2015年/日本/カラー/94分 配給:パンドラ、ジャパン・スローシネマ・ネットワーク

2015年8月1日(土)新宿K’s cinema (名古屋)シネマスコーレ(大阪)シネヌーヴォにて同時公開!

(C)「ソ満国境 15歳の夏」製作委員会

公開初日 2015/08/01

配給会社名 0063/1645

解説


未曾有の災害となった東日本大震災から1年後———。仮設住宅への避難を余儀なくされた福島の中学校の放送部員たち。放送部の機材が災害で流され、夏休みの作品製作が出来ずに困惑していた。だがある日、そんな彼らに撮影機材と一冊の本が送られてくる。それは見知らぬ中国・黒竜江省の小さな村からだった。自分たちの村を撮って欲しいとのことだ。思わぬプレゼントを受け、期待と不安を胸に中国に渡った少年たちは、招待してくれた中国の村の長老の話を聞く。長老の口から語られたのは、昭和20年の夏、自分たちと同じ15歳の少年たち120名の想像を絶する過酷な体験だった…。

原作は田原和夫の「ソ満国境・15歳の夏」。旧制新京第一中学校三年生の当時、勤労動員としてソ連と満州の国境付近の報国農場に派遣された著者が、ソ連軍の突然の進行により、300kmに渡る命懸けの逃避行の体験を綴った著書だ。その著書を原作に据え、幾多の苦難を乗り越えて遂に完成した感動作である。
出演は、映画、テレビの話題作に出演するダンサー、田中泯、この作品が遺作となった名優、夏八木勲。この他、金子昇、大谷英子らの実力演技派が顔を揃え、特別出演ながら香山美子も印象的な演技を見せている。また、物語の主人公とも言える15歳の少年たちには、柴田龍一郎、六車勇登ら、明日の映画界を担う期待の若手俳優がずらりと顔を揃えている。

監督は松島哲也。大学教授としても教壇に立つ傍ら、プロデューサーと脚本も担当し、3000キロにも及ぶロケ・ハンを経て中国ロケを敢行。資金難、反日デモによる度重なる撮影中断など、幾多の苦難を乗り越えてこの作品を完成に導いた。撮影には『MARCHING −明日へ−』(14)の奥原一男、音楽には『マエストロ!』(15)の上野耕路が当たり、この作品に一層の深みを与えている。

ストーリー








大震災後の中学校に、突然届けられた中国からの招待状———!
 未曾有の打撃を受けた東日本大震災から1年後の2012年。15歳の吉川敬介は故郷の町から仮設住宅への避難を余儀なくされ、他の放送部員たちと同じように、編入された中学校に通う日々を送っていた。そんなある日、津波で機材が流され、中学最後の夏に放送部の作品づくりができないことを残念に思う敬介たちに、思いがけない招待が舞い込んでくる。見知らぬ中国・黒竜江省の石岩鎭という小さな村から、新しいカメラが寄贈され、それを使ってぜひ取材をしてほしい場所があるというのだ。ボランティアによる除染作業が続く福島を離れ、果てしない平原が広がる中国へと旅立つ敬介たち。その旅の始まりに、引率の担任からカメラとともに送られてきたという一冊の本が紹介される。そこに書かれていたのは、日中戦争時、旧制新京第一中学校から勤労動員としてソ連と満州の国境近くの報国農場に送られた15歳の少年たち120名の壮絶な体験だった。その晩、敬介たちを招待してくれた石岩鎭の長老、金氏に会った一同は、取材してほしい場所を明かされる。そこは、当時の少年たちが敗戦ともに帰国を果たすまで彷徨ったソ満国境の土地だった。

昭和20年。ソ満国境の夏———15歳の少年たちの想像を絶する体験
 次の日、早速、かつて報国農場があった東寧から取材を始める敬介たち。そして、次々と明かされる67年前の出来事。ソ連軍による突然の爆撃。命からがら逃げるように東寧を出て、避難列車の止まる駅を目指す当時の少年たち。やがて日本が戦争に負け、自分たちはソ満国境に置き去りにされたことを知る。何としても親元に帰りたい!だが少年たちの道のりは過酷を極めた。途中ソ連軍に捕えられ捕虜収容所に。食べる物もほとんど与えられない状態のまま50日後に解放されたものの、衰弱しきった身体に残されている力はわずかだった。
 当時のあまりにも過酷な体験を知るにつれ、今の自分たちがいかに恵まれているかに気づく敬介と放送部の一同。だが、そんな敬介たちもまた、戦時下とは別の厳しい環境に置かれていた。原発事故により外出時にはマスクが外せない不自由な毎日。長引く避難生活、仕事や住む場所を失い、行き場の無い不安を抱えてぶつかり合う家族たち。そんな状況でやってきた敬介たちは67年前の少年たちの体験が人ごとには思えなかった。

心のふれ合いも、悲しい別れもあった 一日だけの夏休み
 やがて取材も終わりに近づき、中国で残された最後の日。敬介たちは過酷な境遇に翻弄された同じ年の学生たちが、石岩鎮で過ごすことのできた一日だけの夏休みについて、長老の金氏から直接話を聞くことになった。
 それは、ソ連軍の捕虜収容所から解放された後、衰弱しきって彷徨う120名の少年たちが偶然に出会った現地の村人に、助けを求めたことから始まった。自分たちも貧しい生活の中、憎い日本人を助ける必要はないという村人たち。それをたしなめたのは石頭村(石岩鎮の当時の呼び名)の村長だった。衰弱しきった少年たちを気遣い、村人たちに食べ物と宿を提供するよう計らってくれた。そうして、食べ盛りの少年たちを中国の村人は一家に数人ずつ引き受けてくれたのだ。ひとときの安らぎを与えられた少年たち。その一人である金森は、早朝、村長の娘である王小絹が水汲みをするのを手伝う。はじめは警戒する小絹だが、次第に打ち解ける二人。すると小絹は、自分は中国に住む朝鮮族の孤児だったが、村長が引き取り養女として育ててくれたことを明かす。そしてそんな村長夫婦は自慢の両親だと言う。

時代も国境も超えて…いま15歳の少年たちが伝えることとは!?
 石頭村で何とか元気を取り戻した学生たち。そこで金森は、どうして日本人である自分たちを助けてくれたのかと村長に問う。すると、村長は答えた。昔、満州族の始祖であるヌルハチも、赤ん坊の時に起きた大洪水で命を助けられ、後に民族を率いる指導者になった。赤ん坊が大声で泣き叫ぶのを聞いた村人が助けたのだ。今回も、少年たちが助けを求めて声を上げ、それを聞いた石頭村の住人が少年たちを助けた。かつて満州族の歴史の始まりがそうだったように、中国の村人が日本人を助けたことによって、これからの世代にどんな新しい歴史が生まれるのか楽しみにしていると。
 そんな村長の言葉に胸揺さぶられた金森は、新京に帰らずに石頭村に残ると言い出す。驚きいさめる仲間たち。金森は、今までひた隠しにしていたが実は自分は日本人ではなく朝鮮半島の出身であるということを明かす。自分の本当の名前は金森ではなく金成義。これ以上自分の出生をごまかして生きたくないと言う金森。その強い想いにそれ以上は何も言えなくなる仲間たちだった。

 敬介たちは、自分たちを石岩鎮に招待してくれた長老、金成義が67年前の金森少年であることを知り、言葉を失う。
 新京へ向けて出発する朝、元気な姿で出発する少年たちを背に、村長の家から出ていかない金森。小絹が見送らなくていいのかと問いかけると、金森は、報国農場で捕まえた蝶の標本を取り出し言うのだった。この蝶は長い旅をする。この蝶は国境を軽々と超えて海を渡り飛んでゆくのだと。そんな金森の頬には涙が伝っていた…。

 金氏から貴重な話を聞き、充実した取材になったことを感謝する敬介たち。そして帰国した敬介たちの前に、さらなる事実が明らかに・・・。

スタッフ

脚色:松島哲也 
脚本:松島哲也/友松直之  
撮影:奥原一男  
録音:山田 均  
照明:田部 誠  
音楽:上野耕路  
美術:庄島 穀/小林久之  
編集:宮澤誠一/清水和貴  
プロデューサー:野田慶人/宮澤誠一/松島哲也
製作:「ソ満国境 15歳の夏」製作委員会

キャスト

金澤美穂
木島杏奈
澤田怜央
柴田龍一郎
清水尚弥
清水尋也
三村和敬
六車勇登
吉田憲祐
金子昇
大谷英子
田中律子
二階堂智
長本批呂士
上田耕一
小林勝也
香山美子
田中泯
夏八木勲

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