原題:Snow Falling on Cedars

数々の賞に輝く世界的なベストセラーの映画化 雪がすべてを包み隠そうとも、真実は埋もれな−−−−−−−−−

(全米1999年12月22日公開)

1998年アメリカ映画/127分/カラー/シネマスコープ/ドルビーステレオ/ 製作:ユニバーサル・ピクチャーズ/UIP配給

2008年03月13日よりDVDリリース 2002年08月01日よりDVD発売開始 2001年3月23日ビデオ発売 2000年9月22日よりビデオレンタル開始 2000年9月22日よりDVD発売開始 2000年4月1日よりみゆき座ほか東宝洋画系にて公開

公開初日 2000/04/01

配給会社名 0081

解説

 しんしんと雪が降り積もる。切々と愛が甦る。これは、一つの裁判をきっかけに再会した、男と女の物語。歳月を経て複雑に重ねられた二人の愛の断層が、ある殺人事件を媒介に、哀感と叙情を込めて描き出される。
 数々の賞に輝き、30か国で読まれたベストセラー小説を、あの『シャイン』で世界中を感動させたスコット・ヒックス監督が映画化。戦争という大きな時のうねりの中で引き裂かれた、アメリカ人青年と日系人の娘の心の軌跡を、美しいフラッシュバックで謳い上げていく。男は、故郷で新聞記者になった。彼がかつて愛した女は、今は、第一級殺人に問われた被告人の妻だった。一人の漁師の怪死をめぐる裁判を軸に、複雑に絡み合う過去、裁かれる今、守るべき愛が、鮮明にえぐり出されていく。失われた愛のありかを求め、それぞれの孤独と沈黙の中で喘ぐ主人公の姿が、深い感動を呼び起こす。
 新聞記者イシュマエルには、『大いなる遺産』のイーサン・ホーク。過去に縛られた主人公の苦悩を、抑えた、しかし、力強い演技で描き出し、役者として大きな前進を見せている。イシュマエルの昔の恋人、日系人のハツエには、『ピクチャーブライド』などで国際的に活躍する工藤夕貴。監督の指名でこの大役に抜擢され、アメリカのメジャー作品での本格的初生演を飾った。この若手スターを経験豊かな助演キャストが支える。『ペレ』でアカデミー賞主演男優賞候補に上ったマックス・フォン・シドーが弁護士、『将軍の娘/エリザベス・キャンベル』の将軍役を演じた個性派俳優のジェームズ・クロムウェルが判事役で出演。イシュマエルの父で、島で新聞杜を営むアーサーには、俳優・演出家・脚本家として活躍するサム・シェパードが扮している。怪死した漁師の母親エッタ・ハインを、『デッドマン・ウォーキング』などのシリア・ウェストンが演じている他、リチャード・ジェンキンス(『アメリカの災難』)、ジェームズ・レブホーン(『アンカーウーマン』)らが出演。また、ハツエの夫カズオ役で、モデル出身のリック・ユネが・スクリーン・デビューを果たした。
 この作品は、回想シーンの中にさらに回想シーンが登場する上、何人もの心象風景が錯綜する複雑な構成になっている。少ない台詞と鮮やかにさばかれた映像が、過去と現在を巧みに結び、製作陣の力量を感じさせる。監督は、オーストラリア出身のスコット・ヒックス。96年、『シャイン』でアカデミー賞の7部門にノミネートされ、一躍、国際舞台に躍り出た。人の心の琴線に触れる映画作りの手法が、本作でも十分に生かされた.原作は94年にデビッド・グターソンが発表し、ベストセラーとなった長編小説「Snow Fall on Cedars」。アメリカで400万部以上を売ったこの小説は、日本では『殺人容疑』(講談杜)というタイトルで発売されている。今回は、グターソン自身が、ヒックス監督、そして、『レインマン』でアカデミー賞脚本賞を受賞したロン・バスと共に脚本化した。製作は、スティーブン・スピルバーグの右腕だったキャスリーン・ケネディ(『シンドラーのリスト』)とフランク・マーシャル(『生きてこそ』の監督)、『母の眠り』のハリー・J・アフランド、そして、脚本も共同執筆したロン・パスの4人。撮影は、『JFK』でアカデミー賞撮影賞を受賞したロバート・リチャードソン。編集には、新世代を代表するハンク・コーウィン(『モンタナの風に吹かれて』)を起用した。プロタクション・デザインは、『L.A.コンフィデンシャル』でアカデミー賞美術賞候補に上ったジニーン・オプウォール。音楽は、『ペスト・フレンズ・ウェディング』『素晴らしき日』などで5度アカデミー讐候補に上り、最近は『シックス・センス』も手掛けたジェームズ・ニュートン・ハワードが担当。日本的な曲調を取り入れ、ドラマ性を高めている。愛、戦争、裁判という魅力あるドラマの要素を確実に映像化するため、ロケ地には何よりも詩情が求められた。サン・ピエトロ島の架空の漁村風景は、主に、カナダのブリティッシュ・コロンビア州にある人口800人の小さな町グリーンウッドで撮影された。この町には、この作品にうってつけの小さな古い教判所があった。

ストーリー

 ワシントン州北西部のピュージェット湾に浮がぶ小さな島、サン・ピエトロ島。湿った強い風に晒された小さな港町を抱く丘には、ヒマラヤ杉が見事な縁を為し、その間には美しい苺畑が広がっていた。その苺畑で賃仕事をするのは、主に日系の移民たちだった。
 1954年の冬。雪が降り始める頃、この島で、第一級殺人をめぐる裁判が開かれ、一人の日系人が裁かれようとしていた。その年の9月。霧の濃い海で、漁師のカール・ハイン(エリック・タール)が溺死した。死体の頭部には、何かで強く打った傷痕があった。そして、翌日、同じ島の漁師、日系二世のカズオ・ミヤモト(リック・ユネ)が殺人容疑で逮捕される。前夜、カズオは確かにカールと同じ場所で漁をしていた。そして、カールの船からは、カズオの常用しているバッテリーが発見され、逆にカズオの船にはカールの血のついた釣竿が残っていた。弁証士のネルス(マックス・フォン・シドー)は、カールの死因が溺死である以上、頭部の傷は殴られたものとは限らないと主張したが、その傷は日本の”剣道”を連想させた。カズオにとって、いたって不利な状況だった。妻のハツエ(工藤夕貴)は為す術もなく、傍聴席から夫の背中を見つめるだけだった。
 そして、もう一人、この裁判を見守る人間がいた。新聞記者のイシュマエル(イーサン・ホーク)だ。取材とはいいながら、彼の視線は、自然とハツエに向いていた。幼い日、イシュマエルとハツエは、互いに心を許しあった仲だった。14歳のハツエは、黒髪の美しい少女だった。雨の日、山道を駆け抜け、ヒマラヤ杉の洞に身を隠すハツエを、イシュマエルは追って行った。初めて過ごす二人だけの時。初めて抱き寄せた肩。初めてのキス。だが、ハツエの母は、白人とのつき合いを許さなかった。それから何年も、洞の中での二人の秘密は続き、それは、少しずつ大人の愛に近づいていった。
 カズオの家と死んだカールの家の間には、7エーカーの苺畑の土地をめぐって、長年のいざこざがあった。カズオの父が、息子の代になれば土地の所有を認められることを見越して、カールの父親から土地を買う約束をした。しかし、太平洋戦争が勃発し、約束の代金は途中までしか支払われなかった。約束を交わしたカールの父も死んだ。残った母ユッタ(シリア・ウェストン)は、頑として土地を譲らなかった。今は、一旦、人手に渡った土地をカールが買い戻していた。その土地をあらためて買い入れようと、カズオはカールに交渉を持ちかけていた。裁判では、この交渉の最中に、二人の間に諍いがあったのではないかという点が追及された。
 戦争が残した傷跡は、それだけではなかった。1941年12月。日本による真珠湾攻撃を境に、イシュマエルとハツエの関係も変わってしまった。数か月後、ハツエたち日系の住民は、全員、島を去り、強制収容所に入れられた。苦しい生活の中で、母の言う「肌の色の違い」を痛いほど感じたハツエは、イシュマエルに「あなたを愛していなかった」と書いた手紙を送る。そして、同じ色の肌を持つカズオと結婚した。一方、イシュマエルは、傷心を抱いて戦地に赴き、左腕を失った。復員後も、戦地で惨たらしく死んだ仲間たちの姿がまぷたに焼きついてはなれない。虚無感から抜け出せないままに、彼は亡き父(サム・シェパード)の残した新聞社を継いで記者になった。同じく、アメリカ人の一人として出征したカズオも、今、凍りつくような独房で、自分が殺した若いドイツ兵のことを回想する。カズオには、因果が、こうして自分の身に巡ってきたかのようにも思われた。

スタッフ

監督・脚本:スコット・ヒックス
脚本・プロデューサー:ロン・バス
製作:キャスリーン・ケネディ、フランク・マーシャル
撮影監督:ロバート・リチャードソン
プロダクション・デザイナー:ジニーン・オブウォール
音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード

キャスト

イシュマル・チェンバース:イーサン・ホーク
ハツエ・ミヤモト:工藤夕貴
判事フィールディング:ジェームズ・クロムウェル
弁護士ネルス:マックス・フォン・シドー
アーサー・チェンバース:サム・シェパード
カズオ・ミヤモト:リック・ユネ
子供時代のハツエ・ミヤモト:鈴木杏

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