原題:Brodeuses

カンヌ映画祭 国際批評家週間出品 国際批評家週間グランプリ フランス映画祭横浜2004::http://www.unifrance.jp/yokohama/

フランス公開:2004年10月13日

2003年/フランス/88分 配給:シネカノン

2006年03月24日よりDVDリリース 2005年9月3日、bunkamuraル・シネマにてロードショー

公開初日 2004/06/16

公開終了日 2004/06/20

配給会社名 0034

解説


イントロダクション
17歳のクレールぱ、妊娠5カ月半。膨らみ始めたお腹を隠し、スーパーで働きながら自宅で刺繍の創作に打ち込んでいる。望まない妊娠を母親に毛打ち明けられず、産後すぐに養子に出す「匿名出産」を選ぶが、不安は消えない。そんな彼女は、息子を事故で亡くしたぱかりの刺繍職人メリキアン夫人のアトリエに通ううちに、刺繍の奥深さに触れ、そして他者と心を通わす充足感をも知るようになるのだった。

この長編デビュー作でカンヌ国際映画祭批評家週間グランプリを獲得したエレオノール・フォーシェ監督は、寡黙に打ち沈んだ女性2人が刺繍によって再生していく姿を、陰影深い絵画のような映像の中、ひと針ひと針ビーズを刺繍していくように丁寧に描き出していく。

「彼女たちは自己防衛のために素っ気なさを装いますが、実はその態度の奥に豊かな情感が漂っているのです。どうか私たちの演出、映像、サウンド、音楽が、それを強く、時に幻想的に映し出しますように」とフォ・一シエ監督は語る。その願いは、これが初主演作になるクレール役のローラ・ネマルクと、メリキアン夫人を演じた、『マルセイユの恋』などのベテラン女優アリアンヌ・アストリッドの完壁なアンサンブル演技によって、見事に叶えられたのだ。

赤色から茶色へと移り変わる紅葉のような赤毛、透き通った陶器のごとく白い肌、そして貴婦人の肖像画を思わせる古典的な顔立ちクレールを演じた新星ローラ・ネマルクの表情は、時に思いつめて絶望の色を見せるかと思えぱ、きらめく刺繍を眺めるときは恍惚とした至福感を表し、また親友の兄ギョームの前では控えめながらぞくっとするような色気をにじませる。めったに微笑まない彼女が、年の離れた弟やメリキアン夫人の前で見せる、母性的でありながらあどけなさを残す笑顔には、感情をストレートに表さないクレールが隠し持つ豊かな愛情がありありと伝わるのだ。僅か9歳の時、女優発掘の才能にかけては右に出る者なしの故ロジエ・ヴァデム監督に見出され、同監督が手がけたテレビ・ミニシリーズでデビューしたローラ・ネマルク。今年やっと18歳を迎える大型新人女優の行く手は、クレールと同じく、祝福に満たされたものになるだろう。

なお、やはり深く傷ついた人物としてクレールの前に現れ、彼女の心を捉える青年ギョームを演じて深い印象を残すトマ・ラロップは、本作が映画デビュー作になる。彼の今後の活躍も大いに期待したい。

突然最愛の息子を事故で奪われたメリキアン夫人。無駄なお喋りは一切せず厳しい表情を崩さないこの中年女性の中にくクレールは動物のような直感で、女として、人間として、刺繍職人として、気高い精神が宿っていることを瞬時に悟る。それは例えば、夫人の後ろから狭い階段を上るとき、夫人のバックシームの黒いストッキングに見とれるクレールの一瞬の表情が言い表す。

フォーシェ監督は「植物も生えないような大地の匂い、そしてクレールを花開かせようとメリキアン夫人がその大地を豊かにしていく、そんな物語を描きたいと思いました」と語っている。メリキアン夫人を演じたアリアンヌ・アスカリッドぱ、監督が3年の歳月をかけて作り上げた脚本に惚れこみ、それまでの庶民的で明るく強い女性の役回りとは真逆の”月の光”のような女性を、老けメイクを施して真摯に演じた。

こうして、生命力に満ち溢れたクレールと、人生に絶望したメリキアン夫人という対比、そして寡黙にして腕の立つ刺繍職人という2人の共通項とが、同時に立ち上がる奇跡を起こした。愛情と生きる姿勢の両方が、刺繍によって世代から世代へと引き継がれていく。
何世代にもわたって行なわれてきた営みが、フランスの片田舎を舞台に一篇の詩のような美しさをたたえて映像化されたのだ。

ストーリー


曇天の下、赤毛の女の子が斜面の畑からキャベツをナイフでもぎとっている。籠いっぱいにキャベツを入れ、汚れた手を牛の乳で洗う。両親の畑から取ったキャベツをウサギの毛皮と交換してもらうのだ。クレール、17歳。望まない妊娠をしていて、親友のリュシルとの手紙のやり取りだけが孤独と不安を紛らしてくれる。医者には匿名出産を薦められていた。出産費用は無料で、産後すぐ養子に出す制度だ。母親にも妊娠を打ち明けていないクレールだが、リュシルに書き綴る。「でも私には刺繍がある」

クレールはスーパーのレジ係として働きながら、小さな一間の下宿で黙々と刺繍制作に打ち込んでいる。同僚から意地悪く「太りすぎじゃないの」と言われ、思わず「癌なの。薬の副作用よ」と嘘をついてしまう。
お腹の子の父親は、スーパーの肉屋で働く店員のようだが、彼には家庭があるらしく、「俺の子?」という反応。クレールは「もう会いたくない」と告げる。

週末に帰省したリュシルに会いに行くと、家にぱリュシルの兄ギョームがいた。友人のイシュハンとバイクに2人乗りしていて事故に遭い、ギョームは顔に大怪我を負い、イシュハンは亡くなってしまった。ギョームは仕事を辞め、3年ぼど外国に行くつもりでいる。リュシルの母親に「アトリエに行って元気づけてあげて」と言われるクレール。イシュハンの母親、メリキアン夫人は刺繍職人で、クレールは1年前にアトリエを訪れたことがあったのだ。髪をまとめてターバンを巻いたクレールは、自分の刺繍作品を包んでメリキアン夫人のアトリエに行く陰鬱な表情で戸ロに出てきたメリキアン夫人は「ミシンは使える?資格はある?」と問いかけ、「急ぎの仕事があるから明日また来て腕試しをして」とだけ言って戸を閉める。クレールは資格を持っていないが、気にかけていない様子だ。

翌日、どうやら合格したらしいクレールは、アトリエに通うことになる。スーパーには10日間の欠勤届けを出した。メリキアン夫人は高名なルサージュ氏から依頼された緻密な刺繍を制作中。ルサージュ氏の店で12年間働いた後も仕事を依頼されていて、ラクロワの仕事も請け負っているという。

ともに寡黙なクレールとメリキアン夫人は無駄な話は一切しない。夫人はクレールのお腹のふくらみに気づくが、何も口に出さない。クレールぱ夫人の見事な刺繍作品にうっとり見とれ、自室に帰ると自分の作品づくりに没頭する。

だが、アトリエに通うようになって2週間ぼどたったある日、クレールはアトリエの床に倒れている夫人を発見する。自殺を図ったようだ。救急車で病院に運び、一命をとりとめるものの、夫人はクレールの面会を拒否し、看護婦にお金の入った封筒を託していた…

スタッフ

監督:エレオノール・フォーシェ
製作:アラン・ベんギギ(ソンブレロ・プロダクション)
脚本:エレオノール・フォーシェ、がエル・マーセ
撮影:ピエール・コトロー

キャスト

ローラ・ネマルク
アリアンヌ・アスカリッド

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