原題:Adolphe de Benjamin Constant

たとえ、地獄におちても、あなたを愛します

フランス映画祭横浜2003 クロージング作品

2002年10月30日フランス初公開

2002年/フランス/102分/カラー/ヨーロッパビスタ 提供:バップ/後援:フランス大使館文化部/協力:ユニフランス東京 共同提供・配給:ザナドゥー、エレファント・ピクチャー

2005年02月23日よりビデオレンタル開始 2005年02月23日よりDVDリリース 2004年7月3日よりシネスイッチ銀座にてロードショー

公開初日 2004/07/03

配給会社名 0103/0244

解説


『王妃マルゴ』から8年、フランスを代表する女優イザベル・アジャーニが、近代フランス心理小説史上の最高傑作として多くの女性を魅了しつづけている「アドルフ」(コンスタン著)を『カミーユ・クローデル』に続き自ら企画し主演した超話題作。抑圧されたロマンティックな情熱をもつエレノール役の哀切な演技は、これまでで最も成熟を見せ、奇跡的!と絶賛された。フランスでは圧倒的な女性の共感を得て、大ヒットを記録した。
フランスとポーランド、魅惑の二都市を舞台に、みずみずしい映像美で綴られる運命の恋。この感動的で、深く心を動かされる新しい豊穣な文芸ロマンの、アジャーニの相手役に抜擢されたのは、『ドライクリーニング』で一躍脚光を浴びた20歳年下の美形俳優スタニスラフ・メラール。濃厚なラブシーンと、ふたりの実生活でのロマンスも話題となっている。

「僕は君のものだ」。19世紀。美しく前途有望な青年アドルフは、20歳も年上の美貌の伯爵夫人エレノールに一目ぼれし、彼女を誘惑したいと思った。望みを果たしてみると耐えがたい重荷を感じてしまう。一方、エレノールにとっては運命の恋の始まりだった。やさしい夫、かわいい子供、贅沢な暮らしをしながらも、心は空虚だった。何不自由ない生活を決別して、狂おしい灼熱の恋をひた走るエレノール。たとえ悲劇の始まりだとしても。緑滴るフランス郊外から雪深いポーランドへ——恋の逃避行の果ては・・・

雪の中のポーランドの古城、目もくらむような贅沢な室内装飾も映画に本物の上質さを与えている。アジャーニが身に付ける贅を尽くした衣装・アンティークジュエリーも、見所。きめ細かい感情の流れを支えているのはシューマン「ピアノ五重奏曲」、モーツァルト「ヴァイオリンのためのアダージョ」などの静かにきらめくロマンティックな音楽。その他の出演は『ボーマルシェ』のジャン・ヤンヌ、『猫が行方不明』のロマン・ドゥリス、『黒衣の花嫁』のジャン・ルイ・リシャール。監督・脚本は、マルグリット・デュラスの助監督出身、その後『トスカ』『肉体の学校』を監督したブノワ・ジャコ。撮影は『青いパパイヤの香り』『ひかりのまち』の新鋭ブノワ・デローム。ベテランと新鋭がタッグを組み、伝統的なフランス文芸映画の香り高く、かつ瑞々しい映像美を実現した。

ストーリー



運命の出会い
 22歳で大学を卒業したアドルフ(スタニスラス・メラール)は、ある小さな町へ赴いた。当時、大臣をしていた彼の父は、ヨーロッパ各地を遊歴させた後は自分の元に呼び寄せ、ゆくゆくは後継ぎにしたいと思っていた。
 アドルフはその町である伯爵(ジャン・ヤンヌ)と知り合った。彼は、ポーランド生まれの美しい婦人エレノール(イザベル・アジャーニ)を家に囲っており、2人のかわいらしい子供もいる。彼女の父親は内乱のために追放され、母親はすでに死んでいた。
 激しい恋を求め、人生の成功を夢見ていた若いアドルフは、幸せそうなのにどこか寂しそうなエレノールをひとめ見て恋に落ちた。彼女のほうも、アドルフはこれまでに見てきた人とは違うと思った。ふたりは本を読み、連れ立って散歩をし、多くのことを語り合った。彼女のことが頭から離れないアドルフは、なんとか彼女に気に入られようとあれやこれやと計画を立てる。しかし、彼女に気持ちを伝えようとすると、たちまち言葉に詰まってしまう日々が続いた。彼は手紙で気持ちを伝えることにした。

アドルフの手紙
 “あなたへの愛で血もたぎらんばかり 全身全霊でお慕いしています こんな熱情は初めてのこと あなたの顔が声が知性がそして心が・・・”
 手紙を読んだエレノールは、家を飛び出したアドルフを追い、「あなたは10歳年下。私の率直すぎた友情のせいよ。伯爵のご帰還までいらっしゃらないで」と告げる。この返事は、アドルフを胸も張り裂けんばかりの激しく抑えがたい苦悩へと導いた。そんなアドルフを残し、彼女は田舎へ休養に出かける。

あなたといる時だけが幸せ
 ふたりが再会できたのはそれから1か月ほどたってからのことだった。アドルフは幾度となくエレノールの元を訪れ、「あなたに会えないのなら、故郷も父も捨て外国で朽ち果てます。会わねば生きていけない」と想いのたけを伝える。エレノールは彼の言葉に動かされ、大勢の人がいるところで、けっして愛の言葉はささいてはならないという条件でたまに会うことを許すが、頻繁に会っている内にたちまち2人は恋に落ちる。
 来る日も来る日も当然のようにエレノールの家で会った。彼女は10年間の貞節から伯爵の信用を得ていたのだ。「あなたといる時だけが幸せ」。ふたりは狂おしいほどに愛しあった。アドルフはエレノールを心から愛し、エレノールはいまだかつてこんなふうに激しく愛されたことはなかった。2人は尊敬し合い、誇らかな気持ちでいっぱいだった。呼吸することさえ楽しかった。

大いなる不幸
 伯爵が急用で6週間ばかり家をあけている間、アドルフは毎日のようにエレノールのところに入り浸っていた。エレノールの彼に対する愛情は日に日に募っていった。
帰宅した伯爵は、2人の仲を疑いはじめた。そんな時アドルフの元に父から帰ってくるようにという手紙がきた。その手紙を見て彼女は言った。「あなたなしには生きて行けないわ。半年延ばして3ヶ月でも」アドルフは帰国を延ばしたが、だんだんとエレノールを疎ましく思いはじめる。
アドルフはエレノールに、彼女がどんな危険を冒しているかを熱心に説いたが、彼女は聞き入れない。それどころか彼女は子供を置いて伯爵の家を出、簡素な家を借りた。噂を聞いたアドルフの友人(ロマン・デュリス)は仲間と一緒に彼をからかった。「僕らも君の勇気を見習おう」
エレノールの元へも屈辱が。友人の年の離れた夫ダルビニー(ジャン=ルイ・リシャール)が彼女の家を訪れ、「あんな若造にはもったいない」と迫るのだった。
アドルフはエレノールを侮辱したダルビニー氏と決闘することになってしまう。腕を撃たれはしたものの、アドルフが勝利する。愛する者に愛されないのは不幸。だが、愛が冷めても熱愛されるのは大いなる不幸だ。3ヵ月後、アドルフは帰国した。

愛ではなく哀れみ
 伯爵と別れたエレノールはアドルフのあとを追った。到着した彼女を迎えたアドルフは喜んでいるふりをする。エレノールはそんな彼の気持ちを見抜き、彼を謗った。激しい怒りがふたりをとらえ、憎悪からあらゆることを互いに言い合った。3時間のいさかいの後、ふたりは別れた。初めて言い訳もせず、仲直りもせずに別れたのだった。
 家に帰ったアドルフに父が言った。「お前のその歳で愛人を持つのはよくない」エレノールは翌日、立去命令を受けるはずだという。それを聞いてアドルフは、彼女を今までにないほど愛しく思い、その想いを彼女に告げる。「君に命を捧げる。結婚しよう」
しかし彼女は言った。「あなたは愛だと思っているけどそれは哀れみなのよ」
 どうして彼女はこんな言葉を口に出したのだろう?アドルフが一番知りたくなかった秘密を。

もう愛してない
 旅立ったふたりが国境に着いたとき、アドルフの元に父から手紙が届いた。「お前は24歳だ。青春の最も美しい時期を浪費しているのだ」
 ふたりは小都市に落ちついた。アドルフは彼女を不安にさせないために、不満と悲しみは胸にたたみこんで、素振りには出さなかった。

愛がすべてだったの、でもあなたは違った
 エレノールの父親が死んだという知らせを受けて、ふたりはポーランドへ。
 アドルフは父からワルソーにいる男爵に会うように言われ、訪ねた。「彼女は10歳年上だ。君は何もしないうちに人生の盛りに達する。君の気持ちは離れ、彼女はますます君に頼る。君には道が開けている。忘れるな。君と成功の間に乗り越えられない障害が存在するのだ」私は言った。「彼女が必要とするならそばにいます」しかしその思いはすべてを言い終わる前に消えていた。ふたりは毎日顔をつきあわせて、沈黙と不機嫌のうちに、単調な日々を過した。語らいをしようにも泉は枯れていた。
アドルフは、ついにエレノールと別れる決心をしたと父に手紙を書き、男爵にももう永久に切れたものと考えてさしつかえないと書いた。それから数日後、エレノールは重い病の床に伏した。アドルフが男爵に宛てて書いた手紙が彼女のもとに届けられ、彼女はそれに目に通すなり気絶し、狂乱状態におちいったのだった。
アドルフは日に日に衰弱していくエレノールを散歩に連れ出し言った。「やり直そう」エレノールは言う。「愛がすべてだったの。でもあなたは違った」
 部屋に戻ったエレノールは、アドルフに宛てた手紙を探す。読まずに焼き捨てて言って彼の腕の中で息を引き取った。

エレノールの手紙
 「アドルフ、なぜ私を責めるの?なぜ怒りっぽくて弱気なの。何を求めているの?私死ななくてはだめ?近寄るのも嫌なエレノール。本当に邪魔な女。彼女は死んで、あなたは一人群衆の中に出て行く。無関心を有り難がるのも今のうち。ある日彼らに傷つけられ、その時あなたは懐かしむ。あなたへの愛に生き、あなたのために身を投げ出す心。もはや一顧だにされない心を。」

スタッフ

監督:ブノワ・ジャコ
製作:ミシェル&ローラン・ペタン
脚本:ブノワ・ジャコ、ファブリス・ロジェール・ラカン
撮影:ブノワ・デローム
美術:カティア・ワイスコフ
衣装:カテリン・ブシャール
配給:ザナドゥー、エレファント・ピクチャー

キャスト

イザベル・アジャーニ
スタニスラス・メラール
ジャン・ヤンヌ
ロマン・デュリス
ジャン=ルイ・リシャール
アン・スアレ
ジャン=マルク・ステーレ
マリリン・エヴァン

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