全国PTA協議会特別推薦 優秀映画鑑賞会推薦 日本映画ペンクラブ推薦 「お蔵出し映画祭2013」グランプリ・観客賞受賞作品

1984年/日本/カラー/134分 配給:アークエンタテインメント

2014年5月3日公開

公開初日 2014/05/03

配給会社名 1350

解説


現在のわが国は65歳以上の高齢者が総人口に占める割合は4人に1人という、世界に例をみない超高齢化社会にあります。日本海の漁村を舞台に認知症の老父と末期の老母を抱えた家族の苦悩を描く本作は、21世紀の日本が直面する高齢化社会と尊厳死の問題に、すでに30年も前に迫っていた予見性に驚かされる力作です。

きれいごとではない介護の現実を鋭くえぐりながら、過酷な状況下でもなお見棄てることのできない家族のつながりと愛情の向こうに、困難な時代に立ち向かうほのかな希望を見いだしています。本作は1984年に製作されながら、早すぎた異色の題材ゆえに劇場未公開。昨年の「お蔵出し映画祭2013」で発掘上映されるや満場一致でグランプリに輝き、ここに劇場公開が決定しました。

主演の三國連太郎にとっても62年の映画人生の300本近い出演映画の中で唯一の未公開となる幻の作品。80歳の老人役に扮した三國は当時61歳、撮影中は毎日2時間以上かけてメイクを施し、徘徊や失禁の場面も演じる入魂の演技が圧巻。

さらに共演の田村高廣、初井言榮、長山藍子、誠直也、高橋悦史、下條アトムら日本映画を支える名優たちの見ごたえのある演技によって、比類なき説得力と感動を生み出しています。監督・共同脚本はこれが第一回作品となる『米百俵 小林虎三郎の天命』(1993)の島宏。

ストーリー



昭和59年4月。夜明け間近い、新潟県親不知海岸。元漁師の安田源吾(三國連太郎)は、今日もまた小便で濡れた着物を引きずりながら波打ち際をさまよっていた。

陽に焼けた顔、暗い海を見つめる目などそのひとつひとつがこれまでの人生が多難であったことを示していた。夜ごとの深夜徘徊ーー。源吾はすでに老人特有の認知症がはじまっていたのである。

ほどなくして妻のトミ(初井言榮)が源吾を迎えに来た。トミは源吾に誰よりも哀れを感じていた。妻として共に暮らした五十年余りの歳月は決して平穏ではなかったが、日増しに呆けて老いてゆく夫に憐憫の情が募るばかりであった。無表情の源吾をいたわりながら家路を急ぐトミ。春とはいえ寒気きびしい北陸の夜気が、老いた二人の体にこたえぬわけがない。

しかし、闇に消えていく老夫婦の姿には、長年連れ添ってきた者にだけ通い合う温かさがあった。安田家は、長男・忠雄(田村高廣)を中心に、妻のみつ(長山藍子)、ひとり娘の高校生・信子、それに源吾とトミの五人家族である。認知症特有のひとつの症状であろうか、源吾の食欲はすさまじく誰もがあきれるほどであった。ボロボロと飯をこぼしながら食べる源吾を根気よく世話するトミ。

そんな源吾を汚いと非難する信子。源吾を今でも父として崇める忠雄。みつはそんな平凡な家族に満足していた。家事と少しばかりの畑仕事と、漁師である夫・忠雄の手助けと休む暇のないほどに忙しかったが、みつはけっして不満を言わなかった。それは夫の慰めと姑トミのいたわりを痛いほど感じていたからであった。 ある日、安田家の次男、弘(誠直也)が七年ぶりに都会から帰ってきた。

妻と子どもが眠る寺を訪れた彼を、この寺の住職の義理の娘で看護婦の早苗(志和慶子)が迎える。厳格な父の源吾に反発して家を飛び出した弘だったが、帰る場所はここだった。そんな折り、トミが突然病に倒れた。余命半年と知らされた忠雄は家族の誰にも知らせずに思い悩む。

トミの病状は次第に悪化し、苦痛に耐えきれずに源吾を道連れに心中を図る。家族にとって生き地獄の日々が続き、トミは毎日のように「殺してくれ」と哀願する。見かねた忠雄は医師(下條アトム)に安楽死の要求をするが……。

スタッフ

監督:島宏
プロデューサー:遠藤敏男、増山茂、脚本島宏、スーザン・リー
撮影:松下時男
音楽:林輝
照明:大西美津男

キャスト

三國連太郎
田村高廣
初井言栄
長山藍子
誠直也
高橋悦史
下條アトム

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