第21回東京国際映画祭 特別招待作品

2007年/中国映画/原題:集結號/上映時間:124分/シネマスコープ/ドルビーデジタル/字幕翻訳:税田春介 配給:ブロードメディア・スタジオ

2009年06月26日よりDVDリリース 2009年1月17日(土)より、シャンテ シネ、ヒューマントラストシネマ渋谷文化村通り、新宿ジョイシネマ他全国順次公開

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公開初日 2009/01/17

配給会社名 0551

解説


『女帝[エンペラー]』のフォン・シャオガン監督が描く渾身の一作。
中国”国共内戦”によって引き起こされた真実に基づく感動の物語。

 1948年、新中国建設をめぐり、毛沢東率いる共産党の人民解放軍と蒋介石麾下の国民党軍が激しい戦闘を繰り広げていた。この国共内戦でもっとも熾烈とされたのが、淮海(わいかい)戦役だ。人民解放軍の第9連隊長グー・ズーティは、47人の部下とともに、淮海戦役の最前線に送られた。激戦の中でたった一人生き残ったグーは、仲間の死は自分が撤退命令(集合ラッパ)を聞き逃したためだったとの自責の念にとらわれる。混乱の中で47人の遺体は行方不明となり、第9連隊は忘れ去られるが、グーは仲間の名誉を取り戻そうと長く困難な闘いへと身を投じる──。

 中国戦争映画史上最高となる17億円の製作費を投じ、公開されるや記録的ロングランとなる。約400万人を動員し、興行収入は37億4,000万円を突破、中国歴代第2位の記録を打ち立てた。さらに中国のアカデミー賞「第17回金鶏百花映画祭」では、最優秀作品賞、最優秀監督賞など、主要4部門を独占。韓国でも第12回釜山映画祭オープニングを飾り、150館を超える劇場で大規模公開された。
 監督は中国映画界の巨匠、フォン・シャオガン。事実を基にした骨太の人間ドラマを、ハリウッド大作に勝るとも劣らぬ迫力のアクションの中に描ききり、中国映画の新時代到来を告げる戦争映画を作り出した。

 1949年の中華人民共和国建国まで、二次にわたり延べ14年に及んだ国共内戦は、同じ民族同士が血を流し合い、多くの悲劇を生み出した。これまであまり映画化されることのなかった内戦の実情を、『戦場のレクイエム』は正面から描く。戦争を美化することなく残酷さを活写し、その中で翻弄された一兵士を通して、戦争の非情さをあますところなく描き出すのだ。

 グー・ズーティは、辛抱の篤い指揮官だったが、自分の判断の誤りが仲間を死に追いやったのではないかと罪の意識にとらわれている。部隊の再編で第9連隊の全滅は記録から消し去られ、英雄として認められるはずの47人の部下の遺体は行方不明となり、全員が失踪者の扱いにされてしまっていた。グーは悔恨と怒りから、仲間の名誉を取り戻すために命を捧げようと決意する。視力を失い、周囲から白眼視されながら、10年の歳月を経てついに目的を果たすその姿は、感動を呼ばずにはおかないだろう。

 わずか3ページの、史実に基づいた短編小説が原作となっている本作。フォン監督は、戦死した仲間の遺体を必死で探す主人公の人間ドラマに打たれ、映画化を決意する。製作には巨額の製作費と高度な撮影技術を要するにもかかわらず、中国で戦争映画が商業映画の大作として作られることはなかった。世界的にヒットした韓国映画『ブラザーフッド』の成功を目にして可能性を探ったフォン監督は、『ブラザーフッド』を手がけたMKピクチャーズとの共同製作を実現する。
 フォン監督が目指した骨太の人間ドラマを真実のものとするのに、リアルな戦争描写は不可欠だった。撮影には『ブラザーフッド』を手がけた韓国人スタッフが多数参加してノウハウを伝授したほか、ハリウッドの撮影技術に独自の改良を加えて迫真の映像を作り出した。冒頭15分に及ぶ激しい戦闘シーンは、「プライベート・ライアン」をしのぐ迫力で、一気に作品の中に引き込んでいく。また旧炭鉱での死闘の中、第9連隊の兵士たちが一人一人命を落としていく壮絶な場面には凄味すら漂い、戦場のただならぬ恐怖と緊迫感をみなぎらせている。

 グー・ズーティを演じたチャン・ハンユーは、「イノセントワールドー天下無賊—」などに出演した、ファン監督作品の常連で、これが初めての主演作となる。「仲間の痛みを自分の痛みと感じ、人間愛であふれている」というグー・ズーティを熱演し、金鶏百花賞主演男優賞を受賞。この作品で一気にスターの座に躍り出た。グーの弟分となる人民軍少佐チャオ・アルドウに扮したのは、若手人気俳優のドン・チャオ。主演するテレビドラマが軒並み高視聴率を記録するアイドル的存在だが、『戦場のレクイエム』の厳しい撮影を通して演技に開眼。また、出演作『レッドクリフ』の公開が控え、演技派として知られるフー・ジュンも特別出演。紅一点の新人女優、タン・ヤンが可憐な演技で花を添えている。

ストーリー




あの時、撤退のラッパは鳴っていたのかー。
47名の部下を失った男の慟哭が史実の片隅で、こだまするー。

1948年、毛沢東率いる中国共産党の人民解放軍と、蒋介石の国民党軍は、新中国建設の主導権をめぐって激しい内戦を繰り広げていた。
 グー・ズーティを連隊長とする人民解放軍中原(ちゅうげん)野戦軍第2師139団3営第9連隊は、華東(かとう)地方での市街戦で、国民党軍を包囲した。しかし偵察に送り込んだ部下が狙い撃ちされ、連隊は混乱に陥る。国民党軍が待ち伏せていたのだ。激しい戦闘の末、かろうじて征圧したものの、連隊は部隊の相談役的存在の指導員をはじめ多くの仲間を失った。激高したグーは捕虜の射殺を命じ、奪った衣服を部下に分け与える。この行為が軍規違反に問われ、グーは警告処分を受ける。

 グーと第9連隊は淮河(わいが)の最前線に送られることになった。リウ・ゾーシュイ団長は、第9連隊に旧炭鉱防衛の任務を与え、「旧炭鉱を正午まで守りきれ。集合ラッパを合図に随時撤収」と命じる。これは撤退命令が鳴るまで、最後の一人まで戦い続けることを意味した。グーは戦闘中に失禁して責任を問われた元教師ワン・ジンツンを指導員に指名し、部下とともに進軍する。到着して息つく暇もなく国民党軍の砲撃が始まった。物量で圧倒する国民党軍の猛攻の前に、第9連隊の兵士は次々と命を落としていく。
 交戦の合間、大火傷を負ったジアオ小隊長が「集合ラッパを聞いた」と進言するが、爆音で耳をやられたグーは確信が持てない。部下の間でも意見が割れ、「言うとおりにしてくれ、このままでは全滅だ」という絶命間際のジアオの言葉を振り切って、絶望的な突撃を命じる。連隊所属の兵士は、グーを除く47人全員が戦死した。

 数日後、グーは国民党軍の軍服を着て病院で発見された。グーは、自分が集合ラッパを聞き漏らしたために仲間が全滅したと自責の念にかられていた。中原野戦は再編されて第2師団の消息は不明となり、グーの身元すら確認できない。グーは帰郷を命じられるが、再び戦地に赴くために収容先の野戦軍に志願し、チャオ・アルドウの連隊に加わった。

 1951年。内戦は終結し、新中国は建国されたものの、グーは朝鮮戦争に送られた義勇軍の一員として、チャオと共に朝鮮半島中部にいた。グーは移動中に地雷を踏んだチャオの身代わりとなって、地雷を爆破させた。

 4年後、地雷の爆発で片目を失ったグーは、淮河の戦場跡地に立っていた。戦死した兵士が烈士として称えられるのに対し、第9連隊の戦友が失踪扱いされていることにグーは激しい怒りを覚える。第9連隊の指導員、ワン・ジンツンの行方を捜すワンの妻スンとともに、グーはチャオを訪ねた。グーを兄貴と慕うチャオの協力を得て、仲間が戦死した旧炭鉱を探しあてるが、仲間の遺体を並べたはずの炭坑の入り口は、石炭くずの山に埋もれて跡形もなくなっていた。グーは「ここに戦友が流した血を、俺が証明してみせる」と決意した…。

 あの時、撤退のラッパは、鳴っていたのか…。そして仲間の名誉は取り戻せるのか…。グー・ズーティの長く険しい第二の人生が始まったー。

スタッフ

監督:フォン・シャオガン
脚本:リウ・ホン
撮影:リュイ・ユエ
編集:リュー・ミャオミャオ

キャスト

チャン・ハンユー
フー・ジュン
ドン・チャオ
ユエン・ウエンカン
タン・ヤン

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