原題:LAND OF PLENTY

2004年第61回ヴェネチア国際映画祭  コンペティション正式出品ユネスコ賞受賞

2004年9月10日イタリア公開

2004年アメリカ/エモーション・ピクチャーズ=インディジェント =リヴァース・アングル・インターナショナル製作 配給:アスミック・エース

2005年10月22日、シネカノン有楽町ほかにて全国順次ロードショー

公開初日 2005/10/22

配給会社名 0007

解説



巨匠ヴィム・ヴェンダース監督最新作、
優しい感動が胸に広がる『パリ、テキサス』以来の最高傑作

あなたは今、何をしていますか?
あなたは今、誰を愛していますか?
あした、あなたは何をしますか?

◆生きている限り、新しい明日が、必ず訪れる

『都会のアリス』、『ベルリン・天使の詩』、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』。数々の名作を世に送り出してきた巨匠ヴィム・ヴェンダースが、『パリ、テキサス』以来の最高傑作を作り出した。

亡くなった母の手紙を伯父に届けるため、10年ぶりに故郷アメリカの地を踏む姪、ラナ。誇り高き自由の地アメリカを1人で守ろうとする伯父、ポール。世代も価値観もまったく異なる2人は再会し、ある事件をきっかけに、アメリカを横断する旅に出る……。

2004年ヴェネチア国際映画祭に正式出品。正式上映では拍手喝采が鳴り止まず、ユネスコ賞を見事に受賞。

生きている限り、新しい明日が必ず訪れる。その、貴重な”明日”、あなた自身はどこで、誰と、何をしますか? そして誰を愛しますか? 「生きる、とはどういうことなのか?」ヴェンダースの想いが優しく、力強く、心に染みる愛の感動作。

◆伯父さん、あなたに会うため、
10年ぶりに故郷アメリカに帰ってきました ─

アメリカで生まれ、アフリカとイスラエルで育った少女ラナは、10年ぶりに故郷アメリカに帰ってきた。長年会っていない伯父に亡き母の手紙を届けるために。ロサンジェルスの伝道所に住み始めた彼女は、ホームレス支援活動にのめり込む。伯父ポールは誇り高き自由の地、アメリカを1人で守ろうとしている。ヴェトナム戦争のトラウマに悩まされ、友人もなく、家族もいない。アラブ系のホームレスが殺される現場に居合わせた2人は再会する。ラナはその遺体を残された兄、ジョーに届けるため、ポールは事件の真相を突き止めるため、一緒にアメリカを横断する旅に出る。ロサンジェルスから最果ての地トロナを経て、夢と悲しみの町ニューヨークまで。それはこのはかない世界で生きるということ、愛するということへの答えを出す、明日へと続く旅……。

◆数々の素晴らしい賞を受賞した巨匠、
ヴィム・ヴェンダース監督最新作

『都会のアリス』、『まわり道』、『さすらい』、”ロードムービー3部作”と呼ばれるこの3作で一躍時の人となったヴィム・ヴェンダース。以降、『ことの次第』でヴェネチア国際映画祭金獅子賞(第1位)、『パリ、テキサス』でカンヌ国際映画祭パルム・ドール(第1位)、『ベルリン・天使の詩』でカンヌ国際映画祭監督賞、『時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!』でカンヌ国際映画祭審査員グランプリと大きな賞を続けて受賞する快挙を成し遂げる。続いて『ミリオンダラー・ホテル』でヴェネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞、音楽ドキュメンタリー『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』は社会現象を引き起こした。本作は2004年のヴェネチア国際映画祭に正式出品。ユネスコ賞を受賞。サム・シェパード主演の”DON’T COME KNOCKING”も2005年カンヌ国際映画祭に正式出品され、相変わらずの活躍を続けている。

◆生きる喜び、そして未来への希望
忘れられない名作が誕生した

『ランド・オブ・プレンティ』は、巨匠ヴェンダースがどうしても撮りたいと願い、16日間という奇跡的な短期間で、手持ちカメラを使って一気に撮り上げた作品だ。ロサンジェルスの病んだ都会の風景を抜け出すと、広大で寂しく、でも温かいアメリカの原風景が現れる。人々を助けたいと願いながらも、自分自身がどう生きていくか、悩み救いを求めている少女ラナ。妄想に取り憑かれ、アメリカを守るためだけに毎日を費やす男ポール。ともに旅をすることで、男は自分の毎日が虚しい行為の積み重ねであったことを知り、少女は心の奥に密かに抱える問題から、少しずつ解放されていくのを感じる。旅の最後に2人が見せる穏やかな表情に、ラストで思わず涙がこぼれ落ちる。ヴェンダース自身が、”今、一番重要な事柄を映画にした”、と明言。アメリカで、日本で、世界で、誰もがたった1人で生きている。嬉しければ笑い、時には傷つき、悲しい涙を流している。でも、決して人間は1人ではない。そんな人間に対する深くて優しい眼差しが、忘れられない名作を生み出した。

◆心に打ち響くキャスト、そして感動の余韻を
いつまでも残すサウンドトラック

聡明で無条件に世界を信じる無垢な少女、ラナにはTVシリーズ「ドーソンズ・クリーク」のミシェル・ウィリアムズ。ヴェンダースが脚本の段階からミシェル・ウィリアムズを想定して書いたというだけあり、慈悲深いその表情は強烈な印象を残す。そして心に傷を抱え、大きな苦しみを背負った悲しい男、ポールを『エンド・オブ・バイオレンス』のジョン・ディールが熱く演じる。ジム・ジャームッシュ監督作『ストレンジャー・ザン・パラダイス』の主役を演じたリチャード・エドソン、そして『ロッキー』のトレーナー役が未だに忘れられない名優バート・ヤング等が脇を固める。また、本作の主役のひとつである骨太なサウンドトラックには、レナード・コーエン、トム&ナクト、デイヴィッド・ボウイ、トラヴィスたちが参加。トム&ナクトの繊細で美しい楽曲の数々、そして映画のタイトルになり、ラストに堂々と流れるレナード・コーエンの名曲「ザ・ランド・オブ・プレンティ」は涙なしでは聴けない感動を残す。

ストーリー



◆アフリカ、イスラエルで育ち、
故郷アメリカに帰ってきた少女

やわらかい陽が差し込むロサンジェルスの街。大通りに古びたヴァンが停まっている。そのヴァンは改造され、天井から監視カメラが街並みを覗いている。監視用機材が所狭しと置かれた車内、短くなったタバコをふかしながら、男がモニターを覗いている。荒んだ街の様子を映し出している画面を見ながら男は呟く。「あの攻撃からまだ2年と1日、警戒レベルは依然高いが、人々の危機意識は後退している」。

男の名はポール。ヴェトナム戦争で負傷した後遺症に長年苦しめられ、誇り高き自由の地アメリカを1人で守ろうと必死に警備を続けている。さらに、9.11に起こった事件が彼の”トラウマ”を呼び起こす。一方、イスラエルのテルアビブ空港を出発した飛行機には少女が乗っている。ロサンジェルス到着のアナウンスを聞きながら彼女は呟く。「神様、長い間遠く離れていた私を、生まれ故郷に連れ戻してくださってありがとう」。

少女の名はラナ。アフリカとイスラエルで10年間過ごし、故郷アメリカへと帰ってきた。バックパック1つで降り立った彼女が見たのは、飢えで苦しむホームレスが溢れる街だった。宣教師の父を持つラナは、ダウンタウンの伝道所で生活を始める。そこでホームレスたちの支援活動にのめり込む一方で、亡き母から預かった大切な手紙を渡すため、伯父ポールを探していた。

◆LAのダウンタウンで起こる、
謎のアラブ人ホームレス射殺事件

友達や家族と連絡を絶っている自称母国警備員のポールは、段ボール箱を抱えた怪しげなアラブ人を発見する。箱に”ボラックス”と書かれているのが妙に気にかかる。一度は男を見失ったポールは、伝道所で見つけて安心する。そして、日が落ちて暗くなった頃、事件は起こった。ダウンタウンの道端で、数人のアラブ人が焚き火を囲みながら話している。そこへゆっくりと、黒い大型車が通りかかる。突然、その車からホームレスめがけて火炎瓶が投げつけられた。燃えさかるテント、逃げ惑うホームレス。その時、一発の銃声が鳴り響き、1人の男が倒れた。その男こそ、ポールが追っていたアラブ人だった。彼を抱きかかえたポールに、「トロナ」という言葉を残して男は息を引き取った。伝道所でその遺体を見たラナは泣き崩れる。そこへポールが近寄り、声をかけた。「母さんにそっくりだな」。驚いた表情のラナ。探していた伯父さんにやっと出会えた。

◆”トロナ”へ向かう、目的の違う伯父と姪

遺体の身元が判明、最後に残した言葉”トロナ”は、死んだアラブ人の兄の住む町の名前だった。ポールは事件の真相を究明するため、ラナは遺体を兄に届けるため、伯父と姪はともに出発する。目的、年齢、性別、そして生きてきた過程も、何もかも違う2人は衝突するが、ヴァンは遺体を乗せてトロナへと向かう。見渡す限り砂漠が広がる、最果ての町トロナ。怪しげな建物を発見したポールはヴァンを停める。裏にまわると、”ボラックス”の段ボールが山積みになっていた。不審な2人組が段ボールを車に積み込み、走り出した。ポールはその車を追っていく。一方、ラナは遺された兄の家を見つけた。兄の名はジョーといい、彼女を家の中に優しく迎え入れる。射殺された弟ハッサンの幸せそうな写真を見せながら、昔話を始めるジョー。ラナは微笑みを浮かべて、その写真に見入る。

◆ニューヨークには何が待っているのか?

ポールが追う車は、一軒の建物に到着した。アジトと判断したポールは、完全武装し、潜入を図る。銃を構え、注意深く建物内へと進んでいき、一番奥にある部屋にたどり着いた。飛び込んだポールの目に入ったのは、薄暗い部屋で寝ている老婆だった。ポールを見た彼女は笑いながら言う。「ヘンな格好ね」。愕然と立ちすくむポール。もちろん、そこはアジトなんかではなかった。ラナと合流したポールは、ハッサンや”ボラックス”のことをジョーから聞き出す。貧しい生活を送っていたハッサンは、誰かに命を狙われるような重要人物ではない。”ボラックス”も工場に洗剤として売っていただけだ。車に戻ったポールに、射殺犯確保の報が入る。犯人はドラッグで酩酊したただの若者で、背後関係などまったくない犯行だった。ポールの読みは完全に外れた。苦しみに耐えながら費やした時間、必死になって追い求めてきたすべてのことが無駄だった。そんな時、ラナから受け取った手紙を読み始めるポール。ラナの最愛の母であり、長い間連絡を絶っていた自分の妹からの手紙を。そして、伯父と姪はヴァンを走らせる。すべてを変えてしまった9.11のニューヨークへと導かれるように、祖国アメリカを横断する旅に、長年苦しめられた”戦争のトラウマ”から解放されるため、一瞬にして命を落とした罪なき人々の”声”を聞くため、それぞれの答えを探しに……。

スタッフ

監督:ヴィム・ヴェンダース
製作:インア・リー、サムソン・ミューケ、ゲイリー・ウィニック、ジェイク・エイブラハム 
製作総指揮:ピーター・シュウォーツコフ、ジョナサン・セリング、キャロリン・ラプラン、ジョン・スロス
ストーリー:ヴィム・ヴェンダース、スコット・デリクソン
脚本:マイケル・メレディス、ヴィム・ヴェンダース
撮影監督:フランツ・ラスティグ
編集:モーリッツ・ロービ
プロダクション・デザイナー:ネイサン・アマンドソン
衣装:アレクシス・スコット
オリジナル・サウンドトラック:トム&ナクト
音楽総監修:アレックス・ステイヤーマーク
音楽監修:リンダ・コーエン
キャスティング:エレン・ルイス、ヴィクトリア・トーマス
アート・ディレクター:ニコル・ロバート、ウィリアム・バッジ
写真:ドナータ・ヴェンダース

キャスト

ミシェル・ウィリアムズ
ジョン・ディール
ショーン・トーブ
ウェンデル・ピアース
リチャード・エドソン
バート・ヤング
ユーリ・Z・エルヴィン
ジェリス・リー・ポインデクスター
ロンダ・スタビンス・ホワイト
ヴィクトリア・トーマス
マシュー・キンブロー
ポール・ウエスト
ジェフ・パリス
クリスタ・ラング
ウォレン・スターンズ
バーナード・ホワイト
グロリア・ステュアート

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