風花
原題:KAZAHANA
互いの事も知らぬまま、帰る場所のない女と男は一路、北へと旅に出る 小泉今日子、浅野忠信 による 大人のラブストーリー
トロント国際映画祭正式招待作品 プサン国際映画祭正式招待作品 さっぽろ映画祭 多摩映画祭 函館映画祭
2000年/カラー/ヴィスタ/116分/配給:シネカノン
2001年8月24日DVD発売/2001年8月24日ビデオ発売&レンタル開始 2001年1月27日より銀座シネアミューズ、銀座シネ・ラ・セットほかにて公開
公開初日 2001/01/27
公開終了日 2001/04/27
配給会社名 0034
公開日メモ 「風花」とは、冬から春へと向かう晴れた日に、まだ雪の残る山肌を撫でて風に吹かれ飛んでくる細雪のこと。ひらひらと風に舞い散る櫻の花びらのように、優雅だがまるで一瞬で消えるために降っているような儚い雪…
解説
「風花」とは、冬から春へと向かう晴れた日に、まだ雪の残る山肌を撫でて風に吹かれ飛んでくる細雪のこと。ひらひらと風に舞い散る櫻の花びらのように、優雅だがまるで一瞬で消えるために降っているような儚い雪…
故郷・北海道に残した一人娘に五年ぶりに会いに行く風俗嬢・ゆり子(小泉今日子)と、酔った勢いからドライブに付き合うことになる謹慎中のキャリア官僚・廉司(浅野忠信)。性格も生活も旅の目的も全く異なる二人の、ぎくしゃくとした旅が始まる…
だが実家に辿り着いたゆり子は親の反対から娘に会うことが出来ないそして廉司の耳には、上司からの一方的な解雇通告が届く。「自分は世の中に必要のない人間なのかもしれない…」。行き場をなくした「帰れない二人」を乗せた車は、まだ雪の残る山奥深くへと向かっていく…
●小泉今日子×浅野忠信、かつて誰も観た事のない二人が此処にいる
主人公・ゆり子を演じるのは、小泉今日子。都会に暮らす複雑な女性の心境、本人曰く淋しくて、悲しくて、たくましくて、明るくて、揺れていて、数え切れないほどの感情を持っている女を見事なまでに演じ切る。その姿に、誰しもがスクリーンに燦然と輝く「真の映画女優」の誕生を見て、喝采を挙げるに違いない。そして相手役に、浅野忠信。おそらくはこれまでで最も学歴が高く性格の悪い!?今回の役柄は、自分でも今まで観たことない表情が写ってると自ら言うほどの新鮮さに溢れており、確かな演技力と共にまた新たな段階に突入した姿に出逢うことが出来る(特に酔っ払いシーンは必見)。また、ゆり子の亡夫役に鶴見辰吾、母親役に香山美子、義父役に高橋長英と充実した出演陣が脇を固め、更に柄本明、椎名桔平、麻生久美子と豪華なキャストが、作品に鮮やかな彩りをもたらしている。
●全編に満ち溢れる静けさと危うい官能 一流のスタッフが紡ぎあける見事なアンサンブル。
監督は、名匠・相米慎二。デビューから20年目にあたる節目の年、13本目の長編作品となる本作品は、ロードムーヴィーの傑作であると同時に、感度抜群の大人のラブストーリーに仕上かった流麗なキャメラのリズムに乗せて、役者の息づかいをそのままフィルムに閉じこめる演出手腕が全編に冴え渡り、最後まで観る者の目を離さずにはおかない。また、主なロケ場所となった北海道の幻想的なまでに美しい風景が作品に一層の輝きを与えている。原作は乱歩賞作家・鳴海章の同名長編小説「風花」、音楽は、国際的に活躍するミュージシャン・大友良英のアクセントの効いたりズムパターンと、バンドリンの名手・秋岡謳の奏でる柔らかな響きが、随所に絶妙な効果を上げている。
夢の如く現れては消えゆく「風花」は、名匠の手によって、観る者の心の奥底に、深く静かに溶け込んでゆく。本作品は、人の生と死を最後まで見つめながら、その先に輝く「光」を求める人々を癒し包み込む、希望と再生の物語である・・・。
ストーリー
東京、春の明け方…満開の櫻の樹の下で目覚めた澤城廉司(浅野忠信)は、二日酔いのためか此処が何処なのか、隣にいる女が誰なのかも思い出せない。その女、富田ゆり子(小泉今日子)は云う。「私のこと憶えてないの?どうするの?北海道」。今日の女満別への最終便に一緒に付き合うと約束したというのだ。女が何を云っているのか、そもそも誰なのかも全く思い出せない廉司は、その場を足早に去っていく。
ゆり子は五年前から東京に独りで暮らしている。彼女はこの地で「レモン」というもう一つの名を持っている…風俗嬢だ。新宿の高層ビル群が見えるマンションの一室には、彼女の他には亀が一匹だけ。故郷には、東京に来てからずっと足を運んでいない。幾つもの「想い」を置き去りにしてきてしまった故郷に帰りたいという気持ちはあるが、その勇気が出せず、ただ流されるまま日々を過ごしていた。しかし昨夜、廉司と一晩飲み明かした時に出てきた「北海道」という言葉かきっかけか…一人でも故郷に顔を出してみようと思い立ち、勤めているお店に休みを告げ、荷物をまとめ始める。
廉司はキャリア組の高級官僚だ。だが彼もまた東京で独り暮らしながら、毎晩毎夜、飲まずにはいられない怠惰な日常を繰り返していた。美樹(麻生久美子)という恋人は、一応いる。だが廉司のキャリアに惹かれて付き合っている彼女とは、心も体も満足に通い会わせる事が出来ない。ある晩、泥酔した廉司はコンビニで万引きをした事から、自宅謹慎を命じられる。謹慎中も酒の力を借りて自分を忘れる事しか術がない彼は、酔った勢いを借りて、ゆり子の旅立つ羽田空港へと足を向けていた。彼女が誰かも思い出せないまま…
意を決して五年ぶりに娘に会いに行くゆり子と、すっかり酔いも覚めて悪態を吐きながらハンドルを握る廉司。性格も生活も旅の目的も全く異なる二人の、ぎくしゃくとした北海道ドライブが始まった。
ゆり子にとって故郷は想いでの残り過ぎる場所だった…夫(鶴見辰吾)とのささやかながらも幸福な生活、一人娘・香織の誕生、その直後の夫の事故死…残された借金を肩に、娘を母に預けたまま彼女は故郷を後にしたのだった。あのとき以来、五年ぶりの帰郷になる。娘の顔が一目見てみたい、だが果たして自分のことを憶えているだろうか…?複雑な胸中のまま家の門を叩いたゆり子に、実母(香山美子)と義父(高橋長英)は告げる。「東京で何をしているのか知らない訳じゃない。香織の為にも、会わせるわけにはいかない。この町で仕事を見つけて真面目に働くというなら話は別だが…」返す言葉もなく、ゆり子は実家を後にする。
廉司は、ようやく、ゆり子と会ったときのことを想い出す…自らの不祥事を週刊誌に書き立てられ、実家の親からの責めにも遭い、あの晩、泥酔して”レモン”の勤める店に行き…一晩飲み明かし、一緒に北海道に付き合うと約束したのだった。そして、この遠く離れた地で、廉司は上司からの一方的な解雇通告を聞くことになる。「もう自分には帰る場所などない。そもそも自分は世の中に必要のない人間なのかもしれない…」。行き場をなくした「帰れない二人」を乗せた車は、まだ雪の残る山奥深くへと向かっていく。
奥に行く程に深さを増す残雪。道に迷った車は、漸く山奥にぼつりと停む温泉宿に辿り着く。宿の主人(柄本明)をはじめ常連の客達が繰り広げる宴は侘しく、だがどこか懐かしい風情が漂っている。雪山の奥に潜むさびれた宿に集う寂し気な人々と陽気に騒ぐ事で、自分の悲しみを紛らわそうとするゆり子。だが、廉司はそんな彼女に心を開くことができない。そして廉司が独り部屋に戻ると、そこにゆり子の姿は無く、後にはゆり子の財布と短い走り書きだけが残されていた…。
スタッフ
監督:相米慎二
製作:若杉正明、早河洋
製作補:田辺順子
プロデューサー:椎井友紀子
製作委員会:上松道夫、小松崎正樹、志摩敏樹、習田豊、井上武志、岡井龍平
企画:木村純一、古川一博
企画プロデュース:高橋由佳
原作:鳴海章(『風花』講談社刊/11月講談社文庫にて発刊予定)
脚本:森らいみ
撮影:町田博
美術:小川富美夫
照明:木村太朗
録音:野中英敏
編集:奥原好幸
衣装:小川久美子
ヘアメイク:豊川京子
装飾:小池直実
スクリプター:今村治子
助監督:高橋正弥
製作担当:黛威久
音楽:大友良英(オリジナルサウンドトラック/モンスーンレコードより発売予定)
音楽プロデューサー:佐々木次彦タイトルデザイン・広告美術:葛西薫
製作:ビーワイルド、テレビ朝日、TOKYOFM
企画協力:ムスタッシュ
※製作協力:KNHO
キャスト
小泉今日子
浅野忠信
麻生久美子
尾美としのり
小日向文世
鶴見辰吾(友情出演)
椎名桔平(友情出演)
笑福亭鶴瓶(カエルの声)
木之元亮
寺田農
綾田俊樹
酒井敏也
野間洋子
山本真亜子(子役)
高橋長英
柄本明
香山美子
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