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2012年/日本・米国/カラー/102分/ 配給:和エンタテインメント

2012年12月22日(土)より渋谷ユーロスペース他全国順次公開!

©odayaka film partners

公開初日 2012/12/22

配給会社名 1198

解説


世界が変わったあの日、見えない恐怖がやってきた
胸を引き裂かれた女性たちは、いかに大切なものを守るのか?

 あの日は、突然やってきた。日本観測史上最大規模のマグニチュード9の大地震、東日本沿岸を襲った巨大津波、そして福島第一原発の事故。そのさなか、東京近郊のマンションに住むサエコは夫から一方的に離婚話を切り出され、ひとりぼっちで幼い娘、清美を育てることになる。原発から飛散した放射性物質への恐怖ゆえに、清美に絶対外で遊ばないように言い聞かせ、自ら購入したガイガーカウンターで幼稚園の庭の線量を計測するサエコ。しかし愛する娘を守りたい一心で取った彼女の行動は、他の母親たちからノイローゼと断じられ、無言電話などの陰湿なバッシングを浴びるはめになってしまう。その頃、同じマンションの隣人であるフリーライターのユカコも、インターネットでチェルノブイリの事例を調べ、放射能への危機感を募らせていた。仕事も手につかず、いても立ってもいられなくなった彼女は、会社勤めの夫に引っ越しをすべきだと主張する。やがて孤立感が深まるばかりのサエコとユカコ、それぞれの不安が限界点に達したとき、見知らぬふたりの人生は思いがけない形で交錯していく……。
 世界が一変したあの日、2011年3月11日の東日本大震災の痛ましさに胸を衝かれた多くの映画人は、3.11以後を模索するドキュメンタリーやフィクションの創作に取り組んできた。2010年の『ふゆの獣』で東京フィルメックス・グランプリに輝いた内田伸輝監督もそのひとり。ところが国内外で注目されるこの俊英のアプローチは、ちょっと他とは違っていた。被災地の東北にカメラを持ち込まず、あえて首都圏の平凡な住宅街を舞台に選んだのだ。
 3.11直後、福島から微妙な距離にある東京では、「直ちに健康に影響はない」などの曖昧な政府のアナウンスや、あちこちに飛び交うデマが市民を疑心暗鬼に陥れていった。放射能という見えない脅威、見えない怪物にさらされた人々は、いったい何を思い、いかなる行動を取ったのか。内田監督の最新作『おだやかな日常』は、いわれなき風評被害や差別が巻き起こったパラノイア的な社会状況を生々しく再現するとともに、はからずも大切なものを守るために放射能の恐怖との闘いに身を投じたふたりの若い女性の運命を見すえていく。彼女たちの行く手に待ち受けるのは、予想だにしなかった周囲の人々との凄まじい軋轢、そして絶対的な孤独。容赦ないほど鋭い眼差しに貫かれた本作は、絶望のどん底に突き落とされてもなお這い上がろうとする人間の可能性を信じ、予定調和とはかけ離れた壮絶なクライマックスへとなだれ込んでいく。かくして極限のサスペンスと希望のありかを探る迫真のドラマ、その果ての息をのむほど美しい瞬間が、観る者の心を震わせてやまない衝撃的な問題作が完成した。

『ふゆの獣』の内田伸輝監督×アジアのミューズ、杉野希妃
傑出した才能たちのコラボレーションが生んだ衝撃の問題作

 前作『ふゆの獣』で“恋愛”というありふれたテーマを探求した内田監督は、わずか4人の登場人物が心のよりどころを求めて激烈なまでにもつれ、ぶつかり合う様を、即興を採り入れた大胆かつ繊細な演出で映像化。切なさも醜さも愚かさもさらけ出した男女が、まさに獣のごとく剥き出しの感情を暴発させていくまでをただならぬテンションで描ききり、あらゆる観客を驚嘆させた。
 このうえなくミニマルな設定のもと、ドキュメンタリーのような臨場感を獲得しながら、人間という複雑な生き物の本質をあぶり出していく独特の映画的感性は、より切迫した社会性をはらむ『おだやかな日常』でも遺憾なく発揮され、観る者は一瞬たりとも目が離せない。放射能という見えないモチーフに果敢に挑み、エモーショナルな心のスペクタクル劇へと結実させたその手腕は、いっそう研ぎすまされた感がある。
 もうひとり、この野心的なプロジェクトを牽引したのがプロデューサー&主演女優の杉野希妃である。同じく製作と主演を兼任した深田晃司監督作品『歓待』(10)が世界各国の映画祭で大反響を呼び起こし、第24回東京国際映画祭では異例の特集上映が組まれるなど、アジア・インディーズ映画界のミューズとして脚光を浴びる才女が、企画の準備段階から内田監督との濃密なコラボレーションを実施。さらに愛娘を守るために想像を絶する苦難に見舞われていく主人公サエコの魂の軌跡を、渾身の演技で体現した。
 また本作を通して、多くの観客は篠原友希子という驚くべき女優を発見することになるだろう。大地震発生のオープニング・シーンから、杉野とのほぼ唯一の共演シーンとなるクライマックスまで、放射能に蝕まれゆく過酷な現実の中で揺れ続けるユカコの内なる葛藤を表現。今後の新作として、田中慎弥の芥川賞小説を青山真治監督が映画化する話題作『共喰い』(2013年夏公開)も待機中の注目株である。脇を固めるのは『マイ・バック・ページ』の山本剛史、『カラスの親指』の小柳友、『SR サイタマノラッパー2 〜女子ラッパー☆傷だらけのライム〜』の山田真歩らの若き個性派たち。日本映画界の最前線で活躍する渡辺真起子、寺島進も印象的な役どころを担い、3.11以後の未来を世界に問う本作を力強く盛り立てている。

ストーリー



2011年3月11日、東京近郊。同じマンションの別の部屋に住むユカコとサエコ。その日もほかの日と同じ日常が続くはずだった。地震とその後起こる放射能事故がなければ通路で挨拶を交わすだけの二人の人生が、思いもよらぬ形で交錯していくー—。福島原発から漏れだす放射能は、ユカコの生活を少しづつ蝕んでいく。日常に入りこんでくる放射能を遮断できない苛立ちと不安は、夫との関係に揺らぎをもたらす。一方、震災直後に別の女性の元へ行ってしまった夫を頼ることもできず、ただ一人、子供を守らなければならないサエコは、娘の通う保育園での放射能事故の対応で徐々に周囲から孤立していく。やがてサエコはその不安からある事件を起こしてしまうのだった…。

スタッフ

監督・脚本・編集:内田伸輝
プロデューサー:杉野希妃、エリック・ニアリ
エグゼクティブプロデューサー:小野光輔
スペシャルアドバイザー:アミール・ナデリ
コエグゼクティブプロデューサー:依田康、中林広樹、株式会社セントグランデW、依田健、竹之内哲次
アソシエイトプロデューサー:斎藤文、徐敬太
撮影:角田真一
録音:高田伸也
美術:山下修侍
助監督:桑島憲司
ラインプロデューサー:三好保洋
衣装・メイク:岩橋奈都子
サウンドデザイン:Jo Keita
スチール:斎藤文
製作:「おだやかな日常」製作委員会
制作・配給・ワールドセールス:和エンタテインメント
宣伝協力:テレザ、キノ・キネマ

キャスト

杉野希妃
篠原友希子
山本剛史
渡辺杏実
小柳友
渡辺真起子
山田真歩
西山真来
寺島進

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