原題:Nói albinói

おおきな世界へ飛び出そう

2003年アンジェ映画祭審査員大賞・音楽賞 2003年ロッテルダム映画祭ムービー・ゾーン賞 2003年ヨーテボリ映画祭北欧映画賞・FIPRESCI賞 2003年ルーエン北欧映画祭審査員大賞 2003年エジンバラ国際映画祭新人入選 エッダ賞2003年年度代表作品 2003年デンバー国際映画祭最優秀ヨーロッパ映画賞

2003年/アイスランド・ドイツ・イギリス・デンマーク/93分/カラー/ドルビーSRD/ヨーロピアン・ヴィスタ 配給:イメージフォーラム

2006年3月4日から10日、アイスランド映画祭2006にて上映 2004年6月12日よりシアター・イメージフォーラムにてロードショー

公開初日 2004/06/12

配給会社名 0250

解説


ビョークを始めとして、シガーロスやムームなど、音楽界に次々と新たな才能を送りだしているアイスランド。火山と氷河に囲まれた妖精の国という神秘的なイメージの一方で、人口28万人の小国ながらヨーロッパの企業がしばしば商品モニターの場としてこの国を選び、またクラブ・ミュージックの最先端の地としても注目されているこの国。この不思議な魅力で満ちた国、アイスランドから、新たな天才がやってきた。映画監督ダーグル・カウリ。デンマークの映画学校を卒業するときに制作した短編映画が、各地の映画祭で数々の賞を受賞。世界中の注目が集まるなかアイスランドで制作された彼の長編第一作『氷の国のノイ』は、上映されるや各地の映画祭で引っぱりだこになった。

火山と氷河の壮大な景色をカラフルに切り取る抜群の映像センス、カウリスマキ監督作品につうじるような悲哀と、とぼけた味が混在する愛らしいストーリー、監督自身が最も影響を受けたという「ザ・シンプソンズ」やアメリカのシットコムに通じる皮肉のきいた笑いの感覚。批評家をうならせる一方、『氷の国のノイ』は一般の観客も各地で満足させた。

ノイを演じたトーマスは、監督の高校時代の同級生。彼の特異な風貌は、主人公のノイというキャラクターに強烈なインパクトを与えている。カウリ監督は、ノイのおばあさん役に近所の郵便配達婦を、お父さん役に漁師と役者の二足のわらじを履くスロストゥル・レオ・グンナルソンを起用するなど、一癖も二癖もあるキャラクターたちを見事なキャスティングで演じさせている。サウンドトラックは、監督自身のバンド、”スロウブロウ”。彼らのメロウなサウンドトラックにのせて、「フツー」な生活になかなかとけこめない少年ノイ君のちぐはぐだけど、愛敬にみちた日々を描いた『氷の国のノイ』。アイスランド新世代の傑作が、いよいよ日本で公開される。

ストーリー



17歳のノイはアイスランドの最北部、フィヨルドと火山に囲まれた人口957人の村、ボルンガルヴィクで退屈な日々を送っている。この地方は、冬には氷河と切り立った火山によって外界から閉ざされ、「陸の孤島」になってしまう。風景は美しいが、実際は何もないところだ。

 ノイは朝に弱い。目覚ましが鳴りっぱなしでなかなか起き上がらないノイを、学校に遅刻しないようにと起こしてくれるのは、一緒に住んでるノイのおばあちゃんだ。眠っているノイの耳元でショットガンを一発ぶっぱなす。ノイはそれでベッドから飛び起きる。

ノイが、おばあちゃんと二人で朝食を食べているとお父さんが車でやってくる。飲んだくれでエルビス・プレスリーにいかれてるお父さんは、今はノイと別々に住んでいる。お父さんは、ノイの高校の出席率が悪いという手紙が、校長先生から送られてきたんで心配して会いに来たのだ。

実際、ノイは授業をサボってばかり。たまに出席しても寝てるだけ。今日もお父さんが車で送ってくれたのに、数学の試験を名前だけ書いて提出し、学校から出ていってしまった。そのあと彼がむかうのは町のドライブイン・スタンド。いつもノイはそこにあるスロットマシンに細工をしてお金をくすね、ビールを一杯飲む。あと行くところといえば、偏屈なオヤジがやってる本屋さん。本屋のオヤジはノイの唯一の友達だ。

 学校では、ノイの行動が問題になっていた。先生たちは彼に本当に手を焼いている。当然勉強も全然出来ないし、彼のとっぴな行動は同級生たちさえ煙たがっている。困り果てた校長先生は、彼を精神科医に見てもらうことにする。ノイはわけがわからない心理テストやIQテストをやらされて憮然としているが、診断結果は天才児。IQテストの結果は驚異的、たまたま置いてあったルービック・キューブを数秒で完成させてしまうノイを見て精神科医もびっくりだ。

 けれど、その才能が彼を周囲から孤立させているとも言える。ノイにとっては、学校の授業なんてくだらなくて真面目に受けることが出来ない。まわりの人は、彼が天才なのか単に頭が足らないのか分からない。みんな彼のことを避けているみたいだ。

 だがある日、ノイは恋に落ちる。例のドライブイン・スタンドに新しい女の子が入ったのだ。名前はイーリス。すごくキレイでいいコだ。ノイはスタンドでちょっと話しただけで夢中になった。

 イーリスは本屋のオヤジの娘で、どうやら都会から出戻ってきているらしいということが分かるが、そんなことは恋に落ちたノイには関係ない。彼女に会いにスタンドに通ってとうとうデートにこぎつける。

 初デートでノイはイーリスを自分のお気に入りの場所、村の自然科学博物館に連れていく。最初は夜の博物館を気味悪がっていたイーリスだが、やがて打ち解け、二人は世界地図の前でこの村から一緒に逃げ出そう、と約束する。

 だが学校ではまたノイの行動が問題になっていた。ノイは自分が授業をサボっている間、テープレコーダーを自分の机において、出席を認めてもらおうとしたのだ。とうとうキレた先生は、校長にノイの退学を迫った。ノイがやめなければ自分がやめると言って。そしてノイは、どうしようもなくなった校長によってついに学校をクビになってしまう。

 自分を負け犬だと思っているので、ノイが自分のようにならないようにと、いつも心配しているお父さんは、それを聞いてカンカンに怒る。その後何とかしてお父さんは、墓掘り人の仕事を探してきてくれるが、吹きさらしの墓地の凍りつく大地にスコップの歯は全く立たない。ノイは全然やる気を無くしてしまう。おばあちゃんも心配してくれて、ノイを村で有名な占い師に会わせてくれるが、占いの結果は「死」という不吉な暗示ばかりだ。

 行き詰まってしまったノイは、とうとうイーリスとの逃避行を決行すべく銀行強盗を思い立つ。村の銀行で銃を突きつけて店員を脅すが、みんなに子供扱いされて相手にしてもらえないので、貯金を全額下ろすことにして、車を盗んでイーリスのスタンドに乗りつける。

 「さあ、逃げ出そう」。
イーリスを誘うが、彼女は店のカウンターから出ようとしない。けげんそうにノイを見つめるだけだ。そう、イーリスは逃げ出すつもりなんて全くなかったのだ。

 とりあえず車をとばすノイに、警察が追ってくる。捕まってしまったノイは、お父さんに引き取られ再び家に帰ってくる。ここでノイの希望は全部しぼんでしまったようだった。

ところが奇跡は突然起きる。とてつもない出来事が、唐突に彼の厄介事を全て一掃する。彼の才能と強運は皮肉にも限界を知らなかった。お父さんとおばあちゃんとの関係、イーリスとの関係、学校との関係ノ。全てから彼は解放され、やがて「自由」という扉が、新たな輝きをたたえて彼の前にあらわれるのだった。

スタッフ

監督・脚本:ダーグル・カウリ
撮影:ラスムス・ヴィデベック
音楽:スロウブロウ
配給:イメージフォーラム

キャスト

トーマス・レマルキス
エリン・ハンスドッティル
スロストゥル・レオ・グンナルソン
アンナ・フリズリクスドッティル
ヒャルティ・ログンヴァルドゥソン

LINK

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