原題:Beautiful Boxer

2003年/タイ/ 配給:アートポート

2006年02月24日よりDVDリリース 2005年10月15日〜シネマスクエアとうきゅう 他 全国順次ロードショー

公開初日 2005/10/15

配給会社名 0014

解説


◆イントロダクション
 アジア映画が世界に注目されるいま、映画界の新たなムーブメントとしてもり上がりをみせるタイ王国から、純真で胸を締め付けられる感動の作品がやって来る。ベルリン国際映画祭、ブリュッセル国際映画祭、トリノ国際映画祭など各国の映画祭で話題を呼び、世界中に希望と感動を与えてきた作品『ビューティフル ボーイ』がこの10月についに日本で公開される。

 かつて、化粧をして、試合前に女らしいしなやかな踊りを舞い、対戦相手の頬にキスをする、最強のムエタイ選手がいた。観客の中には、客寄せのためのパフォーマンスだと思い、神聖なムエタイを汚す行為だと怒りだす者もいた。しかし、彼は、幼い頃から自分のことを男の体に生まれてしまった女だと信じ、本当の自分をさがし求めていたのだった……。

 ムエタイ界に旋風を巻き起こし、日本でも試合をして話題を呼んだ、パリンヤー・ジャルーンポン(愛称トゥム)の半生を描いた本作『ビューティフル ボーイ』は、心に沁み入る愛と感動のトゥルーストーリーだ。
 パリンヤー役には、タイ全土で数ヶ月を掛けたオーディションによって選ばれた新人アッサニー・スワン。もともと現役のムエタイ選手で、パリンヤーと同じチェンマイ出身のアッサニーは、11歳からムエタイを始め、2001年には、ムエタイ協会から北地方の最高ボクサーに選ばれたこともある実力の持ち主。本作に出演する為に現役から引退して撮影に臨んだ彼は、デビュー作とは思えない迫真の演技をみせ、タイのアカデミー賞ともいえるスパナホン賞で最優秀賞男優賞を受賞した。

 その他にも、ムエタイ・コーチの役にベテラン俳優のソラポン・チャートリー、トゥムの初恋の相手ともいえる親友のナット役には若手の実力派シティポン・ニヨム、気丈なトゥムの母親を演じた、元ミス・タイランドのオラノン・パンヤウォン、寡黙だがトゥムの幸せを真剣に考える父親役にヌックキット・ブーントーンなど、タイ映画界の優れた才能が集結した。日本からは、実際にパリンヤーと対戦した女子プロレスラーの井上京子が本人役で登場、アッサニー演じるトゥムと激しい対戦を繰り広げる。さらに、トゥムの心に大きな変化を与える日本人ファン役には、『沙羅双樹』の瑞々しい演技が評価された兵頭裕香が華を添えた。

 監督は、シンガポール・中国・アメリカ・マレーシア・タイで舞台劇の演出やプロデュースをしてきたエカチャイ・ウアクロンタム。アジアウィーク・マガジンで、世界を舞台に社会・文化部門で最も活躍しているアジア人20人のうちの1人として選ばれている。

ストーリー


 バンコクのパッポン通り。1人の外国人記者が、ある人物を訪ねてキャバレーにやって来る。しかし、行き違いとなりその人物は店を出たところだった。あとを追いかけた記者は、街中で喧嘩に巻き込まれる。そこを助けてくれたのが、捜し求めていた人物、パリンヤ−・ジャルーンポン(アッサニー・スワン)だった。カトゥーイ(おかま)の元ムエタイ選手パリンヤ− (愛称ノン・トゥム)は、記者の求めに応じインタビューに静かに答え始める……。

 タイの北部の村に生まれたトゥムは、貧しい家庭で育ちながらも心の優しい少年だった。ある日、村のお祭りで伝統舞踊を見たトゥムは、化粧に興味をしめす。弱虫でまわりの男の子や弟にまでからかわれイジメられるトゥムだったが、両親は寛容だった。家族がチェンマイに引っ越すと、トゥムは弟と出家する。そんなある日、違法建築で母親(オラノン・パンヤウォン)が逮捕される。トゥムは、母親に会う為に毎日警察署へ行くが追い返されてしまう。そんなトゥムを助けてくれたのは、近くで食堂を経営するピ−ニットだった。ピーニットは、性転換をして女性になっていたが、トゥムにとっては理想の女性のように優しく美しかった。
 数年後、トゥムは町の土産物屋で働いていた。ある祭りの日、見物に行ったトゥムはひょんなことからムエタイの試合に出ることになってしまう。しかも、その試合でトゥムは秘めた才能を発揮し、勝ってしまったのだ。賞金を手にしたトゥムは、ムエタイで勝って賞金を稼げば、家族の生活を楽にできるかもしれないと考え、両親に内緒で弟とムエタイを習いに行く。ムエタイの技に魅了されたトゥムはメキメキと上達していくが、大勢での合宿生活では、みんなに裸を見せる事が恥ずかしく夜中に水浴びをしたり、こっそりトイレでお化粧をしてみたり、女の子らしいことに興味を持つ自分を押さえる事は出来なかった。
 “ブラック・イーグル”のリングネームで、トゥムは試合で勝ち進み、両親にもムエタイ選手である事を打ち明け、賞金で家計を助けることができるようになった。そんなある時、トゥムの本当の心を知るコーチの奥さんに勧められ化粧してみた。そこにコーチ(ソラポン・チャートリー)が現れ見つかってしまうが、何を思ったのかコーチはトゥムを化粧して試合に出す。場内はバカにして冷やかすのだが、リングネーム“ノン・トゥム”の実力は本物で、あっという間にKOで勝利する。スポンサーもこれを認めて、化粧代まで出してくれ、トゥムは心置きなく姿を装う幸せを味わう。敗者へのキス・パフォーマンスも受けて、一大旋風を巻き起こすが、トゥムは、弟のタムにピエロのように笑いものにされ恥ずかしくないのかと言われ、悩み苦しむ。いずれは女になりたいと考え始めたトゥムは、ムエタイを辞める決意をするが、そこに飛び込んできたのが、バンコクでも最も有名なルンピニー・スタジアムでの試合が決定したことと、コーチが肺ガンのため入院しなければならないという知らせだった。ルンピニーでの試合の前に、トゥムはインタビューに答え、自分はカトゥーイだとカミングアウトし、いずれは性転換したいと告白する。テレビで生中継までされたこの試合に勝ったトゥムだったが、同じその日に自分を育ててくれたコーチが亡くなった。
 ムエタイを続ける気力を失いはじめたトゥムは、女になりたいという気持ちが日に日に強くなり、女性ホルモン剤を飲み続け試合に負けだす。タイを離れ、日本で女子プロレスラーと異種格闘技戦を行うが、見世物のような試合に勝ったトゥムに残ったものは耐えがたい空しさだった。帰国したトゥムは、手術を受けることを決意する。トゥムの身体を気遣い、最後まで反対した父親も、医者の、心と体のバランスがとれるという言葉を聞き、申請書にサインした。

 いつ手術を受けるのかというインタビュワーの問いに、24日と4時間42秒だと即答するトゥム。長いインタビューの最後に彼はこう語る。男はつらい、女の人生もつらい、でも一番難しいのは自分がどうなりたいのか、忘れずにいることだ、と。
 ……1年後、チェンマイの祭りで行われた試合に、手術を受けたあとのトゥムの姿があった。化粧をして神に捧げるワイクルーを踊る少年を見たトゥムは、そっと近づき少年の口紅を拭きとりながら、“心”で戦うようにとアドバイスをするのだった。

 現在、トゥムはバンコクで女優兼モデルとして活躍中。女性にムエタイも教えている。

スタッフ

監督・プロデューサー:エカチャイ・ウアクロンタム
音楽&サウンド・デザイン:アマラポン・メータクナウット
衣装:トッサゴーン・ダラクーンペットグライ
編集:ドゥッサニー・パヤノンポー
プロダクション・デザイナー:ノッパドン・アーカート
撮影監督:チューチャート・ナンティタンヤタダー
ライン・プロデューサー:アーポーン・ピニッカー
エグセクティブ・プロデューサー:パイブーン・ダムロンチャイタム、ブッサバー・ダーオルアン、チューポン・ラッタナバントゥーン、エカチャイ・ウアクロンタム
脚本:エカチャイ・ウアクロンタム、デスモンド・シム・キム・ジム

キャスト

パリンヤー・ジャルーンポン(ノン・トゥム):アッサニー・スワン
チャート(コーチ):ソラポン・チャートリー
ノン・トゥムの母:オラノン・パンヤウォン
井上京子:井上京子(本人)
ナット:シティポン・ニヨム

LINK

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