1926年〜1955年/ドイツ/ 配給:エデン

2005年11月12日より東京都写真美術館ホールにてロードショー

公開初日 2005/11/12

配給会社名 0113

解説


あまりの美しさに故・淀川長治氏も絶賛し、語り続けたドイツの女性影絵アニメーション作家ロッテ・ライニガー(1899〜1981)の美しくも幻想的な作品の数々。彼女の処女作にして最高傑作「アクメッド王子の冒険」(1926)は、世界初の長編アニメーションというだけでなく、その芸術的および娯楽的な質の高さで、数十年に渡って世界中の多くのアニメーション映像作家に影響を与え、今もまったくその輝きを失っていない映画史に極めて重要な作品です。

しかし、製作から79年を経た今、芸術的に優れたその作品は、伴奏を必要とするサイレント作品であることから世界的に上映される機会が非常に少ないのが現状です。日本では1929年に上映されたという記録としては認知されているものの実際に作品を見た方は現在では極めて少なく、一部のアニメーション・ファン以外ではライニガーの名前さえほとんど知られていません。ライニガーの影絵アニメーションの素晴らしさは、スタジオジブリ作品に代表される“ジャパニメーション”を世界に送り出しているアニメーション大国である日本でこそ再評価されるべき作品ではないでしょうか。

「アクメッド王子の冒険」は99年に映像の修復が行われ、オリジナルの楽譜をもとにDVD用にオーケストラによるスコアの録音もされました。私たちはこの傑作の衝撃的なまでの素晴らしさを一人でも多くの観客の皆さんに楽しんでいただきたいと考え、今回ドイツおよびイギリスの権利保有者と交渉の末、世界初となる本作のステレオ・サウンド版ニュープリントを作成し、一般の映画館で上映することを可能にすることに成功しました。
また、「カルメン」「パパゲーノ」「ガラテア」「眠れる森の美女」「長靴をはいた猫」という、ライニガーの数ある短編の中から厳選した傑作5本を初めて35mmに起こし、ニュープリントを作成しました。

すべての映像作品の原点ともいえる光と影の芸術である影絵アニメーションは、フィルム上映でスクリーンに映写されてこそ本来の素晴らしさを発揮します。これは、単なる映画興行ではなく映画史に残る画期的な文化事業となるでしょう。

ストーリー



「アクメッド王子の冒険」The Adventures of Prince Achmed
(Die Acenteuer des Prinzen Achmed)
監督・影絵アニメーター:ロッテ・ライニガー/プロダクション・マネージャー:カール・コッホ/協力(背景):ヴァルター・ルットマン/音楽:ウォルフガング・ゼラー(1926年度作品・ドイツ映画(1999年映像修復版完成、2004年サウンド版完成)制作:コメニウス・フィルム・長編影絵アニメーション映画・モノクロ(染色)・65分・35mm・スタンダード・日本語字幕:松岡葉子)

ロッテ・ライニガーが3年間の歳月を費やして完成させた「アクメッド王子の冒険」は1926年9月23日にドイツで初公開されました。それは、映画の歴史における最初期の長編アニメーションが誕生した記念すべき瞬間でした。

内容は「アラビアン・ナイト」をベースにした冒険活劇で、その映像の美しさと幻想的な展開は、世界中の数多くのアニメーション作家たちに大きな影響を与え、今もまったく色あせることなく多くのファンを魅了し続けています。

映画史に燦然と輝くこの傑作は1999年にドイツ・フィルムミュージアムの手により映像の修復が行われ、同時にイギリスでのDVD化のためにフル・オーケストラによる新録音が行なわれました。これまではオリジナル楽曲生伴奏付きのイベント上映が基本でしたが、今回日本側の提案で新録音音源を使用したドルビー・ステレオ・サウンド付きプリントが世界で初めて作られることになりました。これはそのワールド・プレミアを兼ねたロードショー上映となります。

 カリフ(イスラムの王)の誕生日を祝ってにぎわう都に魔法使いが現われ、魔法で作り出した〈空飛ぶ馬〉で飛んで見せた。カリフはこの馬がほしくなり、何でも望みの物と取り替えようと約束すると、魔法使いはカリフの王女ディナルザデーを妻に、と願う。ディナルザデーの兄、アクメッド王子はその非礼さに激怒したが、魔法使いはたくみに王子を〈空飛ぶ馬〉に乗せ、上昇法だけ教えて空へと飛ばせた。見る見る馬も王子も雲間に消えた。

 怒ったカリフは魔法使いを投獄したが、彼には重い鎖から逃れるなどたやすい事だった。他方、やっとの思いで馬を下降させたアクメッドはワクワク島に降り立つ。この島を治めるのは美しい妖精パリバヌー。夜ごとに鳥の姿で泉に舞い降り、水あびをする。物陰から彼女を見た王子は一目で恋に落ち、鳥の羽衣を隠して彼女を引き留め、共に故郷の王宮で暮らそうと語りかける。ついにパリバヌーもひたむきなアクメッドの情熱にほだされ、ふたりは〈空飛ぶ馬〉で飛び立つ。

 牢をのがれた魔法使いはコウモリに姿を変え、中国の都に着いた王子たちを襲ってパリバヌーを奪い、皇帝に売り渡す。彼女の美しさに皇帝の心も動いたが、パリバヌーはその求愛をはねつけた。腹立ちまぎれに皇帝は彼女を醜い道化男に与え、結婚を命じる。一方、魔法使いは王子を火山の頂の大岩で押さえつけて逃げ去った。しかしこの火山には魔法使いの宿敵、善い魔女フォンフランベルグがいた。魔女は王子を救い、あわや結婚寸前のパリバヌー救出にも力を貸す。しかし、せっかく助けたパリバヌーはワクワク島から彼女を追って来た魔物たちに取り戻されてしまう。

 パリバヌーの連れ去られたワクワク島は山の裂け目の大門を閉じた。この門を開けられるのはアラジンの魔法のランプの持ち主だけだという。ところが王子が怪物に襲われていた若者を助けてみると、アラジンその人。ただ、ランプは手元にない。ここでアラジンは自分が魔法のランプの持ち主になったいきさつを王子に物語る。アラジンは自分を利用した魔法使い(カリフの前に現われたのと同一人物)を出し抜いて手に入れたランプの精に宮殿を作らせ、カリフの娘ディナルザデーを妻に迎えて幸せに暮らしていたが、とうとう魔法使いに発見され、ランプもろとも宮殿も妻も消え失せてしまったという。

 ここに善い魔女対魔法使いの決戦が始まる。魔術くらべに続く大激戦。宿敵を倒した魔女は魔法のランプで山の門を開き、パリバヌーは解放された。ワクワク島に移されていたアラジンの宮殿ではディナルザデーも無事だった。一同は宮殿で空を飛び、もとの都に帰還する。悲しみに沈んでいたカリフは元気な姿で戻ったアクメッド王子と花嫁パリバヌー、アラジンとディナルザデーを代わる代わる抱きしめて喜びにひたるのだった。

■傑作短編集
『カルメン』(1933年/ドイツ/9分)
ビゼーの歌劇『カルメン』をモチーフとした音楽劇。
『パパゲーノ』(1935年/ドイツ/11分)
モーツァルト作の歌劇『魔笛』をモチーフに、同作に登場する陽気な鳥刺し、パパゲーノを主人公にして描いた音楽劇のパロディ。
『ガラテア』(1935年/ドイツ/11分)
ギリシア神話を元にしたスッペ作のオペレッタ(喜歌劇)『美しきガラテア』より。
『眠れる森の美女』(1954年/イギリス/10分)
イギリスのBBCテレビのために製作された児童向け作品シリーズの1本。
『長靴をはいた猫』(1954年/イギリス/10分)
イギリスのBBCテレビのために製作された児童向け作品シリーズの1本。

スタッフ

監督:ロッテ・ライニガー
配給:エデン

キャスト

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