原題:The Mystery of the Cube

「運動靴と赤い金魚」に続き、 モントリオール映画祭2年連続グランプリ受賞!

1999年モントリオール映画祭グランプリ受賞

1999年/イラン映画/カラー/90分/モノラル/1:1.85/配給:アミューズ

2000年5月13日より、シネスイッチ銀座・関内アカデミーにてロードショー!! 2001年4月27日DVD発売/2001年4月27日よりビデオ発売

監督来日記者会見::http://www.nifty.ne.jp/rforum/fcinema/topics/200004/18maji/index.htm

公開初日 2000/05/13

配給会社名 0325

解説

大ヒット作「運動靴と赤い金魚」か世界中に愛され、話もが新作を待ち望んでいたイラン映画界の才人マジッド・マジディ今度は8才のピュアな盲目の少年を主人公に新たな傑作を完成させた!
モハマドはイランの小さな村で生きる目の不自由な少年。母を失い、父との関係に小さな心を痛めながらも、暖かい家族に支えられ、精一杯、生きようとする彼には太陽や森が友たちだ……
たとえ、不幸な運命に出会っても、愛と希望を捨てない少年の汚れを知らない純粋な魂
実際に目の不自由なモフセン・ラサマーニのいたいけな姿を壮大な自然を背景に描き出し、すべての人の熱い涙をさそう話題の感動作
モントリオール映画祭では、前作に続き、2度目のグランプリ受賞を果たし、アメリカでは”タイム”がベストテンの一本に選出さらに辛口で知られる”ニューヨーク・タイムズ”までが「宝石のような映画」と呼び、この新作への絶賛の嵐は今や各国に広がっているマジディの前作「運動靴と赤い金魚」では運動靴をめぐる子供たちの生活が綴られたか、今回はテヘランの盲学校に通う少年の日常が描かれる学校が夏休みに入り、父親と一緒に祖母のいる小さな村に帰ることになった少年モハマドやさしい祖母や姉妹たちとのびやかな時をすごす
目は不自由でも、その感覚を通じて太陽の光や草花の色を感じとることができるしかし、父は家族のために意中の女性との再婚を考え、いやがるモハマドを大工の見習いに出そうとする そして、悲しく、不幸な事件か少年を襲う……
実際に盲学校に通う少年たちと1年あまりつきあい、彼らの体験を盛り込みながら脚本を書き上げたマジディ監督「目の不自由な人たちは、心の目で世界を見ているむしろ、目か不自由なのは、私たちの方かもしれない」そう語る彼はイランの霧深い森や水の流れを、巧みな効果音によって描き出すさらに盲目の少年の手の感触を通じて、豊かな自然がおさめられ、彼の心の美しい風景を見ることができる
「友だちのうちはどこ?」のアッバス・キアロスタミ監督の登場以後、日本でも高い評価を集めるイラン映画だが、そんな中でも”ポスト・キアロスタミ”として最も高い評価を集めるマジディ
雄大な自然を背景に今の文明社会が失った人間らしさを追求し、そのスケールアップしたドラマ展開と詩情あふれるカメラワークでいよいよ巨匠への道を歩き始めた特にクライマックスの激流を使った映像はこれまでのイラン映画にはない迫力があり、家族愛や人間の尊厳をめぐる問題が見る人の心に深く迫ってくる
映画初出演ながら、主役のモハマド役を見事に演じきった盲目の少年モフセン・ラマザーニ。「この映画に出て、僕は成長した映画のおかげで、初めていろいろなものを見ることができた。」森や川などにふれて、僕には世界がつかめた」と今回の役について語るが、植物や鳥を愛し、神にふれる日を夢みる少年のあまりにも純粋な姿は見る人すべてに深い感銘をあたえるだろう。
父親役を演じるのはホセイン・マージゥーブ家族のことを思い、別の女性との結婚を望む不遇な男の複雑な思いを印象に演じ、映画に陰影を残す。モハマドに限りない愛情を注ぐ祖母役を演じるのはエルハム・シャリフィ。
映画の製作はアリ・カルー、メーディ・キュリミ、撮影監督はマームド・ダウーディ。音楽はアリレザ・ゴハンダリー。編集は「運動靴と赤い金魚」のハッサン・ハッサンドスト。美術も「運動靴と赤い金魚」のアスガル・ネジャド=イマニ。なお、この作品はニューヨーク映画祭正式出品作、福岡国際映画祭オープニング作品などにも選ばれ、アカデミー外国映画部門でも正式エントリーされた

ストーリー

モハマドはテヘランにある盲学校に通う8歳の少年 母は5年前に他界し、今は全寮制の学校に入っていた学校が夏休みに入る日、子供たちは家族の出迎えを待っていた母や父との再会を喜ぶ生徒たち しかし、モハマドはいつまでもひとりでベンチにすわったまま来るはずの父がなかなか現われないのだ 父を待つ間、彼は木の上から落ちた鳥の雛を手さぐりでそっと巣に戻す
太陽の光に触れながら、自然と向かい合う時、彼の心は癒されていった
ついに父親が学校にやってくるが、その顔色はどこかさえない 母親なしでは目の不自由な彼の世話ができないので、学校で休暇中も預かって欲しいという 父もちろん、その願いは聞き入れられなかった
バスで生まれ故郷の小さな村へ戻る途中、モハマドは手をバスの外にかざした風を通じて神の存在を感じるためだ そんな息子を父親は複雑な表情で見つめる
村に到着したモハマドを待っていたのは、優しい祖母や姉妹たちの歓迎だった みやげ物の装飾品を家族に渡すモハマド その顔には暖かい笑顔が広がる雄大な自然に囲まれ、耕された田園か広がる村 そこでモハマドは太陽の光のもとで美しく咲き誇る花や緑を心の中で感じとることができた さらに地元の学校を訪ねたいというモハマドの願いも聞き入れられ、彼は都会の盲学校で学んだ文章を読み上げる 学校でも笑顔に囲まれ、満点をもらって、意気揚々と帰宅するモハマドは幸せいっぱいだった 祖母は彼にきちんと学校教育を受けさせたいと望んでいたが、父親の考えは違った 意中の女性との再婚を希望する彼は、モハマドの将来を気にして、大工のところに修行に出そうと考える 父の縁談は順調に進んでいた
ある日、父はいやがるモハマドを無理やり大工のところへ連れていく 自分は誰にも愛されていない、といって泣きじゃくるモハマド 本当は目の不自由な人間こそかもっとも神に愛され、彼に近づぐことができる、と教えられたモハマドだったが、今ではそんな考えも揺らぎ始めた
しかし、彼と同じように目の不自由な大工は彼をそっとなぐさめる
モハマドか大工のところへ連れ去られたことを知った祖母は、雨の日に彼を迎えに行こうとする 必死に止めようとする父 彼は男手ひとつで目の不自由なモハマドを育てる苦労を母に訴える
家族の暮らし向きもけっして楽ではない
母は無言のまま、息子の苦しい胸の内を受けとめる やかて、体調を崩した母は病の床に伏す そして、息子の再婚のために少しばかりの貴金属を渡し、遂に帰らぬ人となる
死人か出たことを気にする婚約者の家族は、父の再婚話を断ってきた母を失い、再婚の話も流れ、八方ふさがりになって、苦悩する父 結局、モハマドを家に連れ帰る決心をする
霧の深い森を通り、モハマドを馬に乗せて帰宅しようとする父 川は大雨で水かさが増していた そして、川の上の木橋を通った時、モハマドを乗せた馬の足元が揺れた橋が一瞬にして崩れ、モマハドは川の激流の中に飲み込まれるそれを見た父の胸には、ためらいか浮かぶか、やがては息子の名前を呼びながら、川の中に飛び込んだ しかし、水の流れはいっそう激しくなり、ふたりの姿は見えなくなった……

スタッフ

プロデューサー:アリ・カルー、ネーティ・キャリミ
監督・脚本:マジッド・マジディ
撮影:マームド・タウーティ
音楽:アリレサ・コハンタリー
録音:ヤドラー・ナシャフイ
編集:ハサン・ハサントゥスト
美術:アスカー・ネシャト=イマニ

キャスト

父:ホセイン・マージゥーブ
モハマド:モフセン・ラマサーニ
おはあちゃん:エルハム・シャリフィ

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