原題:SCARLET DIVA

2001年ウィリアムズバーグ・ブルックリン映画祭新人監督賞受賞

2000年5月26日イタリア初公開

2000年/イタリア/カラー/96分/2,626m/ヴィスタサイズ/Dolby Digital 日本語字幕:吉岡芳子 配給:クライド・フィルムズ

2004年11月10日よりDVD発売開始 2002年6月7日DVD発売/2002年6月7日ビデオ発売&レンタル開始 2002年2月23日よりシネ・アミューズにてレイトショー公開

(C)OPERA FILM s.r.l.-2000

公開初日 2002/02/23

配給会社名 0419

公開日メモ ダリオ・アルジェントの娘、アーシア・アルジェントの初監督作品。

解説



イタリア映画界から久々の新鋭監督が登場した。その名はアーシア・アルジェント。ご存じの通り『サスペリア』などで知られるホラー映画の帝王ダリオ・アルジェントの娘である。父親の監督した『トラウマ/鮮血の叫び』などで女優としては日本でもお馴染みだが、その父から受け継がれた才能の血はアーシアの中で確実に増殖していた。女優、小説家、脚本家、ドキュメンタリー作家、そして短篇映画の監督とマルチな活躍をしていた彼女が長篇映画監督デビュー作となる、この『スカーレット・ディーバ』で自らを見事に開花させた。

緋色の女神と呼ばれ映画界の頂点に立ちながら、私生活では孤独感を募らせ、セックスとドラッグに溺れる女優アンナ。ただれた地獄のような日々を送る彼女が、ある日ミュージシャン、カークと出逢い、彼の子供を妊娠することで人生に光を見い出し、脚本家、そして映画監督という新たな目標に前向きに進む決心をする。だがツアーに出た彼とは連絡もできず、アンナはいつしか現実と幻覚の狭間へと入り込んでいく。そして数ケ月後、彼女はカークと再会できるのだが…

頂点を極めた若き女優が映画監督を目指す物語は、監督・脚本・主演を務めるアーシアの自伝的要素も多分に含まれている。彼女自身、女優のみならず脚本、監督と活動の幅を広げており、また本作撮影後ではあるが、妊娠、出産しているのも映画の主人公アンナと同じ境遇である。しかし過激で赤裸々な表現以上に、繊細で真摯な映画への想いこそが彼女の内面の吐露なのだろう。アーシア・アルジェントは映画監督の父と女優の母(本作にも母親役で出演のダリア・ニコロデイ)の娘として生まれ、9歳で女優デビュー。『デモンズ3』などに出演後、『トラウマ/鮮血の叫び』で日本でも注目され、その後イタリアのアカデミー賞といわれるダヴィッド・ディ・ドナッティロ賞の最優秀女優賞を2度受賞した。さらにフランス、イギリスなどの映画にも出演、監督業にも進出し、この『スカーレット・デイーバ』が長篇劇映画としては監督デビュー作になる。アーシアはアメリカのウィリアムズバーグ・ブルックリン映画祭で新人監督賞に輝くなど、各国で監督として高い評価を得たが、本作での大胆で繊細な演技は女優としての活動も今まで通り続けて欲しいと思わせるものがある。

主人公アンナを夢中にしてしまうミュージシャン、カークはニューヨークで新進ミュージシャンとして活躍するジーン・シェパード。彼は本作の音楽も一部手掛けている。同じくミュージシャンのスクーリー・Dも顔を出している。アンナの親友の女優ヴェロニカ役のヴェラ・ジェンマは往年の二枚目俳優ジュリアーノ・ジェンマの娘で、私生活においてもアーシアとは親しい間柄らしい。他に、ニューヨークを拠点とする異才の画家ジョー・コールマンが怪しげな大物プロデューサー役で、そしてドイツを中心に活動している俳優ハーバート・フリッチェがコカイン中毒の脚本家として出演するなど、イタリア国内はもちろん、ヨーロッパにもとどまらず、アメリカまで国の枠を越え、多種多様なジャンルからの異色のキャストが組まれた。
そして音楽担当はシカゴで活躍するミュージシャン・ジョン・ヒューズ。彼は青春映画の巨匠と言われた同名のアメリカの映画監督の息子である。この作品は彼が初めて本格的に映画音楽を手掛けた作品であり、今までは父の仕事とは関わりなく、”ビル・ディング”というユニットなどで音楽活動だけで歩んできた。今回の起用はアーシアが”ビル・ディング”のアルバムを聴いたのがきっかけで、この映画のためにかつてのユニットがコラボレートされたのである。またジョンは本作にカメオ出演もしている。

製作は父ダリオ・アルジェントと叔父クラウディオ・アルジェントが担当し、また特殊効果には『スタンダール・シンドローム』などのセルジョ・ステイヴァレッティ、編集に『オペラ座の怪人』のアンナ・ナポリと、父親の最近の作品を手掛けるスタッフがアーシアのデビューをバックアップしている。
撮影はローマを拠点に、パリ、ロンドン、アムステルダム、そしてロサンゼルスなどで行われ、スタジオをほとんど使わず、その大部分がロケーション撮影されている。
尚、この『スカーレット・デイーバ』は主人公の名前と同じアンナという人物に捧げられているが、アンナはアーシア・アルジェントの今は亡き姉の名前である。

ストーリー


『スカーレット・デイーバ(緋色の女神)』としてカリスマ的な人気を得ている若き女優アンナ・バッティスタ。スクリーン・テスト、撮影、取材、映画祭の授賞式、ファン・サービスに明け暮れて、ヨーロッパを街から街へと旅する毎日。そんな華やかな表舞台とは裏腹に、アンナの孤独感は募るばかりだった。人気の衰えを気にし、スキャンダルにおびえ、金目当ての奴らにすり寄られる日々で、それを忘れるために、愛のないセックスを繰り返し、ドラッグに溺れていた。アンナには同じく女優だった母親がドラッグ中毒の末に、幼い自分と兄を残して死んでいった記憶が、そしてその兄も目の前で事故で亡くしてしまった過去があった。

アンナの周辺には、いつもドラッグとセックス、暴力、そして死の影がつきまとっていた。ある日、パリを訪れたアンナは女友達で女優のヴェロニカと出かけたライブハウスでオーストラリアから来たミュージシャン、カークと出逢い、かつてない愛の感情が衝撃的に沸き上がる。彼に夢中になったアンナは一夜を共にしたが、彼はコンサート・ツアーのため翌朝旅立ってしまう。しかしアンナはまわりの人間たち同様に攻撃的で身勝手だった自分が、カークとの出逢いで変わったことを知る。優しさと安らぎを誰かと分かち合いたいという衝動が彼女の中に芽生えたのだ。そしてさらに彼女の人生は一変することとなる。
アンナはカークの子供を宿していたのだ。

アンナ自身は変わっても周囲の映画関係者は依然として同じだった。ハリウッドでのスクリーン・テストを餌に身体を求める大物プロデューサー、しかもロスでは下らないB級映画しか待っていなかった。ロンドンでのグラビア撮影では有名カメラマンがすすめるドラッグで死の淵まで落ち込み、もう女優としての生活を捨てようと決意するアンナ。以前からの願望だった脚本家、そして映画監督になるべく、アドバイスと安らぎを求めて尊敬する脚本家を訪ねてアムステルダムに向かったアンナだったが、彼はヘロイン中毒の老人になってしまっていた。

すべてに絶望したアンナにとって、唯一の救いはカークヘの思いだった。ひたすらカークを待ち続けるが、彼からは一方的に電話が入るだけだった。そんな日々の中でアンナは現実と幻覚をさまよっていた。自分自身が亡霊となって現れたり、そして子供の時に亡くした兄の幻影を見たり、そして自分の中の新しい命すら失ってしまうという夢まで…

数ケ月が過ぎ、カークから連絡が途絶えているものの、お腹の子供の順調な生育を喜んでいるアンナは、彼が再びパリで演奏することを知る。目立つお腹を隠そうともせず、アンナはライブハウスに向かう。カークとの愛を貫くために、そしてそれがあればどんな辛いことも乗り越えられると思って・・・

スタッフ

監督・原作・脚本:アーシア・アルジェント
製作:ダリオ・アルジェント、クラウディオ・アルジェント
製作総指揮:クラウディオ・アルジェント
製作総指揮補:ジャンルーカ・カルティ、アドリアナ・チィエサ・ディ・パルマ
撮影:フレデリック・ファサーノ
美術:アレッサンドロ・ローザ
衣装デザイン:スージィ・マットリー二
編集:アンナ・ナポリ
音楽:ジョン・ヒューズ
音響デザイン:リリオ・ロザート、アンドレア・ランチャ
特殊効果:セルジョ・スティヴァレッティ
制作進行:ジャンルーカ・パッソーネ

キャスト

アンナ・バッティスタ:アーシア・アルジェント
カーク・ヴェインズ:ジーン・シェパード
ヴェロニカ:ヴェラ・ジェンマ
ピエール:ファピオ・カミール
ミスター・パー:ジョー・コールマン
ケルー:ルーチェ・カポネグロ・セラン
アーロン:ハーバート・フリッチェ
Jーバード:ジャスティニアン・フォーリー
ルーク:ヴァネッサ・クレイン
マルガリータ:フランチェスカ・ダロージャ
ハッシュ・マン:スクーリー・D
ハミッド:アレッサンドロ・ヴィラーリ
映画監督:デヴィッド・ブランドン
ヴェッシィ医師:レオ・グロッタ
ジャーナリスト:パオロ・ボナッチェリ
アンナ(少女時代):グロリア・ピロッコ
アリョーシャ:エドアルド・セルヴァディオ
アンナの母:ダリア・ニコロディ

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