2016年/日本/カラー/88分 配給:群像舎

2016年10月15日公開

公開初日 2016/10/15

配給会社名 1262

解説

1940年生まれの岩崎雅典監督は、長年、野生動物や地球環境をテーマに、記録映画、テレビ番組を制作してきました。テレビでは「野生の王国」(毎日放送)、「生きもの地球紀行」(NHK)、「素敵な宇宙船地球号」(テレビ朝日)など、映画作品では『イヌワシ 風の砦』『ニホンザル モズ 二十六年の生涯』などの代表作があります。

2011年に起きた東日本大震災によって起こった福島第一原発事故による放射性物質の拡散は、それまで動物の生態・そして生命を作品で追い続けてきた岩崎監督を奮い立たせました。放射能汚染が危険であるならば、人体への影響よりも早く、人間より小さな野生生物に影響が出るはずだ。これを誰もやらないなら自分がやるしかない。岩崎監督、70歳の夏でした。

福島原発事故は史上初めて人間以外の霊長類が被ばくした事故と言われています。つまり、チェルノブイリやスリーマイル付近には生息していなかったサルの被ばくです。2011年に生まれたニホンザルの子どもが成長して子どもを産むまでには5年から6年かかると言われています。岩崎監督は、少なくともこのシリーズを5年続けて、事故後に生まれたサルが子どもを産むところまで撮り続ける決心をしています。2013年に完成したシリーズ1から毎年、制作と公開を繰り返し、今回4作目の「シリーズ4〜生命〜」が完成しました。岩崎監督らクルーは現在も撮影を続けており、シリーズ5も来年の完成を予定しています。福島第一原発の事故後、これほどまでに制作を継続し、コンスタントに上映を続けているシリーズは類を見ません。

岩崎雅典監督の冷静な視線は、単に原発事故の被害や、その政府や行政の対応を批判するのではなく、また、放射能汚染が危険であるという盲目的な仮定に基づくわけでもなく、今現在福島を中心とした東日本に生息している生命体に起きていること、もしくは起こっていないことをロジカルに記録しています。
決して感情的になることになかった本シリーズですが、今回は映画の終盤、人間と動物の関係性が明らかに変わってしまったことを描いています。そのシーンは私たち人間が起こしてしまった事態に対して、誰しもが感情的にならざるを得ない強烈なシーンとなっています。

ストーリー

「生命」というテーマのもと、ニホンジカの健康被害、猛禽オオタカの繁殖異常などの調査、ツバメの生態のその後、斑点牛、アカネズミの継続調査や市街に出てくるイノシシの捕獲の模様など、震災から5年経過した生きものたちの放射能の影響を追っていく。生きものたちの「死」を通して見えてくる震災後の動物と人間の関係の変化が悲しく、切ない。生命とは何かという生物学的、哲学的な命題まで提示する野心作。

<4作目を撮って 監督からのメッセージ>
 ここのところ、故・菅原文太さんの伝言が胸に重くのしかかっている。いわく「どんどん続けてください。これから福島では、いろんな問題が出てくると 思う。だから、カメラを回しておかないと…」
 まさにその通り、現場を訪れる度に新しい現実に直面する。その都度慌ててシナリオを軌道修正。1作1作、どうにか作ってきたが、文太さんはそんな私の映画づくりのスタイルを最初から喝破していたようだ。だからあんなに優しい言葉で励ましてくれたのだと、いまさらながら脱帽。
 シリーズ4のテーマは”生命(いのち)”。実はこのテーマは5作目にと密かにあたためていたものだ。
が、現実は生易しくはなかった。生と死が日常の中で飛び込んでくる。白昼、人を恐れる事を知らない若いイノシシの出現。そのイノシシを駆除する地元ハンター。と思うと、無人の道路を、わがもの顔で跋扈するニホンザル。一方、無惨にも車に轢かれる動物たちの数々。イノシシの子どもウリボウ、タヌキ、アナグマなどなど。いわゆるロードキル。復興のために激しく行き交う車の犠牲者だ。
 あのとき、放射能は全ての生きものたちに降り注いだ。一木一草。鳥・獣・虫・魚。そして人間にも。
原発事故による放射能汚染問題は、つまるところ”いのち”あるものたちの問題だ。これまで、誰も見たこともない、経験したこともない原発事故がこの日本で起きてしまったのだ。これからも逃げずに、向き合うしか手がないだろう。

スタッフ

監督・製作:岩崎雅典
撮影:明石太郎
録音:吉田茂一
脚本協力:坂口康
製作:群像舎(2016年/HD/88分)

キャスト

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