原題:FELICIA'S JOURNEY

恋人をさがす旅に出た17歳の少女。大邸宅に住む贅沢な晩餐をする男と出会う、 そしてその男も自分を愛してくれる少女を待っていた・・・・・ 99年のカンヌで絶賛されたアトム・エゴヤン監督、3部作の完結編。

1999年/イギリス・カナダ合作/アイコン提供/カラー/スコープサイズ/ドルビーSRD/1時間56分 提供:日本ヘラルド映画/ポニーキャニオン 配給:日本ヘラルド映画

2000年9月20日よりビデオ発売・レンタル開始 2000年3月18日よりシネマライズにて公開

公開初日 2000/03/18

配給会社名 0058

解説

心の癒しをテーマにしたエゴヤン作品の3部作完結編ともいえる
最高傑作「フェリシアの旅」がここに誕生した。

恋人を探す為、アイルランドから旅に出た17歳の少女が出会ったのは、大きな邸でひとり贅沢な晩餐を料理する男。男は自分を愛してくれる少女を長い間、待っていた。これは俊英アトム・エゴヤン監督が描いた、息を呑むほど美しいサスペンス。

カンヌ映画祭国際批評家協会賞を受賞した「エキゾチカ」で世界中にその名をとどろかせ、「スウィート・ヒアアフター」もカンヌ映画祭でグランプリ以下三冠受賞の快挙を成し遂げ、現在最も高い期待を寄せられているアトム・エゴヤン監督の待望の最新作が「フェリシアの旅」である。原作は『フールス・オブ・フォーチュン』で知られるウィリアム・トレヴァーの、1994年のホイットプレッド賞に輝いた小説トレヴァーは本作について”原作の素晴らしい映画化で、小説家はこれ以上何も望めない”と絶賛した。
 エゴヤン監督はこの小説に童話”美女と野獣”の魅力的変形を見い出し、脚本を手掛けたと語る。大きな邸にたった一人で住む野獣と彼が愛した美女。孤独な野獣を救うただひとつの方法は美女の愛。エゴヤン監督は主人公達に”苦痛は流い流され、癒しが訪れる”とそれぞれに語らせ、まるで魔法から解かれた野獣のように映画を観るものにとっても心安らかな結末を脚色した。そして、本作ではテレビドラマ「新ヒッチコック劇場」での手腕を操りながら、過去・現在・未来を自在に往き来するエゴヤンならではの見事なストーリー展開で、息を呑むほど美しいサスペンス「フェリシアの旅」を完成し、99年カンヌ映画祭を熱狂させた。

ストーリー

《男は車のバックミラーに映る少女を凝視していた。やがて、彼は少女を”アイルランドの瞳”と名づけた。》
バーミンガムの大きな邸で、太った中年の独身男ジョゼフ・ヒルディッチは、古いテレビの料理番組のピデオをみながら、すばらしく美しいフランス人の料理研究家ガラが実演するレシピ通りに一つ一つ順序に従って料理し、それから椅子に座って、見事なラムの王冠型ローストをひとりで食べている。
アイルランドからフェリーに乗って、少女がひとりでやってくる。手にはナップサックしかない。フェリシアは芝刈機の工場で働くという恋人ジョニー・ライサートを探しにイギリスに来たのだ。ケイタリングの手配を業とするヒルディッチは帰宅する時、ナップサックを背負ったフェリシアを見つけ、ここは芝刈機を作る工場ではないが近くの工場地域に行ってみるように助言する。緑のモリス・マイナーに乗ったまま、少女が歩いていくのをバックミラー越しに見つめる。
フェリシアが旅を始めたいきさつが徐々に語られ始める。フェリシアの想いは故郷のアイルランドの小さな村へ彼女を美しいと言い、愛していると言ったハンサムな青年ジョニー・ライサートヘと、何度も何度もかえっていく。ジョニーはバスに乗り、村を出たフェリシアが子供を宿している事も知らずに。村を出るとき、落ち着き先が決まったら住所を知らせる手紙を書くと、彼は約束した。が、その後全く連絡もなく思い悩むフェリシアは若いジョニーが故国の人々を裏切ってイギリスの軍隊に入ったいきさつを父から聞いても、何の慰めも得られない。長年の間に心にしみついた反英の情熱が敵意となり、父はイギリスの兵士の子を身ごもった娘をきびしく非難する。父に拒絶され恋人を探す為フェリシアは初めて故郷を離れ、旅に出る。
邸こ戻ったヒルディッチはもう一度、同じ古い料理番組に従って、贅沢な晩餐を用意する。今回の番組には、ツイードの上着を着たやや悲しげな表情の太った少年が出ている。少年はビデオのフランス料理研究家の息子で、若き日のヒルディッチである。これが彼の少年時代だった。
翌日の朝、ヒルディッチは車で、フェリシアが宿を出るとこるをつかまえ、芝刈機の工場があるかもしれない近くの町へ連れて行ってあげようと、親切に話しかける。入院中の妻を見舞いに行くついでだから、と彼は説明する。車の中で、フェリシアは彼の親切に心から安心し、しだいにヒルディッチにジョニーの事、妊娠している事、アイルランドの故郷の事を話し始める。
工場に着くと、フェリシアはジョニーを探しに行き、ヒルディッチは車の中で待つ。彼は若い娘のナップサックをのぞき、中に隠した金を見つけて、一瞬ためらう、それから、金をポケットに入れると、少年時代の事を思い出す。母の料理番組の録画をしている家の中だ。太った少年が番組の邪魔をするので、追い払われ、母のハーブ・ガーデンで知らない人の財布を見つける。大人から疎外されたと感じた少年よ金を取り、財布を埋めてしまう。
車の中。ジョニーを見つけられなかったフェリシアは、今度はヒルディッチが病院に入り、存在しない妻の見舞いのふりをしている間、待っている。二人が邸こ戻ると、ヒルディッチは彼女に泊まる場所をなんとかしようと言う。これ以上世話になりたくなかった彼女は急いで去る。金が盗まれた事も知らずに。
大きな邸にひとり残された彼は、ビデオテープをみる。モリス・マイナーからナップサックをもって歩き去る若いアイルランド人の少女。彼は注意深くカセットにラベルをつける、”アイルランドの瞳”。そして、きれいにラベルが貼られた他の数本のビデオと一緒にして、何百本もの母の番組のテープを置いた特別な部屋の特別なキャビネットに入れる。ヒルディッチはこれらのテープを何度も見て、過去に話した若い娘達との思い出をよみがえらせているのだ。

傷心のフェリシアは、疲れを知らぬ戸別訪問の説教師ミス・カリガリーに声をかけられ「集会の家」でもてなされるが、そこでようやく金がなくなった事に気がつく。彼女に疑われ激怒した信者たちは、どしゃ降りの雨の中へと彼女を追い出す。
ヒルディッチはジョニーの居場所を調べ始め、イギリス軍の名簿に彼の名を見つけるが、彼女に教えるつもりはない。寝る場所のないフェリシアはヒルディッチの予想通り邸のドアをたたくしか道はなかった。そして、彼は計画に従ってフェリシアを邸に導き、今朝妻が死んだという悲しし話をして同情を買う。邸に客を招くのは彼にとって始めての事だった。ヒルディッチはフェリシアに妻のアイダの名を出しながら堕胎を薦める。疲れ果て、落胆したフェリシアは、この新しい保護者に中絶をすると言ってしまう。手術に付き添ったヒルディッチはフェリシアを邸に連れ帰り、睡眠薬を混ぜた熱いココアを飲ませ、優しく、彼がどんなに彼女を愛しているか告白する。他の娘たちの誰よりも愛している−エルシーよりも、ベスよりも、シャロン、ゲイ、ジャッキー、ボビー、サマンサよりも…。
二階でフェリシアが眠っている間に、ヒルディッチは庭に出て大きな深い穴を掘り始める。懸命に掘っていると、フェリシアが前に出会った説教師ミス・カリガリーが「神による救済」を与えようと邸を訪ねる。ミス・カリガリーカワイルランド人の娘からヒルディッチの事を”親切な人だ”と聞いていた事を知り、彼は初めて自分の事を気にかけてくれたフェリシアを心からいとおしいと思う。二階で目覚めたフェリシアは、彼女の悪夢が本当だった事、彼女の保護者は見かけと全く違う犯罪者である事に気づき、ヒルディッチが語った娘たちの運命を知る。薬で弱った状態だが、何とかこの邸を逃げだそうと必死でドアにたどり着くと、ヒルディッチが立ちはだかっていた。が、ヒルディッチはフェリシアを助け、ついに愛を手に入れたかのように、そして、母への憎しみから解き放されたように安らかに自殺する。
邸から逃げ出した彼女は死んだ少女達と自分の生まれなかった息子の冥福を祈りながら、”苦痛は洗い流され、癒しが訪れる”と、生きている喜びをかみしめるのだった。

スタッフ

監督:アトム・エゴヤン
脚本:アトム・エゴヤン
原作:ウイリアム・トレヴァー(角川文庫版)
製作:プルース・デイヴィー
製作総指揮:ポール・タッカー、ラルフ・カンプ
共同製作:ロバート・ラントス
製作補:カレン・ガラサー
撮影監督:ポール・サロシーC.S.C.
美術:ジム・クレイ
編集:スーザン・シプトン
音楽:マイケル・ダンテ
録音:ブライアン・シモンズ
衣裳:サンティ・パウエル
キャスティング:レオ・デイヴィス

キャスト

ヒルディッテ:ポプ・ボスキンス
ガラ:アルシネ・カーンジャン
フェリシア:エレーン・キャシディ
アイリス:セリア・レイド
シドニー:ニズワー・カランジュ
通関士:アリ・ヤシネ
ジョニー:ピーター・マクドナルド
セールスマン:クリス・ドサンジュ
フェリシアの父:ジェラード・マグソーリー
フェリシアの曾祖母:マリー・スタフォード
シャイ・マルロネ:ギャヴィン・ケーティ
ライサード夫人:プリッド・ブレナン
テレピ・ディレクター:マーク・ハドフィールド
少年時代のヒルディッチ:ダニー・ターナー
サロメ:スーザン・パリー
ミス・カリガリー:クレア・ベネディクト
老婦人:ジーン・マーロウ

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