木村陽介。銀行員。30 歳の誕生日に、逮捕。罪状不明。

2018 年/日本/アメリカンビスタ/5.1ch/118 分

2018 年 6 月 30 日(土)より渋谷・ユーロスペースにて公開

©100 Meter Films 2018

解説

映画「審判」は、フランツ・カフカが書いた同名小説を、イギリス出身のジョン・ウィリアムズ監督が現代の東京を舞台に映画化している。もとは、ウィリアムズ監督が実験的に実施した俳優向けのプロジェクトで「審判」をテキストにとりあげ、2015 年に演劇作品として上演。その後、原作により忠実な脚本を映画のために書き下ろした。
「審判」は 100 年以上も前に書かれた小説だが、いつの時代にも通じるメッセージ性を持っている。得体の知れない巨大な力、システムにコントロールされた理不尽で滑稽な出来事が、次々と主人公 K の身に降りかかる。その不条理な状況を前に、主張も反抗もしない主人公の姿は、現在の日本、ひいては世界中に漂う不穏な社会の波に翻弄される私たちの姿を暗示している。
本作の主演を務めるのは個性派俳優にわつとむ。ウィリアムズ監督作品は三作目で、今回が初主演。脇を固めるのは、品川徹、高橋長英らの名優たち。
そして、“殴る男”役で重厚な印象を与える坂東彌十郎は、歌舞伎界の名脇役で、本作は 11 年ぶりの映画出演、初の現代劇となる。

ストーリー

現代の東京。とあるマンションの一室で銀行員の木村陽介が目覚めると、見知らぬふたりの男、小倉と相馬が立っていた。逮捕を告げに来たと言うのだが罪状は不明で曖昧。ふたりは逮捕状も見せないまま我が物顔で部屋中を物色し、木村を困惑させるものの、出社時刻が迫り、木村はふたりを部屋に残したまま会社に向かう。部屋の外の世界は、いつも通り。隣に住む鈴木まりも、軽く挨拶をして、いつも通り。
帰宅した木村は、用心深く部屋を確認するが、特に変わったところは見当たらない。が、突然、鈴木が部屋を訪れ、男たちが鈴木にまで聞きこみをしていたことを知る。「前から話してみたかったの…」と呟く鈴木。探り合いながら進む、ふたりのぎこちない会話を、ドアベルがさえぎる。届いた郵便物の中身は逮捕状だった。
次の日曜日。裁判所に向かった木村は、郊外の古びた学校にたどり着く。廷吏の妻、アンナに案内され、体育館に一時的に設けられた「法廷」で判事と対面するが、話は全くかみ合わない。ずさんでいい加減な対応に戸惑い、苛立ちをあらわにするが、アンナに気を取られている間に、まともな審議もされないまま閉廷を言い渡される。木村は、不満を抱えながらも裁判所をあとにする。
逮捕されているはずだが、木村の日常生活は今まで通り。出社もするし、会議にも出席する。ただ、女たちの態度は明らかに違い、突如として「犯罪者」となった木村にこぞって興味を示す。恥じらいながらも好意を匂わせる鈴木、あからさまに誘惑してくるアンナ、そして、鈴木の友人と名乗る望月も、木村の部屋に強引に押しかけ、思わせぶりな素振りで色目を使うのだった。しかし、女たちにうつつを抜かすのも束の間、殴る男の登場で、悪夢が一気に現実のものとなる。
後日、心配する叔父に連れられ、木村は弁護士・田辺の自宅を訪れる。病気を患い、引退はしたものの有力者である田辺は、裁判所の“システム”には隅々まで精通しており「私に任せておけば大丈夫」と断言する。話し込む叔父と田辺をよそに、看護師アズキに誘われ、別室でふたりきりになる木村。「あなたは無実よ」と囁きながら、胸元のボタンを外すアズキの誘惑に負けてしまう。その一部始終を、叔父と、田辺宅に協力者として呼ばれていた鈴木にも見られてしまうのだった。
鈴木、叔父、弁護士―。ひとり、またひとりと頼みの綱がいなくなり、次第に追い詰められていく木村。無実を訴えてあがけばあがくほど、蜘蛛の巣のような“システム”に絡みとられ、どんどん身動きができなくなっていく。ここから抜け出す方法はあるのか?救いを求めて奔走するものの、期待はことごとく外れていく。そして木村は、出口のないこの迷路の終焉に、気づき始めるのだった―。

スタッフ

監督・脚本 ジョン・ウィリアムズ
音楽 スワベック・コバレフスキ
原作 フランツ・カフカ「審判」
プロデューサー 高木 祥衣 古川 実咲子 塩崎 祥平
撮影 早野 嘉伸
照明 大久保 礼司
録音 小川 武
美術 中村 三五
編集 稲川 実希
音響効果 堀内 みゆき
監督補 高田 真幸
助監督 岩崎 祐
ヘアメイク 西尾 潤子 松本 幸子
衣装 斎藤 安津菜
制作担当 竹上 俊一
後援 上智大学ヨーロッパ研究所 公益財団法人日独協会
製作・配給・宣伝 百米映画社

キャスト

にわ つとむ
常石 梨乃
田邉 淳一 工藤 雄作
川上 史津子 早川 知子 関根 愛
村田 一朗 大宮 イチ
坂東 彌十郎(特別出演)
高橋 長英
品川 徹

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