原題:Children of Glory

“ドナウの真珠”とよばれる首都ブダペスト。 1956年、失われた革命とオリンピックの栄光があった。 ハンガリー映画史上最高の動員*第1週末を記録した感動作!!

2006年ベルリン国際映画祭ベルリナーレ・スペシャル部門出品作品

2006年/ハンガリー映画/120分/1:2.35/SRD 字幕翻訳:大西公子 字幕監修:小島亮 配給:シネカノン 宣伝:ムヴィオラ

2007年11月17日(土)より、シネカノン有楽町2丁目(新館)ほか全国順次ロードショー

公開初日 2007/11/17

配給会社名 0034

解説


いくつもの時をこえ、美しきドナウは流れる。
しかし、20世紀ヨーロッパでもっとも多くの血と涙が流れたのは、
このドナウ河だろう。

そして、その美しさから「ドナウの真珠」と呼ばれる
ドナウ河畔の街・ハンガリーの首都ブダペストには、
あちこちに悲劇の歴史の刻印がある。
この街が多くの人々を魅きつけてやまないのは、
美しさの内側に深い哀しみを秘めているからに違いない。

1956年、ソ連の衛星国として共産主義政権下にあったハンガリーで、
市民たちは自由を求める声をあげた。
しかし、その声はやがて多くの血を流す戦いにいたり、
自由への希求はソ連軍の圧倒的な兵力の前に踏みにじられた。

その数週間後、オーストラリアのメルボルンでオリンピックが開催された。
ハンガリーの水球チームは、そこで運命の女神の悪戯か、
ソ連チームと戦うことになった。

のちにオリンピックの歴史に「メルボルンの流血戦」として刻まれる、
政治的悲劇にもっとも彩られたゲームである。

この映画は、1956年のハンガリーが経験した、この2つの歴史的事実を背景にしたフィクションである。歴史的な事件やその舞台となった場所は史実通りだが、登場人物は想像の産物である。

“ドナウの真珠”とよばれる首都ブダペスト。
1956年、失われた革命とオリンピックの栄光があった。
二人はそこで愛と自由の灯をともした。

本作は、ハンガリーの失われた革命と、オリンピック史に残る「メルボルンの流血戦」の史実を背景に、女子学生ヴィキと水球選手カルチの歴史に翻弄された愛をドラマティックに描いている。一方に、革命にやぶれ多くの犠牲者をだした悲劇があり、一方に金メダルの栄光がある。このまさに運命の皮肉としかいいようのない現実の出来事が、見る人の心を激しく揺らすエモーショナルなストーリーを生み出した。
母国ハンガリーでは、「革命50周年」を祝った2006年10月23日に公開され、これまでのすべての映画を上回る最高の動員*第1週末を記録。つづいて欧米各国で公開。最も胸に迫るヨーロッパ映画、ハンガリー映画のベストと熱狂的に支持され、多くの観客に涙をあふれさせた感動作である。

彼らは革命を戦った。彼らは金メダルを得た。
しかし、涙を禁じえないラストシーン。
そこに勝者はいない。

映画製作チームは、徹底的なリサーチによって史実を忠実に再現しながらも、政治的な記録ではなく、自由を求め、愛を失うまいと願う人間の物語こそを描こうとした。
かつて「ハンガリー動乱」として知られた1956年の出来事は、本国ハンガリーでは89年の民主化まで、時の共産政権によって「反革命」とも呼ばれてきた。しかし今、ハンガリーでは、この自由を求めた戦いを「革命」として次の世代に伝えようとしている。東側諸国での初の武装蜂起として、後年の中東欧の民主化の先駆けとも評価されている。
だが、この映画を見た人は、愛の歓びを奪われ、スポーツの歓びを奪われた彼らに、いったい勝者は誰だったのか、と慟哭せざるを得ない。政治に翻弄される市井の人々の哀しみを、暴力によって人生を奪われる哀しみを、見事一瞬で伝えるラストシーンに、この悲劇が二度と繰り返されないことだけを、誰もが願うだろう。

哀しくも美しい恋人たちと、
二人を支える実力派共演陣。
ハンガリー演技人の層の厚さを実感させるキャスト。

主人公の恋人たち、ヴィキとカルチに扮するのはハンガリーを代表し、ハリウッドでも活躍する若手人気スターの二人。悲しい過去を胸に秘め、革命をただひたすらに信じて、その手に自由をつかみたいと願う女子学生ヴィキ。まるで「ハンガリーのジャンヌ・ダルク」のようなヴィキを演じるのは、凛々しくも儚げな美貌のカタ・ドボー。はじめは、政治から距離をとり、水球と家族を愛し恋愛を謳歌したいと願う普通の青年だったカルチ。ヴィキとの運命的な出会いによって、悩みながら躊躇いながらも戦いに身を投じていくカルチの変化を見事に演じたのはイヴァン・フェニェー。彼は集中したトレーニングで水球選手にふさわしい肉体をつくりあげている。
その他、カルチを見守る家族や親友、水球チームのコーチ、秘密警察の大立者などには映画や舞台で活躍するハンガリーの名優が顔を揃えた。彼らの演技と存在感が、このスケールある大作に人間的な魅力を与えている。

実際の金メダルチームも出演した水球シーン。
期待の若手女性監督と国際的スタッフがつくりあげた
人間ドラマとアクションの見事なバランス。

『ミュージック・ボックス』『ニクソン』から『ターミネーター』までをプロデュースする、ハンガリー出身の大物プロデューサー、アンドリュー・G・ヴァイナ自らの企画を、見事に形にしたのは期待の女性監督クリスティナ・ゴダ。長編劇映画2作目の彼女はこの叙事詩的物語に、日常的な繊細さを持ち込んだ。その他、ジョー・エスターハスを始めとする脚本家、衣装のベアトリス・アルナ・パ?ストルら一級のベテラン映画人が脇を固め、中でも、世界で最も有名なスタント兼アクションシーン監督であるヴィク・アームストロングは、映画史に残る戦争映画の名作を思わせるスケールと臨場感を映画にもたらした。
また本作の要とも言える水球シーンには、2大会連続の金メダルに輝く実際のハンガリー代表選手が参加。水球を知らない観客にもその魅力を存分に伝えている。

ストーリー

運命の出会い、そして10月23日。

1956年モスクワ。
ソ連対ハンガリーの水球の試合が行われている。前回のオリンピックで優勝したハンガリーにとってソ連はライバルだ。だが、試合は、ソ連びいきの判定が続き、ハンガリーのエース選手カルチが怒りにまかせ審判にボールを投げつけて中断。ハンガリーは敗れてしまう。
チームがブダペストに戻ると、カルチは秘密警察AVOの本部に連れていかれた。彼を待っていたのは”フェリおじさん”と名乗る男で「金輪際、ソ連の同志に刃向かってはならん。家族が大切だろう」とカルチを脅すのだった。
帰宅したカルチは、母と弟を安心させるために、AVOに脅されたことは告げずに嘘をつく。祖父は、ポーランドで民衆が立ち上がったニュースを伝えるラジオに耳を傾けていた。祖父はカルチに「自由のために反撃すべき時もある」と声をかける。

ブダペスト工業大学では共産青年同盟が集会を開き、ポーランドのニュースは資本主義者のつくり話だと訴えた。そこへ、セゲド大学の独立学生連盟の代表が乱入し、真実を訴えようとするが、壇上は混乱。その時、ひとりの女性が「彼に話させて」と声をあげた。それがヴィキだった。
翌日、カルチが、古くからの友人イミを工業大学に訪ねると、学生達はMEFESZ(ハンガリー独立学生連盟)を結成していた。カルチは政治には興味がなかったが、ひとりの女性に目を奪われた。聡明で誇り高く輝くヴィキだ。集会が終わると彼女に声をかけたが、有名なカルチに話しかけられてもヴィキの態度は冷たく、「あなたは共産主義者のお気に入り、どうぞ特権を大切にして」とあしらわれる。

10月23日。通りでデモが行われていた。カルチとティビが野次馬気分で街を歩くと、デモ隊を導くヴィキの姿があった。水球チームは今夜から、丘の上のホテルでオリンピックに向けた合宿生活に入る予定だったが、カルチはヴィキを追い、一緒に国会議事堂へ向かった。そこでは多くの市民が、改革派の指導者ナジ・イムレが出てくるのを待っていた。しかし、彼らを帰そうと電気が消され、辺りは真っ暗に。それでも市民たちはあきらめず、それぞれが持つ新聞などに火をつけ松明のようにともし、ナジの名を呼び続け、国歌を口ずさんだ。ようやくナジが姿を現す。しかし、彼が「同志」と呼びかけたことにブーイングが起きる。学生連盟のリーダー、ヤンチが自分達の要求をラジオで放送するとヴィキたちを誘った。しかしラジオ局では、AVOとの間に衝突が起き、突然放たれた銃弾にイミが倒れる。それをきっかけに一気に暴動が広がる。イミを抱きかかえ泣き叫ぶヴィキ。現れた救護車がAVOの変装であることをカルチが見破り、二人は間一髪逃げ延びる。

ヴィキの家。長い沈黙の後、口を開いたカルチはヴィキを責めた。「デモで何が変わる?イミの母親に何と言う?」。ヴィキはカルチに反論するが、自分の両親もAVOに殺されたことを打ち明け、哀しみを吐露する。二人は寄り添いながら眠った。
翌日、ナジ・イムレが首相になったというラジオ放送を聞き、喜んだカルチとヴィキだったが……。街に戦車があらわれ、小さな火炎瓶で立ち向かった市民を無慈悲に撃ち殺す。激しい戦闘がはじまった。ヴィキは戦いに向かうが、カルチはオリンピックの夢を銃弾で打ち砕かれたくないと告げ、背を向けた。

ヴィキの悲しい過去、二人が選んだ戦い。

チームに合流したものの、カルチの気持ちは変化しはじめていた。街中で手当たり次第に殺さる人々を目の当たりにした今、もう傍観者でいることは出来ない。監督やティビは止めようとするが、カルチの気持ちは止められなかった。
学生連盟本部に向かったカルチはヴィキを探した。戻ってきたヴィキが彼の姿に気づく。二人の思いは急速に近づいていった。カルチは、ヴィキを連れて家に戻った。息子の変化に母は不安を隠せず、ヴィキに危険を感じたが、街に外出禁止令が出て、二人に泊っていくようすすめる。
その夜。カルチがヴィキを抱き締めようとすると、彼女は悲しい過去を告白した。「抱かせれば両親を釈放するとAVOは言った。でもそれは嘘だった」。私を嫌いになったでしょ、と言うヴィキにカルチは優しく口づけし、二人は初めて結ばれた。翌朝、早く起きたヴィキは、息子を想う母の気持ちを感じ、カルチに何も告げず家をでる。
ヴィキがいないことに気づき、カルチは家を飛び出す。国会議事堂前には大勢の市民が集まっていた。カルチはヴィキの姿を見つけ駆け寄るが、その時、「AVOだ!」と誰かが叫んだ。いきなり銃がなり響く。市民に向けて無差別に発砲するAVOと、反対に、逃げる彼らの後を追う市民たち。そこにカルチとヴィキもいた。逃げ場がなくなったAVOとヴィキたちは銃を向け合う。その時、一発の銃弾がヴィキの腕を貫く。カルチは、彼女を守るため初めて人を撃ち殺した。

戦闘は激しくつづいたが、しかしついに、政府が混乱終結のために駐留ソ連軍の即時撤退、AVOの廃止と新たな警察の組織を決定したというニュースがラジオから流れた。水球チームも2日後にメルボルンへ出発できることになった。
ヴィキはカルチに、戦いが終わったのだから、オリンピックへ行くよう薦めるが、カルチは水球をあきらめ、他の仕事を探してヴィキのそばを離れないと言う。ヴィキは母の形見のネックレスを彼に渡す。私はいつもあなたといる、と。もう一度、ヴィキはカルチにオリンピックへ行って欲しいと伝える。カルチは、自分の”幸運の腕時計”を外しヴィキに渡した。見送る彼女の笑顔にカルチは歩き出す。

メルボルンへ。ソ連の報復と世界に届かない叫び。

戻ってきたカルチにチームメイトはパスポートを手渡す。カルチは監督に許しを得てメルボルンへ向かうバスに乗り込んだ。チームを乗せたバスは出発した。
夜の道を進むバス。眠りについていた選手達は不審な音に目を覚ます。窓の外を見た彼らには目の前の光景が信じられなかった。巨大なソ連の戦車が長い列をなしてブダペストに向かっていたのだ。ソ連の報復に気づいたカルチは、バスから降りようと、ドアを力づくで開けようとする。仲違いはしたものの今も親友を思うティビが、カルチの身を守るために彼を殴り気絶させた。

学生連盟本部では、エステルが、勝ち目のない戦いから逃げ延び、生き延びることを主張したが、ヤンチはアメリカ軍が支援しに来る、もう少しの辛抱だ、と彼女の説得に応じない。ヴィキはヤンチの言葉を信じ戦い続けることを選ぶ。圧倒的な兵力のソ連軍に対し、立ち向かう市民たち。ブダペストの街が火に包まれる。ヴィキの目の前でエステルが死んだ。
自由ハンガリーラジオが世界に向けてSOSを叫んでいた。しかしヤンチはもう世界の誰も助けには来ないとヴィキに言い放つ。彼はオーストリアへ逃げようとヴィキを誘うが、彼女は仲間を捨てることは出来ないと断わる。

メルボルンに着いた選手達は、テレビで母国の壊滅的な状況を知った。選手達はオリンピックを前に気力を失っていた。しかし、「祖国は打ちのめされた。だが終わってはいない。祖国の皆に金メダルを贈るんだ」。監督の言葉が選手達の気持ちに変化を起こす。ただ自分のためでなく、祖国の人々のために。
ハンガリー代表は勝ち進んだ。そして準決勝の相手が宿敵のソ連に決まった。控え室にまで聞こえるハンガリーコールの大歓声に後押しされ、選手たちはいつもとは違う試合へと向かう。

最後の戦い。血が流れ、涙が流れた。

ブダペスト。ついにヴィキは秘密警察に捕らえられてしまう。拘束されたヴィキの前にフェリおじさんがあらわれ、武器を渡した兵士や警官、食料を提供した農民、そして革命に加わった学生の名前を書けば自由になれると告げる。

メルボルン。大歓声が会場を包む中、波に乗るハンガリーは、カルチが得点を重ねていた。会場全体がハンガリーの味方だった。そんな空気に耐えきれなくなったソ連選手がカルチの顔面を殴る。水中に一瞬にして血が広がり、審判の笛が鳴り響いた。大歓声がソ連へのブーイングへと変わり、試合時間を残してハンガリ?の勝利が決まる。プールから上がったカルチは目もとを負傷し大量の血を流していた。

ブダペスト。ヴィキの前に再び現れたフェリおじさんは、彼女が持っていたカルチの”幸運の腕時計”を見せて脅した。紙とペンを前にしたヴィキは、意を決したようにペンを走らせる。しかし、そこにはスターリン、フルシチョフ、カーダ?ル、フェリおじさんと書かれていた。留置所から連れ出されるヴィキ。廊下を進む彼女の手にはカルチの時計がしっかりと握られていた。ハンガリー国歌をか細い声で歌い始めるヴィキ。その声に合わせ、拘束されている女性達も歌い出す。歌声の中、顔を上げ、溢れる涙をこらえながらヴィキは処刑へと向かう。

メルボルンでは、優勝したハンガリー水球チームが金メダルを胸に表彰台に上がり、国歌を斉唱していた。ソ連のしるしだった鋤と星が消え、昔の紋章に戻った国旗が掲揚された。カルチは右手で胸に輝く金メダルを握り、左手でヴィキがくれたネックレスを握りしめた。「ハンガリー万歳」と叫ぶ観客の声に選手達は歓びを爆発させる。だが、ただひとりカルチは顔をあげることができず、嗚咽した。

スタッフ

原案:ジョ−・エスタ−ハス 
脚本:ジョ−・エスタ−ハス、エ-ヴァ・ガールドシュ、ゲ−ザ・ベレメ−ニ、レーカ・ディヴィニ
共同製作:クライヴ・パ−ソンズ、S・タマ−シュ・ザ−コニ
撮影:ブダ・グヤ−シュ
美術:ヤ−ノシュ・サボルチ
衣装デザイン:ベアトリス・アルナ・パ−ストル
作曲:ニック・グレニ−=スミス
製作:アンドリュ−・G・ヴァイナ
監督:クリスティナ・ゴダ

キャスト

カルチ(カーロイ):イヴァ-ン・フェニェ−
ヴィキ(ヴィクトリア):カタ・ドボ−
ティビ:シャ−ンドル・チャ−ニ
水球チーム監督:カ−ロイ・ゲステシ
カルチの母:イルディコ−・バ−ンシャ−ギ
カルチの祖父:タマ−シュ・ルダーン
エステル:ヴィクト−リア・サ−ヴァイ
ヤンチ:ツェルト・フサール
イミ:タマ−シュ・ケレステシュ
フェリおじさん:ペ−テル・ホウマン
ヨ−ジカ(ヨ−ジ):ダ−ニエル・ガ−ボリ
水球選手コンポ−:ロ−ベルト・マルトン
水球選手バ−ロ−:コルネール・シモン
水球選手フランク:クリスティア−ン・コロヴラトニク
水球選手プロコップ:アンタル・ツァプコ−
水球選手ベ−ツィ:ゾルタン・セーチ
水球選手ペターク:ブルチュ−・セ−ケイ
水球選手ミシュリン:ゲルゲイ・キトルシュ
水球選手ボラコフ:ヴィクトル・パヤーン
水球選手ピソフ:アッティラ・ヴァ−リ
水球選手ポリャコフ:ペ−テル・ビロシュ
水球選手ルキチ:イシュトヴァ−ン・ゲルゲイ
水球選手ジュ−ロフ:アッティラ・バ−ラニトル

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