猟人日記
原題:YOUNG ADAM
冷たい空気には 女の温かいにおいがする
2003年/イギリス、フランス/93分/シネマスコープ/ドルビーデジタル 配給:ギャガ・コミュニケーションズ、エレファント・ピクチャー
2007年06月01日よりDVDリリース 2005年07月22日よりDVDリリース 2005年07月22日よりビデオリリース 2005年2月26日、【シアター】イメージフォーラムにて官能のロードショー
公開初日 2005/02/26
配給会社名 0025/0244
解説
救いのない日々、
僕は悲しみの中に溺れながら性愛に耽っていた。
倦怠から免れるために。
僕にとって生きることは、なにものも求めないことだ。
好色な女たちとの性交、刹那的な愛…それが自分だ。
僕はほんとうの愛を知らない。
氷のように冷たい水のなかの若い女性の死体
1950年代イギリス。ジョーはグラスゴーとエジンバラを行き来する貨物船の作業員。船内でいつも本を読んでいる、とても静かに。遠くを見つめた、冷たい青い瞳は、女たちを次々と虜にしていく。海辺で、街で、いつでもどこでも、若い女から、中年の人妻…声をかけてくる女たらの望みを叶えてやるしかし、彼は愛する術を知らない。たったひとのの恋人の哀切な情愛に対しても、ただ途存にくれるばかり。ある午後、彼は水に浮く若い女性の死体を発見する。事故か?自殺か?殺人事件か?
警察が捜査に乗り出し、容疑者が逮捕されると、少しずつ、死んだ女性とジョーのかつての関係が明らかになる。その間、ジョーと、人妻で船長のエラは密かに惹かれへ合うようになり、平底船の閉ざされた空間に、さらに閉所恐怖症的な緊張感が増幅する…
ストーリー
1940年代の終わり。グラスゴーのクライド川を行き来し、沿岸の街にさまざまな荷を届ける一隻の平底荷船。ジョー・テイラー(ユアン・マクレガー)は作家志望の青年だが、現在はその船上で雑役人として働いている。船の所有者はレズリー(ピーター・ミュラン)という男。レズリーは妻のエラ(ティルダ・スウィントン)および息子のジムと船上で仲良く暮らしており、ジョーもまた彼らと侵食をともにしている。
いつものように船上で仕事をしていたジョーがある漂流物を発見するところから物語は始まる。流れてきたのは死体だった。しかも、薄いペティコートをまとっただけの裸同然の女性の死体。ジョーとレズリーは死体を引き上げ、警察に引き渡す。その後、三人の関係に少しずつ変化が生じる。それまでジョーにとってレズリーの妻、エラは、生活臭にまみれ、およそセクシュアリティを喚起するところのない女性だった。ところが、水死体を発見した日、この出来事が何かの作用を及ぼしたかのごとく、突如としてジョーはエラを〈女〉として意識しはじめる。ジョーは手管を弄し、エラを誘惑する。そして夜になってレズリーが船を離れ、パブで酒を飲んでいる隙についに関係を結んでしまうのだった。
ジョーはこの亡くなった女性に関心を寄せている。それはなぜなのか?ジョーはこの女性と何らかの接点をもっていたのか?謎めいた雰囲気のなか、ジョーとエラの不倫の物語が展開する。
ジョーとキャシー(エミリー・モーティマー)はかつて恋愛関係にあったが、別れてから数カ月が経過していた。水死体を発見する前日のこと、街に出たジョーはキャシーと偶然、通りで再会する。二人はカフェに入り、それから川のほうに向かう。このほうが気持ちが心地よいから、と戯れに服を脱ぐキャシー。やがて二人の間に軽い諍いが生じ、ふとした弾みで足を滑らせたキャシーは土手から川に転落する。極度に水を恐れ、泳ぎもできないキャシーは、水中に落下したまま、一度も浮かび上がってこなかった。ジョーはキャシーが溺れ死んだにちがいないと判断する。それはまぎれもない事故だったのだが、警察によって調べられることを嫌い、また状況からして殺人の嫌疑さえかけられかねないと判断したジョーは、当局に通報せず、自分がその場にいたことを示す証拠の一切を始末して川岸を立ち去る。その翌日、自らの手で水死体と化したキャシーを引き上げることになるとは夢にも思わずに。
事態は予想外の方向へと向かう。キャシーの死を殺人と見なし、捜査に着手していた警察は、やがてダニエル・グリーンなる配管工を逮捕する。グーンはキャシーと愛人関係にあり、キャシーはグーンの子を身ごもってさえいた。新聞を通じ、この事実を知ったジョーは激しく動揺する。グーンが無実なのは明らかだ。だが、もし唯一の証人である自分が警察に出頭して事実を語るならば、自らに殺人の嫌疑が及ぶのは免れえない。一方でジョーとエラの関係は、とうとう夫のレズリーに露見してしまう。レズリーが船を去り、故郷の母親のもとに帰ってしまったため、ジョーとエラはさながら夫婦のように船上での暮らしを続ける。エラはジョーとの結婚を願っていたが、ジョーが妹のグウェンドリンとも関係をもったことを知ると、ジョーを見捨て、夫とよりを戻すべくレズリーの故郷へと向かうのであった。
船から降りたジョーは、パブで偶然知り合った男の家に間借りしている(男は夜警の仕事をしているが、ジョーはここでもその妻と関係をもっている)。ダニエル・グーンの裁判が開始され、ジョーは公判のたびに傍聴に出かけていく。グーンの有罪は動かしがたく、死刑判決が下されるのはまちがいないと受け止められていた。ジョーの苦悩は続くが、一切の手を打てないまま時間が流れていく。やがてグーンに審判が下される日がやってくるのだが……。
ジョーは、常にどこかに向かい動き続けている。用のないものは切り捨て、過去は呪縛でしかなく、すべての瞬間に生まれ変わるという考えに拘る。それでも、過去を消し去ることはできない、彼を献身的に支えていたキャシーはとくに。彼女がいなくなってほっとしているのか?罪の意識を感じているのか?
近い将来、ジョーはひとを愛することの大切さ、ひとを失う切なさを知ることになる……
スタッフ
監督:デヴィッド・マッケンジー
製作総指揮 ロバート・ジョーンズ
製作:ジェレミー・トーマス
原作:アレグザンダー・トロッキ
「ヤング・アダム」(河出書房新社刊、浜野アキオ訳)
撮影:ジャイルズ・ナトゲンス
音楽:デヴィッド・バーン(サントラ:HEADZ)
キャスト
ユアン・マクレガー
ティルダ・スウィントン
ピーター・ミュラン
エミリー・モーティマー
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