原題:KURT COBAIN ABOUT A SON

本人が語る最初で最後の、心の告白—。

2006年/アメリカ/97分/ 配給:ショウゲート

2008年01月25日よりDVDリリース 2007年8月4日(土)より渋谷アミューズCQN、吉祥寺バウスシアター他 全国順次公開!

公開初日 2007/08/04

配給会社名 0008

解説


時代を変えたひとりのアーティスト、カート・コバーン
本人が語る最初で最後の真実の言葉
彼の生きた軌跡が今、蘇る─。

NIRVANA…。KURT COBAIN…。

グランジというくくりでシアトルから飛び出した数多のバンドが、忘却のブラックホールへと吸い込まれる中、未だ色褪せることのないタイムレスな音楽(メロディー)で伝説を築いたニルヴァーナと、パサパサの金髪に目の下の隈(くま)を強調した写真(ポートレート)に凍結されたバンドのボーカル/ギタリスト、カート・コバーンは、27歳という早すぎる死のイメージと共に、現在も時代を超えて支持され続けている。自殺説、事故説、はたまた、何かの陰謀に巻き込まれた他殺説など、様々な噂が飛び交い、謎が謎を呼ぶ中、「コートニー・ラヴが殺した」など、”シド&ナンシー”的なカップル像がメディアに歪曲されたりもした。だが愛する妻と娘のフランシスを残し、ひとり旅立ってしまった彼は、二人を見守るかのように、未だ”向こう側”へ行けていないのかもしれない。彼の人生をモチーフにした多くの映画などが作られ、時代も彼の足首を捕まえて離そうとしない。

初めて世に出る彼の肉声

そんな彼の呪縛が解ける日も近いかもしれない。その機会となるのが、彼自身の肉声を聞くことができる『カート・コバーン アバウト・ア・サン』。当時、シアトルの自宅のキッチンで行われた25時間に及ぶインタヴューの取材テープから聞こえてくる声は、『病んだ魂(原題:COME AS YOU ARE)』の著者マイケル・アゼラッドを、ジャーナリスト嫌いのカートが信用したからこそ実現したもの。そして偶然の会話から生まれたアゼラッドと、監督 AJ・シュナックの企画も、信頼関係の産物だ。こちら側とあちら側の間の”どこか”から聞こえてくるような、カートの正直すぎるコトバは、彼の負のイメージを覆すのではないだろうか。

彼の愛した音楽がそのままサウンドトラックに

彼の肉声と風景に加え、音楽も大事な要素である。カート・コバーンは、自分の知名度を使い、新旧問わず、彼が尊敬するミュージシャンやバンドを後押しするために、前座に起用し、ライブでカバーしたり、彼らのTシャツを着たり(ダニエル・ジョンストンのTシャツを着ていたのは有名な話)、才能はあるのにブレイクする機会がない人たちへ大いなるリスペクトを送り続けた。このサウンドトラックも、そんな彼が愛してやまなかった音楽に彩られる。レッドベリー、マッドハニー、ヴァセリンズから、幼い頃に聴いたクイーンや、MTVアンプラグドでもカバーしたデヴィッド・ボウイの曲などが流れ、彼がいつ頃、なぜそうした音楽に惹かれたのかにも時おり、触れられる。

アバウト・ア・サン/たった一人の人間

親密な環境で語られる生い立ちや、駆け出しの頃の夢などは、尊大なロック・スターの発言でなく、一人の人間/子供によるものだ。世界を席捲する前の、故郷のアバディーン、ボヘミアンな学生街のオリンピア、そしてブレイクを果たしたシアトルといったアメリカ北西部の街の風景や人の映像と共に、彼の肉声が、あたかも私たちと一緒に旅しているかのように、静かに響く。そこには、傷つきやすく、繊細で、きらきらと夢を語る一人の少年がいる。妻と娘を愛し、家族を守ろうとする愛すべき家庭人がいる。そして、まるで老人のように現実に疲れ、やつれ果てた彼も…。

さあ、一緒に旅に出よう

カート・コバーンという人間はどこに始まり、どこに辿り着こうと向かっていたのか…。この作品では、実際に彼の住んだ家、初めて一人暮らしをした一軒家、バイトをクビになったリゾートホテルなど所縁のある街が映し出される。彼が確かにそこにいたという痕跡を感じながら、その道のりを一緒に旅することで、彼という人間の一部、またそこから生まれた音楽を、少しだけ理解できるようになるかもしれない。あたかも、彼の家の台所に座り、一緒にハーブ・ティーをすすり、時おり窓の外を見やる彼がすぐそばで話しているかのように感じながら、ふと、やさしい気持ちになっている自分に気づく、かもしれない。

ストーリー





WORDS FROM THE DIRECTOR: AJ SCHNACK
監督AJ・シュナックのコトバ

 カートは自殺したと思う?
 カートの生の声を伝える映画を見事に構成した監督のAJ・シュナックに誰もが気になる質問をぶつけてみると、「そう聞かれると、うん、そこは疑いないんじゃないかな」と彼は言う。「他に考えようがないよね」
 クスリをやり、散弾銃で自らの頭を撃ちぬいたのだから当然かもしれないが、どこかで、信じたくない気持ちがどこかで働くのだろうか。そのニュースが流れた瞬間、まだ映画業界で駆け出しだった彼は、退屈な仕事に向かうLAの渋滞の中、それをラジオで聞いたという。その前のローマでの過剰摂取の時に死んだと思ったから、今回もガセだと思った。その時、彼の映画を撮ることになろうとは、もちろん、思いもしなかったと。
 ミュージック・ビデオ界からThey Might Be Giantsを追った『Gigantic』で映画デビューを飾った彼は、たまたま取材に来ていたマイケル・アゼラッドと食事をし、その時、25時間分のカートの取材テープがあるから、それをいつか映画化したいという話を聞かされた。その時は受け流したものの、時間を経て、そのテープへの思いは募っていった。「音楽だけでなく、彼は20世紀の最も重要なカルチャー・アイコンの一人だから」
 カートはロックの世界から、初めて社会的な変化について語り始めたアーティストだったという。今までにない変化を迎えた、ある世代を体現する”一人の人間”を彼の中に見た。マイケルもまた、何度もアプローチを受けながら、彼自身も参加できる、納得のいく企画に出会っていなかった。かくして、マイケルが重要と思える取材箇所を出し、AJがカートに縁のあるアバディーン、オリンピア、シアトルの三幕を撮影監督である、ワイアット・トロールと共に構成し、彼自身が通過したかもしれない風景の今の姿を撮影した。実際に彼が住んだ家、父親の職場、通った学校、監視員だったプール、煙突掃除をしたホテル、そして二人が語った彼の自宅のキッチン。それらはまるで全てにカートの魂が漂っているかのようである。無理に意味を持たせるよりも、そこに全てがある気がした。
 カートの姿は見えないけれど、彼の存在は十分に感じられずはずだと監督はいう。彼の足跡を辿りながら、彼が見た風景を見て、彼の聴いた音楽を聴き、彼の初期の楽観、そしてその後の悲観を私たちは感じることになる。
 そしてきっと感じてもらえるはずだという。「彼もたった一人の人間に過ぎないのだ」と。最後にコートニーがミルクを持ってきてくれるようにカートに頼む。そう、彼もただの家庭人だったのだ…。

スタッフ

監督・編集:AJ・シュナック
製作:シャーリー・モイヤーズ、ノア・コシュピン、
クリス・グリーン
原作:「病んだ魂」(ロッキング・オン刊)
配給:ショウゲート

キャスト

声:カート・コバーン

収録楽曲アーティスト
■Bad brains■David bowie■Butthole surfers
■Cheap trick ■Creedence clearwater revival
■Half Japanese■Mark lanegan■Leadpelly ■MDC
■Melvins■Mudhoney■Iggy pop■Queen ■R.E.M
■Scratch acid ■Vaselines■Young marble giants

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