ミラル
原題:Miral
2010年/仏・イスラエル・伊・インド/英語/112分/35mm/カラー作品/1.85:1/ドルビーSRD/字幕翻訳:渡邉貴子/協力:コミュニティシネマセンター 配給:ユーロスペース、ブロードメディア・スタジオ
2011年8月6日、ユーロスペースほか全国ロードショー
(C)PATHÉ - ER PRODUCTIONS - EAGLE PICTURES - INDIA TAKE ONE PRODUCTIONS with the participation of CANAL + and CINECINEMA A Jon KILIK Production
公開初日 2011/08/06
配給会社名 0131/0551
解説
愛を伝えること、自由を伝えること、そして希望をつないでいくこと——。
親から子へ、教師から生徒へ、平和を望むすべての人々に向けた真実のメッセージ
1948年、イスラエル建国宣言の1カ月前のエルサレム。その路上にはユダヤ民兵組織によって親を殺された孤児たち55人の痛ましい姿があった。後にそうした孤児たちのために生涯をささげることになるヒンドゥ・ホセイニは、自身の資産をつぎ込み、孤児たちのホームとなるダール・エッティフル(子供の家)という学校を創設する。この学校は、現在に至るまで悲劇的な歴史の犠牲者である3000人以上の子供たちに教育と生活の場を提供してきた。ここには幼い時からヒンドゥの与える愛と教育を受け、未知数の可能性を秘めた少女ミラルがいた。東エルサレムに生きるミラルが、占領下のパレスチナで成長していく様を、ジュリアン・シュナーベル監督は繊細な一枚一枚の花弁を扱うように縒り合せていく。やがてミラルが歩む道は、より大きな歴史という物語をも紡いでいくのだった…。
「“ミラル”は道端に咲く赤い花。きっと誰もが目にしている」というテロップで幕を開けるこの映画は、本作の主人公ミラルに自身を投影させ、実際にダール・エッティフェルで学んだ1973年・イスラエル生まれのルーラ・ジブリールによる自伝的実話「ミラル」に基づく映画化。無限の可能性を秘めたひとりの少女が過酷な現実に翻弄されながらも逞しく生き抜き、ついには輝かしい未来へと羽ばたいていく姿を映し出す。またミラルとヒンドゥの世代を超えた絆に託されたのは、愛と教育こそが平和への道を切り開くというメッセージ。21世紀の今もまだパレスチナにおける平和は実現していないが、作り手たちの自由と希望の切なる祈りがこもったラスト・シーンは、観る者の心を揺さぶってやまない。
1978年、母親を亡くした7歳の少女ミラルがダール・エッティフェルの門をくぐった。やがて美しくも芯の強い17歳に成長したミラルは、子供たちに勉強を教えるために訪れた難民キャンプで、イスラエル軍に家屋が破壊される衝撃的な光景を目の当たりにする。さらに若き活動家ハーニが掲げる理想に共感した彼女は、急速に政治への関心を強め、イスラエルへの敵対心を抱いていく。しかし、それは恩師ヒンドゥや父親ジャマールの願いを裏切る行為だった。暴力には暴力で対抗すべきか、それとも教育によって平和をたぐり寄せようとするヒンドゥの信念を受け継ぐべきか。あまりにも重い選択を迫られたミラルは、はたしていかなる決断を下すのだろうか……。
紛争の地で生まれた感動的な実話に基づく、ジュリアン・シュナーベル監督の新たな挑戦
世界中の誰もが平和を望んでいる。しかしこの世界には長年解決されない複雑にして残酷な問題が存在し、理不尽な暴力によって無数の尊い命が奪われ続けている。いったい私たちは何を信じて行動すれば、少しでも世界をよりよく変えることができるのだろうか——。
この容易には答えの見つからない壮大なテーマを真っ向から探求した『ミラル』は、『バスキア』『夜になるまえに』『潜水服は蝶の夢を見る』で多くの映画ファンを魅了してきたジュリアン・シュナーベル監督の最新作である。企画の始まりは、監督自身がニューヨーク在住のパレスチナ人女性ジャーナリスト、ルーラ・ジブリールの驚くべき実体験に基づく同名著作を読み、深い感銘を受けたこと。イスラエルとパレスチナの紛争を背景にした約半世紀に渡るその物語には、幾度となく耐えがたい痛みに打ちひしがれながらも、しなやかに成長を遂げていったひとりの少女の肖像が刻まれており、「この本を読むまでパレスチナの人々についてあまり知らなかった」と語るシュナーベルの新たな創作意欲をかき立てた。
かくして自ら脚本を執筆した原作者ジブリールの参加を得て、入念なリサーチ&ロケハンを行ったシュナーベルは、難民キャンプを含むパレスチナ自治区とイスラエルで撮影を実施。現地ロケはパレスチナ人とイスラエル人の混成スタッフによる共同作業で進められ、シュナーベルが初めて女性主人公の感動的な生き様を紡ぎ上げた待望の劇映画第4作が完成した。
『スラムドッグ$ミリオネア』のフリーダ・ピントが、激動の運命をたどる少女ミラルの成長を体現
あくまで“人間”に焦点を絞って紛争の歴史とその真実に迫ろうとした本作においては、画家としても名高いシュナーベル監督の類い希なヴィジュアル感覚が遺憾なく発揮されている。ミラルとヒンドゥを始めとする女性登場人物たちそれぞれの悲しみ、迷い、勇気といった感情を、美しい光を取り込んだ陰影豊かな映像で表現。『イントゥ・ザ・ワイルド』『夏時間の庭』『クリスマス・ストーリー』などのそうそうたる話題作を手がけてきた名撮影監督エリック・ゴーティエとの初のコラボレーションが、映画に魅惑的な詩情を吹き込んでいる。また音楽スーパーバイザーも務めたシュナーベルは、トム・ウェイツ、ローリー・アンダーソンらのナンバーをフィーチャー。ファーティマという看護師の女性が映画館に爆弾を仕掛けるシークエンスには、ロマン・ポランスキー監督&カトリーヌ・ドヌーヴ主演の名作スリラー『反撥』を引用している。
ミラル役に抜擢されたのは、アカデミー賞8部門受賞作『スラムドッグ$ミリオネア』でデビューし、世界中の注目を集めたフリーダ・ピント。原作者ジブリールに「驚異的な発見」と言わしめたほどの眩い生命力を体現し、本作の希望の象徴となる少女の葛藤と成長を力強く演じきった。そして『扉をたたく人』『シリアの花嫁』の名女優ヒアム・アッバスが、パレスチナの孤児たちに惜しみない愛情を注いだ伝説的な教育者ヒンドゥ・ホセイニに扮し、ウィレム・デフォー、ヴァネッサ・レッドグレイヴといった大物俳優が脇を固めている。
ストーリー
スタッフ
監督:ジュリアン・シュナーベル
プロデューサー:ジョン・キリク
脚本:ルーラ・ジブリール
原作:ルーラ・ジブリール著「MIRAL」(Rizzoli社刊)
エグゼクティヴ・プロデューサー:フランソワ=ザヴィエ・デクラーヌ
共同プロデューサー:エラン・リクリス
撮影監督:エリック・ゴーティエ
編集:ジュリエット・ウェルフリング
プロダクション・デザイン:ヨエル・ハーツバーグ
衣裳:ワリードゥ・マウェドゥ
キャスティング:ヤエル・アヴィヴ
プロデューサー補/助監督:セバスチャン・シルヴァ
キャスト
ミラル:フリーダ・ピント
ヒンドゥ・ホセイニ:ヒアム・アッバス
ナディア:ヤスミーン・アル=マスリー
ファーティマ:ルバ・ビラール
ジャマール:アレクサンダー・シディグ
ハーニ:オマー・メトワリー
エディ:ウィレム・デフォー
ベルタ・スパフォード:ヴァネッサ・レッドグレーヴ
リサ:ステラ・シュナーベル
カティーブ知事:マクラム・ジェイ・ホーリー
ミラル(子役):ヨランダ・エルカラーム
ハディール:フリーダ・エルラヘブ
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