原題:LIVING IN SHADOWS

三十五な・・・・・・せつない歳になったなぁ 誰でも時折感じる、性的衝動。閉鎖的な状況の中で、あなたならどうしますか?

2000年/日本/カラー/ヴィスタサイズ/ドルビーSR/119分/ 配給:アースライズ

2001年10月12日ビデオレンタル開始 2001年7月上旬より大阪シネフェスタにてロードショー 2001年6月中旬より名古屋ピカデリーにてロードショー 2001年5月26日より新宿東映パラス2にてロードショー

公開初日 2001/05/26

公開終了日 2001/06/08

配給会社名 0098

公開日メモ 日本経済新聞に連載された三浦哲郎版「女の一生」と評価された小説が原作。

解説


《誰でも時折感じる、性的衝動。閉鎖的な状況の中で、あなたならどうしますか?》

生きるうえで避けて通れない〈性〉の問題。この映画は、青森の港町を舞台にひとりの哀しい女を通して〈性〉と〈生〉を描いたドラマです。

原作は、日本経済新聞に1年間連載され三浦哲郎版〈女の一生〉と高く評価された同名の小説「夜の哀しみ」(新潮社刊)。暗くなりかちなストーリー展開ながら、映画ではいくつかのエピソードとキャラクターによってほのかなユーモアを加えつつ、女の〈性〉と〈生〉が力強く描かれています。また、1ヵ月にわたる撮影はオールロケで、実際の民家や瀟酒な豪邸、300年続いた旧家などを使用し、画面に重厚感を与えています。

《人妻の性欲を夫が満たせない状況は潜在的に社会問題である》
地道につましく生きていながら湧き出る性的欲求を抑えかねて悩む女と、性的歓びを感じないだけでなく夫に触れられることにさえ恐怖を抱く女……この映画で、普遍的なふたりの女性を通して描かれるのは、単なる浮気や不倫の善悪ではない。問題なのは、人妻の性欲を夫が満たせない社会状況であり、女性の性欲を”淫乱”という言葉でタブー視する社会的因習なのだ。そういった潜在的な社会問題を、ひとりの女性の悲劇を通して提起しようというのがこの映画のひとつのテーマとなっている。

《”青森発世界へ”というコンセプトでこの映画は作られた》
独特の風土の色彩が濃い地方の町でこそ、この問題の本質が明確に表現出来る。そういう考えから青森県の西海岸が舞台に選ばれた。主人公の家も空き家を借りて飾り付けをするロケセットで、工場、商店、病院、銀行窓口、バスターミナル、漁師小屋などすべてのシーンが青森県の深浦町、岩崎村、鯵ヶ沢町、五所川原市などで2000年の3月末からーヵ月かけて撮影された。撮影には地元の人たちがエキストラ出演するだけでなく、自分たちの映画を作る気持ちになって参加し、協力してくれた。原作も八戸出身の三浦哲郎によるもので、青森ならではの空気感のなかで作品世界が展開されている。まさに青森の魅力がいっぱいにつまった、青森発の映画なのだ。

《味のある俳優陣が、ドラマに厚みを加える》
深い問題をリアリティを持って表現する必要があったため、キャストには演技力に定評のある俳優が揃った。登世を演じる平淑恵は、映画の主役は初挑戦ながら舞台では文学座の顔として長いキャリアを持つ女優。この映画のもうひとつのテーマである断ち切れない親子の絆を、子役の小此木優也とともに緊張感あふれる演技で表現している。そして登世の幼なじみ・英子には透明感と清潔感をあわせ持つ涼風真世、その夫の聖次には独特の存在感のある石原良純。さらに、味わい深い演技が印象的な平田満、凄みと表現力は絶品の加藤治子、哀愁があるのにユーモラスな感じが漂うでんでんなどの名優たちが脇を固めている。

ストーリー


《夕陽と海岸線が美しい、青森の小さな港町。ここで、せつない思いに素直だった女の悲劇は起こった》
港町の水産加工工場に勤める登世(平淑恵)は、ふたりの子供を育てながら、東京に出稼ぎに行った夫・三作(平田満)の留守を守っている。地道でつましい毎日を送る家族。しかし、毎夜寝床についてから襲ってくる抑えきれない性的衝動に、登世は苦しんでいた。親友の英子(涼風真世)にそのことを打ち明けると、英子は「みんなそうじゃないかな」と受け流す。そんな英子が酒に溺れていると聞き、登世は心配になる。
ある日、登世はたよ婆の孫・桂太(岩瀬威司)から、夫が事故に合ったと聞かされる。慌てて確かめると、その話は嘘だった。安心する登世に、たよ婆はおわびに電車賃を出すから東京に行ってくるように勧める。東京に行き、久しぶりの夫の存在に満足感を覚える登世だった。
英子の入院を聞き、登世は病院に駆けつけた。英子はがんにかかっていたのだ。用事を頼まれ朝田家に行った登世は、そこで英子の夫・聖次(石原良純)に彼ら夫婦の実状を知らされる。聖次の言葉に登世の気持ちは揺れ、ついに聖次と肉体関係を持ってしまう。性を通して、生きる事に夢中になる登世。しかし自分のふしだらさに心が痛み、正月の夫の帰りを喜びつつも一抹の、不安を覚えるのだった。
とうとう英子が亡くなった。四十九日が終わった頃、泣き疲れた登世の家に聖次が形見分けの黄色いスーツを持ってやってきた。お互いもうこれで終わりと感じながら思い切れず、またふたりは肉体関係を持ってしまう。そのとき、聖次に抱かれていた登世の目に、天窓に人影が映るのが見えた。それは登世の息子・克夫(小此木優也)だった。
克夫は、大切な母の行為に、悲しみ苦悶する。苦しみはやがて反抗となって現れ、登世を脅迫するようになった。克夫のエスカレートする要求に悩み、登世は会社をやめて水商売をしようと事務長の佐太郎(でんでん)に相談した。すると思いがけなく愛人関係をもちかけられ、登世は迷いながらもその提案を受け入れてしまう。
聖次と久しぶりに会うことになった登世。だが別れ話を切り出されたうえお金の入った封筒を渡され、登世は唖然とする。これは単なる浮気じゃない、恋だったのに。登世はお金をつきかえし、その場を去った。
ある夜、登世の家に自暴自棄になった佐太郎がやってきた。会社のお金を使い込んだのがバレたのだ。ところが登世の前で、佐太郎は持病の心臓マヒで事切れてしまう。蒼白になった登世は、たよ婆に助けを求めた。たよ婆の適切な処置で人心地つく登世。そんな登世に、「実は自分も35歳の時に浮気した亭主を殺したんだ」とたよ婆は告白する。
登世は体を壊し、血を吐くようになっていた。それが原因で工場を、辞めさせられたが、子供たちは登世に冷たくあたる。心身ともに登世は疲れ切ってしまっていた。
ある日、オートバイに乗った青年が登世の前に現れた。それは船乗りになるため工場をやめた健介(三上大和)だった。陰ながら応援していただけに、登世は彼の成功がことのほか嬉しかった。しかしこの光景を見て誤解した克夫は、登世への憎悪をさらにつのらせる。
克夫の手紙を読んだ夫からの電話をうけて、気持ちが沈む登世。何も知らない夫や英子を思い、「淫乱」な自分自身を憎むあまり天窓を壊してしまう。そんな登世を克夫は軽蔑してあざける。カッと頭に血が上った登世は、思わず克夫の首に手をかけ殺そうとしてしまう。そんな自分に呆然としつつ、もうここにはいられないと思い、英子の形見のスーツを着た登世は家を後にして海へと入っていった。生まれ変わるために……。

スタッフ

原作:三浦哲郎「夜の哀しみ」(新潮社刊)
監督:岡泰叡
エグゼクティブ・プロデューサー:三東昭子
プロデューサー:高畠久
脚本:佐伯俊道/岡泰叡
撮影:浜田毅
音楽:高畠亜生
撮影:浜田毅
照明:渡邊孝一
美術:福留八郎
道具・装飾:山崎美術
録音:菊地進平
効果:福島音響
編集:宮崎清春
助監督:武内孝吉
製作担当:金山雅右
方言指導:相沢ケイ子
アソシエイト・プロデューサー:平田成美
ラインプロデューサー:力武敏彦
製作:エリエール大王製紙/SANKYO/コミーインターナショナル
企画制作:ミロフィルム

キャスト

浜浦登世:平淑恵
朝田英子:涼風真世
朝田聖治:石原良純
沖たよ:加藤治子
浜浦三作:平田満
小向佐太郎:でんでん
川瀬八重:富沢亜古
内海健介:三上大和
浜浦克夫:小此木優也(子役)
浜浦敏恵:山下ゆり(子役)
蟹沢:市山登
カラオケ村店員・田村:藤巻裕己
町立病院看護婦:梓紫央里
沖桂太:岩瀬威司
森田:古川悦史
水産工場社長:たかお鷹
八重の義母:相沢ケイ子

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