原題:QUILLS

第73回アカデミー賞ノミネーション 主演男優賞:ジェフリー・ラッシュ/美術賞/衣裳デザイン賞 ゴールデングローブ賞ノミネート 最優秀主演男優賞(ドラマ):ジェフリー・ラッシュ/最優秀脚本賞:ダグ・ライト その他、多数賞ノミネート

2000年3月23日イタリア公開

2000年/アメリカ/123分/ビスタサイズ/ドルビーSR・SRD/字幕スーパー翻訳:松浦美奈/ オリジナルサウンドトラック:BMGファンハウス 配給:20世紀フォックス

2007年12月21日よりDVDリリース 2005年04月28日より特別編DVDリリース 2002年4月5日よりDVD発売 2001年5月19日よりスカラ座2ほかにて公開

(C)2000 TWNTIETH CENTURY FOX

公開初日 2001/05/19

公開終了日 2001/07/06

配給会社名 0057

公開日メモ 『クイルズ』は、そんなサド侯爵の晩年にスポットを当てた舞台劇の映画化。抑圧された環境のなかで、書くことに強烈なオブセッション〈強迫観念〉を燃やし続けた侯爵の反骨の芸術家ぶり。そして、彼の羽ペン〈クイルズ〉から紡ぎ出される言葉に刺激され、運命を変えられていく人々が織り成す数奇なドラマを、サド文学の真髄をなす官能と扇情的なユーモアあふれるタッチで描き出したセンセーショナルな文芸作だ。

解説


人生の1/3を幽閉されて過ごし、その間に50巻におよぶ書物を執筆したマルキ・ド・サド。サディズムという言葉の起源にもなった彼は、性のタブーの分野に奥深く分け入り、欲望と快楽の哲学的な解剖にメスをふるった史上最もスキャンダラスな文学者である。
『クイルズ』は、そんなサド侯爵の晩年にスポットを当てた舞台劇の映画化。抑圧された環境のなかで、書くことに強烈なオブセッション〈強迫観念〉を燃やし続けた侯爵の反骨の芸術家ぶり。そして、彼の羽ペン〈クイルズ〉から紡ぎ出される言葉に刺激され、運命を変えられていく人々が織り成す数奇なドラマを、サド文学の真髄をなす官能と扇情的なユーモアあふれるタッチで描き出したセンセーショナルな文芸作だ。
物語の舞台は、シャラントンの精神病院。刑務所行きを逃れてこの施設に収容されたサドは、人道主義者のド・クルミエ神父の庇護のもと、比較的安楽な暮しを送っていた。が、病院内で執筆した原稿の流出が発覚。シャラントンには、サドを「矯正する」目的で、荒治療で名高いコラール博士が送り込まれる。コラールの体現する偽善的な道徳に、踊りの態度で歯向かうサド。そのことから執筆の自由を奪われた彼は、文字通り身を削ってインクとペンを作り出し、体制に挑発的な闘いを挑んでいく。
書く自由を奪う行為が、逆に書くことへのあくなき執念を育み、正気をただそうとする行為が狂気の領域に迫るオブセッションを生む。サドの処遇をめぐり、アイロエーに満ちた展開を見せるドラマは、彼の周辺にも二重三重のパラドックスを作り上げていく。サドの刺激的な文学に生きるエネルギーを与えられながら、その文学の犠牲になる運命をたどる小間使いのマドレーヌ。彼女とサドとの関わりあいを通じて、信仰と人道主義を揺るがされるド・クルミエ神父。サドに道徳を強制しようとして、自らサディズムの実践者となるコラール博士。そして、彼の若く貞淑な妻シモーヌは、サドの著作に官能の目を開かれ、新しい人生を発見していく。人間の業の探求者たるサドと、彼の想像から生まれた物語に触れ、否応なく自分自身の真実をあぶりだされる人々。生、死、愛、欲望、偽善。それらを白日のもとにさらけ出す触媒、あるいは試金石として作用するサドと彼の芸術は、存在自体が危険なものなのか?それとも、既成概念に風穴を開ける哲学なのか?サドを筆頭に、個々の登場人物の魂を丸裸にする趣向を備えた物語は、今なお議論の対象にされる「表現の自由」そして「芸術の責任」という問題を取り込みながら、我々の価値観に挑戦的な問いを投げかけてくる。

ストーリー


1789年に勃発したフランス革命の最中、同朋の貴族たちがギロチンの露と消えていく姿を、バスチーユの塔の独房の窓から見下ろし続けたマルキ・ド・サド。数年後、猥褻文書頒布の罪でナポレオン体制下の警察に逮捕された彼は、家族の希望により、シャラントンの精神病院に収容された。これは、そんなサドと、彼の著作に運命を翻弄された人々の物語である。
シャラントンのサドは、金の力で特別待遇を手に入れていた。部屋は他の患者の何倍も広く、執筆も自由。サドにその特権を与えたのは、理事長をつとめるド・クルミエ神父だった。人道主義の立場で患者に心理的療法を試みる彼は、邪悪な考えを紙の上に吐き出させることが、サドの治療になると考えたのである。
しかし、そんな神父の温情が裏目に出る事件が起こる。病院内で執筆したサドの原稿が、闇の出版物として世間に出まわったのだ。
サドと出版社の橋渡しをつとめたのは、小間使いのマドレーヌだった。汚れたシーツと一緒に受け取った原稿を、病院の門の前で待ち構える出版社の男に渡す。その過程で盗み読むサドの文章に、マドレーヌは強烈にひきつけられた。肉欲と堕落の深淵に迫る物語は、彼女にとって、労働に追われる日々の現実を忘れさせてくれるものだったからだ。
が、時の皇帝ナポレオンにとって、サドの書物は公序良俗を汚す冒涜の書以外の何物でもなかった。「サドは処刑するより矯正したほうがいい」との臣下の進言を受け入れたナポレオンは、拷問具を使った荒治療で名高いコラール博士を新院長に任命し、シャラントンへ向わせた。
そんな事情も知らぬままコラールを迎え入れたクルミエは、闇出版の一件を知らされて驚愕した。患者ではなく友人として扱っていたサドに裏切られたことが、彼にとっては何よりの衝撃だった。憤然としてサドの部屋を訪ねた神父は、「治療のために書けと言ったのは君だ」とうそぶくサドに、施設存続のためにも二度と本を出さないようにと釘をさす。
が、それで引き下がるサドではなかった。院長として権威をふりかざすコラールに挑発の矛先を向けた彼は、患者たちによって上演される劇の台本を即興で変更。修道院育ちの16歳の孤児シモーヌと結婚したばかりのコラールが、若い妻に傲慢な性生活を強要する様を芝居に仕立てあげ、大勢の観客の前で彼を笑い者にした。
このサドの行為に面目を潰されたクルミエは、筆記具を没収。サドが最も欲する書く自由を奪った。たちまち禁断症状に見舞われたサドは、面会に来たルネ夫人に羽ペン〈クイルズ〉とインクをよこせと迫る。そんな夫の姿に怯えた夫人は、コラールを訪ね、「夫の魂の悪魔を消し去ってくれ」と頼むのだった。
いっぽう、書く手段を考えあぐねていたサドは、夕食に出された鳥肉の骨をペンに、赤ワインをインクにして、シーツに執筆する手を思いつく。翌朝、文字がビッシリ書かれたシーツをサドから託されたマドレーヌは、物語を紙に書き写し、出版社の男に渡した。だが、このたくらみは、ワインが他の洗濯物に色移りしたことからあえなく発覚してしまった。度重なる規則違反に激怒したクルミエは、サドの部屋からいっさいの家財道具を運び出させる。
もはやペンとインクの代用になるものは何ひとつ残されていない。誰もがそう思う状況だったが、サドはあきらめなかった。壁の鏡に目をとめた彼は、破片で指先を傷つけ、したたる血をインクの代わりにして、服に文字を書きつけたのだ。
翌朝、マドレーヌに部屋の鍵を開けさせたサドは、患者たちが集う食卓の上にのぼり、誇らしげに自分の作品を見せびらかした。その狂乱の場に乗り込んだコラールは、クルミエに、サドを丸裸にして監禁するよう命じる。
さらにコラールは、サドの協力者であることが判明したマドレーヌに、鞭打ちの制裁を加えた。その惨い仕打ちを見かねたクルミエは、「血が見たいなら私を打て」と言ってマドレーヌの前に躍り出る。そんな彼に、コラールは、「殉教者になりたいなら小間使いではなく神のために命を捧げろ」と、冷たく言い放つ。
マドレーヌには、鞭打ちよりもつらい試練が待ちうけていた。それは、シャラントン以外の場所へ奉公に出されること。クルミエにずっと思いを寄せていた彼女は、彼の部屋を訪ね、「私を遠くへやらないで」と懇願する。クルミエも、思わずその愛に応えようとするが、神に一生を捧げた彼に、情熱のままに生きることは許されるべくもなかった。
そのころ、古城を改装したコラールの邸宅では異変が起きていた。サドの著作『ジュスティ一ヌ』を買い求め、官能の扉を開かれた妻のシモーヌが、建築家のブルーイと駆け落ちしたのだ。それもこれもすべてサドのせいだと憎悪に燃えたコラールは、サドを器具に縛り付け、水攻めの拷問を加える。
再び部屋に監禁されたサドは、裸の膝を抱えながら自分の無力さに悔し涙を流した。そんな彼の耳に、ドア越しに囁くマドレーヌの声が聞こえた。
「私は遠くにやられてしまうの。思い出にしたいから、私に最後の物語を囁いて」
マドレーヌの必死の願いに心動かされたサドの脳裏には物語を伝えるあるアイデアがひらめいた。だが、彼は知らなかった。それが思わぬ悲劇に転じることを・・・・・・。

スタッフ

監督:フィリップ・カウフマン
脚本:ダグ・ライト
製作:ジュリア・チャスマン/ニック・ウェシュラー/ピーター・カウフマン
共同製作:マーク・ハファム
製作総指揮:デス・マカナフ/サンドラ・シュールパーグ/ルドルフ・ワイズマイヤー
プロダクション・デザイン:マーティン・チャイルズ
撮影:ロジェール・ストッファーズ
音楽:スティーブン・ウォーベック
編集:ピーター・ボイル
衣裳:ジャクリーヌ・ウェスト

キャスト

サド侯爵:ジェフリー・ラッシュ
マドレーヌ:ケイト・ウィンスレット
クルミエ神父:ホアキン・フェニックス
ロワイエ・コラール博士:マイケル・ケイン
シモーヌ:アメリア・ウォーナー
プルーイ:スティーブン・モイヤー
ルネ(サド侯爵婦人):ジェーン・メネラウス
ルクレール夫人(マドレーヌの母):ビリー・ワイトロー
デルビーン:パトリック・マラハイド
ヴァルクール:トニー・プリチャード
放火魔ドーフィン:ジョージ・イミアース
処刑人ブション:スティーブン・マーカス
シャ一ロット:エリザベス・バーリントン
ナポレオン:ロン・クック

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