シネマGOラウンド

2000年TOKYO FILMeX参加作品

2000年/日本/38分/ヴィデオ作品 製作・配給:映画美学校/アテネ・フランセ文化センター 主催:映画美学校/アテネ・フランセ文化センター

2001年2001年6月22日(金)〜7月7日(土)(日曜休館)まで アテネ・フランセ文化センター(130席)にて上映

“シネマGOラウンド”公開記念イベント&トークショー開催!::http://www.cinematopics.com/cinema/news/output.php?news_seq=1561

公開初日 2001/06/22

公開終了日 2001/07/07

配給会社名 0218

公開日メモ 映画美学校の講師をつとめる気鋭の4人の映画作家が、生徒たちとのコラボレーションにより製作した“シネマGOラウンド”のRound1!

解説


『夜の足跡』は、『宇宙貨物船レムナント6』で劇場デヴューした万田邦敏監督が、映画美学校第2期生の大城宏之のオリジナル脚本を元に演出したものである。父親殺しという過去を背負いつつ上京して、印刷工として働いている24歳の青年、洋を襲う幾多の困難を描いた青春映画といえる。印刷工場のリストラ、母親から預かってくれと頼まれた弟、潤(11歳)との葛藤(潤は父親ばかりか母親まで失わせた洋を許していない)、別れた恋人への想い(だが、「あなた、犬の目してる」と残酷な一言を投げつけられる)、そして何より死んだ父親への複雑な心境などが、綴られる。このドラマを貫く縦軸は、洋のアパートに同居することになった潤との越えがたい溝であり、その距離をどう描くが焦点になるのだが、万田邦敏は的確なアングルとカット割り、それに演技過剰を排した、抑えた演出でもって、冷静にふたりの距離を見据えている。だが、これがオーソドックスな映画かというと、過去にユニークで幅広い題材を巧みにこなしてきた万田邦敏だけに、意表を突く細部には事欠かない。歩いている潤や洋を仰角の移動で追い、静止した後、キャメラの方が動いて人物をフレーム・アウトさせ、空だけ画面に残すというワイプのような不思議な効果や、河原で少年少女に半殺しの目にあった中年男が洋におくる手招きの不気味さなどに現れている。また演出の鍵になっているのは、印刷のインクで汚れた手を歯ブラシで洗うカットに表されるように、手の表情である。この汚れた手はいくら洗っても落ちない過去を引きずっているようだ。父親を殴り殺した手は、自分でコントロールできない他者なのかもしれない。万田邦敏は、潤を殴ろうした時の拳や、元恋人のお尻に近づけるが触れない手など、随所に印象的な「手」を配置するのである。そして、ベランダに転がっている鉢植えや、潤の性の目覚めなど、時を暗示させながら、兄弟のラスト・シーンに見られる距離へと関係を導いていく。

《監督からのコメント》
越えてはならない一線を今まさに越えようとしている、あるいは過去にすでに越えてしまった、そんな人間に対して、映画は飽くなき関心を抱いているようです。その一線を前にして、主人公は試され、その試練が劇的な緊張を生み出します。『夜の足跡』の主人公は、少年時に、家族に対して理不尽な暴力を振るう父親を殴り殺しました。映画には描かれていませんが、その後彼は少年院に入り、更生を遂げました。今では心の内で罪を償いつつ、慎ましい生活を送っています。しかし、彼が過去に越えた一線の内側に真に戻るためには、もう一度自身の血塗られた過去と向き合い、過去の罪を決して消えることのない「烙印」として我が身に引き受けることが必要だったのです。彼はこの烙印から決して逃げないことの決意の表明として、父親の血で自分の額にまさに一線を引きます。しかし、彼の「帰還」はたやすくは遂げられません。行き場を失らた彼にとって、再出発の唯一の拠り所は弟との関係だったのです。父親を殺すことで、いわば家族を否定した彼が、もう一度家族の関係を修復すること。やがて25歳になる彼と11歳の弟の未来を、私は信じたいと思います。

ストーリー

川岸に、一人の少年が寝そべっている。傍らに赤いリュックサックが置かれている。同じころ、小さな印刷工場では24歳の青年・洋が働いている。真面目で腕のいい彼は社長夫婦に気に入られていたが、不景気の折から、夫婦は洋に工場を辞めてもらうほかないことを相談している。気のいい社長はそれを洋に言い出せない。自宅に帰った洋は、数年来音信が途絶えていた母親からの留守番電話を聞く。しばらく弟の潤の面倒をみて欲しいという。洋は潤とも数年来会っていない。土手に寝そべっていた少年が潤だった。
その夜・二人は再会するが互いに相手を無視するような態度だった。翌日、洋は社長から首の話を聞かされる。洋の地味で単調な生活の歯車が狂いだした。帰途、洋は川岸で異様な光景を目の当たりにする。それは、15歳の時に殴り殺した父親の亡霊だった。消し去ろうとしても消えない忌まわしい過去の記憶が洋を襲う。潤は、洋の蛮行が原因で一家離散したことを洋になじり、洋の部屋を飛び出す。行き場を失った洋は、かつての恋人に救いを求めるが、彼女にも見捨てられる。洋は潤を探し出す。洋にとって、兄弟という血のつながりだけが自分をこの世界に繋ぎ止めておく唯一の絆だった……。

スタッフ

監督:万田邦敏
脚本:大城宏之/万田邦敏
撮影:瀬戸慎吾/川野由加里/小林妙子
照明:足代裕希/田中深雪/荻野健一
録音:島田宜之/高野美和子
美術:加藤慶子
スクリプタ:浦山三枝
編集:北岡稔美
音楽:青山真治/山田勲生/古池寿浩
助監督:山田英治/秋元エマ/谷口ニ郎
制作:大井孝信/竹本直美/石谷岳寛

プロデューサー:松本正道/堀越謙三
アソシエイト・プロデューサー:山口博之/安井豊/大坪真理
撮影アドバイザー:宮武嘉昭
録音・整音アドバイザー:臼井勝
編集アドバイザー:筒井武文
ネガ編集:相沢尚子
現像・テレシネ:SONYPCL
リレコ:シネマンブレイン
製作:アテネ・フランセ文化センター/映画美学校

キャスト

洋:境利朗
潤:浦工典
幸子:五味麗
リサ:山西由香
橋本:宮武嘉昭
橋本の妻:浦智子
中年男:三上猛士
田島:池田火斗志

米沢美和子
衣笠真二郎
田中優太郎
小塚雅之
山川宗則
居原田眞美

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