浮城
原題:浮城 Floating City
2012年/香港/カラー/104分 配給:太秦
2014年6月21日公開
(C)2012 Mandarin Films Limited. All Rights Reserved
公開初日 2014/06/21
配給会社名 0864
解説
戦後の香港に生まれ、貧しい蛋民(水上生活者)の夫婦に売られた中英混血の男児・華泉(ワーチュン)がイギリス企業の幹部となるまでを、実話に基づいて描いたヒューマンドラマ。親戚関係にあった黎華安と盧金泉という2人の実在する人物の物語を1人の人生として脚色している。80年代から香港映画界を牽引し、『ホームカミング』(84)や『レッドダスト』(90)などで知られるイム・ホー監督の7年ぶりの作品となった。イギリス植民地下の香港で混血であることから差別され、アイデンティティに悩みながらも成功を求めて努力を続ける華泉の姿は、香港が戦後歩んだ歴史とそのまま重なって見えてくる。
アーロン・クォックがエキゾチックな容貌を活かして、20代から50歳までの華泉を熱演。華泉を演じるにあたり、妻・娣(タイ)役のチャーリー・ヤンと共に“蛋家話”という水上生活者が話す難しい方言を学んだ。その結果、外見だけでなくその内面を見事に演じたと高い評価を受けた。華泉を取り巻く女性たちに扮した女優もそれぞれ好演を見せている。仕事のパートナーである菲安(フィオン)役のアニー・リウは自信に満ち溢れた魅力的な女性を演じ、若き日の母役を務めたジョシー・ホーも、短い出番ながら印象に残る演技を披露。中でも、中年以降の母を演じたベテラン女優パウ・ヘイチンが出色だ。華泉に寄せる母の深い愛情や、無学だった彼女が文字を学び自分の力で生きていく様子が静かな感動を呼ぶ。監督は主人公の50年という歳月を大胆に切り取り、1967年の反英運動、ベトナム戦争や1997年の香港返還などの歴史的事件を折り込みつつ、時に寓話的なタッチも交えて綴っていく。そこからは、香港とそこに生きた人々への強い思いが感じられる。
ストーリー
1940年代末、イギリス人と香港女性の間に生まれた子供が、流産したばかりの貧しい蛋民の夫婦に買い取られる。赤ん坊は華泉と名付けられ、船の上で成長。人とは違う外見から“あいの子”と揶揄される彼を、母は、その後生まれた弟妹たちと分け隔てなく可愛がった。ある日、華泉はプロテスタントの牧師から学ぶことを勧められた。「漁師に学はいらない」と反対する父だったが、母の後押しで船を降り、教会の夜学で文字を学び始める。間もなく父が海で命を落とし、自分が買われた子だと知った彼は、長男として身を粉にして働き出す。やがて憧れの東インド会社に雑用係として採用されると、21歳にして初めて正式な小学校教育を受けることに。イギリス人の上司から差別的な言葉を投げつけられながらも、華泉はたゆまぬ努力を重ねて次第に頭角を現していく。反英運動に加担した同僚が逮捕されたことなど関係なく、正社員となり幼馴染みの娣とも結婚、順調に出世の道を歩み続けていた。その頃、アメリカで建築学を学んだエリート女性の菲安が仕事のパートナーとして現れる。菲安は上流社会での振る舞いを華泉に教え、彼もその知識を吸収していく。ついには中国人として初の重役にまで上りつめたが、華泉は常にどこかで「自分は何者なのか?」と問い続けていた。時は流れ、香港が中国に返還される時がやってきた。かつて赤ん坊の自分が売られた場所を訪ねた華泉は、自らの出生の秘密について聞かされる。それと同時に、改めて育ての母の深い愛情を知るのだった。
スタッフ
監督・脚本:イム・ホー
マルコ・ポン
美術:ウォルター・ウォン
撮影:アーディ・ラム
編集:スタンリー・タン
キャスト
アーロン・クォック
チャーリー・ヤン
アニー・リウ
パウ・ヘイチン
ジョシー・ホー
カールソン・チェン
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