原題:LAST LIFE IN THE UNIVERSE

言葉をこえて、 たしかにぼくらは愛をみつけた

2003年/タイ・日本・シンガポール・オランダ・フランス/カラー/ 配給:クロックワークス

2005年03月25日よりプレミアム・エディション版DVDリリース 2005年03月25日よりビデオリリース 2004年7月31日より渋谷シネ・アミューズほか全国順次ロードショー

公開初日 2004/07/31

配給会社名 0033

解説


浅野忠信ベネチア国際映画祭<コントロコレンテ部門>主演男優賞受賞の快挙!
アジアの才能が生み出した至福のラブストーリーに世界が魅せられた…

2003年のベネチア国際映画祭は、第60回記念大会。有名監督やスター出演の映画が多数上映された豪華な年となった.そこで一本のアジア映画が注目を集めていた。
『61XTYNIN9』や『わすれな歌』など秀作を次々と生み出すタイ映画界を担う才能の一人、ペンエーグ・ラッタナルアーン監督と、ウォン・カーウァイやチャン・イーモウなどアジアを代表する監督たちに美しい映像を提供し続けているクリストファー・ドイル、その独特の存在感で多くの監督たちを唸らせ、今や日本映画界を代表する俳優となった浅野忠信という、国境を超えた3人の刺激的なコラボレーションで作り上げられた『地球で最後のふたり』である。
バンコクから最も近いリゾート地・バンサーンを舞台に、身の回りを清潔に保つことでバリアーを張るように、世間のめまぐるしい動きから逃げている男・ケンジ(浅野忠信)と、だらしなく散らかり放題の家に住む奔放で勝気な女・ノイ(シニター・ブンヤサック)。まさに正反対のふたりがお互いの兄と妹の死をきっかけに出会い、つたない言葉で会話し、心を近づけていく過程を静かに描いたラブストーリーだ。
柔らかい物腰ながら徹底して他人を拒絶していたケンジが、少しづつノイに心を開いていく様子をフラットでナチュラルに演じ、恋が生まれる瞬間の切ない気持ちを見事にフィル
に焼きつけた浅野忠信。初の完全海外製作作品への出演となったにも関わらず、ベネチア国際映画祭コントロコレンテ部門で主演男優賞受賞という快挙を成し遂げた。
もともと、各地の映画祭で顔を合わせることのあったペンエーグ、クリス、浅野の3人は、ペンエーグ監督曰く「浅く長い付き合い」であり、いつか一緒に仕事をしてみたいと思っていたという。その思いを実現させたのがボヘミアン・フィルムズ。フォルティッシモ・フィルム・セールスを率いるバウター・バレンドレクトとマイケル・J・ワーナー、そして葛井克亮とフラン・ルーベル・葛井が立ち上げたこの製作会社は、「アジアの才能たちと世界に通用する映画を作る」ことを目的に作られ、『地球で最後のふたり』が初めての製作作品となる。
共同脚本家としてタイの若者のカリスマ的存在である作家プラープダー・ユンが参加。ペンエーグ監督も参加を強く求めた彼が加わったことにより、物語はより洗練されたラブストーリーに昇華した。
ベネチア映画祭を皮切りに、トロント、ロッテルダム、サンダンスその他世界の映画祭で高く評価され、すでに20ヶ国以上で公開が決定した世界が魅せられたラブストーリーが、いよいよ日本公開となる!

ストーリー



ケンジの部屋。
何もかもが整理整頓され、塵一つ落ちていない。本棚に入りきらない本が、あちらこちらにきれいに並べられている。まるで図書館のよう。ケンジは、今まさしく首を吊ろうとしている。足を踏み外そうとしたその瞬間、けたたましくチャイムが鳴った。玄関を開けると、長らく会っていなかった兄・ユキオが立っている。ユキオはヤクザの組員で、日本でトラブルを起こし、バンコクの弟の元へ逃げてきたのだ。ユキオはずかずかと上がり込み、天井から伸びた紐に気づき、「今度は首吊りか」と咳く。

ケンジの勤め先のバンコク日本文化センター。日本の本や雑誌を集めた図書館で、ケンジが本の整理をしていると、日本のセーラー服をきた女ニッドが熱心に1冊の本を読んでいるのが目にとまる。
彼女が去った後、その本を手に取るケンジ。それは、「さびしさの彼方を」というタイトルの絵本で、地球上で最後の一匹となってしまったヤモリの悲しみが描かれていた。

ニッドが働く外国人向けのクラブ。
ニッドの姉・ノイがイライラとした表情で入ってくる。ニッドと同じく美しいがどこか男性的な雰囲気が漂うノイは、仕事中のニッドを無理やり連れ出し、車に乗せ走り出す。
なぜ自分の彼と寝たのかとニッドを問い詰めるノイに対し「あんな馬鹿な男、今ごろまた他の女と寝ているわよ」と言い放つニッド。ノイの怒りは爆発し、ニッドを車道で降ろしてしまう。降りたニッドの目に入ったのは、橋の手すりの上に佇むケンジの姿。ケンジは偶然にもこの場所でバスを降り、今度は川に飛びこもうとしているところだった。二人が微笑みあったその瞬間、ニッドは猛スピードで走ってきた車にはねられてしまう。目の前での事故にパニックになったノイに付き添い、ケンジも病院へと向かった。だがニッドの死が確認されるとノイはケンジなど目に入らないかのように出ていってしまう。

ケンジが自宅に戻ると、ユキオが旧知の友人タカシを連れて帰ってきた。こんな異国まで自分を心配してきてくれたのだと上機嫌に話している。だが、タカシは組からの命令でユキオを殺しにきたのだった。ユキオを殺し、自分にまで襲いかかってきたタカシを、ケンジは兄の銃で殺してしまう。

次の日、いつもと変わらず出勤したケンジをノイが尋ねてくる。車に忘れてあったケンジのカバンを届けにきたのだ。ケンジはお礼にノイに食事をご馳走した後、家に泊めてもらえないかとノイにお願いすると、ノイは怪訝に思いながらも了承する。
ノイの家はバンコクからすこし離れた、バンサーンにあった。寂れたリゾート地に建つその一軒家の中は、服、本、使用済みの食器、ありとあらゆる物が床に散らばり、積み上げられ、足の踏み場もない状態だった。目が覚めたケンジは、改めてその汚さに驚く。ノイは出かけるからそのついでに家まで送ると言うが、ケンジはもう一泊させてくれないか、と申し出る。ノイは自分に触れようとしないケンジがなぜここにいたがるのかわからないと、タイ語で「勝手にして」と言い残し出かけていく。残されたケンジは食器を片付け始める。
それを終え、手持ち無沙汰で散らかった家の中を見てまわると、幼いころのノイとニッドと思われる写真がいくつか飾ってある部屋をみつける。開けっぱなしのクローゼットにかかっている服は全て日本の女子高生の制服。ここはニッドの部屋だ。ケンジが制服を手に取りながめていると、いつの間にか戻ってきたノイがタイ語で「この家から出ていって!」と怒鳴り散らす。タイ語が理解できないケンジは訳がわからないまま、家を後にする。「なんで私を一人残して死んでしまったの」ノイはニッドの制服を抱きしめて泣き崩れる。顔を洗おうといった台所で、ノイはケンジが洗ってくれた食器をみて自分の勘違いに気づき、あわててケンジを呼び戻しにいく。

二人は食事をしながら、初めてまともに会話を交わす。ケンジはもともと無口な上、英語は得意ではなかった。つたないながらも会話を続けていくと、ノイは明後日タイを発ち日本に働きに行く、だからこの家はもう要らないのだという。お互いに知っている日本とタイの言葉を披露し合い、ノイに初めて笑顔がのぞく。その時、穏やかな雰囲気を打ち破るように電話が鳴る。相手はノイの恋人ジョンだ。
ノイは「二度とかけてこないで」と受話器を叩きつけるように電話を切ってしまう。
ケンジは用具を買い込み、部屋中を熱心に掃除している。もうすぐ使わなくなる、しかも他人の家をなぜそんなに熱心に掃除するのか理解できないと言いながら、嬉しそうなノイ。
だが、またもや鳴り響く電話にうんざりとし、ケンジを外へと誘う。
出かけた先はテント張りの海辺の移動ゲームセンター。人目も気にせずゲームに熱中するノイのぺ一スに乗せられ、いつもは控えめなケンジもいつの間にか夢中で楽しんでいる。
家に戻ったノイは、ソファでテレビを見ながらケンジの膝を枕に眠ってしまう。初めて女性と触れ合うかのように、どうしていいかわからず、ノイを起こさないように自分もソファにもたれ眠りにつくケンジ。

翌日、庭でニッドの制服を燃やしているノイを、ケンジは黙ってみている。そこに突然ジョンが現れ「俺をバカにしやがって」とノイを殴りつける。ケンジが静止して事無きを得るが、ケンジを新しい男だと勘違いしたジョンは悪態をつき逃げるように去っていく。
掃除のお礼にと、ノイは食事をつくり、自分の車を譲るとケンジにキーを渡す。「免許がないからもらえない」というケンジに、自分の免許証もあげるという。それを見て、ノイの顔写真があまりにひどいと笑い転げるケンジ。そんなケンジに怒りながら笑ってしまうノイ。相変わらず会話はつたないが、お互いに少しづつ相手を知り、惹かれ始めていると感じていた。だが明日はノイが日本へと旅発つ日。
ケンジはノイを空港まで送っていくと約束する。
その夜・ノイは風呂場で物思いにふけっている。そして服を脱ぐとケンジのいる居間へと歩いていく。

翌朝、空港までの車中で、ノイはケンジに尋ねる「もう一度私に会いたい?」空港に着き、ノイを降ろすとケンジは思い立ったように、「待ってて」と言い車で走り去る。
自分のマンションに着いたケンジはパスポートを探しだすとバックに入れ、部屋を見まわす。整理整頓された、清潔だが無機質で温かみのない部屋。ケンジは真っ直ぐに積み上げられた本の山を蹴飛ばす。崩れて散らばった本を見て満足そうな表情のケンジ。ノイの待つ空港へと向おうとするが、逆恨みをしたジョンと、タカシが戻らないことを不信に思った組の追手がすぐそこまで近づいていた。

スタッフ

監督:ペンエーグ・ラッタナルアーン
脚本:ペンエーグ・ラッタナルアーン、プラーブダー・ユン
撮影:クリストファー・ドイル

キャスト

浅野忠信
Sinnita Boonyasak
Laila Boontasak
三池崇史
田中要次
佐藤佐吉
松重豊
竹内力

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