原題:BESIEGED

『ラストタンゴ・イン・パリ』以来の官能美を再び・・・・・・

1999年 ダヴィッド・ディ・ドナッテロ賞監督賞受賞 1998年 トロント国際映画祭出品作品

フィクション+ナヴァート・フィルム製作、メディアセット共同製作 1998年/イタリア映画/94min/英語・伊語/カラー/ドルビーSR/ヴィスタサイズ/日本版字幕:戸田奈津子/配給:アミューズ サウンドトラック:BMGファンハウス/原作本:B.R.サーカス

2000年8月25日よりDVD発売 2000年8月25日よりビデオレンタル開始 2000年2月5日よりシネスイッチ銀座にてロードショー

公開初日 2000/02/05

配給会社名 0325

解説

らせん階段のある古いローマの屋敷でふたりは出会った。アフリカで投獄された夫の身を案じながらも、イタリアで新しい希望に生きようとするシャンドライ。ピアノだけを友とする無口で孤独な音楽家キンスキー。赤い蘭に込められた男のひそかなる情熱。愛する人のために自分のすべてを犠牲にする男の優しさと激しさが、やがて、女の心を揺り動かしていく……。かって『ラストタンゴ・イン・パリ』で世界に衝撃を与えたイタリアの巨匠ベルナルド・ベルトルッチが、シャープな映像美とジャンルを超えた音楽を散りばめ、新しい愛の名作を完成させた。

すべてを犠牲にして捧げる無償の愛

政治活動をする夫が逮捕され、アフリカからローマにやってきたシャンドライは医者の道をめざし、ローマの古い屋敷に使用人として住み込む。美しい調度品に囲まれたその家の持ち主は英国人音楽家キンスキー。叔母の遺産を相続した裕福な彼に親しい人はなく、ピアノばかり弾いていた。やがて彼は、夫の存在を気にかけながらも、ひたむきに生きるシャンドライを愛するようになる。しかし、女が何よりも望んでいるのは、夫との再会だった。そこで男は高価な調度品を次々に手放し、その望みをかなえようとする。すべてを犠牲にして無償の愛を捧げる男。キンスキーと夫との間で揺れ動くシャンドライが最後に下した愛の決断とは……?

『ラストタンゴ・イン・パリ』以来の官能美

傑作『ラストタンゴ・イン・パリ』ではパリの一室で愛し合う恋人たちの姿を強烈なタッチで映像化したベルトルッチ。今回はローマの美しい屋敷を舞台に、肌の色も、好きな音楽も違う男と女の秘められたエロティシズムを詩的な映像で綴ってみせる。愛する女のためにすべてを捧げる男。夫のことを気にかけつつも、新しい愛を前に揺れ動く若きヒロインの心と肉体。主人公の微妙なしぐさや視線を追うことで、言葉にできない愛へのとまどいや欲望を描き『ラストタンゴ・イン・パリ』以来、久しぶりに大人の官能美が堪能できるベルトルッチ作品となった。男と女の部屋をつなぐ小さなエレベーターやらせん階段も小道具として大きな効果を上げている。

“わたしはどうしても、この映画が作りたかった”(ベルトルッチ)

近年、大作が多かったベルトルッチだが、今回は古巣のローマに戻り、スタッフを一新。手持ちカメラなども使って、若々しく大胆な構成を見せ、「ベルトルッチの再生」(ハリウッド・レポーター)と評された。『ブエノスアイレス』のウォン・カーウァイや『ガンモ』のハーモニー・コリンなど若い映画人に刺激され、巨匠がこれまでとは異なる挑戦を試みた野心作。本国でも高く評価され、イタリアのアカデミー賞といわれるダヴィッド・ディ・ドナッテロ賞では、大ヒット作『ライフ・イズ・ビューティフル』を抑え、見事、最優秀監督賞を獲得した。

鮮烈な印象を与える最高のキャスティング

少女の性のめざめを描いた『魅せられて』ではリブ・タイラーという新しいスターを発掘したベルトルッチだが、今回は実力派二人を主役に抜擢。大作『ミッション・インポッシブル2』が待機中の有望株サンディ・ニュートンが、アフリカでの過去を背負いながらもけなげに生きるシャンドライを演じ、鮮烈な印象を残す。そんなヒロインに心から愛を捧げるキンスキー役にデヴィッド・シューリス。『セブン・イヤーズ・イン・チベット』ではブラッド・ピット、『太陽と月に背いて』ではレオナルド・ディカプリオと、ハリウッド最高の人気スターとの共演でその演技を絶賛された注目の男優が、気持ちを伝えるのが苦手な繊細な音楽家を見事に演じている。

クラッシックとワールド・ミュージックの融合

また、クラッシック、ジャズ、アフリカン・ミュージックなど幅広い分野から集められた音楽が、セリフ以上にふたりの心理を語っていく。現代的な魅力を持つシャンドライはパパ・ウェンバやサリフ・ケイタなどアフリカのポップ・ミュージックを聴き、寡黙なキンスキーはモーツァルト、バッハ、グリーグなどクラッシックのピアノ曲を弾く。ふたりの性格や背景の違いがサウンドで表現され、ジャンルを超えた映画音楽となっている。なお、アフリカのシーンで強烈な歌声を聴かせるのはケニヤ在住のミュージシャン、J・C・オイワン。

ジェイムズ・ラスダンの短編小説を最高のスタッフで映画化

原作は英国の作家ジェイムズ・ラスダンの短編小説で、ベルトルッチと脚本家であり夫人のクレア・ペプローが共同脚色。原作を監督に勧めたのもクレアだった。
撮影監督は『夜ごとの夢〜イタリア幻想譚』のファビオ・ケチャンケッティ、美術は『ルナ』『シエルタリング・スカイ』など多くのベルトルッチ作品に参加したジャンニ・シルベストリ。衣装は『シェルタリング・スカイ』に協力したメトカ・コジャック、編集は新鋭のヤーコポ・クアドリア。

らせん階段のある贅沢な屋敷は、あのスペイン階段の隣り

映画のロケ地には、『ローマの休日』などで知られるローマの名所、スペイン階段に隣接する古い屋敷が使われた。映画のために庭師を使ってパティオを造園し、屋敷に優雅な調度品を飾るなど、随所に美的センスを散りばめた贅沢な作品となっている。また、ヒロインの趣味のいいカジュアルなファッションなども見所のひとつである。

ストーリー

ローマの中心街にある古い屋敷にはふたりの住人がいた。家主である英国人音楽家キンスキー(デヴィッド・シューリス)と使用人として住み込んだシャンドライ(サンディ・ニュートン)である。アフリカで育ったシャンドライは、政治活動をしていた教師の夫(シリル・ヌリ)が逮捕された後、単身、イタリアに向かい、掃除の使用人をしながら医学の勉強に励むことになった。
キンスキーの方は叔母の遺産を引きつぎ、美しい調度品に囲まれたその屋敷で裕福な暮らしを送っていたが、どこかエキセントリックで無口な彼には親しい人もなく、たまに音楽のレッスンに子供がやってくるだけ。彼の心の友は部屋の真ん中にあるグランド・ピアノだった。毎日、2階の部屋でモーツァルトやバッハの曲を弾くキンスキーだが、下の階に住むシャンドライには彼の好む曲が全く理解できない。彼女は自分の故郷での生活を思いながら、アフリカのポップ・ミュージックを聞いていた。
ある夜、寝苦しさのあまり目覚めたシャンドライはクローゼット代わりに使っている荷物用エレベーターで、疑問符が書かれた五線紙を発見する。そのエレベーターはキンスキーの部屋ともつながっている。シャンドライはキンスキーとほとんど言葉を交わしたことはなかったが、彼の方は故郷を離れて、けなげに働くシャンドライに好意を抱き、靴や服にまで気を配る彼女に感謝する。荷物エレベーターを通じて大きな赤い蘭が贈られ、次に叔母の遺品の指輪が置かれていた。キンスキーのそうした行為にとまどい、指輪を返しにいくシャンドライ。その時、ピアノを弾く指をとめ、キンスキーは意外な言葉をささやく、「君を愛している。結婚して欲しい」。シャンドライには、その突然の告白が信じられず、驚きのあまり部屋を出ようとする。「君のためなら、何でもする」。その時、動揺したシャンドライは思わず口走る、「じゃぁ、夫を刑務所から出して!」。キンスキーは、その時、初めてシャンドライが結婚していることを知った。
嵐のような一夜が去り、シャンドライとキンスキーには再び静寂が訪れる。キンスキーは相変わらずピアノを弾く毎日。ただ、来客が増え、彼らは彼の部屋の調度品を次々に運び出す。シャンドライは自分がきれいに磨いた高価な像を街の骨董屋で見かけることもあった。
アフリカにいる夫のことは不明で、掃除にいったキンスキーの書斎のゴミ箱で懐かしい故郷の切手が貼られた封筒を見つけ、たまらない気持ちになった。医学の勉強の方は順調で、試験にも優秀な成績で合格。共に医学の道を目指すゲイのアゴースティノ(クラウディオ・サンタマリア)はそんな彼女の気のおけない友人だ。
ある朝、シャンドライは愛する夫の無事を知らせる手紙を受け取る。1週間後、軍法裁判にかけられるという。手紙の主はキンスキーだろうか?シャンドライは彼の優しさに気づき始める。シャンドライが掃除機をかける間、キンスキーはピアノの前で楽譜に向かいながら、曲を作った。その響きにふと耳をかたむけるシャンドライ。
キンスキーは教え子たちを招待して、自分の部屋で小さな音楽会を行うことになった。シャンドライは学校の試験に落ちた友人アゴスティーのを励ますために、この集まりに招待する。今ではほとんど物がなくなった部屋にピアノが鳴り響く。完成した自作の曲を演奏するキンスキー。その激しいリズムにはシャンドライへの情熱的な愛がこめられていた。押し寄せるようなピアノの音に、シャンドライの心は乱れる。演奏の途中でシャンドライのもとに、釈放された夫からの手紙が届く。「明後日、そちらに行く」。
演奏会の後、キンスキーは大事なピアノも売却する。シャンドライにはキンスキーのしていることがやっとわかった。彼はかぐやピアノを処分し、その資金でシャンドライの夫を監獄から解放したのだ。そうすることで愛するシャンドライの幸せを願ったのだ。しかし、シャンドライの心の奥にはある別の感情が芽生えつつあった。
夫との再会の前日。シャンドライは夫のことをキンスキーに報告に行く。彼はただ静かな笑顔を浮かべ、シャンドライは感謝の言葉を切り出すことができない。外出先でシャンパンと花を買って帰宅したシャンドライは、キンスキーに宛てたカードに感謝の言葉を綴る。そして、夫のために用意したシャンパンをひとりで飲みほし、夜中に体のほてりを感じて目覚める。彼女はキンスキーにカードを届けるため、彼のいる部屋へ向かった……。

スタッフ

監督:ベルナルド・ベルトルッチ
製作:マッシモ・コルテジ
脚本:クレア・ペプロー、ベルナルド・ベルトルッチ
原作短編:ジェイムズ・ラスダン
撮影:ファビオ・チャンケッティ
製作主任:エマヌエレ・ロミリ
編集:ヤーコボ・クワドリ
美術:ジャンニ・シルヴァストリ
音楽:アレッシオ・ブラド
編曲・演奏:ステーファノ・アルナルディ
衣装:メトカ・コジャック
音編集:サンドロ・ペティッカ
録音:マウリッツイオ・アルジェンティエリ
台本監修:シュザンヌ・デュランベルジェ、ファビアン・ジェラール
助監督:セレネ・カネヴァリ
配役:ルーシー・ボウルティング(ロンドン)、ファビオラ・バンツィ(ローマ)
敷物と庭のデザイン:メトカ・コシャック
製作補:クレア・ペプロー

キャスト

シャンドライ:サンディ・ニュートン
キンスキー:デヴィッド・シューリス
アゴスティーノ:クラウディオ・サンタマリア
アフリカの歌手:ジョン・C・オイワン
役所の職員:マッシモ・デ・ロッシ
シャンドライの夫:シリル・ヌリ
ポール・オスル
ヴェロニカ・ラザール(医学校の試験官)
ジャンフランコ・マッツォーニ
マリオ・マゼッティ・ピエトララタ
アンドレア・クエルチャ(ピアノを弾く少年)

LINK

□公式サイト
□IMDb
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す
http://www.flf.com/besieged/
ご覧になるには Media Player が必要となります