モントリオール映画祭“World Greats部門”(アウト・オブ・コンペ部門)出品 第23回東京国際映画祭 特別招待作品

2010/日本/カラー/ビスタ/ドルビーデジタル/2時間9分 配給:アスミックエース+松竹

2010年12月4日、全国ロードショー 2010年11月27日、石川県先行ロードショー

©2010「武士の家計簿」製作委員会

公開初日 2010/11/27

配給会社名 0007/0003

解説


激動の時代を、知恵と愛で生き抜いた家族の姿が
168年前の実在の〈家計簿〉から、今、よみがえる。

古書店で偶然発見された家計簿、それは国史研究の通念を覆す大発見となった。日々の買い物、親戚付き合い、子供の養育費、冠婚葬祭——家計簿から鮮やかによみがえる、幕末に生きた下級武士一家の暮らしぶり。この家計簿をつけた武士、猪山直之が本作の主人公である。代々加賀藩の御算用者(経理係)として仕えた猪山家の跡取り息子として、家業のそろばんの腕を磨き、才能を買われて出世する。しかし、当時の武家の慣習によって出世する度に出費が増え続け、ついには家計が窮地にあることを知った直之は、ある”家計立て直し計画“を宣言する。それは、家財を売り払い、家族全員で質素倹約して膨大な借金の返済に充てることだった。体面を重んじる武士の世にあって、世間の嘲笑を浴びながらも、知恵と工夫で日々の暮らしを前向きに乗り越えようとする猪山家の人々。見栄や世間体を捨てても直之が守りたかったもの、そしてわが子に伝えようとした思いとは—。本作は、激動の時代を世間体や時流に惑わされることなく、つつましくも堅実に生きた猪山家三世代にわたる親子の絆と家族愛を描いた物語である。

先行き不透明な現代を生きるヒントをくれる、
時代を誠実に生き抜く姿。

物語の背景となる幕末から明治は、世の中の秩序や価値観が大きく変化した時代。歴史上に名を残す英雄が活躍する一方で、これまで表舞台に立つことのなかった人々は、日本の大変革期を一体どう生きたのか? 猪山家の生き方は、金融破綻、地価下落、リストラ、家族の断絶や孤独死など、様々な社会問題に直面している現代の私たちに、先行き不透明な時代を生き抜くためのヒントを教えてくれるだろう。

森田芳光監督が豪華キャストで贈る、
家族ドラマの名作ここに誕生。

原作は、武士の家計簿「金沢藩士猪山家文書」から幕末の武士の生活を生き生きと読み解いた磯田道史著『武士の家計簿「加賀藩御算用者」の幕末維新』(新潮新書刊)。監督は常に時代を様々な角度から切り取り、家族の在り方を描いてきた森田芳光。そして見栄や建前を捨て実直に生きる主人公・猪山直之にNHK大河ドラマ「篤姫」の魅力的な家定役で話題をさらい、近年『南極料理人』『ゴールデンスランバー』など幅広い役柄で次々と新たな顔を見せる演技派、堺雅人。直之を支える献身的な賢妻・お駒に「功名が辻」の武将・山内一豊の妻・千代役で芯の強い女性を見事に演じ、「TRICK」シリーズや「ごくせん」で人気女優の地位を不動のものとした実力派、仲間由紀恵。そして、松坂慶子、中村雅俊、草笛光子、西村雅彦ら、正月を飾るにふさわしい豪華キャストが勢ぞろいした。本当の豊かさを教えてくれる、暖かな感動作が誕生した。

ストーリー




江戸時代後半。御算用者(ごさんようもの:会計処理の専門家)として、代々加賀藩の財政に携わってきた猪山家。八代目の直之(堺雅人)は、生来の天才的な数学感覚もあって働きを認められ、めきめきと頭角をあらわす。これといった野心も持たず、与えられた職務を全うするべく、ただひたすらそろばんを弾き、数字の帳尻を合わせる毎日。その姿は、周囲の者が“そろばんバカ”と呼ぶほどだった。

そんな直之にある日、町同心・西永与三八(西村雅彦)を父に、商家の娘を母にもつお駒(仲間由紀恵)との縁談がもちこまれる。そろばんを手に「これしか生きる術がない、不器用で出世もできそうもない…それでもいいか」と問う直之。「生きる術の中に、私も加えてください」と言うお駒。こうして、直之は自らの家庭を築くのだった。

御蔵米の勘定役に任命された直之は、飢饉で苦しむ農民たちへのお救い米の量と、定められていた供出量との数字が合わないことを不審に思い、独自に調べはじめ、城の役人たちが、私腹を肥やしていることを知る。米の横流し、経理の不正を知った直之は左遷を言い渡されてしまう。しかし、一派の悪事が白日の下にさらされ人事が一新、左遷の取り止めに加え、異例の昇進を言い渡される。

直之の昇進は名誉ながらも、身分が高くなるにつれ出費が増える、という武家社会特有の構造からますます出費のかさむ猪山家。すでに父・信之(中村雅俊)が、江戸詰でかさねた膨大な借金もある。そんな折、息子の直吉が4歳になり開かれる“着袴の祝い”を目前に、直之は家計が窮地に追い込まれていることを知る。借金総額銀6000匁!!嫡男を武士として内外に示す盛大なお披露目…それにはさらなる出費がかかる。直之はお駒とともに知恵を絞り、“絵鯛”を祝膳に欠かせない“鯛”の塩焼きに見立てるのだった。祝いの席で困惑する親戚、縁者。

宴の後、責める父母の前で、直之は“家計立て直し計画”を宣言。それは家財一式を処分、質素倹約をし、膨大な借金の返済に充てるという苦渋の決断だった。世間の目を気にする父、愛用の品を手放したくないと駄々をこねる母・お常(松坂慶子)。しかし、お家を潰す方が恥である!という直之の強い意志により、家族は一丸となって借金を返済することを約束する。こうして、猪山家の家計簿が直之の手で細かくつけられることになった。近所の者や同僚などの好奇の目にさらされながらも、倹約生活を実行する猪山家の人々。塗りの弁当箱は竹皮に、囲碁の碁石は貝殻に。安く買い求めた一尾の鱈は、白子の酢醤油、昆布じめ、三杯汁にと幾種ものおかずに…。質素倹約の知恵はそのまま勤めに生かされ、藩主・前田斉泰をも喜ばせることに。「貧乏と思うと暗くなりますが、工夫だと思えば」——厳しい暮らしの中で、とりわけお駒は、直之の一番の理解者として、明るく献身的に家を切り盛りするのだった。

そんな生活の中、直之は直吉にも御算用者としての道を歩ませるべく、4歳にして家計簿をつけるよう命じ、徹底的にそろばんを叩き込んでいく。それは時に、お駒の目から見ても厳しすぎると思えるほどのものだった。時は幕末。父の英才教育のおかげもあって、父よりも早く11歳で算用場に見習いとして入り、元服を済ませた直吉、改め成之(伊藤祐輝)は、時代に取り残されまいと自らの進むべき道を模索していた。しかし彼の目には、父の平時と変わらない泰然とした様子がもどかしく映り、激しくぶつかるのだった。父子の間の葛藤が解消されないまま、攘夷の下、前田家嫡男・慶寧に従って京都へと向かった成之。そこで彼は新政府軍の大村益次郎にそろばんの腕を見込まれ、軍の会計職に就くことになる。しかし、大村が暗殺され、共に殺された加賀者がいたという知らせが届き、猪山家は不安に包まれる。息子の身を案じ、京都へ向かおうとするお駒をなだめる直之。堰を切ったように成之への想いを切々と訴えながら慟哭するお駒の姿は、ただひたすらに子を思う母のそれであった。直之は胸をつかれ、そんな彼女を抱きしめるのだった…。

スタッフ

監督:森田芳光
原作:磯田道史『武士の家計簿「加賀藩御算用者」の幕末維新』(新潮新書刊)
    
脚本:柏田道夫
エグゼクティブ・プロデューサー: 飛田秀一  豊島雅郎  野田助嗣 原正人     

プロデューサー:元持昌之 
プロダクション統括:永井正夫 
アソシエイト・プロデューサー:岩城レイ子 三沢和子 
コ・アソシエイト:真壁佳子 池田史嗣

音楽:大島ミチル  
撮影:沖村志宏  
照明:渡辺三雄 
録音:橋本文雄  
編集:川島章正  
美術:近藤成之

助監督:増田伸弥
制作担当:砥川元宏 
装飾:鎌田康夫

企画・設計:Hara Office
制作:エース・プロダクション
企画協力:新潮社
制作協力:松竹京都撮影所

製作委員会: アスミック・エース エンタテインメント 松竹 北國新聞社        電通  ティーワイ リミテッド テレビ朝日 衛星劇場 Yahoo! JAPAN 住友商事 金沢経済同友会
配給:アスミック・エース  松竹
助成:文化芸術振興費補助金

キャスト

堺雅人

仲間由紀恵
  
松坂慶子
草笛光子
西村雅彦  

伊藤祐輝 
藤井美菜 
大八木凱斗

嶋田久作 
宮川一朗太 
小木茂光 
茂山千五郎

中村雅俊

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