原題:LIONS FOR LAMBS

2007年11月9日全米公開

2007年/アメリカ/カラー/92分/ 配給:20世紀フォックス映画

2010年06月25日よりDVDリリース 2008年4月18日(金)より日劇1他全国ロードショー!

(c)2007 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc.

公開初日 2008/04/18

配給会社名 0057

解説



2001年9月11日の同時多発テロに端を発する終わりなきテロとの戦い。特措法で揺れる日本にとっても他人事ではないホットな題材に、ハリウッドが本気で取り組んだ話題の超大作が登場した。「今年度最高に果敢でエキサイティングな作品」、「心と頭に訴える映画」、「オスカーにふさわしい刺激的な演技」といった絶賛の声に送られて、映画賞戦線の主役の座に躍り出た『大いなる陰謀』。クリント・イーストウッドと並ぶスター出身の巨匠、ロバート・レッドフォードの7年ぶりの監督作となる本作は、アフガニスタンにおけるアメリカの対テロ戦争の<裏側>を、政治家、ジャーナリスト、兵士、大学教授といった異なる立場の人々の視点から、ドラマティックにサスペンスフルに描きだした、衝撃と感動のヒューマンドラマだ。
 なんといっても目を奪われずにはいられないのが、贅沢極まりないキャストの顔ぶれだ。大統領の椅子に向かって着々と出世コースを歩む野心的な上院議員を演じるのは、過去20年間にわたってハリウッドの頂点に君臨するトム・クルーズ。『ミッション:インポッシブル』シリーズなどのエンターテインメント性の高い作品で観客を魅了する傍ら、『7月4日に生まれて』や『マグノリア』で意表をつく役柄を演じ、3度オスカー候補になっている彼は、演技面のチャレンジを恐れないスターとして知られている。そんなクルーズが、「これまでのどの役とも違う難しい役柄だ」と感じ、膨大なリサーチと研究を重ねて挑んだのが、本作のアーヴィング上院議員だった。体内から溢れ出るカリスマ性とエネルギー、チャーミングな笑顔、そして巧みな話術。自信に満ちた若き政治家になりきったクルーズは、製作総指揮も兼ねた本作で、まさしく新境地を開拓。円熟期を迎えたビッグ・スターとして、新たなステージに達したことを感じさせる。
 そのアーヴィング上院議員を相手に、1対1のインタビューを行う大物女性ジャーナリストのジャニーンに扮するのは、『ディア・ハンター』から『プラダを着た悪魔』まで、アカデミー賞史上最多の14回のノミネート歴を誇るメリル・ストリープ。自分のホンネを隠し、議員のホンネを引き出そうとするジャーナリストの「ワザ」を、細かいニュアンスで表現する演技のうまさは、名女優ストリープならではだ。彼女とクルーズが、丁々発止の駆け引きを繰り広げる場面は、剣を言葉に代えたフェンシングの試合を見ているような面白さ。ストリープが突っ込み、クルーズがかわし、ひいたと見せかけてフェイントをかける。カンバセーション・チェイスとも言うべき白熱したインタビュー・シーンは、息つく暇もないサスペンスの醍醐味をたっぷりと味あわせてくれる。
 さらに、教育の可能性にかすかな望みを抱き、学生をよりよい方向へ導こうとする大学教授の役どころで、監督のレッドフォードが出演。また、教授のかつての教え子である2人の兵士には、『ワールド・トレード・センター』のマイケル・ペーニャと『輝く夜明けに向かって』のデレク・ルークが扮し、2人が置かれた状況の悲痛さと、その中で通いあう友情の尊さが、ダイレクトに伝わってくる素晴らしい演技を見せる。加えて、教授に人生を見つめ直すきっかけを与えられる大学生の役に、英国の舞台で活躍する新人のアンドリュー・ガーフィールドが抜擢され、フレッシュな映画デビューを飾っているのも注目のポイントだ。
対テロ戦争に勝利することが、国と自分自身の将来を築くと信じている上院議員。スクープ合戦に勝利するか、真実を探求するかで揺れ動くジャーナリスト。純粋な理想に燃えて赴いた戦場で、捨石にされる現実に直面する兵士たち。教育の現場から、世界を変える試みを続けようとする大学教授。彼に反発を覚えながらも、次第に心の目を開かれていく大学生。それぞれの闘い、それぞれの葛藤を、異なる3つの場所で進行する対話劇の中に捉えたドラマは、ゾクゾクするほどダイナミックに進行。それが1本の線としてつながっていくとき、そこには「いま」という時代の赤裸々な姿が浮かび上がってくる。
「これが、単にあの戦争をテーマにした映画だったら、私はおそらく魅力を感じなかっただろう。私を魅了したのは、観客に自分たちの現状について考えさせるというアイデアだった」
監督のレッドフォードがそう語るように、これは、単なる戦争映画ではない。対テロ戦争のシナリオがどのように組み立てられ、どのように戦われ、どのように報じられているかを解き明かすことによって、観客にさまざまな問題を提起し、自ら考えること、変わること、見つめ直すことの大切さを訴えかけている作品だ。その果てに待ち受けているのは、胸引き裂かれるような悲劇に彩られた衝撃的なクライマックス。2人の若者たちが、自分たちの人生について「決断」を下した瞬間、誰もが心を揺さぶられ、激しい感情が湧き上がってくるのを止めることはできないだろう。
スタッフにも一流の顔ぶれが揃った。レッドフォード、クルーズ、ストリープという3人の大物を魅了した脚本を執筆したのは、デビュー作の『キングダム/見えざる敵』でも才能を高く評価されたマシュー・マイケル・カーナハン。撮影監督は、レッドフォード監督の『リバー・ランズ・スルー・イット』でアカデミー賞を受賞したフィリップ・ルースロ。プロダクション・デザインは、『ワールド・トレード・センター』のヤン・ロールフス。編集は、『7月4日に生まれて』と『JFK』でアカデミー賞に輝いたジョー・ハッシング。また、静かに感慨を深めていく音楽は、『リバー・ランズ・スルー・イット』と『クイズ・ショウ』でレッドフォードと組んでいるマーク・アイシャムが手がけている。

ストーリー




ワシントンDC 10:00am
 ジャニーン・ロス(メリル・ストリープ)は、40年間にわたって、アメリカの政治の中枢を取材し続けてきたベテランのジャーナリスト。現在ネットワーク局で報道の仕事に携わっている彼女は、ジャスパー・アーヴィング上院議員(トム・クルーズ)の呼び出しを受け、彼のオフィスにやって来た。
 アーヴィングは、8年前の初当選時にジャニーンが注目し、「共和党の若きホープ」として雑誌に紹介記事を書いた人物。士官学校を首席で卒業した経歴を持つ彼は、軍事面における大統領のアドバイザーとして着々と出世コースを歩み、いまや共和党の次期大統領候補と目されている。そんな彼がジャニーンをオフィスに招いた理由——それは、対テロ戦争中のアフガニスタンで展開させる新たな作戦について、情報をリークすると同時に好意的な報道をうながし、世論の支持をとりつけるのが狙いだった。その目的を遂げるために、アーヴィングが用意した取材時間は1時間。それだけ長い間、多忙な政治家を独占できるという事実は、ジャニーンを驚かせ、事の重大性を認識させるのに十分だった。
 チャーミングな笑顔でジャニーンを執務室に迎え入れるやいなや、アーヴィングはさっそく本題を切り出した。彼の発案による新たな作戦とは、少数精鋭の特殊部隊をアフガニスタンの山中に送り込み、高地を占領することで対テロ戦争を勝利へ導くというものだった。だが、それを聞いたジャニーンは、次々とわき上がる疑問を口にせずにはいられなかった。なぜそれをいま実行する必要があるのか? 撤退に傾いている民意を無視できるのか? 失敗の可能性は? 犠牲者数の予測は? それに対して、核保有国であるイランの脅威も交えながら饒舌に説明を続けるアーヴィング。「作戦の達成に手段は選ばない」。その言葉を聞いたジャニーンの胸には、さらなる大きな疑惑が浮かび上がってくる……。

アフガニスタン 6:30pm
 アーヴィング上院議員がジャニーンをオフィスに招き入れたのと同じころ、遠く離れたアフガニスタンのバグラム空軍基地では、志願兵のアーネスト(マイケル・ペーニャ)とアーリアン(デレク・ルーク)が、アーヴィングの発案による高地占領作戦のブリーフィングを受けていた。苦労して進学した大学で歴史学を学んでいた2人は、「世界で起こっているいちばん重要なことに関わりたい」という熱い思いから、陸軍に志願。帰国後には実戦の経験を活かし、アメリカをより良く変えていきたいという理想に燃えていた。しかし、そんな夢の達成を困難にさせる事態が発生する。2人の所属する小隊を乗せ、高地占領作戦の目的地に向けて出発したヘリが、敵の予想外の攻撃を受けたのだ。対空砲によってヘリが激しく揺れ動くなか、アーネストはバランスを崩して雪深い山中へ転落。そんな彼を見捨てておけないと自らヘリを飛び降りたアーリアンは、傷を負った状態で雪の中にはまりこんだ自分たちが、敵の包囲網の真っ直中で孤立してしまったことを知る。
 その瞬間から始まった生き残りを賭けた戦い。2人を殺さずに生きたまま捕えるべく捜索を開始した敵は、じわじわと包囲網を狭め、2人に近づいてくる。その模様を衛星の映像で捉えた作戦本部は、空爆によって敵を食い止めようとするが、期待したほどの効果はあげられなかった。絶望的な状況のなか、お互いに励ましの言葉をかけあうアーリアンとアーネスト。救出ヘリの到着に一縷の望みをつなぐ彼らの行く手には、さらなる苛酷な運命が待ち受けていた……。

カリフォルニア大学 7:00am
 アフガニスタンで高地占領作戦が開始されたころ、アーネストとアーリアンが学んだカリフォルニア大学では、2人の恩師である歴史学のマレー教授(ロバート・レッドフォード)が、ひとりの学生をオフィスに呼び、人生に対する目を開かせようと試みていた。
 学生の名は、トッド(アンドリュー・ガーフィールド)。以前、歴史学の授業中に白熱した議論を呼び起こしたことのある彼に、マレー教授は、豊かな才能と将来性を見出していたが、本人はそれを自覚せず、最近は授業の欠席が続いていた。そんなトッドに、アーネストとアーリアンのことを話し始めるマレー教授。アーネストとアーリアンの2人が、「参加することの重要性」を研究発表の課題に選び、その流れの中で志願兵になったという話を聞いたトッドは、「僕を軍隊にリクルートしようとしているのか?」と言って教授への反発を強める。だが、徴兵でヴェトナム戦争に赴いた苦い経験を持つマレーには、教え子を戦場へ行かせるつもりなどさらさらなかった。彼がトッドに伝えたかったのは、無関心でいることの愚かさであり、何かのために立ち上がることの大切さであり、将来性や可能性は瞬く間に失われていくものだという事実だった。そんなマレーの言葉に、いつしか真剣に耳を傾け始めるトッド。彼の心の中で、何かが静かに動き出していく……。

スタッフ

監督:ロバート・レッドフォード
脚本:マシュー・マイケル・カーナハン
製作:トレイシー・ファルコ
   アンドリュー・ハウプトマン
製作総指揮:ポーラ・ワグナー
      ダニエル・ルピ
撮影:フィリップ・ルースロ
プロダクション・デザイン:ヤン・ロールフス
衣装:メアリー・ゾフレス
編集:ジョー・ハッシング
音楽:マーク・アイシャム

キャスト

トム・クルーズ
メリル・ストリープ
ロバート・レッドフォード
マイケル・ペーニャ
デレク・ルーク
アンドリュー・ガーフィールド

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