2012年/日本映画/カラー/88分 配給:パンドラ

2012年5月19日 東劇にてロードショー!

(c)アムール+パンドラ

公開初日 2012/05/19

配給会社名 0063

解説


 アリア『ある晴れた日に』で世界的に知られるプッチーニの傑作オペラ『蝶々夫人』。『プッチーニに挑む〜岡村喬生のオペラ人生』は、『蝶々夫人』台本中の日本誤認をただそうと、オペラへの深い愛と日本文化の誇りを背景に、オペラ宗主国イタリアに挑む国際的オペラ歌手岡村喬生の姿を描いた、感動のオペラドキュメンタリーである。

岡村の驚き—<南無妙法蓮華経>と下から書いた鳥居を掲げるちょんまげ頭の僧侶
1960年代、ヨーロッパでオペラ歌手としてのキャリアをスタートさせた岡村は、「蝶々夫人」で、蝶々の伯父ボンゾー役(これも日本誤認の一つで、ボンゾーとは実は坊主のことだった)を演じることが多く、その際に<ちょんまげ頭で、下から<南無妙法蓮華経>と書いた鳥居を掲げた>僧侶の役を演じさせられた。日本人なら子どもでも噴き出すだろう奇妙な姿であり、屈辱以外の何物でもない。抗議すると「分かるのはあなたと奥さんだけだ」と一蹴される。岡村は黙々と演じながらも、機の熟するのをじっと待った。
戦後の復興期から経済の高度成長期にさしかかる、1959年から1979年までの20年間をヨーロッパで過ごして帰国した岡村は、日本でオペラ以外に活動の場を広げながらも、「蝶々夫人」台本改訂を忘れたことはなかった。

台本改訂シンポジウム開催へ!
21世紀になり岡村は70歳を迎えた。そのころには、自らが主宰する<NPOみんなのオペラ>による日本での公演では、日本の生活習慣に即した台本による『蝶々夫人』を実現させていた。だが、「お膝元のイタリアで実現させたい!」と念じる岡村は、2009年、台本改訂をテーマにしたシンポジウムを、本家イタリアのプッチーニ財団との共催により、日本で開催するのに漕ぎつけることに成功!パネリストはドナルド・キーン、立花隆、フランコ・モレッティ(プッチーニ財団)。錚々たるメンバーである。それを契機に、幾多の紆余曲折を経て、遂に、改訂台本による公演が契約された。2011年夏、スタッフ・キャストを引き連れて、イタリアでの第57回プッチーニフェスティバルに参加すべく、ローマの地に降り立ち、プッチーニの故地トッレ・デル・ラーゴの湖畔にある3200人収容の大野外劇場での公演に、乗り込んだ。だが、思いもかけない事態が待っていた。

プッチーニの孫シモネッタの拒否
 待っていたのはフランコ・モレッティの署名入りのレター。「台本改訂はできない」。「ダンテの神曲に誰も手を加えられないと同様に、プッチーニの作品に手を入れてはならない」と、頑として拒む、著作権継承者である孫で80歳を超えるシモネッタ・プッチーニ。東京での話し合いと契約は何だったのか、自分たちはこれまで何のためにレッスンを積んできたのか、岡村は何を交渉したのか。岡村の責任を厳しく追及する怒りの眼差し。加えて、イタリア側からは準主役の力量が不安だ、劇場との労働協約で芸者役は歌うことはできないと、難問を次々と突きつけられ岡村は孤立した。そして限られた時間の中、断腸の思いで岡村は決断した。「今回は台本改訂を諦め、演出に力を注ぐ!」。<ちょんまげ頭の鳥居僧侶>になるような演出はゼッタイにしない!
 公演初日、舞台正面に座るシモネッタに自ら歩み寄り、にこやかに握手する岡村の姿があった。それは礼節を重んじる日本人岡村喬生の、実は諦めない決意表明でもあったのだ。

ドキュメンタリーの達人と一人のアーティストとの見事なコラボ
『プッチーニに挑む〜岡村喬生のオペラ人生』は岡村喬生と飯塚俊男監督の見事なコラボレーションにより生まれた作品である。日本ドキュメンタリー映画史に大きな足跡を残した小川紳介監督の許で、学生時代からドキュメンタリーの現場経験を積んだ飯塚は、対象者にひたすら沿う手法で映画を作る。信頼関係構築が何よりも重要だと、揺るがない信念があるのだろう。岡村は全幅の信頼をよせた。生憎、イタリアではシモネッタなどに撮影を拒否された場面もあったが、どんな局面でも開かれた表情の岡村の自然体は、見る者の共感を呼ぶ。なお、本作完成には5年の歳月をかけている。

岡村喬生 1931年東京生まれ
大学でグリークラブに誘われたことをきっかけに歌の道に。卒業後、イタリアに渡りオペラ歌手として本格的修業をする。1960年、ヴィオッティ(イタリア)国際音楽コンクール声楽部門で金賞、トゥールーズ(フランス)国際声楽コンクールの第一位に。イタリア、オーストリア、ドイツなどヨーロッパ各地のコンサートやオペラで20年間活躍し、1979年に帰国。またNPOみんなのオペラを主宰し、オペラの大衆化に努め、近年はプッチーニの『蝶々夫人』中の日本理解をただすことに力を注いでいる。

ストーリー

スタッフ

監督:飯塚俊男
プロデューサー:飯塚俊男、中野理惠
撮影:高尾隆
編集:鍋島惇
ナレーション:倍賞千恵子

キャスト

岡村喬生
岡村和子
二宮咲子
末広貴美子
?橋淳
百々あずさ
進美沙子
大塚啓子
大音絵莉
宗心裕子
内藤彩加
西谷衣代
福田泰子
森裕美子
山田祥子
千地泰弘
川口直次
立花志津彦
松川二葉
金子光寿
穂苅竹洋
西田敏行
中野秀俊
細田ひな子
山下裕美
山下民子
大久保菜生
伊藤康英
大中恩
岡田渉
半田規子
ドナルド・キーン
立花隆
小倉和夫
愛知和男
松本邦宏
ウンベルト・ドナーティ
フランコ・モレッティ
シモネッタ・プッチーニ
ヴァレリオ・ガッリ
フランチェスカ・トーズィ
マッシミリアーノ・ピサピーア
マリエッラ・グァルネーラ
アレッサンドラ・メオッツィ
セルジオ・ボローニャ
チョイ・セウン・ピル
マルティーナ・ドナーティ
プッチーニフェスティバル・オーケストラ
プッチーニフェスティバル合唱団

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予告編::http://www.youtube.com/watch?v=UbTxKCfTCag
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