原題:LATE BLOOMERS / TROIS FOIS 20 ANS

2011年/フランス・ベルギー・イギリス合作/英語/90分/ビスタサイズ/ドルビーSR 字幕翻訳:松浦美奈 プレス協力:増田統 提供:ニューセレクト 配給:アルバトロス・フィルム

2012年2月4日(土)より Bunkamuraル・シネマ にてロードショー

© 2010 Gaumont - Les Films du Worso - Late Bloomers Ltd

公開初日 2012/02/04

配給会社名 0012

解説


「“20歳か80歳か”だけが選択肢じゃない。
その中間にある何かを、あなたと見つけたい」
若さの勢いだけで日々を突っ走ってきた青春時代、幾たびかの苦難を乗り越え、それなりに充実した結婚生活も早や30年。手塩にかけて育てあげた子供たちもようやく独立し、いよいよ夫婦ふたりきりの“第二の人生”が今、まさに始まろうという時、世間から“老い”と呼ばれる自らの年齢に直面し、今さらながら愕然とする。
人はどのように美しく年齢を重ねていけばいいのか。
愛する人との“生涯の伴侶”の誓いは、永遠ではないのか。
2012年のオリンピック開催地ロンドン。今、世界から熱い注目を浴びる躍動する国際都市を舞台に、60歳を間近にして、
そんな誰もが一度は噛みしめる “人生の命題”に直面しながらも、果敢に“最高の人生”を模索し続けるヒロインの奮闘を、思わず苦笑いしてしまうような共感あふれる笑いをまぶして描いた、ビタースウィートなヒューマンドラマの誕生である。
イギリス人の母とイタリア人の父を持つメアリーは、建築家として世界的な名声を博するアダムと、ロンドンの街で30年に及ぶ結婚生活を送ってきた。3人の子供たちはすでに独立し、孫にも恵まれたメアリーは、突然彼女を襲う“記憶の空白”をきっかけに、夫婦の“老後”を考えたとき、ふとした疑問が心に芽生える。「私の人生って何?」
高級ブランドのドレスを身にまとい、ゴージャスに着飾っても、なぜか気分は晴れない。若くて美しい娘たちと自分を、ついつい見比べてしまう。そんな社会的な疎外感に囚われたメアリーと、若いスタッフとの新プロジェクトに新たな情熱を燃やすアダム。これまで円満だった夫婦の仲は、次第にギクシャクしてゆく。果たして、メアリーはもう一度、女として大輪の花を咲かせることができるだろうか?そして、夫婦は離別の危機を回避することができるのか?
老眼鏡をかけないと、アイメイクができない。立ち上がるとき、ついつい介助用手摺りを掴んでしまう。満員のバスで立っていると、若者から席を譲られる…若いつもりでも、否が応にも「年齢をとった」と実感せざるを得ない、そんな誰もが思い当たる“あるある体験”に爆笑しつつ、やがてそんなシビアな現実を我が身と重なりあわせ、思わずホロリ。劇中、「実際の年齢と精神年齢は、8歳も違う」という台詞に胸を衝かれる人も少なくないだろう。
しかし、そんな“老いの現実”をしなやかに受容し、長年にわたる夫との結婚生活の中に自分自身の“最高の人生”を見い出すメアリーの変化は、無意識の裡にネガティヴイメージの先入観に囚われた“老い”の価値観から、私たちを爽快感たっぷりに解放してくれるはずだ。
成熟は、人間のたしかな成長の証であり、そのありのままの美しさに気づいたとき、人生はこれまでにない最高のご褒美を私たちに与えてくれる。それはメアリーにとってアダムとの“生涯の伴侶”の誓いを、若々しくフレッシュな愛とともに再認識することだ。

“還暦”を直前に自分の居場所を模索してあえぐメアリーを演じるのは、『ブルーベルベット』『ふたりのトスカーナ』のイザベラ・ロッセリーニ。イタリアン・ネオレアリズモの巨匠ロベルト・ロッセリーニと、世紀の美女イングリッド・バーグマンを両親に持つ映画
界のサラブレットのイザベラにとって、このコスモポリタンなメアリーについて「とても身近な存在」と証言するように、ほとんどノーメイクに近い起きぬけの朝の素顔を披露したかと思いきや、“イタリアのマンマ”を想起させる豊満な肉体美を惜しみなく露わにする大胆さで、観る者を魅了する。その一方で、ブルガリのドレスを颯爽と着こなすや持ち前のスタイリッシュな美しさを垣間見せるなど、老いに差し掛かったヒロインの本音と大人の成熟美をキュートに体現し、女優としての新境地を拓いたといっても過言ではない。
対する、夫アダム役には、『蜘蛛女のキス』でアカデミー主演男優賞に輝き、近年も『ロビン・フッド』『イエロー・ハンカチーフ』などの大作、話題作で名優健在を実証するウィリアム・ハート。若いスタッフとの新プロジェクトに刺激を受けて、いつしか皮ジャンにジーンズ姿で“若返る”や、たちまち70年代のヒッピーを彷彿させるワイルドさを振りまく建築家アダムの気難しく神経質な内面に隠された愛嬌に、思わず微笑。いつになく肩肘張らぬ軽やかな魅力で、ロッセリーニと酸いも甘いも噛みわけた円熟の夫婦像を息もぴったりと銀幕に焼き付けてみせる。
監督・脚本を手がけたのは、長編第一作『ぜんぶ、フィデルのせい』で60年代の社会変革の渦中に放り出された少女の
戸惑いを通して、時代の空気感をヴィヴィッドに今に甦らせたジュリー・ガヴラス。『Z』でアカデミー外国語映画賞、『ミッシング』でカンヌ国際映画祭パルムドールに輝く名匠コスタ=ガヴラスを父に持つジュリーは、世界各地の映画祭での父の回顧上映に触れた際、老いと第二の人生をめぐるこの映画のアイディアが浮かんだという。
家族、社会、他者との関係において、自分の居場所を見つけ出そうともがく60歳直前の夫婦の葛藤と、誰もが思い当たる“老い”の現実を愛情とユーモアあふれる感受性で掬い取り、観る者の共感を誘う巧みなストーリーテラーぶりに父親譲りの才気を発揮、今後、要注目の若手監督の一人に名乗りを上げた。
メアリーの母ノラに、『フランス軍中尉の女』『タロットカード殺人事件』のドリーン・マントル。アダムの親友でビジネスパートナーのリチャードに『眺めのいい部屋』『フォー・ウェディング』のサイモン・キャロウ。アダムの部下で、後に彼と不倫の関係に陥るマヤ役にダルデンヌ兄弟の『ロルナの祈り』でヒロインを演じ、注目されたアルタ・ドブロシと、多彩な個性派キャストの共演も見逃せない。
また、美しいロンドンの街並みの中で、夫婦の危機をユーモラスかつ快活にとらえた撮影監督は、『ぜんぶ、フィデルのせい』に続いてジュリー・ガヴラスとコンビを組むナタリー・デュラン。美術デザインを『トプシー・ターヴィー』(日本ではテレビ放映のみ)、『英国王のスピーチ』と2度アカデミー賞候補となったイヴ・スチュワートが手がけている。
今や世の中は、アンチ・エイジングではなく、ウィズ・エイジングの時代。自分らしい生き方を探し当てることで、人生は何度でも美しい大輪の花を咲かせることができる。この映画には、“老いの危機”を迎えた夫婦たちが“生涯の伴侶”となるための、数多くの最高の人生へのヒントが散りばめられている。現代人にとって必見だ。

ストーリー






「あなたと家庭を持てて、とても幸せよ」
イギリス、ロンドンに暮らすアダム(ウィリアム・ハート)とメアリー(イザベラ・ロッセリーニ)は結婚して30年になる熟年夫婦。イタリア人の父とイギリス人の母との間に生まれた元教師のメアリーと、アメリカ育ちで建築家のアダムは、ここロンドンで出逢い、結婚後は3人の子供に恵まれた。
今や、長男ジェイムズ(エイダン・マクアードル)はビジネスマンとして成功を収め、長女ジュリア(ケイト・アシュフィールド)は双子の母、アーティストの末息子ベンジャミン(ルーク・トレッダウェイ)も20歳を機に独立。夫婦のマンションの隣室では、メアリーの母で、第二次世界大戦時、女医としてイタリアに駐留した経験を持つノラ(ドリーン・マントル)が、悠々自適の隠居生活を送っていた。
その夜は、夫アダムのこれまでの業績を讃える授賞式だった。そのときまでメアリーは、空港やバスターミナルなどの設計で世界中を飛び回る夫や子供たちに尽くしてきた日々に、何の不満も抱いていないはずだった。しかし、この夜の“記憶の空白”が、彼女の胸中に将来への言い知れぬ不安を芽生えさせる。これは、単なる物忘れなのか、それとも認知症の兆候か?
こうして、メアリーは主治医の勧めで、アクアビクスのレッスンに通い始めるが、プールでは彼女よりも一世代年下の女性たちに囲まれ、まったく馴染めない。“年増女”には男性会員の視線も素通りで、そんな落胆するメアリーに声をかけたのは、ジムのオーナー、ピーター(ヒューゴ・スピアー)だった。

一方、建築家として世界的な名声を博しながらも、著しい時代の流れに乗り遅れたのか、アダムの設計事務所は資金難に陥っていた。ビジネスパートナーのリチャード(サイモン・キャロウ)は、経営を維持するため、初めて高齢者用ホスピスの設計に乗り出すが、アダムの創作意欲はまったく刺激されない。そんなときアダムは、事務所の若いスタッフたちが3ヶ月後に締切の迫る美術館のデザインコンペに出品しようと、秘かに画策していることを知り、彼らに協力を申し出る。
その頃、メアリーは20年来の親友で女性運動活動家シャーロット(ジョアンナ・ラムレイ)の紹介で、元教師のボランティアに参加するが、女性コーディネーター、カレン(ジョアンナ・ボビン)の若さをひけらかしたような横柄な態度と、無報酬の仕事に“感謝”するシニアボランティアの現実を目の当たりにし、怒りに駆られ財団から飛び出してしまう。
こうした互いの環境や心境の変化によって、これまで円満だったメアリーとアダムの夫婦仲は次第にギクシャクし始める。美術館プロジェクトに奔走し、家には眠りに帰るだけのアダムに、メアリーは苦言を呈する。「あなたは若い人と働きたいだけ。自分を若いと感じるために」。そんな妻にアダムも辛辣だ。「きみといると年齢を感じる」と言い放ち、マンションから出て行ってしまう。

しかし、リチャードの眼を盗んでの美術館プロジェクトも予算不足にあえいでいた。そこでアダムは、部下のマヤ(アルタ・ドブロシ)を伴って、長男ジェイムズに資金援助を請おうとするが、いざという時に父としてのプライドが邪魔をするのか、肝心の話を切り出せず、席を立つ。しかしそのとき、ジェイムズは父とマヤとの不倫関係を疑ってしまうのだった。
早速、ジェイムズはジュリアとベンジャミンを呼び出し、“シニア離婚”の危機に直面した両親の撚りを戻させようと“作戦会議”を開く。折しも、末弟ベンジャミンが彫刻を出品する展覧会に両親を招待することで夫婦の話しあいの場を設けようとするが、会場のクラブはアダムとメアリーにとって疎外感以外の何ものでもなく、子供たちの思惑は空振りに終わる。それどころか、その夜、アダムは衝動的にマヤと肉体関係を結び、メアリーもまたピーターとの不毛の愛に一時の空虚を紛らわせるのだった。
しかし、アダムはマヤとの情事にも心満たされず、老人ホームの設計は「自分自身の老いを見るようで苦痛だ」との本音をリチャードに漏らす。同じ頃、メアリーはシャーロットにこう忠告されていた。「私みたいに心の空白を埋めるために活動しないで。ひとりの生活は孤独よ」
これまで幾度となく夫婦の危機を乗り越えた彼らもついに訣別かと思われたそんなとき、ノラが病に倒れる。実は、ノラはアダムだけには自分が癌であることを打ち明けていたのだ。それを聞いたメアリーはショックを受けるが、それからしばらくしてノラは静かに息を引き取った。
一家揃ってノラの葬儀に出席すべく部屋を出たとき、メアリーとアダムを乗せたマンションのエレベーターが突然、停止してしまう。思いがけず密室で顔を突きあわせることになったふたり。果たして彼らは、“終の伴侶”の誓いを交した頃の愛情を今ひとたび、甦らせることができるだろうか…?

スタッフ

監督:ジュリー・ガヴラス
脚本:ジュリー・ガヴラス、オリヴィエ・ダザ
プロデューサー:シルヴィー・ピアラ、ベルトラン・フェヴル
エグゼクティブ・プロデューサー:シドニー・デュマ
撮影:ナタリー・デュラン
美術:イヴ・スチュワート
編集:ピエール・アベレ
衣装:マリアンヌ・エイガートフト
音楽:ソディ・マルシシェヴァー
音響:マルク・バスティアン、フランソワ・デュモン

キャスト

メアリー:イザベラ・ロッセリーニ
アダム:ウィリアム・ハート
ノラ:ドリーン・マントル
ジュリア:ケイト・アシュフィールド
ジェイムズ:エイダン・マクアードル
マヤ:アルタ・ドブロシ
ベンジャミン:ルーク・トレッダウェイ
レオ:レスリー・フィリップス
ピーター:ヒューゴ・スピアー
シャーロット:ジョアンナ・ラムレイ
リチャード:サイモン・キャロウ

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