原題:CARAVAN

その時、ヒマラヤは彼に従った。

第13回東京国際映画祭特別招待作品::http://www.tokyo-filmfest.or.jp/ 2000年 アカデミー賞 外国映画賞 ノミネート 2000年 フランス・セザール賞 最優秀監督賞、最優秀音楽賞 1999年 フランダース国際映画祭 最優秀観客賞、ゴールデンシュプール賞     特別貢献賞 1999年 ロカルノ国際映画祭 最優秀観客賞受賞作品

1999年/フランス=ネパール=イギリス=スイス・合作/カラー/108min シネマスコープ/ドルビーデジタル/字幕翻訳:松岡葉子 サントラCD:東芝EMI/絵本『キャラバン』:アーティストハウス刊 後援:ネパール大使館、フランス大使館 提供:テレビ朝日、朝日新聞社、アーティストハウス、タキコーポレーション    ギャガ・コミュニケーションズ 配給・宣伝:ギャガ・コミュニケーションズ Gシネマグループ

2001年6月22日DVD発売/2001年6月22日ビデオ発売&レンタル開始 2001年正月第1弾 渋谷 シネマライズ 他、全国ロードショー!

公開初日 2000/12/23

配給会社名 0025

解説

美しくも厳しいヒマラヤの大自然を舞台に、生死を賭けたキャラバンを繰り返す人々。フランスそして世界が絶賛した、圧倒的な美しさと生きる力に満ちた壮大な感動スペクタクル!

 超然たるヒマラヤ山脈を越え、ヤクを引き連れ、生きるために塩を運ぶキャラバン隊。チベットに限りなく近い、北ネパールのドルボ地方。数千メートルの嶺を越え、数百年の間に切り開かれた僅かな道をたどって、北から南へ、生死を賭けた旅を繰り返す彼ら。美しくも厳しいヒマラヤの大自然に、挑み、拒まれ、時にそのふところに抱かれるキャラバン隊の物語は、地球上に存在する全てのものへの畏敬と希望が込められた、壮大な感動スペクタクルである。

 フランス、ネパール、イギリス、スイス4カ国合作の本作は、本年度のアカデミー賞最優秀外国映画賞ノミネート他、仏セザール賞では最優秀撮影監督賞、最優秀音楽賞を受賞。フランスでは昨年12月に公開され、250万人以上を動員する大ヒットを記録、今だにロングラン上映を続けている。

 オールロケによる撮影は、標高5000メートルを超えるネパールの高山で行われた。写真家でもある監督エリック・ヴァリは、80年代からこの土地に住み、土地の人々の協力を得て、際立った美しさと生きる力に溢れた、類い稀なるドラマを描き出した。

 村の人々を率いて、長年の間キャラバンを続けてきた長老。カリスマ的な指導者として絶大なる信頼を集めてきた彼が、彼の地位を引き継ぐはずだった長男を事故によって失ったとき、ドラマは始まる。長老は幼い孫の少年に将来の長老としての期待を寄せることになるが、過酷なキャラバンの指揮を少年にはまだ期待できない。周囲の不安の中、先頭に立ってキャラバンを出発させようとするのは、過去に長老と敵対していた村人の息子であり、長老の死んだ長男の親友でもあった若者だ。あくまでも神託の吉日に従って出発しようとする長老と、そのやり方に反発するかのように大多数の村人たちを率いて旅立つ若者。山に生きる民として、大自然に抱かれた者として、次世代の指導者を巡り二つの世代が対立する。そして厳しいキャラバンの旅の中で、二人の男の葛藤を目のあたりにした少年は、遠い将来に伝説的な長老となる成長の第一歩を踏み出した…。

 ヒマラヤの5000メートルを超える山中での撮影は、土地の人々の生活、習俗の一切を忠実に写し取ることを基本に、過酷な自然条件を克服する忍耐力と、土地の人々の献身的な協力によってなしとげられた。ジャン・ジャック・アノー監督『セブン・イヤーズ・イン・チベット』(97)のユニット・ディレクターだった本作の監督エリック・ヴァリは、ネパールに住み土地と人々との深いつながりをつくっていた。自然と人々へのヴァリの敬虔な感情は、本作と、私生活においてのパートナーでもあるデブラ・ケルナーとつくりあげた写真集『ヒマラヤ、ある長老の少年時代“Himalaya-L’enfance D’um Chef”』に、際だった美しさとして残されている。

 製作はジャック・ペラン。60年代のフランスを代表する若手俳優として、またコスタ・ガヴラス監督『Z』(69)、『戒厳令』(73)などの製作者として知られ、その後も俳優、製作者としてキャリアを重ねてきた。最近では、『リュミエールの子供たち フランス映画100年の夢』(95)『ミクロ・コスモス』(96)など良質な作品を多数製作している。

 シンプルでいて豊かな音の響きが印象的な本作の音楽は、『ミクロコモス』のブリュノ・クーレが担当。ラマ(僧)の朗唱するマントラと女声コーラスを組み合せた、深く美しい音楽は、観るものの心を癒し、精神を静かに覚醒させる。

ストーリー

対立した長老と若者たち。そして彼らは、それぞれのキャラバンを出発させる。近い将来に伝説的長老となる少年が、ヒマラヤで見たものは…。

 黄金の波のように一面の麦畑がひろがっている。老人が孫の少年に語る。 「この畑全部で、村の者が3ヵ月食べるのがせいぜいだ。」

 老人は、村の長老ティンレ。永年の間、村人を率いてキャラバンを続けてきたカリスマ的長老だ。長老の孫である幼い少年ツェリン。彼らの村はヒマラヤの奥深いドルボ地方にあり、厳しい冬を生き延びるためには、ヤクの背に塩を載せて運び、食料である麦と交換するキャラバンを行わなければならなかった。男たちとヤクの隊列がいつものように村に戻ってくる。だが、一頭のヤクの背には男の遺骸があった。ティンレの長男、ラクパ。ツェリンの父だ。一日でも早く帰ろうと近道を選んだための事故だった。だが長老ティンレは、旅に同行した若者カルマが、自分が長老になるために仕組んだと言い張る。カルマはラクパに並ぶ弓の名手であり、ラクパとその妻ペアとは幼なじみでもあった。

 ラクパ亡きあと、誰がキャラバンを指揮するのか。有能で若者からの人望も厚いカルマを推す声に、ティンレは激しく抵抗する。孫のツェリンが指導者にふさわしい力をそなえるまで、自分が隊列を率いると。しかし、体力の衰えが隠せないティンレに賛同するものは少なかった。

 そして、次のキャラバンに出立する吉日が神託によって占われる。白分15日の満月、次の満月の日だ。だがカルマは、嵐が来る、早く出かけるべきだと主張する。そして彼は、シャーマンの神託とティレンの怒りに背を向けて、吉日より前に村の若者達と大多数のヤクを率いて出発してしまう。

 ティンレは自分の補佐役として、僧としての修行の日々を送っている次男ノルブをたてようと僧院を訪れていた。父の要請をいったんは断ったノルブだったが、「最も困難な道をゆけ」という師の教えを思い出し、父の村に戻ってきた。

 年長の男たち、未来の長老として「パサン」の名を与えられたツェリンと、母のベマ、ノルブたちが長老ティンレの指揮の元に旅立つ。

 カルマ率いる若者たちのキャラバンの足取りは速く、追いつくのはとても容易ではない。しかしその差を一気につめようと、ティンレは“悪魔の道”と呼ばれる崖の道を通ろうと決める。湖に落ちこむような切り立った崖に、ヤクが向きを変えることもできない細い道が、空へ伸びるように刻まれている難所だ。途中道が崩れ落ち、足場がない場所のさしかかった彼らは、なんとか補強してそのまま渡りきろうとする。そして渡りきれたと思った瞬間、隊列後尾の一頭のヤクが、はるか崖下の湖に転落する。一頭のヤクと塩の荷を犠牲にし、彼らはこの難所をくぐり抜け、ついには高原で野営するカルマたちに追いついた。

 老人の剛胆さに驚きを隠せない若者たち。しかし彼らには、さらに過酷な大自然の試練が待ち受けていた。激しい雪と嵐のなかで、人と人、また、人と自然との、生きるための戦いが交錯する。

 そしてその時、ヒマラヤは誰に従うのか?

スタッフ

監督・脚本:エリック・ヴァリ
製作:ジャック・ペラン
脚本:オリヴィエ・ダザ
脚本協力:ジャック・ペラン、ナタリー・アズレ、ジャン・クロード・ギルボー、
ルイ・ガルデル
撮影:エリック・ギシャール、ジャン・ポール・ミューリス
音楽:ブリュノ・クーレ

キャスト

ティンレ(長老):ツェリン・ロンドゥップ
パザン(長老の孫、ツェリンより改名):カルマ・ワンギャル
ペマ(パザンの母):ラブカ・ツァムチョエ
カルマ(若者):グルゴン・キャップ
ノルブ(僧):カルマ・テンジン・ニマ・ラマ

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