原題:CHUNHYANG

暗闇に、韓国の伝統芸能パンソリの朗々たる歌声が響きわたる。やがて浮かび上がる歌い手と鼓手の姿。 アジアの巨匠イム・グォンテク監督最新作『春香伝』の幕開けである。

2000年カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品作品 トロント国際映画祭出品 アジアフォーカス・福岡映画祭'99出品::http://www.focus-on-asia.com/index.shtml

(初公開:ドイツ2000年06月25日公開)

イム・グォンテク監督最新作『春香伝』 2000年/韓国/カラー/ドルビーデジタル/120分/字幕翻訳:根本理恵/配給・宣伝:シネカノン 「春香伝」:岩波文庫刊 協賛:韓国観光公社

2001年9月28日DVD発売&レンタル開始 2001年9月28日ビデオ発売&レンタル開始 2000年12月9日より銀座シネ・ラ・セットにてお正月ロードショー公開

公開初日 2000/12/09

公開終了日 2001/03/16

配給会社名 0034

公開日メモ 暗闇に、韓国の伝統芸能パンソリの朗々たる歌声が響きわたる。やがて浮かび上がる歌い手と鼓手の姿。 アジアの巨匠イム・グォンテク監督最新作『春香伝』の幕開けである。

解説

暗闇に、韓国の伝統芸能パンソリの朗々たる歌声が響きわたる。やがて浮かび上がる歌い手と鼓手の姿。
アジアの巨匠イム・グォンテク監督最新作『春香伝』の幕開けである。

まったく新しい『春香伝』の誕生

「春香伝」は、韓国の人々の心に永遠に刻み込まれている愛の物語。
16歳の美しい娘春香(チュニャン)と貴族の子息夢龍(モンニョン)が身分を越え試練を越えて結ばれるまでを描いた、韓国古典の傑作である。
これまで何度も舞台化、映画化が繰り返されてきているが、パンソリによって全編が歌い継がれる「春香伝」は、本作が初めてである。
イム・グォンテク監督は「春香伝」が本来パンソリによって語られ、作り上げられてきた物語であることに改めて着目した。
そのため本作では二人の物語と並行して、観客が実際に舞台上のパンソリ「春香歌」を聴くという演出を凝らしている。
その演出によって、パンソリと映像各々が伝えるダイナミズム、エモーションが互いに深く結びつき、膨らみ、観る側はこのシンプルなラブストーリーに一気に引き込まれてしまうのだ。
まさに伝統に基づきながらも極めて斬新な解釈によって、ここに新しい『春香伝』が誕生した。

月も太陽も、その恋を引き裂くことはできない

愛し合う喜び、別離の悲しみ、恋い焦がれる時間の苦しみ——。春香の初めての恋が命をかけて貫く愛へと姿を変えていく。
春香を通じて観ている我々も、現代にあっても真摯な愛が変わらずに有効であることを信じないではいられなくなる。
春香と夢龍を演じる二人は、ともに本作で映画デビューを飾った。
従来「春香伝」というとベテランの役
者たちを迎えることを売りにするのが通例だが、イム・グォンテク監督はその慣例をここでも覆し、新人を大胆に起用した。
威風堂々たるパンソリと並んで、その溢れんばかりの瑞々しさと軽やかさでスクリーンを彩っている。

パンソリと映像がもたらす、圧倒的な調和
豊饒なる映画の完成

大空をめがけて勢い良くブランコを漕ぐ春香と夢龍の出逢いのシーンから、夢龍が死迫る春香を救い出すラストの胸をすく大円団まで——。
躍動感に満ちたパンソリと映像美は驚くほどの調和を保ち、観る者を圧倒する。
その撮影を担っているのは、イム・グォンテク監督の名パートナー、チョン・イルソン。
アジアを代表する撮影監督であり、欧米からも高い評価を受けつづけている世界有数の撮影監督である。
風格とともに撮り上げられた春夏秋冬の自然、随所に散りばめられた赤色、そして何よりパンソリのリズムと映像のリズムの一体化が、まさに映画のもつ豊饒さを感じさせずにはおかない。

パンソリを歌うのは、人間国宝である名唱チョ・サンヒョン。
まさに各界の第一人者たちが結集して本作はつくりあげられた。
若手には決して真似のできない、円熟した手腕が成し得た傑作として、『春香伝』は韓国映画として初めて、カンヌ国際映画祭コンペティション正式参加作品として選ばれている。

ストーリー

李朝時代。全羅道(チョルラド)南原(ナムウォン)府の代官の長子である李夢龍(リ・モンニョン)は、父の赴任に従ってこの地で暮らしはじめて数カ月が経っていた。
勉学ばかりに嫌気が差した夢龍は、憂さ晴らしに召使いの房子(パンジャ)を連れて廣寒楼(クァンハルル)に出かける。
折しも端午の日、戸外では賑やかなラッパの音と共に相撲が繰り広げられ、林の中では少女たちがブランコ遊びに興じていた。
その中でもひときわ美しい春香(チュニャン)が大樹のふもとでブランコを漕ぐさまを見た夢龍は、一目で心を奪われてしまう。
春香が妓生(キーセン/引退した芸伎)の娘であることがわかると、夢龍は即座に春香を呼ぶように房子に命じる。
だが春香はその旨を聞くと「雁受海、蝶受花、蟹受穴」という言葉を残してその場を立ち去ってしまう。「雁は海を慕い・蝶は花を慕い・蟹は穴を慕う」という言葉の意味から直接会いに来るべきという春香の意と彼女の聡明さを察した夢龍は、深夜、闇に乗じて春香の家を訪れる。
彼女は平民の身である自分を正式に妻に迎えてくれることを条件に、彼を受け入れた。
夢龍は「与日月一心」という念書をしたため、この心が永遠に変わらぬことを誓う。
二人が身も心も打ち解けるのに時間はかからず、互いに愛し合い、夢のような日々を送ることになる。
しかしその幸福も束の間、すぐに試練が訪れた。夢龍は父の昇進に伴って漢陽(ソウル)へ戻らなければならなくなる。
南原に残ることも、都へ春香を連れていくこともままならない夢龍はなすすべもなく、春香との再会を誓いながら涙ながらに別れた。
春香は夢龍との再会をひたすら待ち続ける。
時が過ぎ、南原に新しい長官が任命されることになった。
春香の美しさを聞きつけ、大きな任地を辞退して田舎の南原府に赴任してきた下学徒である。
彼は国の法律によって母親が妓生なら、その娘も妓生の身分であるとし、春香にそば仕えを強要する。
春香は妓生名簿に登録していないことと、前官の子息と結婚の約束を結んだ以上、二夫従事はできないとかたくなに拒んだ。
烈火の如く怒り狂う下学徒は、春香に反逆罪という濡れ衣を着せて過酷な拷問を加えるが、春香は断じて屈しようとせず、その場で投獄されてしまう。
この頃、夢龍は漢陽で勉学に励み、科挙試験に見事主席で及第する。密使の任務を得て南原の調査にあたることになった夢龍は乞食に変装し、農夫達の口から現長官の暴政に対する不満と、春香の気概に対する称賛の声を聞くことになる。
夢龍は獄中の春香にこっそり会いに行くが、ぼろをまとっている彼の姿に春香の母である梅月(ウォルメ)は驚き、落胆する。
変わらぬ愛を誓う春香と夢龍だった、春香の身は下学徒の誕生日の祝宴の後、処刑される運命にあった。
正体を明かせぬままの夢龍だが、その憤怒で胸が張り裂けそうになる。
翌日、廣寒楼に各地の守令たちが招かれ、下学徒の誕生日を祝う宴が盛大に催される。
宴が佳境に入る頃を見計らい、夢龍は単身、廣寒楼に乗り込んだ…!

スタッフ

監督:イム・グォンテク
製作:イ・テウォン
原案唱歌:チョ・サンヒョン「春香歌」
脚色:キム・ミョンゴン
撮影:チョン・イルソン
照明:イ・ミンブ
編集:パク・スンドク
美術:ミン・オンソク
衣装:ポン・ヒョンスク、ホ・ヨン

キャスト

春香(チュニャン):イ・ヒョジョン
夢龍(モンニョン):チョ・スンウ
下学徒(ピョナット):イ・ジョンホン
月梅(ウォルメ):キム・ソンニョ
房子(パンジャ):キム・ハギョン
香丹(ヒャンダン):イ・ヘウン

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