乱歩地獄
2005年/日本/ 配給:アルバトロス・フィルム
2005年11月5日、シネセゾン渋谷・テアトル新宿にてロードショー!
公開初日 2005/11/05
配給会社名 0012
解説
まったく新しい乱歩ワールドが誕生した!
大正〜昭和初期のモダニズムをたっぷり吸いこんだ、日本屈指の怪奇幻想ミステリー……そういった江戸川乱歩の小説のベーシックな魅力を踏まえたうえで、“究極のラブストーリー”としての側面を全面的に咲かせたのが、この『乱歩地獄』だ。人間の深淵、あるいは男と女の関係の果てまでを追求したエモーションと、圧倒的なビジュアルで、いまだかつて誰もメガホンを取らなかった4つの作品を、大胆に脚色して映画化。世にも美しい愛の地獄絵巻が展開する。
オープニングを飾る『火星の運河』は、幻想的な悪夢譚。この世のものとは思えぬ映像美が、映画世界の入り口となる。続く『鏡地獄』は、鏡の魔性に魅入られた美青年の狂気を、幾多の像が乱反射する魔術的な映像で描く。そして『芋虫』は、両手足やほとんどの身体機能を失った夫と、彼に性的暴力を加える妻という、ふたりの歪んだ愛のかたちをとことんまで見つめる凄まじい展開。ラストに控える『蟲』は、あこがれの女優を完全に手に入れようとする男の壮絶な一方通行の恋を、ユーモアを交えて描きだす。
4話オムニバスの構成だが、テーマやモチーフは全編を通して一貫した流れがあり、ひとつの長編として滞りなく鑑賞できるのが、この映画の大きな特徴である。
監督陣には個性派の鬼才が結集した。『火星の運河』は、PV&CM界のビッグネームである映像ディレクター、竹内スグル。ドラマ作品ではTVシリーズ「私立探偵 濱マイク」の第10話「1分間700円」で、スタイリッシュな映像と共に語りのセンスが高く評価され、今回、満を持しての劇場用映画デビューとなる。『鏡地獄』は映画、TV、舞台など幅広いメディアで演出家として活躍する異端のベテラン、実相寺昭雄。『屋根裏の散歩者』に続く『D坂の殺人事件』以来、7年ぶりに江戸川乱歩作品を手掛け、トリッキーな映像感覚とエロスを堪能させてくれる。『芋虫』はピンク映画界の鬼才、佐藤寿保。性を通して人間の根源に迫るエッジな資質をフルに発揮した。なお、音楽には大友良英を迎えている。『蟲』は、ストリート・センスあふれる作風で若者にカリスマ的人気を誇る漫画家、カネコアツシ。代表作「BAMBi」は映画化のウワサも立っていたほど、映画に近しかった彼が、今作で待望の映画監督デビューを果たした。
キャストには時代のトップを走る面々をそろえている。ある時は名探偵・明智小五郎、ある時は厭人病者の柾木愛造……と役柄を変え、唯一全編にわたって登場するこの物語の“幻視者”は、いまの日本映画界をリードする浅野忠信。『鏡地獄』で美貌の青年を演じるのは、TBSドラマ「いま、会いにゆきます」や舞台「KITCHEN キッチン」、数々の映画出演など、いま最も期待される新鋭俳優、成宮寛貴。『芋虫』で屋根裏の監視者を演じるのは、『青い春』や『恋の門』などをヒットに導き、日本映画界を代表する若手俳優となった松田龍平。いずれも独特の色気を備えた男たちが、各エピソードで主演を務める。
脇をかためるのは、今最も注目されるダンサーの筆頭である森山開次。同世代女性の圧倒的な支持を受ける『blue』『とらばいゆ』の市川実日子。実相寺作品には欠かせない存在の寺田農。『ユダ』の主演が鮮烈な印象を残した岡元夕紀子。『ピストルオペラ』『誰も知らない』など、その美少女ぶりで世を魅了する韓英恵。『殺し屋1』『ヴァイブレータ』など、いまの日本映画界には欠かせない若手の名優、大森南朋。幅広い分野で多彩な才能を発揮し、女優としては数多くの演出家に愛されるミューズ的存在の緒川たまきなど。
プロデューサーは、『殺し屋1』『青い春』『blue』で、日本映画界に新風を送りこんだ宮崎大。増村保造監督の『盲獣』、そして実相寺監督の『D坂の殺人事件』という2本の乱歩映画に衝撃を受けた彼は、「ここには今日的かつ普遍的なテーマがある」との信念のもと、5年越しで念願の企画を実現させた。また、エンディング・テーマには、彼たっての希望で、日本最高のサイケデリック・ロックバンド、ゆらゆら帝国の「ボーンズ」を採用。作品の世界観を詩情豊かに体現したこの楽曲は、“究極のラブストーリー”に甘美な余韻を添えてくれる。
ストーリー
■『火星の運河』
男(浅野忠信)は荒野を歩き続けている。歩いても歩いても、景色は少しも変わらず、あるのは乾いた大地と、どこまでも広がる鬱々とした空のみ。朦朧とした意識の中で歩き続ける男。ふと気づけば、目の前にぽっかりと沼が口を開けていた。吸いこまれるように沼の淵に立つ。その水面を覗き見れば、自分の体が恋人(shan)そっくりな白い女の肉体になっている。男の意識はかつて女と過ごした時間へと遡る。錯乱した男の爪は自身の身体に食いこんで、紅いかき傷を走らせていく。やがて沼の淵に倒れる男。彼は眠っているのか、それとも……?
■『鏡地獄』
鎌倉。探偵の明智小五郎(浅野忠信)は、療養中の妻・文代(市川実日子)がいるこの地で起こった、ひとつの怪事件に興味を持つ。青桐庵の茶席で、遠州流の師範である山科小夜子(吉行由実)が変死したのだ。続いて、その茶席に出席していた篠宮治美(大家由祐子)も変死。事件の現場には、必ず和鏡が置いてあった。それを製造したのは、高級文具を取り扱う「河善」という古い店の当主、いつきとおる齋透(成宮寛貴)。ぞっとするほど美しい容姿を持ったこの青年に、関わった女はみんな虜になっていく。彼は小夜子とも治美とも肉体関係を持っていた。
明智は透のもとを訪ねる。そこには鏡作りの魅力に取り憑かれている透の姿があった。まもなく、透は義理の姉である梓(小川はるみ)とも情交を結ぶ。そしてまた、梓が変死。やはり現場に置かれていた和鏡は、人を死に至らしめるマイクロ波を発する鉱物、サラジウムで表面処理されていた。それは「影取りの鏡」……映した者の魂を吸い取ると言われる伝説の死の鏡だったのだ。そのからくりに気付いた明智と警察が河善に駆けつけた時、透は・・・。
■『芋虫』
明智小五郎(浅野忠信)は小林少年(韓英恵)と共に、切断された手足のホルマリン漬けが映し出された不気味なフィルムを観ている。そこには「名探偵にしゅうしゅう蒐集美術品を供す。二十面相」なる文字が……。
とある廃墟のような屋敷の部屋で、両手両足を戦争で失い胴体だけになった須永中尉(大森南朋)とその妻・時子(岡元夕紀子)が、世間から切り離されたようにひっそりと暮らしている。もはや視覚と触角しか機能していない“芋虫”の夫を、献身的に世話する時子だが、その一方で彼への残虐な欲望を抑え切れず、日々、異常な性交に溺れていた。
そんな彼らを、屋根裏で監視しているのが、時子の亡き叔父の書生だった平井太郎(松田龍平)。彼の監視下で、ついに時子は夫の片目をつぶしてしまう。平井は須永中尉を巨大な砂場へと運び出し、残った片目をつぶす。平井にとって須永は興味深い「美術品」なのだ。そこに時子が現れ、視覚さえも失った夫と自分も同じ姿になると平井に告げると、夫の隣に横たわり・・・。その一部始終を冷徹に記録する十六ミリ撮影機。
まもなく、海辺で明智が目を覚ます。彼が双眼鏡を覗くと、乳母車を押す平井の姿があった。明智はつぶやく。「怪人二十面相、どこへ行こうというのだ。二匹の虫を引き連れて」……。
■『蟲』
アレルギー性の湿疹に悩む厭人病者の柾木愛造(浅野忠信)は、女優の木下芙蓉(緒川たまき)に密かに想いを寄せ、彼女の運転手を務めている。芙蓉には忠実な恋人(浅野忠信、二役)がおり、柾木は彼らの逢引きの様子を覗き見しては、満たされぬ想いに悶えていた。
だがある日、ついに芙蓉に自分の想いを告げる決心をする柾木。“芙蓉”の花束を抱えて彼女の前に立つのだが、柾木の勇気も虚しく、その想いは彼女に届くことなく散ってしまうのだった。そして柾木は、芙蓉を襲って殺害し、屍を自分の部屋に運び入れる。彼女を所有した喜びに打ち震える柾木。しかし芙蓉の美しい屍は、恐ろしい速度で蟲に犯され腐り始めていった。死体防腐を試みる柾木だったが、素人にうまくできるはずもない。次第に常軌を逸し、柾木は屍に絵の具で化粧をほどこすのだが……。
スタッフ
—乱歩地獄−
『火星の運河』
監督・脚本:竹内スグル
助監督:小野寺昭洋
フォトソニックスオペレータ:竹村 篤
照明:大坪 彰
美術監督:鈴木一弘(Office Target)
整音:安藤邦男
ヘアメイク:勇見勝彦
特殊メイク:中田彰輝
編集:阿部直子、篠崎 浩、斉藤良太
音楽プロデューサー:スティービー・フロム
音楽:池田亮司
アソシエイトプロデューサー:町田和幸
『鏡地獄』
監督:実相寺昭雄
脚本:薩川昭夫
撮影スーパーバイザー:中堀正夫
撮影:八巻恒存
照明:牛場賢二
美術:池谷仙克
録音:菊池正嗣
衣裳:北村道子
VE:吉川博文
編集:矢船陽介
音響効果:丹 雄二
助監督:勝賀瀬重憲、安原正恭
アソシエイトプロデューサー:服部光則
協力プロデューサー:鈴木政信
『芋虫』
監督:佐藤寿保
脚本:夢野史郎
撮影:芦澤明子
照明:市川徳充
録音:山方 浩
整音:杉山 篤
装飾:柴田博英
衣裳:北村道子
編集:鵜飼邦彦
音響効果:丹 雄二
助監督:大西 裕
制作担当:山地 昇
音楽:大友良英
アソシエイトプロデューサー:辻井孝夫
『蟲』
監督・脚本:カネコアツシ
撮影監督:山本英夫
照明:永田英則
録音:白取 貢
美術:佐々木 尚
衣裳:北村道子
編集:金子尚樹
音響効果:北田雅也
監督補:今岡信治
助監督:大西 裕
アソシエイトプロデューサー:長澤佳也
原作 江戸川 乱歩
プロデューサー:宮崎大
企画・製作:ミコット・エンド・バサラ
キャスト
『火星の運河』
浅野忠信
森山開次
加賀谷香
『鏡地獄』
成宮寛貴
浅野忠信
小川はるみ
吉行由実
大家由祐子
市川実日子(友情出演)
中村友也
寺島 進
原 知佐子
堀内正美
寺田 農
『芋虫』
松田龍平
岡元夕紀子
韓英恵
浅野忠信
大森南朋
『蟲』
浅野忠信
田口浩正
緒川たまき
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