原題:amores perros

2000年カンヌ国際映画祭ワールドプレミア上映 2000年東京国際映画祭出品 第54回英国アカデミー賞外国語映画賞受賞

2000年6月16日メキシコ初公開

1999年/メキシコ/カラー/上映時間:2時間33分/1:1.85ビスタ/ドルビーデジタル/ 字幕翻訳:岡田壮平/字幕監修:間宮敏行 配給:東京テアトル株式会社

2004年10月22日よりDVD発売開始 2002年09月27日よりビデオ発売&レンタル開始 2002年2月2日よりシネセゾン渋谷ほか全国順次ロードショー公開!

公開初日 2002/02/02

配給会社名 0049

公開日メモ 『アモーレス・ぺロス』−−そしてここにまた、世界に衝撃を与えるラテンの傑作が登場した。『アモーレス・ぺロス』が描くのは、死に至るほどの狂おしい愛。兄嫁への報われぬ恋に身を焦がす若者、キャリアも不倫の愛もすべてを勝ち取ったかに見え、一転して絶望のどん底に突き落とされる若い女、捨て去った家族への愛の幻を追い求める老人……だがそれはいずれも「許されぬ愛」なのだ。愛と暴力、愛と裏切り、愛とエゴイズム……愛は希望を与え、また苦悩をもたらす。

解説


2000年5月、カンヌ国際映画祭は、ラテンの国からやって来た新しい才能に沸き返った。その映画は批評家週間でグランプリを獲得し、熱い興奮はイギリス・エジンバラ、カナダ・トロント、アメリカ・シカゴ、ロサンゼルスといった世界中の映画祭を一気に駆け巡り、日本に上陸。東京国際映画祭では、観客とジャーナリストの絶賛に迎えられ、見事にグランプリと監督賞を受賞する。それが、エモーショナルな話題作『アモーレス・ペロス』である。新世紀に入ると、吹き荒れる嵐はロンドンを直撃。時代を先取りする才能に対し最も敏感に反応するロンドンっ子たちが熱狂した。さらにアメリカにおいても、ゴールデン・グローブ賞とアカデミー賞の外国語映画賞にダブルノミネートという快挙を成し遂げるのだ。ガルシア・マルケスやマヌエル・プイグらに代表される文学で発見され、タンゴ、ボサノヴァ、サルサといった音楽の流行が切り拓いてきたラテンカルチャーの世界。また『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』や『サルサ』の大ヒットによって、今もっとも熱い視線が注がれているのがラテンの映画である。『アモーレス・ぺロス』−−そしてここにまた、世界に衝撃を与えるラテンの傑作が登場した。『アモーレス・ぺロス』が描くのは、死に至るほどの狂おしい愛。兄嫁への報われぬ恋に身を焦がす若者、キャリアも不倫の愛もすべてを勝ち取ったかに見え、一転して絶望のどん底に突き落とされる若い女、捨て去った家族への愛の幻を追い求める老人……だがそれはいずれも「許されぬ愛」なのだ。愛と暴力、愛と裏切り、愛とエゴイズム……愛は希望を与え、また苦悩をもたらす。そしてラテンの愛は運命を賭けた情熱そのものである。舞台となるのは、巨大都市メキシコシティー。世界一の人口を持ち、富と貧困の差が激しいこの街では、光と影のコントラストもまた厳しい。人々は光を探し乾きを癒すかのように愛を求め、欲望にとり憑かれて情熱の奔流に流されていく。原題のAMORES PERROSとは直訳すると「犬のような愛」である。この物語では犬が重要な存在となっており、人間の愛と運命を見つめながら、本能のままに生きる自由への憧れとその対極にある破滅への怖れを体現しているといえよう。ひとつの交通事故に重なる生きざまは、世界のカオスの寓話であり、また人間存在のまぎれもない真実だ。そしてそれぞれの人生が迎える皮肉な結末は、観る者に圧倒的なカタルシスをもたらす。この激しくも哀しい作品を監督したのは、本作がデビューとなるアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。メキシコシティーのナンバーワンDJとして活躍したのち、音楽プロデュースやテレビの演出を手掛けてきた彼は、悲劇が絡まり合う脚本を36回も改訂を重ね、3年の月日を要して作品を完成させたという。
キャストには、若者オクタビオに、笑顔がチャーミングな少年から次第に情熱をほとばしらせる野性味のある青年への変貌を見事に演じたガエル・ガルシア・ベルナル。少年時代から舞台に立っていたという確かな演技力も注目のラテン系美男だ。美しい肢体が輝くモデルとしてのキャリアの頂点から一気に奈落へと突き落とされるバレリアには、スペインの映画やテレビで活躍するゴヤ・トレドが扮した。またメキシコ演劇界のベテラン、エミリオ・エチェバリアが演じるエル・チーボは、人生の深みをしみじみと感じさせてくれることだろう。
原案を提案し共同で脚本を担当したのは、大学教授であり、映画やテレビの脚本家としても活躍するギジエルモ・アリアガ・ホルダン。スピード感溢れるカメラは、メキシコ映画界で最も知られたロドリゴ・プリエトが担当し、人間の息遣いのままに呼吸し発汗する映像はドキュメンタリーのようにリアルなものとなった。美術は、パズ・ラーマンの『ロミオ+ジュリエット』でアカデミー賞にノミネートされ、新作『ムーラン・ルージュ』でもそのバロック的な過剰さを存分に展開しているブリジット・ブロシュ。本作では、登場するさまざまな階層の生活空間を印象的にコーディネートしている。
また音楽は、メキシコシティーのヒットチューンそのままのようなサウンドトラックに仕上がっており、ラテン・アメリカ圏の若者たちに大人気のスペイン語ロック“ロック・エン・エスパニョール”をはじめとし、サルサ、ラップなどをちりばめてメリハリを効かせた曲構成となっている。さらにはこのサントラに加え、映画にインスパイアされて作られた曲を収録したセカンドアルバムもリリースされるという、映画音楽界では異例の盛り上がりを見せた。そして両方のアルバムには、メキシコのみならずスペイン、キューバ、アルゼンチンなどから今のラテン音楽界の人気アーティストたちが多数参加している。

ストーリー



町中を一台の車が暴走している。追っ手から逃げる2人の若者。後ろの席には血まみれの黒い犬が横たわっている。追う車からピストルでねらわれるが、うまくかわした、と思った瞬間、交差点でもう一台の車に激突し……。
ダウンタウンに住む若者の名はオクタビオ。兄のラミロは表向きはスーパーのレジ係をしているが、仲間と強盗を重ね、その金を家には入れず遊んでいる。兄嫁のスサナはあどけない表情の学生なのに、2人の間には赤ん坊がいた。暴力的でスサナにもつらくあたるラミロをオクタビオはうとましく思い、スサナも悩みをオクタビオにたけ打ち明けるという仲だった。オクタビオの夢はスサナと共にこの街から逃げ出すことだ。
闘犬場では、きょうもチンピラのハロチョの犬が勝っていた。ところがオクタビオの犬コフィはその犬さえ噛み殺す強さで、オクタビオはコフィを闘犬に出すことにする。そして賭けで勝った金をスサナに渡し、兄には黙って隠すようにという。
弟が闘犬で稼ぐ間に、兄は強盗を重ねる。しかもスサナと親しくする弟を兄は許せないのだ。オクタビオは自分がずっとスサナを思い続けていたことを打ち明け、ついに彼女と結ばれる。そして次の日曜にはバスに乗ってここを出ようと誘うのたった。しかしスサナはためらっていた。
一方ハロチョは今度こそオクタビオに勝ってやると新しい犬を使って大金の賭けを提案する。闘犬の元締にこの賭けを持ちかけられたオクタビオは、その代わりに彼に頼みごとをする。それは兄のラミロを襲ってほしいというものだった。
ところが、痛い目に会ったラミロは、翌朝スサナを連れて家を出ていってしまった。しかもオクタヒオがせっかく隠し貯めた金もなくなっていた。あんなに更しあったのになぜた? オクタビオはヤケになって闘犬場へと向かう。コフィはいつもどおり強くハロチョの犬を倒そうとしていた。その時、ハロチョはピストルを出すとコフィを撃ってしまった。このままでは怒りがおさまらないオクタビオは、ハロチョにナイフを突き立て、車で逃走する。そして交差点に差しかかった時……。
懲りもせずに強盗を重ねていたラミロは、銀行に押し入ったところ、居合わせた警官に撃たれてあっけなく死んだ。葬式には、交通事故の傷が痛々しいオクタビオの姿もあった。そして悲しみにくれるスサナに再び彼はこの街を出ようと誘う。日曜の朝、バスターミナルにはひとり待つオクタビオの姿がある。しかしバスの発車時刻になってもスサナは現れなかった……。
バレリアはスペインから来たスーパーモデル。この街で仕事に成功し、人気も最高だった。しかも不倫相手の広告デザイナー、ダニエルがようやく妻と別居すると決意し、新しい2人のためのマンションを手に入れたのだ。そのマンションからはバレリアの巨大な広告ポスターが見えている。幸せな蜜月が始まる祝いのために、シャンペンを買いに車を走らせるバレリア。交差点に差しかかった時、暴走する車がぶつかってくる……。
瀕死の重傷からやっとマンションに戻ったバレリアは、しばらく療養生活を送ることになる。ダニエルを仕事に送り出した後で、バレリアが車椅子で愛犬のリッチーと遊んでいたところ、ボールを追っていったリッチーは、床にあいた穴に落ちてしまう。そして鳴き声はかすかに聞こえるものの、そのまま出てこなくなってしまったのだ。
バレリアは怪我のせいで広告の契約も打ち切られふさいでいった。仕事から帰るなりダニエルとの口論が続く毎日。バレリアの怪我の痛みが激し<なって病院に行った帰りに、ついに不満が爆発する。リッチーを助けるために床板をはがしてと頼むバレリアだったが、ダニエルは修理の金がないからだめだと宣告する。さらに最悪の事態が起こった。バレリアの脚の傷が悪化し、切断しなければならなくなったのだ。ひとりになったマンションの部屋で、ダニエルは無我夢中になって床板を剥がしはじめ、やっとのことでリッチーを救い出し抱きしめるのだった。 脚を失ったバレリアが家に帰ってきた。彼女の目に映ったのは、穴だらけの床、そして窓の外には自分のポスターが取り外された建物があった……。 町外れの家に入っていく二人の男がいる。一人は元警官のレオナルド、もう一人の男はグスターボ。廃虚のような家にはたくさんの犬に囲まれてひとりの男が暮らしていた。 かつては大学教授で、ある日突然、妻と娘を捨てて反政府組織に入り、20年の服役後、金のために人を殺すまで落ちぶれた老人はエル・チーボと呼ばれていた。 レオナルドは昔のよしみでエル・チーボに“仕事”を紹介していた。そしてきよう、グスターボが事務所のパートナーであるルイスを殺してくれと依頼しにきたのだった。 何日も殺す相手を尾行し、行動を観察するエル・チーボ。一方で、彼は若い娘のあとを追っていた。それこそ彼が昔捨てた娘マルなのだ。こっそり家に忍び込んで幸せそうな家族の写真を盗むエル・チーボだった。そんなある日、交通事故の現場に出くわす。一台の車には血まみれの若い男が2人、そしてもう一台には脚をはさまれた若い女がいた。人々が救出作業をしている一方で、死にかけていた黒い犬が路上に置き去りにされる。エル・チーボはその犬を拾って家へ帰ると手当てをしてやるのだった。助けた犬は少しずつ元気になっていった。だがある日家に戻ってみると、可愛がっていた犬達が一匹残らず噛み殺されているのを見つける。闘犬の血が騒いだ黒犬の仕業だった。 そして殺された犬たちを弔うと、エル・チーボはようやく依頼された殺人の実行を決意する。 ルイスを誘拐し、じりじりといたぶるうちに、殺しの依頼人グスターボが実はルイスの義理の兄と知ったエル・チーボは、グスターボを家に呼び、自分で弟を殺せと詰め寄り、さらに2人を監禁するのだった。朝を迎えたエル・チーボは、鬚をそり落とし、すっかり旅の身支度を整えていた。その姿は誰が見てもあの浮浪者の男に見えなかった。縛られていた兄弟は驚きを穏せない。そしてエル・チーボは2人にピストルを残し、家をあとにする。彼がやってきたのは、マルの家だった。稼いだ金をそっと置き、留守録に自分が父であることを名乗り、「心から愛している」と言いながら号泣するのだった。今、エル・チーボの目の前に広がるのは、荒野にも似た都会の風景。そしてその傍らには、あの黒い犬が寄り添っていた……。

スタッフ

監督・製作:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
脚本:ギジェルモ・アリアガ・ホルダン
製作総指揮:フランシスコ・ゴンサレス・コンペアン、マルタ・ソサ・エリソンド
撮影監督:ロドリゴ・ブリエト
美術:ブリジットブロシユ
衣装:ガブリエラ・ディアケ
サウンドプロデューサー:マルティン・エルナンテス
音楽:グスターボ・サンタオラヤ

キャスト

エル・チーボ:エミリオ・エチェバリア
オクタビオ:ガエル・ガルシア・ベルナル
バレリア:ゴヤ・トレド
ダニエル:アルバロ・ゲレロ
スサナ:バネッサ・バウチェ
ルイス:ホルヘ・サリナス
ラミロ:マルコ・ペレス
グスターボ:ロドリゴ・ムライ・ブリサント
レオナルド:ホセ・セファミ
マル:ルルデス・エチェバリア
ハロチョ:グスターボ・サンチェス・バラ

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