原題:CUSTOM MADE 10.30

2005/日本/カラー/121分/アメリカンピスタ1=1.85/ドルビーSRD 製作「カスタムメイド10,30」製作委員会 配給:キネティック

2006年03月24日よりDVDリリース 2005年10月29日、シネクイント他全国ロードショー

2005年カスタムメイド10,30」製作委員会

公開初日 2005/10/29

配給会社名 0026

解説


2004年10月30日、日本映画史上に伝説として語り継がれるであろう奥田民生『ひとり股旅スペシャル@広島市民球場』コンサートは開催された。アコースティックギターの弾き語りスタイルで、広大なグランドには奥田ただ1人しかいないという前代未聞の一大イベントに、スタンドは全国各地からつめかけた観客で超満員となった。コンサートは3時間半を超え、スタンドを何週もするウェーブが起こるほどの熱演に3万2千人が酔いしれた。
この映画はその中に木村カエラ演ずる主人公小林マナモがいたかもしれないという一つのイメージを起点として、連想ゲームのようにストーリーが発想されている。タイトルの「カスタムメイド10.30」も、“もうひとつの10.30”を広島在住・女子高生の青春目線で別注したという意味からきている。この音楽ライブと青春ドラマという2つの“10.30”は、音楽というキズナで奇跡的に結びつき、全く新しい音楽青春映画を生み出した。
 主人公の小林マナモにはテレビ神奈川「saku saku」のMCや、CM・TV・雑誌でのめざましい活躍、3rdシングル「リルラ リルハ」がチャート初登場3位と今一番注目を集めるシンガー・木村カエラ。妹役のみなもには、ロンドン在住の新人・西門えりか。このキュートな姉妹の凸凹ぶりは、球場でのエモーショナルなカットバックや、なんともユニークな屋上ダンスシーン等2人の魅力全開で、失われた10年のブランクを取り戻すキズナとなる“父ちゃんのメロディ”がダブパンクのリズムにのり、ギターソロからやがて演歌調のボーカルへとリレーする一連は圧巻だ。この小林姉妹を球場コンサートへ導く見習い天使・ジェフには、『アンテナ』『ニワトリはハダシだ』等で若手演技派俳優の評価を確固たるものにした加瀬亮。TV-CMから映画までANIKI監督作品の常連であり、『アバウト・ラブ/関於愛』等海外からのオファーも多い。翼がいつまでももらえない相棒の天使エディ役には、ベテラン俳優小倉一郎。『FROG RIVER』での中古レコード屋の店員と店長コンビ再びである。見習い天使2人組みに昇進試験を課すカミサマ役にミッキー・カーチス、マナモがバイトするキャバクラ新月の店長に寺島進、店員・タモツに近年映画での活躍がめざましい松山ケンイチ、バイト仲間である5次元カスタムズのメンバーに前田綾花、松井涼子、常連客ホリコシとして持ちネタを披露する柳沢慎吾、マナモが思いを寄せる美術教師に加瀬大周、カオスなディスカウント衣料店の女主人に宮崎美子等バラエティに富んだキャストが脇を支える。
 監督は、石井克人とのCM(「ロッテ アーモンド&マカダミア」「キリンファイア」)・映画(『茶の味』『ナイスの森−The First Contact』)でのコラボレーションで注目される新鋭・ANIKI。自らDJであるANIKIによる、音楽使いは新鮮かつ斬新であり、エンディングのHARDSOULによる奥田民生のHOUSE MIXなど、奥田民生の音楽に新たな解釈を提示した。
 音楽は、“父ちゃんのメロディ”フレーズを織り込んだテーマ曲を含むサウンドトラック作曲にCM音楽家の桜井順。劇中のギャルバン5次元カスタムズプロデュースにリトルテンポの土生“TICO”剛と内田直之。(彼らは5次元カスタムズに伝説のダブパンクギャルバンド「The Slits」をイメージしたという)
Kerri Chandlerのハウスミュージック、球場へ向かうダッジの車内目蘭子リックにマナモの心情を浮かび上がらせるCalmなど既成楽曲もカラフルに本作を彩る。
 しかし、なんといっても本作でのハイライトは奥田のきらめく楽曲群。この映画のために書き下ろした「Tripper」や沖縄でのシークレットライブ「ひとり旅人」でのユニコーン後期の名曲「雪が降る町」はもちろんのこと、後半すべてをかっさらうのは、ゆるいのに何故かすさまじい力感の奥田ライブパフォーマンスである。夕暮れに演奏される「イオン」アンビエントのみずみずしいこと!そしてマナモが不思議の国のアリスのように球場に吸い込まれてゆく、「息子」の万人の記憶を走馬灯のように呼び起こす力はなんなのだろうか?
 そこにはまちがいなく3万2千人の観客と音楽を媒介とした遺伝子レベルでの交信があり、音楽というマジックの、人種も時代も国境も越えることのできる不思議なコミュニケーション力の存在を改めて思い知らされる。たぶんそのような音楽論など億だには鼻で笑い飛ばすに違いないが、このライブの一瞬のキラメキを捉えた本作は、フィルムに固定され、死んでいる映画というメディアにとっては奇跡である。
 05年、邦画では音楽映画が多く製作され公開される。その多くは、音楽に夢中になる青春を描いたものである。一見それらに属するように見える本作だが、決定的に異なる点は、大いなる試みとして“音楽そのものの感動”を映画として捉えようとしていることにある。
さて、理屈はこれくらいにするとして、気持ちを全開に、音楽のグッドバイブレーションにのって拍手しよう、口ずさもう、そしてエンディングロールのあの3人のように踊ってしまおう!というのは正しい本作の楽しみ方のようだ。

ストーリー


両親の離婚がもとで、はなれぱなれに暮らしていた姉妹マナモ<木村力エラ>とみなも<西門力エラ>。10年、ぶりに一緒に暮らすことになったのだが、事あるごに大ゲンカ。姉マナモがバイトしているキャバクラ「新月」に妹みなもも働きはじめ、さらに2人の仲は険悪に。ある日マナモは、黒いダッジのサウンドシステムカーに乗る自称”天使”の2人組に出会う。この2人は奥田民生の10.30ひとり股旅@広島市民球場LIVEにマナモを行かせたがっている。(それが”天使”としての使命なのだ。)同じ日にキャバクラのイベントでバンドの演奏をやることになったマナモは、突然昔父親が歌っていた”父のメロディー”を思い出し、唄いだすがライブは混乱する。そんなとき、みなもが父のギターを携え、マナモを助ける。家族がバラバラで一人ぼっちだったマナモがはじめてみなもとつながった!いろんな気持ちが混じって、外に飛び出すマナモ!追っかけるみなも。そこへ天使二人組が登場。2人をサウンドカーで広島市民球場へ連れてゆく。奥田民生のライブが続く中、いろんなこと考えながらライブを見ている2人。マナモは気づく。そうか一あたしってお父ちゃんに会いたかったんだ一と思う。でも、そんだけ。そして、ライブは続く。奥田民生は自分のために歌ってくれているわけではないけれど、そのメロディがみんなをつなぎ、10.30今、この瞬間に時間も時代も国も全部超えて生きている実感をマナモは感じた。

スタッフ

監督:A.N.I.K.I.
エグゼクティブプロデューサー:日下孝明、酒匂暢彦、伊藤泰造、松江正俊、三尾和子
プロデューサー:滝田和人、黒木敬士
企画:原田公一、中村道生、丸山博久
脚本:no5、marumaru、AMKI
撮影:松島孝助(J,S.C.)
照明:吉角荘介
美術:いのうえしんじ
録音:坂門剛
VFXプロデューサー:土屋真治
音楽プロデューサー:緑川徹
サウンドトラック作曲:桜井順
助監督:足立内仁章

キャスト

奥田民夫
木村カエラ
西門えりか
前田綾花
松井涼子
加瀬亮
小倉一郎
寺島進
柳沢慎吾
松山ケンイチ
ミッキーカーチス

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