原題:The BARBER of SIBERIA

ドレスの下の白磁の肌、軍服の下の青白く光る肌、激しく激しく燃やせ、恋の炎に 『ロシア映画の全貌2001』 ソヴィエト連邦が解体して10年、激動の世紀を歩んだ映画大国 ロシアの名作群を共和国の作品も含め一挙69作品上映!

第52回カンヌ映画祭オープニング招待作品

(ロシア1998年10月30日公開)

1999年/フランス=ロシア=イタリア=チェコ合作/カラー/スコープサイズ/ SRD上映時間2時間42分/オリジナルサウンドトラック:ソニークラシカル/ 字幕:戸田奈津子/題字:黒柳徹子/提供・配給:日本ヘラルド映画

2001年7月20日DVD発売 2000年9月30日より有楽町スバル座 、新宿シネマカリテにて公開 2001年、三百人劇場にて公開。8/23 12:00、8/24 7:00、8/25 1:10より

公開初日 2000/09/30

配給会社名 0058

公開日メモ カンヌ映画祭審査員大賞、そしてアカデミー賞外国語映画賞を獲得した「太陽に灼かれて」から5年。世界中が待ち望んでいたロシアの巨匠、ニキータ・ミハルコフ監督の新作が完成した。。

解説

カンヌ映画祭審査員大賞、そしてアカデミー賞外国語映画賞を獲得した「太陽に灼かれて」から5年。世界中が待ち望んでいたロシアの巨匠、ニキータ・ミハルコフ監督の新作が完成した。それが「シベリアの理髪師」だ。前作から一転、名誉と高潔が誇りとされていたロマンチズムが溢れる19世紀帝政ロシアを舞台に、男と女の運命的な恋が圧倒的スケールで描かれる本作は、昨年度カンヌ映画祭のオープニングを飾り熱狂をもって迎えられ、本国ロシアでは、モスクワのクレムリン宮で行われたプレミアに前ソ連国家主席ゴルバチョフなどの要人を始め華麗なゲストが結集。「歴史の宿命や,芸術性を通じてロシアの人々に誇りや尊厳を取り戻して欲しかった」と監督自身が語る「シベリアの理髪師」は、ここ数年低迷を続けてきたロシア映画界で空前のヒットを記録し「ミハルコフ」現象を巻き起こしている。

ヒロインを演じるのは「サブリナ」、「レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い」のイギリス人女優ジュリア・オーモンド。快活さと猥雑さで周囲を惑わせながら、その暗い過去が明らかになるにつれて露見する悲劇を見事に演じきり、女優としての新境地を切り拓いた。対する恋人には「太陽に灼かれて」に続いての主演となるロシアの俳優オレグ・メンシコフ。実年齢より遥かに若い役というリスクをかんとくのしんらいにこたえてこうえん、”恋”を知り、憑かれていく様、そしてラスト・シーンは圧巻である。頑迷で魅力たっぷりな発明家マクケランには「許さぜる者」、「グラディエーター」などの演技派リチャード・ハリス、物語の鍵を握るラドロフ将軍にはロシアで国民的人気を誇る舞台の名優アレクセイ・ペトレンコ、そしてアンジェイ・ワイダ監督作品でも有名なダニエル・オルブリスキがコプノフスキを演じている。前作では主演も兼ねたミハルコフ監督は、ロシア皇帝アレクサンドル三世役で顔を出している。

製作のミシェル・セイドゥー、共同脚本のルスタム・イブラギムベコフ、編集のエンゾ・メニコーニ、プロダクションデザイナーのウラジーミル・アロニン、衣装デザイナーのナターシャ・イワノワ、録音のジャン・ウマンスキーは「太陽に灼かれて」から引き続いての参加。撮影監督は「時計仕掛けのピアノのための未完成の戯曲」,オックスフォード映画祭撮影賞を受賞した「オブローモフの生涯より」,そして「コーカサスの虜」などを手がけ,ミハルコフご用達の”眼”を持つパーヴェル・レベシェフ。音楽はロシア映画界の巨匠エドワルド・ニコライ・アルテミエフ.シベリアから,プラハ,ポルトガルへとヨーロッパ大陸を横断してロケを敢行.モスクワの赤の広場では2000人のエキストラを使い、ソ連崩壊後のロシア映画としては最大規模,ヨーロッパ映画としてもかつてない製作費4500万ドルを投入して完成した新生ロシア映画界の威信を掛けたエピックドラマである。

「変わり行くロシアで私たちにできることは,私の映画で価値あるものとして賛美されているものが,ひょっとしたら未来のロシアで見直されるかもしれないと希望をもつことだけです」と語るミハルコフ監督。タイトルに込められた謎,モチーフであるモーツァルトの音楽の演出の巧みさ、オペレッタのような軽快さと,文学的な深遠さ、芸術的な膨らみを兼ねあわせてしなやかに語られる「シベリアの理髪師」は、自ら名門の出身であり,歴史と伝統を重んじ「帝政ロシア」を愛してやまないニキータ・ミハルコフ監督の集大成であり、真のドラマの復権である。黒沢、キューブリック亡き後”ドラマ”で映画を語るという贅沢を味わえるのは、彼の作品をおいてほかにはなく、この感涙のラブ・ロマンスに心を揺さぶられない者はいないだろう。

ストーリー

1905年、アメリカ。
一人の女性が陸軍士官学校に入った。息子アンドリューに宛てて手紙を書いている。
彼の出生の秘密を明かすために。その発端は20年前のロシアにさかのぼる……。

1885年。アメリカ人女性ジェーン・キャラハン(ジュリア・オーモンド)は、モスクワへ向かう列車で士官候補生アンドレイ・トルストイ(オレグ・メンシコフ)と出遭った。彼は士官学校で上演されるモーツァルトのオペラ『フィガロの結婚』でセヴィリアの理髪師フィガロ役を演じることになっていると言う。

モスクワ駅ではダグラス・マクラケン(リチャード・ハリス)がジェーンを迎えていた。彼はシベリアの森林開墾用の巨大な”マシーン”の開発に熱中していたが、それには大公の資金援助が必要だった。そのために彼はジェーンは呼び寄せたのだ。ジェーンは大公に近い実力者ラドロフ将軍(アレクセイ・ペトレンコ)を士官学校に訪ね、マクラケンの娘と名乗り、言葉たくみに彼の歓心を買う。そこで、彼女は、酔って騒いだ罰に仲間たちと床磨きをさせられていたトルストイに再会し、彼が列車に忘れていった写真を返す。

ジェーンは将軍の招待でマクラケンと共に士官学校を舞踏会に出席する。トルストイはジェーンのダンス・パートナーの座を友人のポリエフスキー候補生(マラット・バシャロフ)に取られて内心穏やかでない。ポリエフスキーはトルストイがジェーンに恋していることを見透かし、彼をからかっていたのだ。度重なる侮辱にとうとうかっとなった彼は,ポリエフスキーに決闘を申し込む。事件は班長の機転で表沙汰にならずにすむが,トルストイはケガをし、退学を決意する。翌朝、ジェーンはポリエフスキーから,学校に留まるように説得してほしいと頼まれ、彼を見舞う。トルストイの退学を思いとどまらせるため,ジェーンは始めて彼にキスをする。

やがて候補生たちが士官に昇進する日が来る。皇帝アレクサンドル三世(ニキータ・ミハルコフ)が見守る前で行進する新士官たち。その中にトルストイの晴れやかな顔もあった。

だがその日、厄介な出来事が彼を待っていた。ジェーンの家にむかう途中、トルストイを見かけた将軍が、英語の苦手な自分の代わりにプロポーズの手紙を読み上げてほしいと命じたのだ。驚いたトルストイは言われるままに同行するが、ジェーンの前で手紙を読み上げるうち、とうとう自分の思いを告白してしまう。将軍は激怒するが、トルストイへの処分は保留する。大公が君臨する翌日のオペラでフィガロを演じられるのは彼しかいないからだ。

その夜ジェーンはトルストイを自宅に訪ね、将軍の気を引いたのはマクラケンのためだったことを明かす。トルストイの純粋な思いに深く心を動かされた彼女は、その夜、彼と愛を交わす。それは彼女にとって始めての真実の恋だった。

翌日、トルストイはフィガロを熱演する。一方ジェーンは昨日の件で怒っている将軍になんとか大公への口利きを頼もうと必死だった。幕間、トルストイのことは何とも思っていないと将軍を説得するジェーン。だがそれを偶然耳にしたトルストイは、彼女に騙されていたと誤解し、絶望の底にたたき落とされ、嫉妬と怒りに駆られ,将軍に襲いかかってしまう。トルストイは大公を殺そうとした罪人としてシベリアでの重労働の厳罰に処される。ジェーンは将軍に真実を証言するよう迫るが、彼は聞く耳を持たない。ジェーンは護送列車が出る駅へ急ぐが、混雑の中、トルストイを見つけることもできない。

1895年。ジェーンはマクラケンと結婚し,アメリカへ帰国して母親となった。トルストイと連絡を取ろうとする彼女の努力は全て徒労に終わってきた。だが、大公の援助でマクラケンの”マシーン”が完成、シベリアでテストを行うことになり、ようやくチャンスが巡ってくる。彼女がマクラケンと結婚したのも、全てこの日のためだったのだ。シベリアに着いたジェーンは密かに突きとめていたトルストイの家に向かう。だが主不在の小屋で彼女が見つけたのは、理髪師の看板と、彼が妻子と映っている写真だった。ジェーンは最愛の人を失ったことを知り、傷ついた心を抱えて去っていくのだった。

スタッフ

監督:ニキータ・ミハルコフ
原案:ニキータ・ミハルコフ
脚本:ルスタム・イブラギムベコフ
   ニキータ・ミハルコフ
協力:ロスポ・パレンベルグ
撮影監督:パーヴェル・レベシェフ
プロダクションデザイン:ウラジーミル・アロニン
衣装デザイン:ナターシャ・イワノワ
編集:エンゾ・メニコーニ
音楽:エドワルド・ニコライ・アルテミエフ
プロデューサー:ミシェル・セイドゥー
共同プロデューサー:ニキータ・ミハルコフ
製作:カメラ・ワン(フランス)
  スリーTプロダクションズ(ロシア)
  フランス2シネマ(フランス)
  メデューサ(イタリア)
  バランドフ・ビオグラフィア(チェコ共和国)

キャスト

ジェーン:ジュリア・オーモンド
トルストイ:オレグ・メンシコフ
マクラケン:リチャード・ハリス
ラドロフ:アレクセイ・ペトレンコ
モーキン:ウラジミール・イリーイン

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