原題:ROOM237

2012年/アメリカ/カラー/103分/
配給:ブロードメディア・スタジオ

2014年1月25日(土)シネクイント他全国順次公開

公開初日 2014/01/25

配給会社名 0551

解説


伝説の恐怖映画『シャイニング』に残されたミステリー、
そして天才監督キューブリックの“頭の中”を分析する
驚くべき発見に満ちた画期的なドキュメンタリー

 『2001年宇宙の旅』(68)、『時計じかけのオレンジ』(71)、『フルメタル・ジャケット』(87)といった幾多の伝説的な名作を遺したスタンリー・キューブリックは、言わずと知れた20世紀最高の巨匠のひとりだが、その偉大なるフィルモグラフィにはひときわミステリアスな魔力を放つ恐怖映画が含まれている。スティーヴン・キングの同名小説を映画化した『シャイニング』(80)である。
 『バリー・リンドン』(75)の興行的失敗を受け、ホラーという商業的なジャンルに初めて挑戦したキューブリックは、ステディカムの開発者であるギャレット・ブラウンを招聘し、流麗なカメラワークとシンメトリーの構図にこだわった恐ろしくも美しいヴィジュアル・ワールドを構築。オープニングの胸騒ぎを誘う空撮シーン、雪山のホテルに出没する双子姉妹の幽霊、エレベーターからあふれ出る大量の鮮血、無数にタイプされた「all work and no play makes jack a dull boy」(仕事ばかりで遊ばないジャックは今に気が狂う)の文字など、一度観たら忘れようのない悪夢的イメージの数々を創出した。ワンカットごとに数十テイクを重ね、当初100日間だった撮影スケジュールは250日間に及んだという完璧主義者ぶりは、今なお語り草になっている。またキューブリックは、フロイト的な精神分析の視点を採り入れた脚色を実施。完成した本編を観た原作者キングは自分の大切な小説を滅茶苦茶にされたと激怒し、猛烈なキューブリック批判を繰り返した。
 このような傑出した独創性と完成度の高さゆえに、『シャイニング』はホラーの枠を超えて多くのアーティストに影響を与えたが、この映画には未だ答えがはっきりしない謎、一般的に認知すらされていない謎が数多く残されている。世界中のファンと同様にその謎に取り憑かれた新進映像作家ロドニー・アッシャーとプロデューサー、ティム・カークのコンビが手がけた『ROOM237』は、まさに『シャイニング』のあちこちにこびりついた奇怪なミステリーの解明に挑んだ異色作である。キューブリックの長編デビュー作『恐怖と欲望』(53)から遺作『アイズ ワイド シャット』(99)までの全作品の場面映像を引用し、不世出の天才監督の脳内を分析するかのような驚くべきドキュメンタリーを完成させた。

ナチのホロコースト、アポロ計画の陰謀!
5人のキューブリック研究家が大胆にして奇抜に読み解く
巨大ホテルの迷宮に隠された“真実”とは?

 『シャイニング』は作家のジャック・トランスとその妻ウェンディ、不思議な超能力を持つ幼い息子ダニーが、コロラド州のロッキー山脈にあるオーバールック・ホテルを訪れるところから始まる。彼らはホテルが閉鎖される冬の間、ここに管理人として滞在することになったのだ。ところが先住民の墓の上に建てられたホテルの邪悪な力に魅入られたジャックは、斧を手にしてウェンディとダニーに襲いかかるのだった……。
 リゾートホテルを呪われた迷宮に見立てた『シャイニング』を多角的に解明する本作は、筋金入りのキューブリック研究家たちのコメンタリーとともに進行していく。ビル・ブレイクモア(ジャーナリスト)、ジェフリー・コックス(歴史学者)、ジュリ・カーンズ(作家)、ジョン・フェル・ライアン(ミュージシャン)、ジェイ・ウェイドナー(作家、映画製作者、神秘学者)。以上の識者5人が斬新かつユーモラスな極私的『シャイニング』論を披露し、映画を読み解く魅惑にどっぷりと浸らせてくれる。
 ある識者は画面に何気なく映り込んだように見える“ふくらし粉の缶詰”や“スキーヤーのポスター”に注目し、アメリカ先住民やギリシャ神話にまつわるメタファーを検証する。また、映画の舞台となったオーバールック・ホテルの見取り図、ダニー少年が三輪車で走り回ったルート図を作成し、そこから判明したさまざまな矛盾や意外な観点を提示。さらに識者たちの深読みはとどまるところを知らず、実はキューブリックはこのホラー映画を利用してナチによるホロコーストの蛮行を描こうとしたのではないか、はたまたアポロ計画におけるNASAの壮大な陰謀を暴露しようとしたのではないか、という衝撃的な仮説までも飛び出す。加えて本作の終盤では、「もしも『シャイニング』の通常再生と逆再生のふたつの映像を、オーバーラップさせて鑑賞したらどうなるか?」という奇想天外な解析も行われている。
 ちなみに題名になった“237号室”とは、主人公ジャックが腐敗した老婆の幽霊と出くわす客室のことで、『シャイニング』に渦巻く魔力を象徴する部屋を示している。目から鱗の“真実”からマニアも唖然の“珍説”までぎっしりと詰め込まれた本作は、あらゆる映画ファンの知的好奇心を刺激してやまない。おそるおそる、そしてワクワクと新たな発見に満ちた“237号室”の扉を開いてほしい。

ストーリー

●『シャイニング』に関する代表的な9つの考察 (ストーリー)
*これらはあくまで映画で描かれる独自の解釈であり、キューブリックの本意ではありません

1.ふくらし粉の缶詰に隠された意味

 映画の序盤、オーバールック・ホテルの料理長ハロラン(スキャットマン・クローザース)の背後にある食料庫の棚に“カルメット”というふくらし粉の缶詰が置かれている。“カルメット”とは北米の先住民が和平の印として吸った長パイプのこと。“カルメット”の缶は後半、主人公ジャック・トランス(ジャック・ニコルソン)がかつて妻子を惨殺した管理人グレイディ(フィリップ・ストーン)の幽霊と対話するシーンにも映っている。キューブリックはこの場面で、わざと複数の缶をバラバラの向きに置いた。それは和平の破綻、すなわち大量虐殺の暗示なのである。

2.タイプライターや“42”という数字に秘められた隠喩

 作家のジャックが使用するタイプライターはドイツのアドラー社製だが、アドラーとはナチのシンボルでもあった“鷲”を意味する。劇中、ジャックが着ているTシャツにも“鷲”があしらわれている。またキューブリックは、ナチがユダヤ人の絶滅を決めた1942年の“42”という数字にこだわっており、ホラー映画の形をとって間接的にホロコーストというテーマを扱ったと解釈できる。237号室の部屋番号を2×3×7と掛け合わせると“42”になるのは、単なる偶然なのだろうか?

3.観客の性的な欲求を刺激するサブリミナル効果

 『2001年宇宙の旅』や『時計じかけのオレンジ』で映画術を究めたキューブリックは、新たな挑戦の一環としてCMなどに用いられるサブリミナル効果の手法を導入した。それらは観客の性的な欲求をかき乱すもので、次のような一例がある。映画の冒頭、ジャックがホテル支配人アルマン(バリー・ネルソン)の面接を受けるシーン。まるで冗談のようだが、ジャックとアルマンが握手を交わした直後、オフィスのデスクに置かれた黒いペーパー・トレイがアルマンの“男性自身”に早変わりするのだ!

4.存在するはずのない窓

 これもジャックがアルマンのオフィスを訪ねるシーン。アルマンの背後には外光が差し込む大きな窓があり、植木も見えるが、この窓は明らかにおかしい。ホテルの精細な見取り図を作ってみると、窓の向こう側には廊下があるはずで、これは“存在するはずのない窓”なのだ。

5.誰が食料庫のドアを開けたのか?

 映画の後半、狂気を露わにしたジャックは妻ウェンディ(シェリー・デュヴァル)にバットで殴られて気絶し、食料庫に監禁される。その後、目覚めたジャックはグレイディの幽霊との対話を経て食料庫を脱出するわけだが、誰が鍵を開けたのかは直接描かれていない。はたして幽霊に鍵を開けるなどという芸当が可能なのだろうか? ひょっとするとジャックを追いつめようともくろむ息子ダニー(ダニー・ロイド)が、超能力を駆使して鍵を開けたのかもしれない。

6.ジャック・トランスはミノタウルスである

 キューブリックは画面のあちこちに、さりげなく映画を読み解くヒントをちりばめている。例えば、ホテルにやってきたダニーが初めて双子姉妹の幽霊を目撃するシーン。双子の背後、画面の左手の壁にはスキーヤーのシルエットを描いたポスターが貼られているが、これは実はスキーヤーではなく、ギリシャ神話の牛頭の怪物ミノタウロスなのではないだろうか。乱暴者のミノタウロスは神話の中で迷宮に閉じ込められたが、キューブリックは本作のホテルを恐怖の迷宮として映像化した。そう、ホテルという迷宮に閉じ込められたジャックはミノタウロスなのである。

7.ダニーの三輪車はどこを走っているのか?

 本作にはダニーがホテル内を三輪車で走行するシーンが3回盛り込まれている。1回目は1階をきれいな四角形を描きながら走り、2回目は2階の廊下を“鍵”を描くように走っている。最も興味深いのは3回目だ。このときダニーは1階からスタートし、2階へ上がっていく。まるで1階で働く両親の“頭の中”を探検するかのように。そう考えると2階にある237号室は、ジャックの“妄想の部屋”と解釈することができる。

8.キューブリックの真意は“アポロ計画の捏造”の暴露だった!

 識者のひとりは、キューブリックがNASAのアポロ計画における月面着陸映像の捏造に加担していたと断言する。この仮説の検証を試みると、キューブリックはそれを自ら暴露するかのような“証拠”を劇中にちりばめていることがわかる。中盤、2階の廊下でミニカーを使って遊んでいるダニーは、アポロ11号の刺繍をあしらったセーターを着ているのだ。また地球から月までの距離は237,000マイルであり、キューブリックは237号室を“月の部屋”と見なしていた。ジャックがウェンディに激しく毒づくシーンは、キューブリックが捏造の事実を妻に知られたときのやりとりを再現したものかもしれない。

9.スティーヴン・キングへの挑発的なメッセージ

 原作小説を大幅に変えられたスティーヴン・キングが、完成した映画を観て激怒したのは有名な話。劇中にはキューブリックがキングを挑発するかのような描写が盛り込まれている。原作ではジャックの車は赤いフォルクスワーゲンだったが、映画ではなぜか黄色に変更されており、ハロランが車でホテルに向かう雪道のシーンではクラッシュ事故で無惨に壊れた赤いフォルクスワーゲンがちらりと映る。これは「お前のはつぶしてやったぜ!」というキューブリックがキングに向けたメッセージではないだろうか。

スタッフ

監督:ロドニー・アッシャー
製作:ティム・カーク
音楽:ジョナサン・スナイプス

キャスト

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