原題:le silence

映像作家の神、モフセン・マフマルバフ監督 最新作ついに公開決定!

1998年ヴェネチア映画祭上院議長金メダル賞受賞作品 1998年東京国際映画祭シネマプリズム部門クロージング作品

(初公開:カナダ1998年07月07日公開モントリオール国際映画祭)

1998年度作品/イラン=フランス=タジキスタン合作 カラー/76分/1:1.85ビスタサイズ/原題:le silence 配給:ニューセレクト&アルバトロス・フィルム

2000年12月2日よりシブヤ シネマ・ソサエティにて今秋公開 2001年4月21日ビデオ発売

公開初日 2000/12/02

配給会社名 0012

解説

イラン映画界で最も観客に人気があり、かつ芸術家として尊敬されている鬼才モフセン・マフマルバフ監督の最新長編である。マフマルバフ監督の作品は、これまで映画祭での上映やTV放映で数々紹介され、コアなファン層を形成してきたが、今年(2000年)になって初めて、新作の『ギャベ』『パンと植木鉢』と、そのさらに前の『行商人』『サイクリスト』が劇場公開を果たし、広い観客層に好評で迎えられた。
そしてこの最新長篇『サイレンス』の登場である。これまで、イラン映画の先行世代の名匠アッバス・キアロスタミ監督(『友だちのうちはどこ?』『風の吹くまま』)の名声のかげにかくれ、また18歳でカンヌ国際映画祭デビューした愛娘サミラ・マフマルバフ(『りんご』)にも話題性で遅れをとっていたマフマルバフが、ここに来てついに、日本でも正当な評価を得るときが来たのだ。
ひとり日本だけではなく、お隣り韓国の釜山国際映画祭(10月開催)でも今年はマフマルバフ特集が組まれるなど、このすばらしい映画作家の評価が、世界的にひろがっていく気配がある。イラン映画の特長的な要素に〈詩〉がある。この『サイレンス』では、バス通学の女の子たちが暗唱する詩としてオマール・ハイヤムが引用されているが、そういう具体的にことばのかたちをとった詩でなくとも、映画全体の構成や個々の映像などの中に〈詩〉を感じさせるイラン映画は多い。
モフセン・マフマルバフ監督の作品は特に〈詩〉の趣きを深く感じさせる。
時には力強い韻律で物語を語り、時には諷刺を利かせ、また時には鋭い表現で永遠の一瞬をさし示す。各作ごとに趣きを変えてきたマフマルバフだが、初期の『行商人』や、当時すべてのイラン人が見たといわれるヒット作『サイクリスト』の社会的な現実を詩的に誇張したダイナミックでエネルギッシュな作風から、最近の『ギャベ』や『パンと植木鉢』では軽妙さを加え、自由に現実から飛翔し、また自在に帰ってくる作法を身につけたようである。
『サイレンス』では、目の見えない少年を主人公に、軽さの妙をたたえた、詩的としか形容できない世界をつくりあげている。
10歳の少年コルシッドは、母親とふたり暮しで、バスに乗って親方のところまで通い、楽器の調律の仕事をしている。貧乏で、月末まであと5日以内に家賃を払わないと家を追い出される。なのにバスで聞いた音楽を追いかけ、度重なる遅刻をしたため、仕事をクビになってしまう。リアリズムで描いたら、とてつもなく暗くなりそうな状況だが、画面にはいつも明るい陽光があふれ、少年の表情にも苦悩はない。
バスの中で暗唱されたオマール・ハイヤムの詩のごとく「今を大切に時間を大切に」自らの精神のおもむくままに生きることを大胆に肯定しているからだ。芸術的魂の解放を謳っているのだ。音と色彩の交響が詩的な感動を呼び起こす映画となっているのである。
タジキスタン共和国で撮影されたため、ヴェールをかぶっていない若く美しい娘たちが民族衣裳もあでやかに大勢登場し、このこともこのマフマルバフ作品に、いつにないはなやぎを与えている。
コルシッド少年を演じたタハミネー・ノルマトワは、実は女の子である。
彼女の演技は、上院議長金メダル賞を受賞したヴェネチア国際映画祭をはじめ、各国で絶賛された。

ストーリー

盲目の少年コルシッドは10歳。タジキスタンの小さな田舎町で、戦争によりロシアから戻ってこない父親を待つ母親と生活している。伝統楽器職人のもとで暮らす美しい少女ナデレーは、毎日バス停までコルシッドを迎えに行く。調律師として働く彼を、工房まで送り届けるためだ。
ナデレーが手を差しのべるものの、コルシッドは独り、音楽の世界に生きていた。
乾いたパンや果物、水の流れ、街のざわめき、怒り、美しさ、そのすべての音を感じ取ることができる並外れた聴覚を持ち、それが彼の全てであった。通りや生活の中の音に導かれ、楽器の音色に魅せられ、いい音を求めてさまよい歩くうちに道に迷って仕事に遅れ、親方に怒られることもしばしば…。
ある日、大家から5日以内に家賃を払わなければ言えを追い出すと脅され、母親は親方にお金を借りるようコルシッドに言う。だが、バスの中である音楽家に出会い彼の演奏に夢中で聞き入るコルシッドはまたも仕事に遅れ、しびれをきらした親方は彼をクビにしてしまう。「遅れたのは良い音楽のせいなんだ」と主張し、親方に謝ってもらうためその音楽家を探し続けるが、家賃の支払期限が過ぎとうとう家を追い出されてしまう。行き場をなくし、途方にくれるコルシッド。そして彼はあるひとつの決断を下す…。

スタッフ

監督・脚本・編集………モフセン・マフマルバフ
撮影………エブラヒム・ガフリ
カメラマン………レザ・シェイヒ
        ホセイン・アミリ
        F・カマル
セット撮影………メイサム・マフマルバフ
製作総指揮………モハマド・アーマディ
音楽………マジド・エンテザミィ
録音………べ一ルズ・シャハマト
記録………ハナ・マフマルバフ
助監督………サミラ・マフマルバフ
      モスタファ・ミルザハニ
製作………MK2プロダクションズ(フランス)
      マフマルバフ・プロダクションズ(タジキスタン/イラン)

キャスト

コルシッド………タハミネー・ノルマトワ
ナデレー………ナデレー・アブデラーイェワ
コルシッドの母………ゴルビビ・ジアドラーイェワ
伝統楽器工房の親方………ハケム・ガッセム
旅のミュージシャン………アラズ・M・モハマドリ

LINK

□公式サイト
□IMDb
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す