原題:LA VEUVE DE SAINT-PIERRE

『橋の上の娘』のヒットが記憶に新しい パトリス・ルコント監督の新作が早くもこの秋日本上陸

☆第8回フランス映画祭横浜2000クロージング作

(フランス2000年04月19日公開)

1999年/フランス/カラー/112分/シネマスコープ/ 原題 La Veune de SAINT−PIERRE(サンピエールの未亡人/ギロチン)/ 寺尾次郎/シネカノン/アミューズ

2000年11月4日よりシネスイッチ銀座ほかロードショー公開 2001年5月25日DVD発売/2001年5月25日ビデオ発売(DVD・ビデオ題:サン・ピエールの未亡人)

公開初日 2000/11/04

配給会社名 0034/0008

公開日メモ これまで様々なジャンルに挑戦し、前作『橋の上の娘』では

解説

これまで様々なジャンルに挑戦し、前作『橋の上の娘』では”触れない愛”を描いたパトリス・ルコントが、今までのどのイメージとも違う、さらに新しい愛の形を提示する。マダム・ラのニールに対する”母性の愛”、ジャンのマダム・ラに対する”許しの愛”。言葉が口にされることも、感情が露にされることもない、そして、どんな言葉よりも多くを語る沈黙。淡々とした描写の中で「生命の尊厳」「死刑制度」「人は変われるか?」と問いかけながら,次第に深い愛がじわじわと心に染み透ってくる。大自然の風景の中、壮大なスケールで感動的に描かれる、運命に翻弄される三人の男女が織りなす”愛を越えた愛”の物語。果たして運命の向こう側には、一体、何が待ち受けているのだろう。

二人の男をそれぞれ全く違った感情で愛するマダム・ラに、ルコント作品初出演のジュリエット・ビノシュ。その完璧な美しさと既に貫禄さえ感じさせる演技で、微妙な心の襞を見事に演じきっている。自分の正義感に忠実に行動しながら、愛する妻の気持ちを全て受け入れ大きな心で包み込み、何事からも守り通す夫ジャンに、ビノシュとは初共演のダニエル・オートゥイユ。その感情を抑え、全てを許す究極の愛は、衝撃のラストシーンで大きな感動へと変わる。そして粗野な男臭さと純朴な優しさをもつニールに、『アンダーグランド』、『白猫・黒猫』の監督として多くのファンを持ち、映画人からも敬愛されているエミール・クストリッツァ。映画初出演とは思えない堂々とした演技力と圧倒的な存在感が話題になっている。

脚本はフランスでベテラン監督として知られ、当初はみずからメガホンを取る予定だったクロード・ファラルド。プロデューサーは『リディキュール』のジル・ルグランとフレデリック・ブリリオン。予定されていたアラン・コルノーが監督を降板した後、すぐにルコントに話を持っていき、もともとビノシュとの仕事を切望していた彼はシナリオを読んで即決した。撮影は『スペシャリスト』以来『髪結いの亭主』『タンゴ』『イヴォンヌの香り』『パトリス・ルコントの大喝采』などのルコント作品で,パートナーを務め、多数の国際映画祭で受賞をしているエドゥアルド・セラ。衣装は70年代から映画、舞台、オペラと幅広いフィールドで活躍する『リディキュール』のクリスチャン・ガスク、そして音楽は『イヴォンヌの香り』のパスカル・エスティーヴが担当し、流麗なオーケストレーションと哀愁の漂うアコーディオンが、心に染み入る美しいメロディーを奏でる。

ストーリー

1849年カナダにあるフランス領サン・ピエール島。この島の小さな村では、穏やかな暮らしが営まれているのと同時に、フランス軍が駐留しその平和と共存している。軍隊長のジャン(ダニエル・オートゥイユ)はこののどかな島に赴任し、深いきずなで結ばれた妻ポリーヌ(ジュリエット・ビノシュ)と愛を育んでいた。ジャンは軍人として信頼されている人格者であり、ポリーヌは子供のような純粋さをなくしていない美しい女性だ。

折りからの悪天候で小島に流れついた粗野で無教養な漁師ニール(エミール・クストリッツア)は、ある夜酒に酔った勢いで人を殺してしまう。そして裁判で死刑を宣告されるが、この離島にはギロチンもなければ死刑執行人もいない。統治総督はフランス政府にギロチンを送ることを要請するが、その手続きと船の到着にはかなりの月日を要するようだ。その間、ジャンがニールを預かることになり、ジャンとポリーヌが住む家の敷地内に拘留されることになった。二人のへ屋からニールの部屋が見下ろせた。

軍人の妻ではあるが進歩的な考えをもつポリーヌは小島で死刑が執行されること、そして法の下とはいえ、自分の夫がそれを遂行する立場にあるということに恐れを感じていた。ニールは拘留中にポリーヌの身の回りの手伝いをすることになる。そしてポリーヌは、ニールに読み書きを教え、外出時に付き添わせ、時には花壇作りを手伝わせたりしていた。やがてポリーヌの中には、正義感とともにニールに対する母性とも愛情ともとれるような大きな感情が芽生えはじめていた。そんな頃やっと本国の許可が下り、ギロチンを積んだ船マリー=ギャラント号がマルチニーク島を出航した。

ある日ポリーヌは、壊れた屋根に手を焼いている村の未亡人マルヴィランの家にニールを連れていき修理をさせ、別の日にはマルヴィランの家の雪下ろしをさせた。すっかり助けられたマルヴィランはニールに深く感謝していた。ポリーヌとニールはたびたびマルヴィランの幼い娘エミリーと一緒に親交を深めていった。それはポリーヌにとって、マルヴィランとエミリーにとって、またニールにとってもささやかな幸福を感じることのできる瞬間であった。しかしそんなときにも、ギロチンを乗せた船は刻一刻と近づいていた。

ニールは本当に総てを否定され、処刑されなければならない存在なのだろうか?自分の前では常に良心的で心優しいニールの運命に対するポリーヌの疑問は、次第に大きく脹れ上がっていく。ポリーヌは折りを見ては一緒に出かけ、村人たちの手伝いをさッせるように計らう。村人たちの間にも、死刑囚とはいえ、悪態をつくわけでも、危険な目つきを見せるわけでもないニールに対して,ごく自然に同情の念が広がりはじめていた。そんなある日、

ニールは暴走する荷車に乗った女の命を救い、一躍みんなの人気を集めることになる。しかしこうした世間の風潮に、本国パリの風向きを伺うばかりの総督やお付きの役人たちは、眉をひそめ始めていた。

今やポリーヌにとってニールの問題は、法律や死刑の是非を問うと同時に、隊長夫人としての立場と一人の人間として自分の間で揺れる内面の葛藤の問題になっていた。その一方マルヴィランは娘と離れるニールの姿を見て、たとえ近い将来終わってしまうことがわかっていても、夫そしてエミリーの父親としてニールとの関係を築きたいと思っていた。それを知ったポリーヌは喜んで仲を取り持ち、二人は神父の前で永遠の愛を誓いあう。

いよいよマリー=ギャラント号が岸から数キロ先にうっすらとその勇壮な姿を現わした。しかしそこで船にトラブルが発生し立ち往生してしまう。到着するためにはこの巨大な船をいくつかの小舟で引っ張ってくるしかなかった。役人が群集を前に漕ぎ手を募ったが、この過酷な仕事に挑もうとするものはだれもいなかった。そこで報酬を大幅に値上げすると一人の手が挙がった。それはニールだった。彼は近い将来、この世を去るものとして、妻と娘に財産を残すために、自分の首を跳ねることになるギロチンを自らの手で運ぶというのだった。ニールに続いて何人かがこの仕事を請け負い、遂にマリー=ギャラント号が到着する。

もはや死刑執行に対する島民たちの反発は強まる一方だった。総督は島民を統率できない現状に危機感を抱き、ジャンに無理にでも民衆を鎮めるように詰め寄った。妻の思いと、狂いはじめた現実の間でジャンの苦悩はつのるばかりだった。しかしジャンは総督たちの思惑とは反対に、死刑執行に対し消極的な気持ちになっていた。ここで世論に刃向かえば、混乱や暴動を招きかねないと判断したからだ。そして何よりも最愛の妻の純真な思いを組み、何事からも守り通そうと心に決めていたからだ。ジャンは遂にニールの処刑の立ち会いを拒否することを宣言し、部屋を立ち去った。総督は苦り切った表情でジャンの後ろ姿を見送るだけだった。

スタッフ

監督:パトリス・ルコント
製作:エピテート(ジル・ルグラン、フレデリック・ブリリオン)
共同製作:シネマジネール(ドゥニーズ・ロベール、ダニエル・ルイ)
脚本:クロード・ファラルド
撮影監督:エドゥアルド・セラ
美術監督:イヴァン・モスワン
衣装:クリスチャン・ガスク
編集:ジョエル・アッシュ
録音:ポール・レーヌ
  ジャン・グディエ
  ドミニク・エネカン
スクリプト:マリー・ルコント
制作進行:フレデリック・ブラム
スチール:カトリーヌ・シャブロル

キャスト

ポリーヌ(マダム・ラ):ジュリエット・ビノシュ
ジャン(軍隊長):ダニエル・オートゥイユ
ニール(死刑囚):エミール・クストリッツア
総督:ミシェル・デュショスワ
裁判長:フィリップ・マニャン
行政官:クリスチャン・シャルムタン
税関長:フィリップ・デュ・ジェヌラン
マルヴィラン:カトリーヌ・ラスコー
ロイック(ニールの番人):マルク・ベラン
シュヴァシュ(死刑執行人):ギラン・トランブレ
ルイ・オリヴィエ(共犯者):レイナルド・ブシャール
デュモンチエ大尉(ジョンの後任):イブ・ジャック

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