原題:九降風

これは僕たちの物語だ

第45回 金馬奨最優秀オリジナル脚本賞 第3回 アジア・フィルム・アワーズ(亞洲電影大獎) ベスト脚本家賞ノミネート 第9回 中国語映画メディア大賞 最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞、最優秀新人監督賞 4部門ノミネート 2008年 上海国際映画祭「アジア新人賞部門」最優秀作品賞 2008年 台北映画祭 審査員特別賞、メディア推薦賞、最優秀脚本賞、最優秀新人賞 第21回 東京国際映画祭「アジアの風」部門出品

2008年/台湾=香港映画/35mm/カラー/1:1.85 ヴィスタ/Dolby SRD /107分/北京語/原題:九降風 提供:アジア・リパブリック  配給:グアパ・グアポ+アジア・リパブリック

2009年8月29日(土)よりユーロスペース、シネマート新宿 他にて全国順次公開

© 2008 Mei Ah Entertainment Group.

公開初日 2009/08/29

配給会社名 0651/1064

解説


九月の風が吹くとき、僕はあの夏の日々のことを思い出す。
他愛ない悪ふざけに無邪気に笑いあった僕らは、
この友情が永遠に続くものと信じて疑わなかった。
眩いばかりに輝いた青春の煌めきが、
これ程までに儚く潰え去るとは、
そのときの僕たちは想像することさえできなかった——。

『クー牯リンチェ嶺街少年殺人事件』『藍色夏恋』を生んだ台湾映画界から、今また新たな青春映画の傑作が誕生した。
1996年夏、台北郊外の街、新竹を舞台に、9人の高校生たちの愛と友情、そして甘く切ない時のうつろいをみずみずしい映像美とともに描き出し、08年6月に台湾で封切られるや、予想外の大ヒットを記録、マスコミからも「この10年間の台湾映画のベスト」と絶賛され、上海国際映画祭アジア新人賞部門グランプリを皮切りに、台北映画祭では審査員特別賞、メディア推薦賞、脚本賞、新人賞の4冠に輝いたほか、数々の映画賞を受賞、名実ともに08年の台湾映画界を席巻する一作となった。

台湾の新竹。学年も生活環境も異なる7人の男子高校生たち。野球場で騒いだり、深夜の学校のプールに忍び込んで裸で泳いだり、屋上で弁当を食べたり、大樹の下で無駄話をしながら悪ふざけをしたり…、彼らはいつも一緒だった。そんな“問題児グループ”のリーダー格が、3年生のイェンだ。生真面目な同級生タンは、そんなイェンを羨望と嫉妬の眼差しで見つめていた。タンは、イェンの恋人ユンに人知れず思いを寄せていたのだ。そんなある夜、プレイボーイのイェンの浮気が原因で、タンがビリヤード場で乱闘に巻き込まれ、額に傷を負ってしまう。その日以来、イェンとタンの間に微妙な感情の溝ができ、そしてその関係修復も束の間、思いがけない事故が彼らの身に降り注ぐ…。

監督は、短編『海岸巡視兵』が05年の台北映画祭で作品賞に輝いた注目の新鋭トム・リン(林書宇)。1976年生まれの彼は、自伝的要素を色濃く投影させたこの長編デビュー作で、等身大の青春模様をリアルに掬い取り、世代の異なるさまざまな観客層から普遍的な共感とノスタルジーを獲得。と同時に、緻密なカット割りと躍動感あふれる手持ちキャメラによる映像スタイルは、ホウ・シャオシェン(侯孝賢)やエドワード・ヤン(楊徳昌)ら80年代台湾ニューウェイヴの監督たちに勝るとも劣らぬ斬新な才能の発見と、高く評価された。

出演は、主人公イェンに台湾とウェールズのハーフのリディアン・ヴォーン。快活なプレイボーイの内面に秘めたリーダーシップにカリスマ性を放ち、公開時に“台湾のトム・クルーズ”と絶賛されたのも納得の存在感を発揮する。クライマックス、彼の部屋でトランプやテレビゲームに興じる仲間たちを静かに見渡す万感の表情は、いつまでも観る者の心に焼き付いて離れないだろう。また、イェンと厚い友情で結ばれたタンを演じるのは、リー・カンション(李康生)監督の『迷子』で主人公の少年役に抜擢されたチャン・チエ。彼は、トム・リン監督の前作『海岸巡視兵』に続く出演で、監督自ら「僕自身だ」と公言するタン役を情感豊かに好演、感動のラストでは初々しい少年から青年の凛々しさへと鮮やかな変貌を遂げ、本格派俳優の片鱗を垣間見させる。ほかに、CMモデルとして活躍するジェニファー・チュウや、ピーター・チャンのプロデュースによる大作「十月圍城」への主要キャスト出演が決定したワン・ポーチエ、台湾の人気テレビ番組「模范棒棒堂(モーファンバンバンタン)」のメンバーのひとりで、毛弟(マオティー)の愛称で知られる人気アイドル、チウ・イーチェンなど、台湾映画界の次世代を背負って立つ若き精鋭たちが共演、彼らの将来を占うという意味でも見逃せない。ほかに、高校のクン教官に『深海 Blue Cha Cha』『西瓜』のルー・イーチン、イェンの浮気相手にテレビドラマ「緑光森林」のリウ・ピンイェン、彼女の恋人に『カップルズ』『ラスト、コーション』のクー・ユールンと、個性豊かな実力派が脇を固める。

特筆すべきは、香港映画界の第一人者、エリック・ツァンが本作の共同プロデュースを務めていることだ。愛娘に勧められて、本作の脚本を一読した彼は、その清新な物語にたちまち魅了され、プロデュースを即決。同時にイェンの父親役で特別出演して、香港公開に尽力したことでも思い入れの深さが判ろうというもの。
そして、90年代台湾プロ野球界のスーパースター、廖敏雄(リャオ・ミンシュン)の特別出演を忘れるわけにはいかない。当時の人々の人生に大きな影響を与えた彼の登場は、台湾プロ野球ファンならずとも観る者の胸を熱くさせるはず。必見だ。

ちなみに、エンドクレジットに流れるのは、台湾の人気歌手、チャン・ユーシェン(張雨生)のヒット曲「我期待」。ちょうどこの映画の舞台となった97年に交通事故によって31歳の若さで逝去した彼へのトム・リン監督たってのオマージュで、ハイトーンの澄み切った歌声が、感動の余韻を静かに締めくくる。

なお、原題の「九降風」とは、新竹に9月に吹く季節風のことを指し、この時期、台湾では卒業&入学シーズンと重なることもあり、日本の桜のように青春の新たな旅立ちと別れを象徴する代名詞ともなっている。
「今度、屏東(ビントン)の球場へ行こう、約束だぞ…」

ストーリー



1997年夏。竹東高校卒業式の朝、タン(チャン・チエ)は1年前の夏の出来事を独り静かに振り返っていた。そして、かけがえのない友との思い出を…。

96年9月。新学年の始まりだ。その日、タンと彼の仲間たちは、新竹市立野球場で、台湾プロ野球界の人気スター選手、寥敏雄(リャオ・ミンシュン)の活躍に大きな声援を送っていた。高校3年生のタンの仲間は、同級生のイェン(リディアン・ヴォーン)とチンチャオ(リン・チータイ)、落第生で最年長のヤオシン(ワン・ポーチエ)と彼と同じ2年生のポーチュー(シェン・ウェイニエン)、入学したばかりの1年生チーション(チウ・イーチェン)とチョンハン(リー・ユエチェン)。7人は騒動を起こしては教官室に呼び出されるトラブルメイカーの常連メンバーでもあった。

学校の傍の大樹の下で、何をするでもなく冗談を言いあいながらつるみ、夜になるとポケベルで連絡を取りあい、全員集合して学校のプールに忍び込み全裸で泳ぐ。青春の鬱屈を晴らすかのようなそんな他愛ない戯れが、学年も生活環境も異なる彼らの日常の一環だった。そして、その友情の絆の中心となるのは、大胆不敵で男気にあふれるイェンであることは衆目の一致するところだ。生真面目な優等生のタンは、そんな親友の悪びれることのない振る舞いを羨望と嫉妬の眼差しで見つめているのだった。

一方、チーションとチョンハンのクラスメイトのペイシン(チー・ペイホイ)は、彼らを上級生の“不良グループ”から脱け出させるため、ブラスバンド部の先輩ユン(ジェニファー・チュウ)に相談し、ブラバン部に入部させようとする。ペイシンは秘かにチーションに淡い恋心を寄せていたのだが、そんな彼女の気持ちをチーションが知る由もなかった。
そして、ペイシンの先輩ユンこそが、その“不良グループ”のリーダー、イェンの恋人だった。しかし、そんなユンの純情を知ってか知らずか、イェンは仲間たちの付きあいに忙殺される合間にも街や野球場ですれ違う可愛い女の子たちをナンパして、ポケベルの番号を聞き出すプレイボーイなのだった。思わずユンは、彼女の数学の家庭教師を務めるタンに、イェンの愚痴をこぼしてしまうが、嘘をついてまでイェンのことをかばうタンは、実は理想の恋に苦悩するユンのナイーヴさに心魅かれていたのだった。

そんなとき、歓楽街のビリヤード場でイェンと間違えられたタンは、イェンがナンパした女の子、モンルンの恋人からガラス瓶で頭を殴られ、仲間たちを巻き込む大乱闘へと発展する。騒ぎが収まってから仲間たちと合流したイェンは、いつもの飄々とした態度を崩さない。そんなイェンへの反感を抑えることのできないタンは、その夜以来、仲間たちの軽率な悪ふざけにも心から笑えなくなってしまう。
ちょうどその頃、イェンの浮気がユンの耳に届き、ふたりの関係もギクシャクしてしまう。チンチャオは、イェンの部屋に上がり込み、掃除をしながらタンとユンの関係に探りを入れるが、逆にイェンの苛立ちに油を注ぐことになってしまう。

次第にタンは仲間から孤立していき、彼らの溜まり場だった学校の屋上への扉に鍵がかけられていたことが、タンとイェンたちとの溝をいっそう深める結果となる。
ところが、そんなある夜、ユンからイェンへの手紙を渡してほしいと頼まれたタンは、久しぶりに仲間と合流する。内心、タンの離反を気にしていたイェンも、思わずホッとした笑顔を浮かべ、寥敏雄のサイン入りボールをタンに手渡す。こうしてふたりは台湾南部の屏東の球場に行く約束をし、友情は復活したかのように見えた。しかし、その直後、イェンの身に思いもかけない悲劇が起きる。

これを機に、残された6人の関係にも微妙な変化が生まれ、ひとり、またひとりと仲間は散り散りになってゆく。
世間では、台湾プロ野球界を揺るがす賭博疑惑が発覚、憧れの寥選手がその中心人物と報じられ、騒然となっていた。
果たして、彼らの青春の眩しい輝きは、このまま儚く消え去ってしまうのだろうか…?

スタッフ

監督:トム・リン(林書宇)
脚本:ヘンリー・ツァイ(蔡宗翰)、トム・リン(林書宇)
撮影監督:フィッシャー・ユイ(余靜萍)
照明:ハーカー・チュウ(屈弘仁)
美術監督:リー・ティエンチュエ(李天爵)
衣裳デザイン: スン・フイメイ(孫?美)
編集: チェン・シャオトン(陳曉東)
音響デザイン: チョウ・チェン(周震)、フランク・チョン(鄭旭志)
音楽:ブレア・コー(柯智豪)
プロデューサー:エリック・ツァン(曾志偉)、イェ・ルーフェン(葉如芬)
共同プロデューサー:チュオ・リー(卓立)、ゲイリー・ツォン(曾國駿)
提供:漢傳媒集團、天下影畫、威像電影、影市堂
製作:威像電影、影市堂

キャスト

チョン・シーイェン:リディアン・ヴォーン(鳳小岳)
タン・チーチン:チャン・チエ(張捷)
ホアン・ユンチン:ジェニファー・チュウ(初家晴)
リー・ヤオシン:ワン・ポーチエ(王柏傑)
リン・チンチャオ:リン・チータイ(林祺泰)
リン・ポーチュー:シェン・ウェイニエン(沈威年)
シエ・チーション:チウ・イーチェン(邱翊橙)
シェン・ペイシン:チー・ペイホイ(紀培慧)
ホアン・チョンハン:リー・ユエチェン(李岳承)

特別出演
本人役:リャオ・ミンシュン(廖敏雄)
イェンの父親:エリック・ツァン(曾志偉)
クン(宮)教官:ルー・イーチン(陸?靜)
モンルン(孟倫):リウ・ピンイェン(劉品言)
ビリヤード場でタンを殴る男:クー・ユールン(柯宇綸)

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