2005年/日本/カラー/111分/ビスタサイズ/SR/ 配給:パンドラ

2007年04月25日よりDVDリリース 2005年11月26日、岩波ホールにてロードショー公開

公開初日 2005/11/26

配給会社名 0063

解説


「二人日和」は長年連れ添った夫婦の深い絆を通して、生と死を見つめた作品である。
古都・京都で、伝統ある神祇装束司(じんぎしょうぞくし)を務める黒由玄と妻・千恵。45年もの長い年月をともに生きてきた彼らの静かな日々は,妻が不治の病ALS(筋萎縮性側索硬化症)に冒されたときから少しずつ変わってゆく。
京都の四季折々の風景を織り込みながら、伝統的な日本家屋・町家(まちや)で暮らす夫婦の日常と、二人の静かで純粋な愛のかたちを叙情豊かに描く。

伝統を守る誇り高い職人であり、こまやかに妻を気遣う黒由を演じるのは、「新選組血風録」(1965TV)の土方歳三役で多くのファンを持つ栗塚旭。美しい京言葉の中に芯の強さを秘めた妻・千恵に藤村志保。共に人生の年輪を刻んだ存在感で、今までの俳優人生の集大成とも言える名演技を見せる。
また、彼らの生活に新風を吹き込む、マジックの得意な青年役に、若手人気俳優・賀集利樹、その相手役に新人・山内明日が扮して、さわやかな魅力を放っている。

この作品は、かつての映画の都・京都に再び活気をという熱い思いから、京都を愛する人たちの手によって製作された。監督は「森の向う側」(88)「ザ・ハリウッド」(98)などで高い評価を受けた野村恵一。京都映画撮影所育ちの主演二人をはじめ、京都ゆかりの人々—-華道研究家の池坊美佳、元ザ・フォーク・クルセダーズのメンバー、きたやまおさむ、服飾評論家でもある女優・市田ひろみなど、多彩なジャンルの人々が出演し、映画を応援している。
撮影は地元の協力により、夫婦が暮らす町家、華やかな葵祭や歴史が息づく街並みなど、すべてがロケーションで撮影され、市民もエキストラで出演した。古都の日常風景を居ながらにして体験できるのも、見どころのひとつとなっている。
なお,大映京都撮影所出身の大ベテランで美術監督の内藤昭も、千恵と同じくALS患者の一人である。内藤は野村監督、藤村志保、市田ひろみの共通の友人であり、「映画界の大先輩である内藤さんを少しでも励ませたら…」という撮影所仲間の想いからこの映画の脚本が書き始められた。完成した作品を病院で見た内藤は大変喜び、野村監督に笑顔で感謝の意を伝えたという。
「二人日和」はドイツのフランクフルトで開催された映画祭「第5回ニッポン・コネクション」で、「血と骨」、「世界の中心で、愛をさけぶ」を抑えグランプリにあたるNIPPON CINEMA AWARDを受賞した。

ストーリー



京都御所に面して建つ神祇装束司「黒由」。代々、京都御所関係、貴族や神官の装束を作り続けてきた黒由玄は誇り高い職人だ。彼の毎日は、梨木神社の〈染井の名水〉に水を汲みに行くことから始まる。その水で淹れたコーヒーを妻・千恵とゆっくりと味わうのが二人の習慣だった。
初冬のある日、千恵がALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病にかかっていることがわかる。筋肉を動かす運動神経が冒され、徐々に体の自由が失われていくという病気だ。医者からも「早ければ半年ほどで箸や茶碗も持てなくなる」と宣告される。次第に、体が思うように動かせなくなってきた千恵は苛立ちを隠せない。寡黙な黒由は、妻に優しい言葉をかけられるような男ではなかったが、彼なりに妻を慰めようとしていた。
黒由は、毎朝、神社の帰り道で見かけるマジックの上手な若者を家に招待した。若者の名は伊藤俊介といい、大学院で遺伝子の研究をしている学生だった。黒由は、妻の指の訓練にマジックを教えてもらえないかと彼に頼んだ。
俊介は戸惑いつつも、黒由夫婦の住む町家を訪れる。千恵は、鮮やかな手つきでトランプの手品を披露する俊介に感心し、久しぶりに明るい声を上げた。子どものいない黒由夫妻にとって、俊介の来訪は心躍るひとときになった。時折やってくる姪の江梨子も俊介に興味を覚えたようだった。だが、そんな日々も長くは続かない。春、雛人形を飾ろうとしていた千恵が倒れてしまう。
一方、俊介は大学院の教授から、アメリカ留学を勧められていた。
気持ちは動くが、恋人の恵と何年も離れてしまうことや家族のことなど、様々な思いにとらわれて、俊介は決断ができなかった。
やがて、俊介が出演するマジックショーの日が近づく。病室で招待状を受け取った千恵は、外出許可をもらい、夫の押す車椅子で出かけていく。帰り道、俊介は千恵の車椅子を押しながら、桜吹雪の舞う鴨川のほとりを歩いた。千恵は、初めて会った俊介の恋人・恵と親しげに歩く夫の姿を眺めながら、安らかな気分に浸っていた。
黒由は、千恵の看病のために、〈二藍の汗衫(ふたあいのかざみ)〉の装束の仕事を最後に、店をたたむ決心をする。家でひとり片づけをしていた彼は、偶然、千恵の鏡台から古い日記を見つける。そこには、若かったころの二人の出来事が綴られていた。
季節は過ぎ、新緑の芽生える中で葵祭も過ぎていく。千恵との別れの日が近づいていた。

スタッフ

企画・製作:野村企画/ターンオーバー・パートナーズ
プロデューサー:山田哲夫
監督・脚本:野村恵一
脚本:小笠原恭子、山田力志、山田哲夫
脚本協力:中村努
撮影:林健作
照明:山北一祝
録音:中路豊隆
美術:石原昭、松下ゆかり
美術協力:内藤昭
編集:谷ロ登司夫
音楽:門奈紀生
演奏:アストロリコ
主題歌:「あの青い夏へ〜君のための夏〜」
歌・作詞・作曲:クミコ

キャスト

黒由千恵:藤村志保
黒由玄:栗塚旭
伊藤俊介:賀集利樹
小林恵:山内明日
矢沢江梨子:池坊美佳(特別出演)
俊介の通う大学の教授:きたやまおさむ(友情出演)
千恵の友人:市田ひろみ(友情出演)
宮司:藤沢薫
職人・辰三:竹橋団

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