原題:STORMY WEATHER

心の扉を閉ざし、話すことをやめたロア。 純粋さゆえに、コーラは彼女を救いたいと思った。

東京国際女性映画祭正式上映作品 2003年カンヌ国際映画祭ある視点部門正式出品 2003年トロント国際映画祭正式出品

2003年/ランス=アイスランド=ベルギー/90分 配給:ビターズ・エンド

2005年07月22日よりDVDリリース 2005年1月22日、シャンテ シネにてロードショー

公開初日 2005/01/22

配給会社名 0071

解説


「私をこの世界から連れ出して」
声にならない叫びをきいたとき、あなたはどうするだろう?
ただ彼女を救いたい、そう一心に願ったコーラの心の軌跡。

差し伸べられたその手は、きっとあなたの心にまで届くはず——

もしもあなたの身近に、心に病を持つ人がいたら、どう向き合いますか?「私を助けて」そんな声を聞いたなら、あなたはどうするでしょうか?『陽のあたる場所から』はそんな心の叫びを聞き、ただ相手を救いたい、そう一心に願い行動を起こした若い女医の心の軌跡を描いた物語です。誰もが心にもろさを持ち合わせ、きっと一人では生きていけないこの世界で、誰かを思いやり、誰かと深く分かり合おうとすることの大切さ。そこから生まれる一筋の希望が、世界中の観客の心を温かく包み込んでいます。

一途な思いを胸に、海を渡りアイスランドヘ

若くて聡明なコーラは、病院に通う研修医。ある日コーラは、何も喋らず、名前も身元も分からない女性患者の担当になった。頑なに心を閉ざした彼女を何とか救いたいと、コーラは賢明に話しかけ、つき添う。やがて二人は会話ができないにも関わらず、次第に心を通わせあうのだった。そんな矢先、彼女の身元が分かり、故郷へと連れ戻されてしまう。名前はロアで、アイスランドから失踪していたのだ。ようやく扉を開きかけたロアの心。ロアを救えるのは私しかいないと、コーラは一人アイスランドヘと旅立つ…。

凛とした美しさで、スクリーンに映える女優エロディ・ブシェーズ

コーラを演じるのは『天使が見た夢』(98)でカンヌ映画祭主演女優賞、セザール賞をW受賞したエロディ・ブシェーズ。女優としてのステップを着実に踏みながら、本作『陽のあたる場所から』では、若く自信に満ちた女医が、自分の無力さに戸惑いながらもやがて強く成長してゆく姿を繊細に演じ、「『天使が見た夢』以来の渾身の演技!」と高い評価を得ている。また、ロアを演じるディッダ・ヨンスドッティルは本作が映画初出演となるアイスランドの詩人。心にもろさを持ち、話すことをやめた女性という難しい役どころを体当たりで演じている。

人はどこまで人を救えるのか——慈しみのまなざし

監督は、ドキュメンタリー出身のソルヴェイグ・アンスパック。大学で心理学を専攻し、つねに「人と他人との関係」に興味があると語るアンスパックは、臨床心理学を学ぶ研修中に見た新聞記事で本作の題材を得た。アメリカ人の父親とアイスランド人の母親を持ち、アイスランドで生まれ、フランスで教育を受けるという生粋のコスモポリタン。大都市の雑踏と、故郷であるアイスランドの荘厳な風景の下、ゆっくりと心を通わせあい、やがて別れを迎える二人の女性の心の絆を、時に厳しく、時にやさしく、慈愛に満ちたまなざしで描き出した。また、アンスパック監督の手腕を高くかったダルデンヌ兄弟(『ロゼッタ』『息子のまなざし』監督)が製作に参加、同監督作品の撮影を手がけるブノワ・デルヴォーがカメラを担当している。

ストーリー


研修医として働くコーラは、ある日病院で一人の女性患者と出会う。何を問いかけても答えず、身分証明書も持たない患者。物陰からじっと見つめる目線を感じ、コーラもいつしか彼女の存在が気になるようになる。
テーブルにもたれかかり、陽のあたる部屋で物思いにふけりながら、突如、嵐の音を聞いた患者は、やがてパニック状態に陥って暴れ出してしまう。
コーラは何とか心を開かせようと、祖父母に育てられた自分の身の上を語ったり、彼女が望むままに、患者の出入りが禁止されている医局に入れたり、勤務時間を越えてゲームの相手をしたりと熱心に付き添うのだった。

疲れ果ててアパートに帰るとボーイフレンドのロマンが待っていた。コーラの誕生日を祝おうと仲間とパーティを催してくれていたのだ。自分の誕生日さえ忘れる始末…。そんなコーラをロマンは、やさしく抱きしめてくれる。
その夜、ベッドで眠っている二人の枕元で、電話が鳴った。無言の電話。それは女性患者からの電話だった。
患者に、プライベートの電話番号を教えるという医師としては許されない行為。止めるロマンを振り払い、夜更けに病院へと向かうコーラ。

冬空の晴れた日。患者とともに森へと外出したコーラは、大木に夢中になっている彼女から隠れ、そっと様子を木陰から探る。大きな森の中で一人にされた患者は泣き喚き、ついに言葉を発するのだった。「コーラ!」それはコーラを探す患者の必死の言葉だった。

コーラは祖父の住む家へ、女性患者を連れて行く。彼女の風貌を見て、訝しがっていた祖父は、いつのまにか彼女と打ち解け、チェスをしていた。しかも彼女がなんと祖父を相手に打ち負かしているのだ。そんな才能に驚きながらもコーラは、二人の姿を見て微笑ましく思うのだった。

いつものように病院へ出勤したコーラ。しかし女性患者の姿が見えない。遂に彼女の身元が判明し、故郷へ強制送還されたのだ。彼女の名前はロアで、アイスランドから海を渡り、失踪していたのだった。治療も半ばで連れ去られたロア。もう少しで、治るかもしれないのに。強制送還という措置に納得がいかず、コーラは一人アイスランドまでロアを訪ねる旅に出た。ロアを再度自分の病院に連れ翼し、治療を続けるために…。

アイスランド、ウエストマンナ諸島。メモを片手に、海辺の村の病院を訪ねるコーラ。しかし、その病院には精神科はなく、担当医だというフリドキンソンに目的を告げると、ロアには入院など必要ないという。そんなフリドキンソン医師の反対を押し切り、コーラはロアの家を訪ねる。そこには、夫と赤ん坊と暮らすロアの姿があった。しかもロアは訪ねてきたコーラには目もくれず、ただ目の前の家事を黙々と進めるだけ。私がいなけれぱ、ロアはだめになってしまう…そんな思いで、海を渡り、遂に島までやってきたローラの思いは一瞬にして踏みにじられたのだ。みじめさと屈辱を覚えたコーラはすぐに帰路へと向かおうとするが、悪天候で船が出ない。荒れる狂う海、嵐のような風、凍えるような寒さ、そして疲れ。見知らぬ土地でたった一人ぼっちになったコーラは、この偉大な自然と共存する村においては、あまりにも無力だった…。

スタッフ

監督:ソルヴェイグ・アンスパック
プロデューサー:パトリック・ソーベルマン
共同プロデューサー:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
:バルタザール・コルマウクル
脚本:ソルヴェイグ・アンスパック
:セシル・ヴァルガフティグ
:ピエール=エルヴァン・ギヨーム
:ロジェール・ボーボ
撮影:ブノワ・デルヴォー
音響:エリック・ボワストー
第1助監督:フランソワ・ラモッテ
美術:マリー・ルガッレソク
編集:アンヌ・リージェル
音編集:マティルド・グロジャン
進行:マリアンヌ・フリシュー
ヘア&メイク:カトリーヌ・ブリュション
調整:フランコ・ピスコポ
制作:フィリッブ・グロフ
:ミレイヤ・サンペール
オリジナル音楽:アレクサンドル・デスプラ

キャスト

コーラ:エロディ・ブシェーズ
ロア:ディッダ・ヨンスドッティル
エイナー:バルタザール・コルマウクル
グンナー:イングヴァール=E.シーグルズソン
ロマン:クリストフ・セルメ
コーラの祖父:ナタン・コガン

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