原題:No Quarto da Vanda

あの街においてきた。わたしの「魂」を。

2000年ロカルノ国際映画祭・青年批評家賞、スペシャルメンション受賞 2001年山形国際ドキュメンタリー映画祭・最優秀賞/国際批評家連盟賞受賞 2002年フランス文化賞・最優秀外国映画作家選出

2000年/ポルトガル=ドイツ=フランス/1:1.66/カラー/ドルビーSR/178分 配給:シネマトリックス、シネヌーヴォ

2016年6月18日(土)〜ユーロスペースにてロードショー! 2004年11月05日よりビデオレンタル開始 2004年11月05日よりDVD発売開始 2004年3月13日より、シアター・イメージフォーラムにてロードショー

公開初日 2004/03/13

配給会社名 0403/0404

解説



あの街においてきた、わたしの魂を。
「ここ」は、リスボンの移民たちの住む街。名前は、ヴァンダ。私はここで暮らしている。壊れかけた家々、廃墟、ジャンキー(ルビ:麻薬中毒)、鳴り響く工事の音・・・。こんなとこ、悪魔も住まない。でも、ここにいる、太陽がおおきく見える「この場所」に。
ゲットーにデジタルカメラを持ち込み、2年間、そこに暮らし、とらえた「捨てられた」街と人々の姿。ドキュメンタリー/フィクションという区分を無効にする、あまりにも「美しく」「濃密な」映像と物語、そして時間。

「小津安二郎」を思わせる光と「パンク」な音響がリスボンで交錯する“奇跡”の体験

世界各地の映画祭で上映される度に、熱狂的な支持を得、劇場公開が熱望されていた、本作の監督はペドロ・コスタ。オリヴェイラ、ストローブ=ユイレが自らの後継者と断言する、ポルトガルの若き鬼才。『ヴァンダの部屋』における人々の日常をとらえ、一度も動くことのないカメラは、多くの観客に小津安二郎の映画を連想させ、ペドロ・コスタ自身も、小津からの大きな影響を公言している。
人々が暮らす暗闇の空間に射し込む光、そして屋外のラテン的なあたたかい光に満ち溢れた静謐な映像と、舞台となる移民街に鳴り響くノイズ(ルビ:破壊音)。映画の臨界点を遥かに越えた「未知の体験」=“奇跡”を、今、体感する。

ストーリー



1997年、映画監督ペドロ・コスタは、ある家族の運命を描いた劇映画「骨」をつくる。その後、再び、彼は撮影地のリスボンにあるスラム街フォンタイーニャス地区に戻り、続編とも言うべきこの作品を手掛けた。「骨」の主役でもあった女性、ヴァンダ・ドゥアルテの日常を、デジタルカメラで、また少人数のスタッフで2年間、追った。

リスボンの市中にある取り壊されつつある街、フォンタイーニャス。アフリカからの移民が多く暮らす街。街中にブルドーザーやショベルカーの工事の音が響き渡っている。その中の、わずか3メートル四方の小さな部屋。ここに住むのは、ヴァンダ・ドゥアルテ。その近所に暮らす、ヴァンダの妹、ジタと母。近くに住み、引っ越そうとしているパンゴという黒人の青年。ヴァンダたちは、何をするでもなく、麻薬を吸引することにいそしんでいる。その影響なのか、ときおり激しく咳こむ。

どうやら、ヴァンダの仕事は、野菜を売って歩くことのようだ。しかし、本当に商売をする気があるのか、わからない。あいかわらず、街のあちこちでは、工事が続いている。街が消えつつある。彼らは、何を目的に、何をしたいのか? しかし、そこに確かに存在する、人々の関わり、コミュニティ。妹や母とのいつものような喧嘩。

「いたいだけいていいよ」とヴァンダは、パンゴに言う・・・。私たちは、ベッドひとつしかない殺風景な“ヴァンダの部屋”と次第に破壊され、消えていく“この場所”を見つめ続ける。そこで見えてくるのは「人間が、ただ、そこにいる」ということ。そして、それこそが『ヴァンダの部屋』が語りかける「奇跡」である。

スタッフ

監督・脚本・撮影:ペドロ・コスタ

キャスト

ヴァンダ・ドゥアルテ
ジータ・ドゥアルテ
レナ・ドゥアルテ
アントニオ・セメド・モレノ
パウロ・ヌネス

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