夢に向かう子供たちと母との、涙と笑いと愛をつづる

にいがた映画祭正式出品作品::http://www.info-niigata.or.jp/~eigasai/ 秋田コメディ映画祭::http://www.akita-comedy.com/ リージョナル・フィルム・フェスティバル2004正式出品作::http://www.riff.jp/

2004年/日本/カラー/ヴィスタサイズ/ドルビーSR/107分 配給:マジックアワー、ステューディオスリー

2006年05月26日よりDVDリリース 2005年12月17日、シアター・イメージフォーラムにてお正月ロードショー 2005年10月29日、新潟・市民映画館シネ・ウインド、ユナイテッド・シネマ新潟、ワーナー・マイカル・シネマズ新潟にて先行ロードショー!

公開初日 2005/12/17

配給会社名 0651/0407

解説


じゃあ、私のことは、いったい誰が愛してくれるの?
シングルマザーの美由紀は、10歳の息子ケイジをキッズ・モデルとして成功させようと、幾つもの習い事、オーディション、そして自分の仕事と、毎日をあわただしくも元気一杯に過ごしている。このいささか無邪気な母親を、少し冷ややかに見つめつつも、ケイジはけなげに生きている。「予定を詰め込むのが大好きで、手帳の空欄から運が逃げていく」と言うママにつきあってあげているのだ。こんな2人の関係は、ママの恋人の登場でさらに溝が深まっていくが、一方、恋に仕事に忙しい母親の知らないところでケイジはさまざまな経験をしていく。
子供は大事だけど、母親だって恋をしたいし、時には誰かに頼りたくなる。女性としての自然な気持ちに従う美由紀に、幸せは訪れるのだろうか?

愛はここにある
「人生はクジ引きの連続」が口癖の美由紀は、目的を叶えるためには嘘も辞さない、少々強引な女性。でもその裏側では、ひとりで子供を育てる不安に揺れ動いている。そんなママを冷静に眺めながら、ケイジもまた友達や恋、パパのことなどで傷ついていた。
シングルマザーの母親と息子を描いた映画には秀作が多い。ジョディ・フォスターの初監督作品『リトルマン・テイト』に始まって、コン・リー主演の『きれいなおかあさん』、ヒュー・グラント主演の『アバウト・ア・ボーイ』、ヒットの記憶も新しい『Dearフランキー』など、奮闘する母親の傍らで、母親が思っている以上に成長していく息子たちを描いて感動を呼んできた。本作もまたその系譜に連なり、時に心が行き違いながらも、強い絆で結ばれている美由紀とケイジの姿が、ラストで深い感動を引き起こす。

実力派キャストが勢揃い
主人公の美由紀を演じるのは、矢口史靖監督、平山秀幸監督、中江裕司監督、SABU監督など、日本映画の俊英たちに絶大な信頼を得て、映画女優として成長をつづけてきた西田尚美。今回は、時に自分本位にも思える女性の逞しさと繊細さを真摯に演じて、演技の幅をさらに広げている。息子のケイジ役には、映画初主演の塩顕治。大人たちの台詞に対する生のリアクションを大切にするため、彼には台本を渡されずに撮影が行なわれたが、その効果は期待以上に子役離れした透明な演技として表れた。また、美由紀の前夫に松岡俊介、現在の恋人に野村祐人、そして生き生きと仕事に打ち込む有名ファッションデザイナー役に鈴木砂羽、また福岡監督作品常連の菅田俊、筒井真理子と、日本映画に欠かせない俳優陣が脇を固めている。

青い空がある限り──全編オール新潟ロケを敢行
いじめ、万引き、倒産、リストラ、虐待、自殺など、深刻な社会問題を背景に描きながらも、からっと突き抜けた空気に包まれた本作は、全編、新潟で撮影された。冒頭の澄みきった青空を飛行機が上昇していく場面を始め、登場人物たちはたびたび空に近い場所、ビルの屋上にあがる。これまで『danger de mort(ダンジェ)』「空が、近い」などで斬新な映像で評価を得てきた福岡芳穂監督は、新潟の空と雄大な山々を背景にして、登場人物たちの傷ついた心を“解放”させていくのだ。
また、劇中に印象的に流れるのが、岩代太郎(『殺人の追憶』『血と骨』)のピアノ。静かに心に染み入ってくる美しく切ない旋律が、新潟の風景に溶け込んでいく。

ストーリー



晴れ渡った大空を、飛行機が飛翔していく。
「人生はクジ引きの連続で、当たりの日もあれば外れの日もある」──ママの口癖だ。当たりの確率が高いからってママは白い服を着せたがるけど、本当は僕は黒い服が着たかった……。
 今度のオーディションに合格すれば、人生を変える大当たりだとママは言う。パリコレにも出られるかもだって。オーディション会場で、好きな服を選べと言われる。僕が手を伸ばした黒い服を、背の高い男が乱暴に横取りする。高原タカシ。有名モデルらしい。
 女の子の着替えを覗いたと咎められそうになって、急にお腹が痛くなった僕がトイレから戻ると、たった1枚残っていた白い服には黒々と足跡がつけられていた。僕は、わざともっと踏みつけて、オーディションに向かう。そのほうがかっこいい。他の大人たちは怒ったけど、デザイナーの江田島さんは面白がってくれる。
 学校で、僕はツヨシたちにいじめられていて、お小遣いも取られる。僕は、商店街で漫画とコロッケとパンをくすねて、秘密基地に行く。使われなくなった駅のホームに腰掛けて、コロッケ・パンを食べながら漫画を読んでいると、オーディションで知り合ったアキラが現れる。同盟を組んで、2人でビッグになろう、だって。
「エリカ、知ってる? ビルの屋上にいて、一緒に飛ぼうよって誘う、女の子の霊。自殺したがってる奴らのアイドル」
 それは去年死んだ13歳の女の子のことだ。オーディションで、一緒のピアノ教室に通っている女の子のシオリも、エリカのことを聞いてきた。
 僕は1次審査を通過した。ママは青山さんという男の人とつきあっているようだ。パパに会えると言われて行ったレストランにいたのは、その男だった。僕はわざと服を汚してレストランを出る。でも奴の名刺をもらおうと店に戻ると、ママが言っていた。
「……私の趣味を押し付けているだけ。なんとなく派手な世界だから、気晴らしができて、そうすると、ちょっとケイジにも優しくできて。でも本当は、私、どこかでケイジのこと邪魔だって……」
 僕はパパに会いに行く。あの男、青山を殺してと頼んだけど、無駄だった。アキラの知り合いのヤクザに頼みに行くと、父親の悪口を言われたアキラがキレてしまう。
 僕もアキラも、高原タカシも、最終審査に残った。海辺でスチル撮影をする。別の日、「お前なんて、生きてる価値、ねーんだよ」と言いながら、タカシが棒で僕を殴る。
 お母さんが再婚することになったアキラは、東京に越すことに。その話を聞いている時、パパが来る。2人で喫茶店に行くと、パパは昔ニュージーランドに行った時の話をしてくれる。プールつきの家を建てる約束を思い出したパパと、建売住宅用の敷地で穴を掘っているところを、持ち主にすぐに見つかってしまう。ビルの屋上でパパが言う。
「愛してる。ずーっと愛してる」。僕を抱きしめて、「もう帰れ」と言って、封筒を手渡す。嫌な予感がした僕は、道路から屋上に引き返す。でもパパは、空に飛んでしまった……。
 お葬式の帰り、ママは食べ放題のレストランで、怒りながらモリモリ食べる。
何日かして、ママは急に最終オーディションに出るのはやめて、青山さんと東京に行くと言い出す。僕はママにパパが最後にくれた手紙を見せて、東京に行くことに賛成する。
「君はパパは2人も要らないと言いましたが、君にとってのパパは1人だけです。青山さんが君にとっての1人だけのパパです。ママと3人でいっぱい幸せになってください」
 青山さんが待っている東京に行く日。空港に向かうタクシーを僕は途中で降りて、最終オーディション会場に行く。でもまた高原タカシにボコボコにされて、屋上でのびてしまう。エリカが見える。「こっちにおいでよ」と誘っている。いつの間にか屋上の縁に立っている僕。そこに取り乱したママが来て、必死に叫んでいる。そして…。

スタッフ

プロデューサー:森重晃
監督:福岡芳穂
脚本:橋本裕志、李正姫
企画製作:石井渉
撮影:柴主高秀
制作:ステューディオスリー

キャスト

西田尚美
塩顕治
松岡俊介
野村祐人
伊山伸洋
荘司アレク
泉綾香
牧野有沙
菅田俊
筒井真理子
正名僕蔵
大河内浩
あがた森魚
鈴木砂羽

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