原題:GITANO

注目のラテン男、ホアキン・コルテス主演作品

2002年1月19日ビデオ発売&レンタル開始 2000年9月1日スペイン公開 2005年03月23日よりDVDリリース

2000年/スペイン・ドイツ合作/カラー/102分/ドルビーSR/ヴィスタ/日本語字幕:松浦美奈 提供:コムストック/デレビ東京/日本コロンムビア/テレビ大阪 配給:コムストック

2001年8月4日よりシネスイッチ銀座にて公開

公開初日 2001/08/04

配給会社名 0028

公開日メモ 魅惑的なフラメンコのパーカッショニスト、アンドレは、対立するジプシーのファミリーの娘ルシアと政略結婚をするが、やがて“掟”を破った者に対する血で血を洗う復讐の渦に呑み込まれていく‥‥。 フラメンコ界のスーパースター、ホアキン・コルテスの初主演映画。

解説



独自の掟によって生き続ける誇り高き民族ジプシー。固い絆で結ばれた彼らは、なによりも男の名誉を重んじ、それを守るためには死をも辞さない。魅惑的なフラメンコのパーカッショニスト、アンドレは、その熱い血を受け継いだがゆえに、ファミリーの悲劇的な抗争の渦に呑み込まれ、ふたりの女の激しい愛と裏切りに揺れ動く。
『ジターノ』は、脈々と受け継がれてきたジプシーの血を引く魅惑的な男が愛と復讐の狭間で苦悩するせつない物語。いま、そんな男が似合うラテン系の俳優といったら、誰だろう?もちろん、アントニオ・パンデラスをはじめ、『夜になるまえに』でアカデミー賞候補になったスペインの演技派ハビエル・バルデムや、『トラフィック』でアカデミー賞助演男優賞を獲得したプエルトリコ生まれのべニチオ・デル・トロ。そして、『オープン・ユア・アイズ』をヒットさせたスペイン産美形のエドゥアルド・ノリエガも新作『パズル』に主演し、ラテンの男は大活躍。しかし、華麗なるミュージシャンの風情をそなえつつトライアングルな愛の罵に惑わされる男となると、彼らでも演じるのは難しい。となれば、真打ちの登場である。95年、スペインの鬼才ペドロ・アルモドヴァル監督の『私の秘密の花』で、その美しき姿をスクリーンに焼き付けたホアキン・コルテス。決して多くはなかった登場シーンにも関わらず、世界中の女性たちの目を釘付けにし、熱い視線を浴びたフラメンコ界のスーパースターだ。『ジターノ』は、その絶大な人気を誇るホアキンの待望の初主演作である。
もちろん、本格的な演技は本作が初めてのホアキン。しかし、95年の初演以来、世界中で熱狂的な人気を獲得し、98年には日本公演でも5万人の観客を動員したショウ『ジプシー・パッション』を見れば一目瞭然。フラメンコとバレエを融合させたその舞台は、チャプターごとに愛のドラマが綴られる仕掛けだ。躍動する肉体、哀愁をおびたまなざし、乱れる黒髪さえもがエモーショナルに揺れ動き、全身で物語を語り尽くしていた。
そんなホアキンだけに、激しいフラメンコのリズムに身をゆだね、ひたむきに真実の愛を追い求めるジプシーの男アンドレという、まさに等身大の自分を反映させたハマリ役を得たとなれば、演技力もさく裂。因襲から抜け出すことの出来ない焦燥感、見えない糸に操られる不安感、裏切りに脅える絶望感など、多くの感情の機微をちょっとした仕草や視線で繊細に体現していく。そしてなにより、愛に燃える濡れたまなざしの激しくも美しいこと!もちろん、カホン(パーカッションの一種)を打ち鳴らしリズムと一体になった枕惚の表情も素顔を彷佛とさせ、まさに触れれば火傷しそう。
ホアキンと恋のトライアングルを織りなす女優たちにも、注目だ。セクシーでミステリアスな妻ルシアを演じたのは、レティシア・カスタ。スーパーモデルとして活躍し、フランスの超大作『Asterix et Obelix Contre Cesar』(99)で長編映画のデビューを果たした彼女は、”カトリーヌ・ドヌーヴ以来の女神の誕生”ともっぱらの評判。その肉感的な美しさとは裏腹に、時おり見せるあどけない表情は、まさに小悪魔の魅力。男なら誰だって虜になる。
そして、彼女とは対照的な魅力を発散するのが、姉ロラを演じたマルタ・ベラウステギ。穏やかで慈愛に満ちた表情ながら、内には愛を貫く強い意志がある。その凛とした美しさには誰もが癒されること請け合いだ。
そして、このまったくタイプの違った女性ふたりの好演があればこそ、アンドレをめぐる愛の三角関係がいっそう味わい深く、ロマンチックに心に響いてくるのはいうまでもない。
監督は、マヌエル・パラシオス。これまで、TVや広告業界で活躍しつつ、多くの舞台やドキュメンタリーを手がけた才人。それだけに、スペイン版『ゴッド・ファーザー』ともいうべきジプシーの複雑にしてスリリングな抗争を背景にしながらも、運命に翻弄される愛を際立たせ、重層的な演出をみごとにクリアしている。もちろん、躍動感あふれるホアキン・コルテスの魅力を余すところなく、スクリーンに花開かせているのが最大の功績ではあるのだが。
舞台となったグラナダの風景も見逃せない。太陽のきらめく昼と月明かりに照らされた夜ではまったく表情を異にする古い町並み。この美しさには、歴史の重みとロマンチックな香りが漂いとにかく目を見張る。とくに、アルハンブラ宮殿でロケされたクライマックスのシーンは、光と影を駆使したミステリアスな映像で、味わいは格別だ。そして、その町並みに漂うように流れるのが、魅惑のスペイン・ミュージック。フラメンコの激しいリズム、哀切をおびた歌声、陽気なスパニッシュ・ギターの響き。いずれもがエキゾチックな愛の世界へと誘ってくれる。

ストーリー


ジプシーの男アンドレが出所した。若くてハンサムな彼には、フラメンコ・ミュージシャンとしての輝かしい未来があるはずだった。親友ペケと従弟のロメロで組んだバンドは、レコード・デビュー寸前だった。そしてパーカッショニストとしてリズムに酔いしれる彼の側にはいつも愛しい妻のルシアがいてくれた。ルシアは対立する一族の娘。グラナダ版ロミオとジュリエットさながらに障害を越えて結ばれたふたり。しかし、2年前。ふたりの汚職警官によって、身に覚えのない罪を着せられ、刑務所に入れられてしまったのだ。
今度こそ新しい生活をと願うアンドレ。しかし、待っていたのは、人々の変わり果てた姿だった。妻のルシアは音楽プロテューサー、マンフレディの愛人になるためにマドリードへ行った。それを止めようとしたロメロはルシアの父が率いるフンコ・ファミリーの手の者に殺された。ペケも今は酒に溺れた自堕落な生活をしている。ただひとり、ルシアの姉で歌手のロラだけは、ペケの妻でありながらも、アンドレヘの変わらぬ愛を胸に抱き続けていた。しかし彼女も歌手としての新しい生活を手に入れるために、やがては町を離れるという。
ロラのように故郷を捨てられたら。ルシアの裏切りに深く傷ついたアンドレは、心の中で願った。しかし、脈々と流れるジプシーの血と古い掟が邪魔をする。アンドレの属するエレディア・ファミリーを率いるイシドロは、亡きロメロの復讐をするためにフンコ・ファミリーに果たし合いを申し込んでいた。アンドレもジプシーの男として名誉を取り戻すためには落とし前をつけなければならない。嫌々ながらも抗争の場に行ったアンドレだったが偶然の発砲でフンコの一員が死んだのを機に、闘いは終結。多くの人間の血を流さずにすんだのだ。
ファミリーの間に再び平和が訪れた。しかし、それも束の間、アンドレの前にルシアが突然現れた。「マンフレディが’怖い。私を守って」と胸に顔をうずめるルシア。2年間、片時も忘れることのなかった、髪、肌、匂い。アンドレはあふれる思いを抑えきれずに妻と熱い夜を過した。ところが翌朝、姿を消した妻の代わりに、2年前に彼をハメた警官ふたりが部屋になだれ込み、彼を逮捕した。昨夜の抗争の犯人捜査という名目だ。からくも、警察の上層部は釈放を命じアンドレは解放されたのだが。
意味不明な妻の言動。刑事たちのいわれなき脅し。2年前に役立たずだった弁護士は”ルシアとマンフレディに近づくな”と金をチラつかせる。ファミリーの抗争を引き起こし、愛する妻を狂わせ、自分を罠に陥れたのは誰だ!業を煮やしたアンドレは自分自身で真相を暴き決着を着けようと決心。黒幕と思えるマンフレディに会い、宣戦を布告し、彼をつけ狙う。しかし、数日後には例の刑事にこっぴどく痛めつけられてしまう。
傷つきボロボロになったアンドレをいたわるのはロラ。その温もりに触れたとたん、ルシアがかつていった言葉が胸に響く。「ロラは昔からあなたを好きだったのよ。私よりずっと」。まるで渇きを癒すかのように激しく愛しあうふたり。その愛に勇気を得たアンドレは、いかなる運命が待っていようとも、マンフレディと対決しようと決心する。しかし、あまりにも残酷な裏切りを知ることになろうとは、思いもよらなかった。

スタッフ

監督:マヌエル・パラシオス
製作総指揮:ホセ・ロレンソ/アントニオ・カルデナル
製作:アントニオ・カルデナル
脚本:アルトゥーロ・ペレス=レベルテ/マヌエル・パラシオス
原作:アルトウーロ・ペレス=レベルテ
撮影監督:ハンス・ブルマン
美術:アントン・ラグーナ
編集:アンヘル・ヘルナンデス・ゾイド
音楽:エヴァ・ガンチェド

キャスト

アンドレ:ホアキン・コルテス
ルシア:レティシア・カスタ
ロラ:マルタ・ベラウステギ
ペケ:ヒネス・ガルシア・ミラン
マンフレディ:ファン・フェルナンデス

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