切ない初恋の記憶をたどる物語! 韓国で50万人を超える動員! 『シュリ』に次ぐ大ヒット! もう戻れない。失われてしまった時・・・

1999年釜山国際映画祭オープニング 2000年カンヌ国際映画祭「監督週間」正式出品 2000年モントリオール世界映画祭正式出品 2000年バンクーバー国際映画祭正式出品 2000年カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭正式出品 2000年アジア・フォーカス福岡映画祭正式出品 第37回大鐘賞(韓国のアカデミー賞)5部門独占受賞!    最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀新人男優賞    最優秀助演女優賞、最優秀脚本賞 第35回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭    審査員特別賞、ネットパック賞、FICC賞

1999年/日本・韓国/カラー/2時間10分/35mm NHK・韓国共同制作作品

2000年10月21日よりキネカ大森、テアトル池袋にてロードショー! 2001年3月23日DVD発売/2001年3月23日ビデオ発売

解説

時を遡るなかで『ペパーミント・キャンディー』はある男の人生に起きた出来事を、時間を遡りながら描いた人間ドラマである。自ら脚本も執筆したイ・チャンドン監督は、主人公キム・ヨンホの半生を、現在から過去に向かって語るという困難な手法を選択した。人生のある時間を逆戻りさせるなかで、妥協と堕落に身を落とすことになった人間の、その瞬間を容赦なく描き出す。ラストでは、それと対比するように、輝く未来を信じ、希望に燃えていた青春時代を浮き彫りにさせ、観る者それぞれに時間の経過の残酷さを呈示した。
また、物語の主軸とも言える主人公の初恋に、韓国の政治情勢が歴史的かつ社会的な背景として絶大な力を及ぼしている事実も真正面からとらえている。

映画監督としてのイ・チャンドン
教師、小説家、舞台演出家として活動した後の1997年、第1回監督作品『グリーン・フィッシュ』で国内外を問わず鮮烈なデビューを飾ったイ・チャンドン。70年代以降の彼は、韓国文化人コミュニティのキーパーソンである。パク・クァンス監督作の『あの島へ行きたい』(93)、『美しき青年 全泰壱(チョン・テイル)』(95)の脚本で映画作家としての才能を遺憾なく発揮。初監督作品となった『グリーン・フィッシュ』(97)は、都市計画で農業地となったある町を描いた作品で、センセーションを巻き起こした。本作『ペパーミント・キャンディー』は、時間の持つ破壊の力と癒しの力を通して見られる、ある男の半生を時代とともに描き出した作品で、監督第2作目である。
本作品は、難しい役どころに韓国を代表する役者陣を迎えつつ、主役に無名の俳優を起用することで、素朴で自然なストーリー展開を生み出すことに成功した。ヨンホ役のソル・ギョングは、ひとりの男の20年にわたる半生を演じるという難役を、完璧なまでにこなしている。新人ムン・ソリは初恋の女性スニムを力演。また『ディナーの後に』のキム・ヨジンが、ヨンホの妻ホンジャ役で印象深い演技を見せている。
日本・韓国初の合作として製作は、イースト・フィルム・プロダクションと NHKの共同製作による。提供はユニコリア・アーツ&カルチャー・インベストメント社とドラマ・ベンチャー・キャピタル。
1999年にクランクイン。撮影は、全編を通して韓国で行なわれた。プロデューサーはミュン・ケナムとNHKの上田信。長きに渡る軋轢を乗り越え、韓国と日本が共同で文化事業に取り組んだ記念すべき最初の映画である。また1999年の釜山国際映画祭では、自国の作品が初めてオープニングを飾ったことでも話題となり、世界の映画人たちからも熱い喝采を浴びた。

世界各国に広がる感動
2000年1月1日、当初ソウルの7館の映画館で封切られた『ペパーミント・キャンディー』は、またたく間に感動の口コミが広がり、一気に上映館を広げる逆行現象を起こした。物語の確かさと人生に対する深い洞察は、満場一致とも言える観客の熱い支持と批評たちの絶賛に支えられ、何度でもこの作品を見ようという、リピート運動が展開されるほどの盛り上がりを見せ、『シュリ』に次ぐ大ヒットを記録。カンヌの監督週間でも前評判を大きく上回る好評を得、各国の映画祭からの出品要請も相次いでいる。誰しもが思う、人生と時間に対する、監督の静かだが強いメッセージ、全身全霊で挑んだ主演のソル・ギョングの鬼気迫る演技が、国境を超えて多くの人々の心に深い感銘を与えている。

ストーリー

1999年春 郊外
昔勤めていた工場の労働組合の集まりで、20年ぶりに仲間たちが集まった。歌と踊りで宴もたけなわとなった頃、長い間消息が途絶えていたかつての仲間ヨンホが現れ、場を白けさせてしまう。皆をよそに、鉄道の高架橋にのぼるヨンホ。すべてを失い自暴自棄になった彼の前に列車が近づいてくる。「帰りたい」と叫んだ彼の脳裏に様々な思い出が甦る。

3日前 1999年春
ピクニックの3日前、銃を手に入れたヨンホは自らの命を絶とうとあばら家に戻る。
扉を開けようとすると、見知らぬ男に声をかけられる。男は初恋の人スニムの夫だった。彼は、死の床にある妻の見舞いをヨンホに頼みに来たのだ。ヨンホはペパーミント・キャンディーの瓶を抱えて病院を訪ねる。かつて兵役に服していた彼にスニムは手紙を送ってくれた。封筒の中にはいつも同じペパーミント・キャンディーが一粒入っていたことを、ヨンホは思い出すのだった。ヨンホは別れ際、スニムの夫から一台のカメラを受け取る。それはスニムがヨンホのために大切に取っておいたものだった。しかしヨンホは、そのカメラをわずかな金に替えてしまう。

1994年夏 人生は美しい
35歳のヨンホは事業で成功を収め、忙しい毎日を送っていた。家庭や妻のことに無関心を装う彼だったが、妻ホンジャの浮気の現場に踏み込み、激怒する。しかし実は、彼自身も妻を裏切っていたのだった。妻の浮気現場を捕らえた同じ日の夜、愛人と密会している最中、ヨンホの過去を知る男に再会する。トイレの中で彼に出会ったヨンホは、「人生は美しい」と意味ありげにつぶやくのだった。

1987年春 告白
新婚のヨンホは刑事になっていた。警察の取調室で、ある学生運動家の居所をつかむため、男を訊問している。取り調べは水責めにまでエスカレートするのだった。逃亡中の学生はグンサンに隠れていた。
現地に出向いたヨンホは、そこでスニムの身代わりになると言うバーの女と一夜の関係をもつ。グンサンは、スニムの故郷でもあったのだ。バーのホステスの身体を借りて現れたスニムの前で、ヨンホは静かに涙を流した。

1984年秋 祈り
新米刑事のヨンホに与えられた初の任務は、労働組合の壊滅捜査だった。労働組合員への訊問は激しい拷問を伴うものだった。訊問を終えたヨンホの元に、スニムが訪ねてくる。ヨンホは彼女をホンジャの勤める食堂へと連れて行き、ホンジャに気のある素振りを見せてスニムを追い払おうとする。その様子に心を傷めたスニムだが、貯金をためて買ったというカメラを彼に手渡す。しかしヨンホは、それをスニムに返したのだった。同じ夜、ヨンホはホンジャをホテルに誘う。ホンジャは枕もとで祈りの言葉を唱えるのだった。

1980年5月 駐屯地訪問
ヨンホの駐屯地を訪ねるスニム。しかし折しも突如、戒厳令が敷かれ、面会許可がおりない。一方、兵舎にいるヨンホは装備の片付けに追われている。その最中、スニムがいつも送ってくれたペパーミントキャンディーの入った大切な袋を、床にばらまいてしまう。兵舎をあとにした軍用トラックから兵士のやじが飛ぶ。トラックが帰り道のスニムを追い越したからだった。兵士たちは知らされていなかったが、彼らは光州大虐殺の舞台である光州に向かっているのだった。その夜、ヨンホは足にひどいケガを負う。助けを待っている間、彼は暗闇の中にスニムらしき人影を目にする。しかしそれはスニムではなく、逃げまどう女子高校生だった。パニックに陥っていたヨンホは 誤って少女に発砲してしまう。

1979年秋 ピクニック
20歳のヨンホは、人生でもっとも美しい瞬間をかみしめていた。映画の冒頭シーンと同じように、工場の仲間たちが高架橋の下を流れる川の岸辺に集まっている。お互いに恋心を抱き始めるヨンホとスニム。ヨンホは写真家になりたいという夢を語り、「この川岸は前にも来たような気がする。夢かもしれないが」とスニムに言う。スニムは「それがいい夢ならいいのに」と答えるのだった。

スタッフ

脚本・監督:イ・チャンドン
製作:ミャン・ケナム(EAST FILM)、上田信(NHK)
製作補:チョン・ジェヨン、ジェイ・チョン、飯野恵子(NHKエンタープライズ21)
撮影監督:キム・ヒョング
照明:イ・ガンサン
編集:キム・ヒョン
音響:イ・ソンチュル
美術監督:パク・イルヒョン
音楽:イ・ジェジン

キャスト

ソル・ギョング
ムン・ソリ
キム・ヨジン

LINK

□公式サイト
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す