2013年/日本/カラー/ヴィスタサイズ/ドルビーデジタル/82分/ 配給:セディックインターナショナル・電通

2013年11月9日(土)109シネマズにて全国ロードショー

(C) 2013「I AM ICHIHASHI 逮捕されるまで」製作委員会/PG12

公開初日 2013/11/09

配給会社名 0143/1439

解説


日本中を震撼させた殺人犯、市橋達也
その2年7ヵ月の逃亡生活の衝撃的な真実に迫る問題作

 2007年3月26日。殺人事件の現場となった千葉県市川市のマンションから、ひとりの若い男が捜査員の追跡を振りきって逃走した。当時28歳のその男、市橋達也は、すぐさま死体遺棄容疑で指名手配され、当初逮捕は時間の問題と思われたが、事件はこのうえなく異様な展開を見せていった。
 被害者である22歳のイギリス人女性英会話講師の遺体は、なぜかマンションのベランダの浴槽から園芸用土砂に埋められた状態で発見された。警察の威信を懸けた大規模な公開捜査にもかかわらず、市橋の行方はまったく掴めないまま捜索は長期化。テレビのワイドショー番組を始めとするマスコミはこぞって推理、分析を行い、市橋の自殺説や死亡説、女装による潜伏説など、さまざまな説が飛び交った。さらに来日した遺族が事件の早期解決を訴えたこと、逮捕に結びつく情報の提供者への報奨金が1000万円に引き上げられたこと、市橋が逃亡中に整形手術を受けて人相を変えたことも一般市民の関心を高めていく。さらにネット上には市橋のファンクラブが設立され、事件の成り行きは被害者の母国イギリスでも大々的に報じられた。
 この“市川市福栄におけるイギリス人女性殺人・死体遺棄事件”の犯人として日本中を震撼させた市橋は、最終的に2009年11月10日に大阪市内のフェリーターミナルで逮捕されたが、それに至るまでの2年7ヵ月に及ぶ長い逃亡生活は謎のベールに覆われていた。はたして市橋はその間、いかなるルートをたどって捜査の手を逃れ、どこでどのように暮らしていたのか。日々の生活費や整形手術の費用をどうやって工面したのか。『I AM ICHIHASHI 逮捕されるまで』はこれら幾多の疑問の答えを提示するとともに、日本犯罪史上希に見る逃亡犯の特異な人物像に切り込んだ異色作である。今なお記憶に新しい殺人事件を題材にすること自体、映画界では異例の企画だが、市橋自身による逃亡手記「逮捕されるまで 〜空白の2年7ヵ月の記録〜」を原作にした本作は、観客の好奇心を煽るようなバイオレンスなどのセンセーショナルな描写を一切排除。逃亡中の市橋の行動と人間性に焦点を絞ることで、深く険しい闇の中の真実をえぐり出す問題作として完成した。

台湾を拠点に活動する日本人俳優ディーン・フジオカが
初監督と主演を兼任し、想像を絶する逃亡手記の映画化に挑戦

 アカデミー外国語映画賞に輝いた『おくりびと』『闇の子供たち』など数々の話題作を世に送り出してきた中沢敏明プロデューサーが、この野心的かつ困難なプロジェクトのメガホンを託したのは、台湾を拠点に活動する日本人俳優ディーン・フジオカだった。日本の高校を卒業後、アメリカに留学したディーンは、アジア各国を旅して多様な文化に触れたのちにプロの俳優の道を歩み出した異色のプロフィールの持ち主である。それゆえに「日本人でありながら日本を外から見る視点を持ち、アジアで俳優・アーティストとしてボーダーレスに活躍している希有な存在。独特の感性、考え方に強烈なインパクトを感じた」(中沢プロデューサー)との理由で本作に大抜擢され、主演を兼ねての監督デビューを飾った。
 原作の手記を何度も読み返し、大阪、四国、沖縄……と、実際に市橋がたどった足跡を自ら旅することで演出と役作りのイメージを膨らませていったディーンは、想像を絶する逃亡生活のディテールを生々しく描出。市橋が自給自足のサバイバル生活を送った沖縄のオーハ島、身分を偽りながら住み込みで働いた大阪のあいりん地区などでロケを敢行し、迫真の臨場感がこもった映像世界に観る者を引き込んでいく。同時に、映画ならではのフィクショナルな手法も大胆に導入し、名前を変え、顔を変え、警察のみならず自分自身からも逃げ続けた市橋の内面に肉薄。その圧倒的なリアリティとサスペンスがみなぎる実録ドラマの果てには、市橋の罪深さとともに人間という生き物の普遍的な弱さが浮き彫りにされ、観る者の心を激しく揺さぶってやまない。
 そして鬼気迫る入魂の演技で偽りだらけの逃亡犯になりきったディーンは、並々ならぬ凄みと繊細さをまとった存在感をスクリーンに刻み込むとともに、エンディング主題歌「My Dimension」の作詞・作曲・パフォーマンスも担当。そんなマルチなタレント性が遺憾なく発揮されたこの“日本デビュー作”は、ディーン・フジオカという新たな才能の出現を鮮烈に印象づけ、忘れようのない衝撃と感動を呼び起こすに違いない。

ストーリー











「すいませんが、ちょっと、話を聞かせていただけませんか?」
 2007年3月26日、午後9時40分頃。千葉県船橋警察署の刑事が市川市内のとあるマンションの玄関を叩いた。その扉を開け、中から出てきた若い男はいきなり猛然と走り出し、捜査員たちの包囲網をすり抜けて非常階段を駆け下りていく。マンションのベランダに置かれたバスタブからは、行方不明になっていたイギリス人の女性英会話講師の変死体が発見された。これが日本全国を震撼させた殺人犯、市橋達也の長い逃亡生活の始まりだった。

[I AM LOST in Shikoku]

 北関東周辺や青森県などをあてどなくさまよった市橋は、帽子とマスクでカムフラージュし、四国でお遍路の旅をしていた。死んだ人のことを思いながらお遍路道を逆に回ると、死者が甦るらしい。そんな言い伝えを信じていたからだった。数名の指名手配犯のポスターが貼られた道端の掲示板に目をとめる市橋。そこにはまだ彼の写真は貼られていなかった。そして神社の賽銭箱を壊して金を奪い、図書館で日本地図を盗み出す。自殺をする勇気も自首するつもりもない市橋が、逮捕を免れるために思いついたのは無人島での生活だった。

[I AM UESHIMA in Okinawa]

 愛媛県の松山港からフェリーで沖縄県那覇市に渡った市橋は、インターネットカフェで美容整形手術の費用を調べるが、持ち金はほとんどなかった。神奈川県出身のウエシマ、28歳の引きこもり。そう自らを偽って求人広告に応募し、建築現場での資材運びの職を得る。ドライブインの2階の宿舎に寝泊まりしながら、同僚に素性を知られないようにひたすら黙々と肉体労働に汗を流す日々。あるときは人肌が恋しくなり、歓楽街で見かけたハーフの女の子に5000円を払って一夜を共にした。そうこうしているうちに地元の警官が、指名手配犯のポスターを張り替えるためドライブインにやってくる。そこに自分の写真が載っていることに気づいた市橋は、職場から姿を眩まし、スーパーマーケットで食料や金物を購入。フェリーで久米島に向かい、奥武島へと渡るのだった。

[I AM NOBODY in Oha island]

 膝下まで海水に浸かりながら奥武島からオーハ島に渡った市橋は、無数の漂着ゴミが散乱する浜辺を歩き、険しいジャングルを突き進んでいく。やがてたどり着いたのはコンクリート造りの小屋。その廃屋で寝泊まりし、ペットボトルの容器に野菜の種を植える。海で釣った魚をさばいて食べ、夜はロウソクの灯りで本を読んだ。そこは誰の目も気にする必要のない“自分だけの場所”だった。しかし買い溜めた食料も水も底を突き、空腹に苛立ちが募る。人相を変えようとカミソリでまぶたを切ったが、それは凄まじい激痛を伴った。このとき逃亡開始から1年7ヵ月が経っていた。

[I AM UEDA in Nagoya]

 フェリーで沖縄を発った市橋は、名古屋市の整形外科を訪れた。ウエダという偽名を名乗ったが、「写真を撮らないと手術はできないんですよ」と医師に告げられ、やむなく応じる。それは移動中に捜査の手がかりになりうる痕跡を残してはならない逃亡犯にとって致命的なミスだった。

[I AM INOUE in Osaka]

 市橋はイノウエという新たな偽名を使い、大阪市西成のあいりん地区など関西各地の作業現場で働いていた。ある日、休憩時間にプレハブ小屋に入ると、テレビのニュース番組が「警察はついに、市橋容疑者の逮捕につながる情報提供者への報奨金を1000万円に引き上げると発表しました」と報じている。慌てて逃げ出した市橋は、福岡県のビジネスホテルに滞在中、かつて名古屋で整形手術を受けたことが警察にばれ、すでに新たな指名手配写真が出回っていることを知り、激烈なショックを受けるのだった。
 もはや逃げきれないと悟った市橋がめざしたのは沖縄のオーハ島だった。名前を変え、顔を変え、あの手この手を尽くし、自らが犯した取り返しのつかない罪から逃げ続けた2年7ヵ月。そのはてしない放浪の旅に、今まさに終止符が打たれようとしていた……。

スタッフ

監督・主演・主題歌 DEAN FUJIOKA
エンディング・テーマ「My Dimension」DEAN FUJIOKA
原作:「逮捕されるまで〜空白の2年7カ月の記録〜」市橋達也(幻冬舎文庫)
企画・製作:中沢敏明
共同製作:千野毅彦 
エグゼクティブプロデューサー:厨子健介、谷澤伸幸
プロデューサー:古賀俊輔、湊谷恭史
脚本:湯浅弘章、TeamD
監督補:麥婉欣
撮影:鍋島淳裕(J.S.C.) 
照明:豊見山明長
録音:西條博介
美術:井上心平
衣裳:伊藤正美 
ヘアメイク:高橋 亮
編集:西尾光男 
音楽:原田智英
キャスティング:梅本竜矢 
VFXスーパーバイザー:安田智也 
助監督:片桐健滋 
制作担当:金子哲男
製作:セディックインターナショナル、電通
制作プロダクション:ザフール 
配給協力:マンハッタンピープル

キャスト

ディーン・フジオカ

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