発きらきらのガール・ムービー 恋とお仕事には、愛と勇気とハッタリが必要よ!

1999年トロント映画祭出品 2000年東京国際映画祭出品

2000年5月5日イギリス初公開

1999年/イギリス/カラー/Dolby Digital /81分/ 配給:大映

2001年12月14日ビデオ発売&レンタル開始 2001年6月30日よりシネマカリテにて公開

ビデオ時に変わった場合の題名 ジャニス・ベアードのOL日記

公開初日 2001/06/30

配給会社名 0058

公開日メモ  ロンドンで活躍する30代の女性たちが、一人のヒロイン=ジャニスに惚れこみ、ファニーでカラフルでキュートな作品を完成させた。ジャニスは、実際に8年間にわたる派遣OLを経験してきたクレア・キルナーの実体験から生まれた、まさしく“天然素材”のヒロインである。

解説


 ロンドンで活躍する30代の女性たちが、一人のヒロイン=ジャニスに惚れこみ、ファニーでカラフルでキュートな作品を完成させた。ジャニスは、実際に8年間にわたる派遣OLを経験してきたクレア・キルナーの実体験から生まれた、まさしく“天然素材”のヒロインである。
  学校を卒業後、はっきりとした目的を持たぬまま派遣OLをしていたクレアは、ある日一冊の本と出会う。それは30年前に書かれたローリー・リーの「スペイン放浪記—ある夏の朝、ふと旅に出て」という紀行本だった。その時クレアは衝動的に、現在のスペインで彼の足跡を追ったドキュメンタリーを撮ることを思いつく。そしてオートマティックの16ミリカメラを手に、すぐさまスペインに飛び、思うままに撮影を敢行した。これがクレアが自分で撮った、初めての“映画”だった。2ヶ月後帰国してみると、クレアは自分が全ての蓄えを使い果 たしてしまっていることに気づいた。それでも“映画監督”の充実感は何事にも代え難く、クレアは28才の時に、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートの監督コースに入る決意をする。

 在学中、記録映画で腕を磨いたクレア・キルナーは、初めての劇映画の題材に、自分が長い間経験してきた派遣=テンプを選ぶ。大企業の中、常に一人きりのテンプ。
その会社の中では皆が分っていることでも、決して教えてもらえないテンプ。
社員食堂を使うのも、外出するのにも許可が要る。
テンプは、大企業の中の孤独であり異物である。
その特殊性の中に、クレアは劇映画の為の大きなヒントを見出していた。
状況に馴染めないキャラクターが、大都会の一流企業に入ったら…?
周囲の人間は彼女を阻害するだろうか、利用するだろうか、それとも…?
  そして彼女が、所謂“普通”の人たちから見た時に、あまりにも突拍子のない人物だとしたら…?

 こうして、ヒロイン、ジャニス・ベアードが誕生した。
  ジャニスは善良な田舎の少女だが、自分の出生時に立ち合っていた父親が心臓発作をおこして死亡、そのショックで母親が鬱病にかかってしまった為、母親を治すことこそ生まれながらの自分の使命だと固く信じ込んでいる。母親を元気付ける為、ジャニスは子供のころから様々な作り話をする。その空想の中で育ったジャニスが、一念発起、ロンドンを目指したところから、大騒動が始まる。空想と希望の純粋培養で育ったジャニスは、自分をいたって“普通 ”だと思い込んでいる。そして規律や階級にまるで無頓着なジャニスの登場によって、上手に自分を偽り組織に溶け込むことを覚えた都会の社会人たちは、大いに混乱することになる。

 このアイディアに真っ先に興味を示したのは、「ビフォア・ザ・レイン」「アントニア」等を手がけた女性プロデューサー、ジュディ・コーニハンだった。ジュディは、大都会の企業の中で働く誰もが抱えている“気だるさ”を、ジャニスが吹き飛ばしてくれると考えた。そしてこの企画に賛同したのは、偶然にもほとんどが監督のクレア・キルナーと同じ30代の女性たちだったのだ。
  BBCのドキュメンタリーでもクレアの片腕を務めた編集のメアリー・フィンレイ。 誰もが認めるジャニス・ベアード=アイリーン・ウィルシュを見出した、キャスティング・ディレクター、スージー・フィッギス。 カーク・ジョーンズ監督の「ウエイクアップ・ネッド!」にも参加したライン・プロデューサー、ミアラ・マーテル。 シンプル・マインズ、シェール、バビロン・ズーのコンサートや、スパイス・ガールズ、アニー・レノックス、ジョージ・マイケルなど数多くのミュージシャンのプロモビデオに参加している衣装のミッシェル・クラプトン。
  1996年にWOMEN IN FILM AND TELEVISIONでベスト・テクニック賞に輝き、マイケル・ラドフォード監督「B・MONKEY」、マイク・リー監督「Life is sweet」に参加している、美術のソフィー・ベッカー。

 男性スタッフの尽力も忘れることはできない。共同脚本のベン・ホプキンスは、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートでのクレアの同期で、「Simon Magus」「The nine lives of Tomas Katz」等で、監督としての評価も高い。彼は当初、共同脚本への興味は全くなかったが、クレアにアドバイスをするうちにジャニスに魅せられ、最終的に共同脚本に名を連ねることとなった。クレアが女性キャラクターパートを集中して描き、ベンが男性キャラクターパートを集中して書いたことが、この映画にリアリティを与えている。特にオフィスでの人間関係——女性は和を重んじる為に付和雷同型になり、男性は互いの業務に無関心になるというアイディアは、二人の経験から生まれた。
  ジャニスを取り巻くめくるめくような日常を、リズミカルにカラフルに捉えた撮影のリチャード・グレートレックスは、「恋におちたシェイクスピア」でのオスカーノミネートも記憶に新しい、名カメラマンである。若い新鮮な力によって導かれた本作に、奥行きと安定を与えている。

 ヒロイン、ジャニス・ベアードのキャスティングは困難を極めたが、ウエスト・エンドの舞台「DISCO PIGS」で強烈な個性を発揮していたアイリーン・ウォルシュの登場で、全てのパズルがはまった。アイリーンは映画初主演にもかかわらず大変な度胸で撮影に臨み、空想と楽天的な思考で純粋培養された型破りなヒロインを見事に具現化した。アイリーンはジャニスの役作りの為、何週間か実際にテンプを経験したが、その時にジャニス以上の混乱を引き起したとも言われている。ラッシュ時、スタッフからは「恐ろしいほどにジャニス・ベアードだ」と言う賛辞がアイリーンに送られた。

 破格の契約社員ジャニスの登場によって最も混乱してしまう、ケンドン・モーター社の秘書室長ジュリア・ウールフィには、子役時代からの長い芸歴を持ち、元エイス・ワンダーのボーカルでもあるパッツィ・ケンジットが。女性社員全員から「モーニング、ジュリア!」と声をかけられ、男性社員全員の関心を引かないと気が済まない典型的な“お局”を、彼女自身のアイディアを盛りこみ感情豊かに演じている。 冴えない外見のメール・ボーイ、実はエリートの産業スパイという二面性を持つショーン・タウンゼン(ショーン・ムーア)には、「ツイン・タウン」「ノッティング・ヒルの恋人」「リプレイスメント」等の個性派俳優、リス・エヴァンスがあたった。
  なぜ「ノッティング・ヒル」のような大作の後に「ジャニスのOL日記」を選んだのかと聞かれたリスはこのように答えている。
  「僕にとっての映画の違いはバジェットの大小ではなく、ストーリーの内容。実際『ノッテイング・ヒル』と『ジャニス』の違いは、『クレアのほうがジュリア・ロバーツより酒飲みだ』ということぐらいだね」
  その他、ジャニスの母親役には、「ローカル・ヒーロー/夢に生きた男」「ネイキッド」「奇跡の海」「ウインター・ゲスト」等で印象的な演技を見せている、ベテランのサンドラ・ヴォー。ケンドン・モーター社の重役役ミスター・テンスに「知らなすぎた男」のエディ・マーサン。同じく重役、オブライアンに「ブレイブハート」他、ロイヤル・シェークスピア・カンパニーの舞台でも活躍中のデヴィッド・オハラが扮している。

 「ジャニスのOL日記」は、自分が社会に適合できないとようやく気付いたジャニスが、“普通 ”になろうと努力するドタバタの中で、最終的にやっぱり自分らしくいるのが一番だということに気付くまでのキュートなアドベンチャーだ。
  ぼさぼさ頭に、カラフルな柄物の服。スコットランドなまりまるだしで、突拍子もないホラ話ばかりする田舎娘は、確かに周囲の反感を買う。けれど、自分の感情の赴くまま、正直に素直に行動するジャニスは、実は気だるい現実に新たな可能性を運んでくる、不思議な触媒でもある。お局のジュリアも、ジンクスOLのヴァイオレットも、付和雷同OLのトレイシーも、そしてジャニスを利用することしか考えていなかったショーンさえも、ジャニスを通 して、やがて新しい自分と出会うことになるのだから。

ストーリー



 さえない女の子ジャニスの人生は、最初から災難続きだった。
  彼女の出産に立ち会った父親は母親と一緒に力みすぎてショック死。母親はそれが原因で強度の鬱病にかかり、家に引きこもったまま外に出られなくなってしまう。ジャニスの乏しい医療知識によると、母親の病名は広場恐怖症。自分の出生が原因で母親が病気になったことに少なからず責任を感じているジャニスは、物心ついたときから母親を表へ連れ出すことが自分の使命だと考えていた。母親の興味を引く為、次から次へと作り話をするジャニス。しかし母親は、一向に良くなる兆しを見せなかった。大人になったジャニスは、一念発起、生まれ育ったスコットランドのグラスゴーを出て、ビジネスの戦場ロンドンを目指す。ロンドンにはうまい話が山ほど転がっていることを信じて…。しかし、母の治療と出世を夢見て闘うジャニスの武器は、“最低レベル”(1分間に45単語/45 Words Per Minute)のタイプ技術だけだった。ロンドンはジャニスにとって別世界。なんとかテンプとしてタイピストの職につくも、正社員でない彼女は社員食堂を使うことも出来ず、外出許可がないと表で食事をすることも出来ない。テープ起しの仕事は退屈極まりなく、ジャニスは思わずカセットを大好きなイタリア語に変えていい気分で自主勉強。そして当然、即刻首になる。職安でも強烈な印象を残し、ジャニスの姿が見えると、職安の職員は全員姿を消すというありさまだった。悩んだジャニスは父親の形見のアルマジロ・ギターを蚤の市売りに行くが、そこでも相手にされない。ジャニスは自分に残された道を紙に書き出してみる。売春、強盗、詐欺、かっぱらい…。だがそこに救いの手が差し伸べられた。幼なじみのヴァイオレットと再会したのだ。ヴァイオレットは自分の勤める会社に空きがあることをジャニスに伝え、“普通 にすること”を条件に、ジャニスをテンプとして推薦する。こうしてジャニスはロンドンの一流企業、ケンドン・モーター社にもぐりこむことに成功する!

 早速社内をホームビデオでとりまくり、顰蹙を買うジャニス。だがそれはジャニスにとって、電話にさえ出ようとしない母親への、大切なコミュニケーション手段でもあるのだ。ジャニスのビデオに映ったのは、通 販OL、私用電話OL、寝癖がキュートなメール・ボーイ、そして…。にわかにオフィスが静まり返り、振り返ったジャニスの前には、ブロンド、ミニスカ、ハイヒールの秘書室長ジュリアが仁王立ちしていた。 ケンドン・モーター社は新車の発表会を控えて、活気に溢れていた。しかし秘書室に与えられる仕事は、“お茶くみ”。それでもジュリアがカッコつけているのが、ジャニスには滑稽に見える。

 おまけにジュリアは、毎朝秘書室のOLたちが「モーニング、ジュリア!」と声をそろえて挨拶しなければ気が済まない、典型的な“お局”だった。大合唱の「モーニング、ジュリア!」にも、似合いもしない髪型を誉めあうOLのお付き合いにも全くのれないジャニス。他のOLたちにとっても、訳のわからないホラ話は平気でするくせに、お愛想を使わないジャニスは異質の存在だった。女の園の中ですっかり浮いてしまったジャニスを心配するヴァイオレット。しかしジャニスは逆に、紫色しか着ようとしないヴァイオレットが気になる。ヴァイオレットは優しく美しい娘だが、自分と同じ名前の色しか着ることが出来ないジンクスOLだった。

初めのうちは誰もがジャニスを敬遠したが、そのうちに徐々に彼女に興味を持つ人たちが現れた。オフィスでは付和雷同型だが、穏やかな性格のトレイシーは、ジャニスの率直さに好意を持ち、トイレでそっと「私に似合う髪形は?」とジャニスにアドバイスを求める。寝癖のダサダサ男のくせに、美人のジュリアの誘いさえはねつける“クール”なメール・ボーイ、ショーンまでジャニスにはやけに優しい。これで正社員になれれば、お母さんの治療も楽勝!と、もともと楽天的なジャニスは順風満帆気分に。

だがいかにも無学を装っているショーンは、実はケンドン・モーター社の新車発表会を潰すためにライバル会社から送られてきた企業スパイだった。ショーンに与えられた任務は、偽造書類の片棒を担がせる、利用できる女を探すこと。なるべく、間抜けで、バカがいい…。そしてショーンが狙いをつけたのが、ジャニスだった。ショーンに淡い恋心を寄せるジャニスは、既に自分が企業間の陰謀に巻き込まれていることなど、知る由もなかった…。

スタッフ

エグゼクティブ・プロデューサー:ジョナサン・オルスバーグ
プロデューサー:ジュディ・コーニハン
監督/脚本:クレア・キルナー
共同脚本:ベン・ホプキンス
撮影:リチャード・グレートレックス、ピーター・スウェイツ
音楽:ポール・カー
キャスティング・ディレクター:スージー・フィッギス
衣装:ミッシェル・クラプトン
美術:ソフィー・ベッカー
ライン・プロデューサー:ミアラ・マーテル
編集:メアリー・フィンレイ
録音:ロナルド・ベイリー

キャスト

ジャニス・ベアード:アイリーン・ウォルシュ
ジュリア・ウールフィ:パッツィ・ケンジット
ショーン・タウンゼン:リス・エヴァンス
ミスター・テンス:エディー・マーサン
オブライアン:デヴィッド・オハラ
ミミ・ベアード(ジャニスの母):サンドラ・ヴォー
ヴァイオレット:フランシス・グレイxz

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