原題:RUBBER'S LOVER

1992年 ロッテルダム国際映画祭(オランダ)(招待作品)

1996年/日本/35mm/B&W/4:3/90min 配給:ホネ工房

1996年9月28日より渋谷シネ・アミューズにてロードショー

公開初日 1996/09/28

公開終了日 1998/11/29

配給会社名 0941

解説


狂気をはらんだ映像と、爆音とも言える音の連続が本能を覚醒し、見る者の奥底から今まで意識しなかった感覚を呼び出していく—。
『ピノキオ√964』に続く福居ショウジン監督の長編第二作『ラバーズ・ラバー』は、1996年ロッテルダム国際映画祭に出品され、上映後は絶賛と非難が会場を渦巻いた。出演は、東京グランギニョル、M.M.M. テクノクラートなどの集団を率い、演劇、パフォーマンス、アートの世界でつねに最前衛に立つ飴屋法水。東京グランギニョル、M.M.M.に参加していた齋藤聡介、その多彩な才能と特異なキャラクターで異彩を放つ、周防正行監督『ファンシイダンス』(89)、塚本晋也監督『鉄男2』(91)のジーコ内山、コシミハルのコンサート等にパフォーマーとして参加していた国広美香などアンダーグラウンド・シーンで活躍するメンバーが結集している。美術は、メルツバウのメンバーでもある坂井原哲生。音楽は、CX『ウゴウゴルーガ』に音楽として参加し、アート、デザイン、DJ、そして松蔭浩之らとの音楽ユニットなど、多彩な才能を見せる谷崎テトラ。プロデューサーは、石井聰亙監督『狂い咲きサンダーロード』、川島透監督『竜二』の小林紘と、矢崎仁司監督『三月のライオン』の西村隆。協力として美術評論家の椹木野衣、そして評論家であり、ノイズ・ミュージックの世界でヨーロッパで絶大な人気を誇るユニット、メルツバウの秋田昌美が、名前を連ねている。

ストーリー




完全密封された“ラバー・ユニット”は、理想的なフローティング・タンクとして展開し、強力なL系の薬物と爆音による拷問によって精神が破壊され、トリップ状態を引き起こす。無に近づいた精神は、新しい脳を稼働させ、サイキックな電波を発揮し、パワーとなって想像を絶する破壊を展開していく。

 センターと呼ばれる建物の中で、一ツ橋(飴屋法水)、本宮(斉藤聡介)、飯沼思美香(川瀬陽太)、あかり(国広ミカ)の4人はある巨大企業のスポンサーをバックに、極秘の研究を行っていた。
 その研究とは、完全包囲型のラバー・スーツとD.D.D.(デジタル・ダイレクト・ドライブ)という装置を装着し、極少量の酸素のみで生存する “ラバー・ユニット”と呼ばれるシステムと、強力なL系の“エーテル”と呼ばれる薬物と爆音によって、人間の精神を破壊し、トリップ状態を引き起こし、それによって無に近づいた精神が新しい脳を稼働させ、サイキックな電波を発揮し、触媒を通じて具体的なパワーとなって想像を絶する破壊を生み出すというものであった。
 しかし、研究は試行錯誤を繰り返した。裏ルートで用意したクランケ(被実験者)の質、そして数がハードな実験に追いつかず、D.D.D.の完成も遅れていた。スケジュールの遅延が、プロジェクトの時間と金を浪費させ、スポンサーは苛立ち一ツ橋、本宮、思美香は早く結果を出そうと、再び手に入れたクランケで実験に臨むが、それも虚しく失敗に終わった。
 遂にスポンサーが実験から手を引く方針を決定した。その通告と精算を秘書の小野寺キク(奈緒)に命じる。キクは、間近に結婚を控え、フランスに渡る事になっていた。これが、彼女の最後の仕事なのである。
 キクによって最終通告をされた本宮と一ツ橋は焦り、残されたわずかな時間の中で何とか研究を完成させようと試みる。そして、彼らは最終段階として残されていたクランケを使う事を決意する。
 それは、同僚の思美香だった。本宮は以前から密かにエーテルを思美香に投与していた。彼こそが、本宮が用意した最強の、そして最後のクランケだったのだ。一方、センターで経理を検索していたキクは、資金の使われ方がおかしいことに気付く。その時センターに男の絶叫する声が響きわたった。
 声のした場所を探して、リフトで地下に降りていくキク。ホールで行われていた実験を目にしたキクは、本宮達に拉致されてしまう。
 実験は進められた。思美香は濃度の濃いエーテルを次々にクリアして、力を発揮し始めた。本宮と一ツ橋はなんとか実験を完成させるために、思美香とキクを使って最終実験を開始する。一ツ橋、本宮、あかりの中に生まれた、奇妙な三角関係。あかりはキクを嫌悪し、いつも自分を抑圧していた思美香に憎悪を隠さない。複雑な人間関係の中で実験は最終局面を迎えた。
 キクの絶叫に、ラバー・ユニットに包まれエーテルを投与された思美香が反応し始めた。そして、ついに彼らはお互いを触媒として、力を発揮し始めた。二人から引き出されたサイキックは、一ツ橋と本宮が思っていたよりもはるかに強い力を発揮し、彼らに襲いかかる。
 自分自身の力に目覚めた思美香とキクは、センターを後に町の中へ逃れていく。
 スポンサーの手先である谷崎(ジーコ内山)は焦り、彼らの居場所を探す。彼は、思美香によって、自分の秘密が暴かれるのを恐れていた。
 もう離れることは出来ない。
 その身を隠す思美香とキクだが、終焉はすぐそこにまで迫っていた…。

スタッフ

監督×脚本×制作×編集:福居ショウジン
エグゼクティブプロデューサー:小林紘
プロデューサー:西村隆
撮影:田沢美夫
美術:坂井原哲生
スペシャルエフェクト:椋梨夜
音楽:谷崎テトラ(P・B・C)
録音:鈴木昭彦
編集:鵜飼邦彦
製作:光和興業株式会社ホネ工房
美術協力:飴屋法水
製作協力:池内務
:レントゲン藝術研究所
配給協力:ビターズ・エンド

キャスト

飯沼思美香:川瀬陽太
小野田キク:奈緒

一ツ橋:飴屋法水
本宮:齋藤聡介
あかり:国広ミカ
谷崎:ジーコ内山

巨大に太った女:松井志津加
影:近藤達弥
クランケ:河村央数
側近:小林紘
声:池内務

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